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隣の席のぼそぼそ女子が、実は人気イケメンバーチャル声優で、俺だけがその秘密を知っている。  作者: きたみ詩亜


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第4話 友達と、疑惑と

 日曜。

 昨日より、さらに暑い。


 そして今──


「……な、なんで……いるの……?」


 目の前にいるのは、笠井夏羽。

 と、その両脇に立つ、知らない女子ふたり。


◆◆◆◆


「紹介するね……」


 夏羽が、もじもじしながら言う。


「……こっちが……藤宮結衣……」


 明るい茶髪で、背が高い。


「はーい、結衣でーす!

 で、こっちが」


「……佐倉真帆……」


 短め黒髪で、クールそうな顔。


「……どうも……」


 俺は、頭を下げる。


「瀬能淳弥です……」


 結衣が、じーっと俺を見る。


「ねえ夏羽、この人……」


「……な、なに……?」


「昨日、一緒にいた男の人でしょ?」


「……っ」


 夏羽が、びくっと肩を揺らす。


「……あ、あれは……」


「練習相手、だよな?」


 助け舟を出す。


「……そ、そう……」


「ふーん?」


 結衣が、にやにやする。


「練習ねえ……」


 真帆が、腕を組んで言う。


「……で、なんの練習……?」


「……え……と……」


 夏羽が、詰まる。


◆◆◆◆


 四人で、モールを歩くことになった。


「夏羽、最近さ」


 結衣が言う。


「やたら外出るよね」


「……そ、そう……?」


「前は、休日ずっと家だったのに」


「……」


 俺を見る視線が、刺さる。


「ねえ瀬能くん」


「……はい」


「夏羽と、どういう関係?」


「……クラスメイトです」


「それだけ?」


「……はい」


 真帆が、じっと夏羽を見る。


「……夏羽……声……変わった?」


「……え……?」


「前より……はっきり……」


「……そ、そう……?」


 俺は、内心ひやっとする。


(鋭い……)


◆◆◆◆


 エスカレーターで、事件が起きた。


「……っ」


 夏羽が、つまずく。


「危なっ」


 反射的に、腰を支える。


「……っ」


「……だ、大丈夫……?」


「……う、うん……」


 でも――


 下りエスカレーター。


 俺の足が、止まらない。


「うわっ」


「……きゃ……!」


 二人で、前に倒れる。


 結果。


 俺の手が、夏羽の肩に。

 夏羽の額が、俺の胸に。


「……っ」


「……っ」


「ちょっと!」


 結衣が叫ぶ。


「なにしてんの!?」


「ち、違うんです!」


 すぐ離れる。


「……転びかけただけ……」


「……そ、そう……」


 夏羽は、耳まで真っ赤。


◆◆◆◆


 フードコート。


「……瀬能くん……」


 真帆が、静かに言う。


「……夏羽……最近……元気」


「……そうですか?」


「……声も……表情も……」


 夏羽は、俯く。


「……その人……関係ある……?」


「……」


 沈黙。


 蝉の声が、遠くで鳴く。


「……えっと……」


 俺は、口を開く。


「……俺……応援してるだけです」


「……なにを……?」


「……笠井さんの……大事なことを」


 夏羽が、はっと顔を上げる。


「……瀬能くん……」


 結衣が、目を丸くする。


「なにそれ、意味深!」


「……」


 真帆は、目を細めた。


「……秘密……あるね……?」


「……っ」


 夏羽の肩が、震える。


(まずい……)


◆◆◆◆


 帰り道。


「……今日は……ごめん……」


 夏羽が、小さく言う。


「……友達……連れてきて……」


「……いや……」


「……でも……」


「……気にするな」


 俺は、空を見る。


 青すぎる。


「……また……練習……しよ……」


「……ああ」


 夏羽は、少し笑った。


 でも――

 その後ろ姿を思い出す。


 鋭い目の、佐倉真帆。


(……バレるの、時間の問題か……?)

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