表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京2044  作者: mimi
16/40

カウンター

その頃、イースは怪しげなクラブのカウンターに座っていた。


店内は暗く、空気は淀んでいる。


中心のステージでは悪魔や骸骨のメイクをしたバンドがうるさいロックミュージックを奏で、客はそれに会わせて体を揺らすか、あるいは店の端で入れ墨を彫るか、あるいは薬や酒を楽しんでいる。


フードを被り腕に顎を乗せぼんやりしているイースに、カウンターの中で他の客の接客をしていた長身細身の女が近寄ってきた。


「どうしたぼんやりして、最近鬼ごっこの方は順調かい、イース?」


「あぁ、アケミちゃん、んーあんまりかな」


「お疲れじゃないか、なんかあったのかい?」


「うーん、そろそろ東京にはいられないな、って思って」


「そうか、次はどこに行くんだい?」


「ヒミツ」


「あたいも信用されてねーなー」


「信用してるよー!アケミちゃんの作ったもの食べるし」


「他の人のは食べないのかい?」


「基本的にはねー、何入ってるかわかんないし」


「ふーん、不便なもんだな」


イースはカウンターにパソコンを広げ、真剣な眼差しでそれを見ている。


「いつも何見てるんだい?」


「鬼ごっこの鬼達の居場所チェック」


「どうやって?」


「道の監視カメラの映像に、交通課のメインシステムから進入してアクセスしたり、色々ー」


「すげぇな、あたしにゃ全然わかんねぇよ」


「ここの店って監視の目を完全にすり抜けてこれるんだよ、だから犯罪者っぽい人が多いんだ、知ってた?」


「知ってる訳ないだろ、あたしゃ犯罪者じゃねーんだから」


「えへへ、そーだよねー、あれっ」


画面を見ているイースの目が急に真剣味を増す。


「セナが追手の車に乗ってる」


「セナって誰だよ」


「友達~。やばいよ、拉致られたみたい」


「鬼も頭使いやがったな、どうすんだい?」


「まいったなー、三回目だよこれ。この鬼に拉致られた子を前助けに行かないでほおっておいたら、その子行方知らずになちゃったんだよ」


「うげっ待てよ、あたいもいつか拉致られるかもしれないって事?」


「大丈夫、あけみちゃんなら助けに行ったげるから」


「うわっ、あんたと絡むのやめよ」


「薄情だなあ」


「行ってやれよ、んで鬼がいらない事できねぇように潰してこいよ、あんた強いんだろ?」


「んー、でも怖いな、こいつだって強いし、捕まりたくない」


「ま、あたしにゃ関係のねー事だ、好きにしろよ」


「うん……ほらみて、この子」


「なかなかの上玉じゃないか、イースこの店で働くようにスカウトしてくれよ」


「えー、でもお金持ちっぽかったよ」


「お嬢か」


「うん、それがこの子謎が多くてさ、養子縁組みしてる親が、ほらこれ」


イースはパソコンの画面をアケミが見やすいよう移動する。


ここの客にいそうだな、いいセンスしてやがる」


「この顔面ピアス男、弁護士なんだよ、それも未成年の人権保護とか正義のヒーローみたいな事しててさ」


「この女の子は育ちに問題ありって訳か」


「だけどどこをどんなに探しても、昔のセナについての手がかりがつかめないんだよ。まるで子供時代がなかったみたいに」


イースはパソコンの画面を見ながら、じっと何かを考えている。


アケミはその邪魔をせぬようそっとその場を離れた。



イースが重い腰をあげたのは、それから何時間もたった後だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ