令人のマンション
十五分後、令人はセナのマンションにいた。
「早かったね」
そう言いながらセナは部屋の鍵を開ける。
令人は軽く息を切らしている。
「セナ、暫く家に泊まれ」
「え…」
「カズマがどんなやつかお前が一番良く分かってんだろ」
セナは目を伏せた。
「なんですぐ連絡しなかった」
令人はセナを正面からまっすぐ見据える。
「ごめん…」
「すぐ用意しろ、でき次第行くぞ」
「うん」
セナは旅行用のキャリーバックに、着替えと日用品を詰めにかかった。
十分後、二人は車の中にいた。
レトロカーは郊外の人気のない道へと入ってゆく。
令人のマンションは、大きくもなく部屋も狭いが、掌の静脈認証という最新のセキュリティシステムを取り入れている所が彼のお気に入りだった。
セナは令人の後について部屋に入るが、その部屋に入るのは実に一年ぶりだった。
久しぶりに入った部屋の汚さに、セナは顔をしかめる。
「掃除しないとな……つーかしてくれ」
顔をしかめたセナに、令人はそう声をかける。
セナはそれから数時間で、自分の居座るスペースを確保する為に部屋を片付けた。
しかし粗方掃除を終えたころ、セナは数時間前より大分不機嫌だった。
「だらしない」
「知ってるよ、掃除し甲斐があったろ?」
「そうじゃない、女関係!」
たった数時間の間に、令人の部屋には一人の訪問と三件の着信があり、パネルを通してセナが見た感じでは、みな自分を令人の彼女だと思っているようだった。
「いーじゃねーか、そのお蔭で買い物行かなくていーんだぜ」
令人は〝ゆうか″の持ってきた弁当を食べながら言う。
「まぁそうぷりぷりすんなよ」
そう言われても、セナは組んだ腕も怒った表情も緩める気はなさそうだった。
その時、来客を告げる音楽が部屋に鳴り響いた。
「また…」
セナは呆れて声も出ない、というように溜息をつく。
令人はそんなセナにはおかまいなしで、来客と音声通話を開始する為のボタンを押す。
「はい」
「よう令人、久しぶりだな」
低い抑揚を抑えたカズマの声が部屋中に響き渡り、二人の表情が凍る。
令人はひとさし指を唇へと持っていき、セナに静かにするよう合図を送る。
「どうだい、自由な生活を毎日楽しんでるかい?君達は」
「何しに来たんだ」
「冷たいなあ、兄弟。久しぶりに話がしたくなってわざわざ足を運んだのに」
「もう俺はお前とは何の関係もねぇ、帰って二度と来ないでくれ」
「それは困なぁ、お前とセナがつるんでる限り、俺にとっちゃ関係大アリだ」
セナは身を固くして二人のやり取りを聞いている。
「言ってる意味が良く分かんねえな、下りてじっくり話聞いてやるからそこで待ってろ」
令人は乱暴に受話器を置くと、急ぎ足でドアへと向かう。
「絶対動くなよ」
厳しい目つきのまま命令するように、言い放つ。
セナは始終下を向いたままだったが、その言葉にかすかに頷いた。




