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東京2044  作者: mimi
19/40

決別

二人は倉庫を出た。


「うーっ、寒いー」


イースは冬の寒空の下で身を強張らせる。


「どうしたの?元気ないねえ」


俯きながら足取り重くついて来るセナに声をかけた。


暫く歩き、イースが乗ってきた中型バイクの前で二人は足を止める。


「ねえ」


セナはそのツヤツヤとした黒とシルバーの車体を焦点定まらず見つめながら、呟くように言う。


「連れて行って欲しい所があるんだけど」






紫のロードライトに照らされて、二人を乗せたバイクは周りの車をどんどん追い越して行く。


「ヘルメット、持ってこなくてごめん」


風に負けぬようイースが大声で言う。


「全然っ、こっちの方が気持ちいいし、楽しーー!」


初めて乗るバイクに、セナのテンションは上がっている。


「もっと楽しい事する??」


イースはそう言うと、車体を思いっきり斜めに倒した。


車と車隙間をすり抜け、道路をジグザグに走る。


「きゃーーっ」


セナは悲鳴を上げながらも、存分に楽しんでいる。





やがてバイクは主要道路から外れ、暫く一般道路を走り、静かな路地へと入ってゆく。


そして、令人の家の前で止まった。


「ありがと、イース」


そのまま後部座席から軽やかに飛び降りる。


「悪いんだけど、ここで待ってて、すぐ帰って来るから」


「はいよー」


イースが返事をした頃には、セナはもうマンションに向かって駆け出していた。





マンションの小さなエントランスホールを早足で横切り、来客用のパネルに令人の部屋番号を打ち込む。


お願い出て、セナは心の中で祈るように唱える。


「はい・・・」


セナの思いが通じたのか、辛そうな令人の声がパネルから聞こえてくる。


「令人、セナだけど、中に入れて」


セナはなるべく優しい声でパネルに話しかける。


令人は何も答えない。


「そんな状態じゃほっとけないよ、中に入れてくれないなら、生田さんに全部話す」


沈黙が続いた。


セナは令人が何か言ってくれるのをただじっと待った。


「俺はお前に心配されるほど柔じゃねえ、俺の事は暫く一人にしてくれってさっきも言ったし、生田さんにも言うな。だけどどうしてもお前がそうしたいって言うんなら勝手にしろ。その変わり俺らの関係はもうこれっきりだ!」


一言一言噛みしめるように言うと、令人は通話を一方的に切った。


せなは呆然とパネルの前に立ち尽くす。


気持ちを落ち着かせる為に暫く時間を置いた後、再び令人の部屋番号をパネルに打ち込むが、何回試しても、再び令人が出る事はなかった。

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