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Goddess mine ~女神を冒す仕事をしているので、女神崇拝者には嫌われています~  作者: 奏ゆう


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4.我らのチーム

 

 

 眼下には、エメラルドグリーンの海。南にしかない色だ。

 よく晴れて、波もおだやかだった。海面に映る飛影を追って、イルカが跳ねるのが見える。

 操縦桿を握っているのは俺。教育を受けたせいもあるが、後ろの男のフォローをしているうちに、料理以外はなんでもできるようになった。ウィーザーも操縦できなくはないが、なんとなく俺の役目みたいになっている。

 《飛行機(フライ・ドーム)》の横を、尾の長いネッタイチョウがよぎった。大陸以外に家畜となる動物はいないが、魚を食べる野生の鳥はいる。

 飛べるから、荒れ狂う海を凌げたんだろうな。

 ひとの命を奪うために荒れ狂ったと云われているが、いまは女神を含め、海がすべての源だ。ひとびとに恵みをもたらす。

 島を離れて、数時間。

 「寝てんのか、ウィーザー。もう見えてるぞ、麗しの女神だ」

 俺のじゃなくて、おまえのな。

 前方には、巨大な影。白に青、裾に近づくにつれピンク色が斑に混じった岩塩。海の色を映し、なお美しい色をまとっている。

 巨大な岩塩には、いくつものカラフルなザイルが垂れ下がっている。その途中には、大小サイズの違う塊。よく見ると、蠢いているそれは、人間だ。

 作業によっては、《飛行機(フライ・ドーム)》で女神の頭や肩から降りもするし、作った足場から登って行きもする。どちらにしてもザイルは必要だった。《採掘師》の命を護るものだ。

 「ん? ……ああ、昨夜あんまり寝てなくてな」

 「襲撃でも気にしてたのかよ」

 せっかく陸で眠れる日だったのにな。それとも、揺れる船じゃないと、もう落ちつかないのか。

 手のひらで額に庇を作り、ウィーザーが女神を望んだ。見ているのは、宙に吊られている、または岩にとりついている仲間たちだ。仲間のうち、四人がそこにいる。

 「やってるなー」

 声音がうずうずしている。早く作業に戻りたいのがありありとしていた。一泊二日でも、こいつは女神と離れているのがいやなのだ。

 「そりゃやってるだろ、仕事だ。まあ、留守中に事故もなかったようで、安心はしたな」

 俺たちのチームは、船が二艘、《飛行機(フライ・ドーム)》が一機。人数は十人ほどの、こぢんまりとした集団だ。

 《採掘師》はもっと大人数でまとまっているところが多い。ひとりではできない作業でもあるから、どうしたって固まっていくし、独立もなかなかできない。そういうものなのだ。

 大所帯になりすぎると独立もあるし、うちのチームも、そうしてできたもんだけどな。

 俺は女神から少し離れた場所に着水させた。そこから、とろとろ足場まで進んでいく。

 女神の袂には、俺たちが作った足場がある。浮き輪と板とを使ったものだ。チームの全員が余裕をもって座れるほどには広い。一時的な採掘品置き場としても使われる。頑丈な造りになっていた。

 ひとや波が動くと不安定に揺れもするが、がっちり固定ができないのだから、しょうがない。海底に柱を立てられないからな。女神にはペグを突き刺させてもらっているが。

 足場はロープで船と女神とに繋がれていて、どこかに流されたりはしない。俺たちがここから移動するときには、たたんで小さくして、船で曳航していく。アイゼンの爪のせいであちこち傷んでいるが、板がだめになるまでは使いつづけるのだ。一回で捨てるものなどない。

 「これ頼む」

 足場の付近まで来たら、ウィーザーがロープを投げた。足場に落ちたロープを仲間が拾い、杭に縛ってくれる。ぐるぐると杭にまわしてロープを引き寄せられ、《飛行機(フライ・ドーム)》が足場に近くなったら、板を渡して到着だ。

 俺は座席でゴーグルを外し、眼鏡に替えた。仲間にもそんなに素顔を見せたくないのは、ちょっと、おかしな気持ちではあるが。どうしても、直らないのだ。

 ゴーグルのほうが顔を隠すには役立つが、ずっとつけていると顔が痛い。眼鏡のほうが楽だった。

 ウィーザーはウィーザーで、ハーネスを装着してから降りている。

 「ただいま」

 「おかえり、キャプテン。副長」

 アックスが板を設置してくれていた。

 足場にも、仲間はアックス含め三人いる。あと、船にひとり。

 下にいるやつらは、上にいるやつらほど服装を厳しくしていないので、上着を脱いで半袖になっていた。ハーネスがあるから、脱ぎきれてはいないが。

 上での作業中は、長袖、長ズボン。じゃないと危ないからな。ひとりだけ、八分丈のボトムになっているやつがいるが。

 「キャプテン! 副長! やあーあっと帰ってきたー!!」

 呼んでないが、女神からするするとラミアがおりてきた。いっそ感心する早業で命綱からカラビナを外し、ゴーグルを額にあげ、上着から袖を抜いて、ぴょんっとウィーザーに抱きつき……かけて、本人に止められた。

 ひどいことに、顔をつかまれている。

 「怪我するぞ、ラミア」

 危険物がじゃらじゃら腰についてるからな。危ないよな。やわらかい女の肌なら、ざくざく傷がつきそうだ。

 というか、ラミア自身の腰にも、ウィーザーのものより小振りだが、ハンマーやらハーケンやらピッケルやらドリルやらがぶらさがっている。八分丈のピンクのレギンスに、エメラルドグリーンのハーネスを合わせていた。ごつい登山靴には、デュアルポイントで合計十四本爪のアイゼンをつけている。女神は山じゃないが、昔からそう呼ぶ(もの)らしい。

 作業中は長袖だが、下におりてくるとジャケットから袖を抜くやつが多い。ハーネスがじゃましているから、腹のあたりから上着がぶらさがっている状態だ。袖がさがっていると危ないので、腹で結ぶ。

 ラミアはまだ、袖を結んでいなかった。腰のピッケルにもひっかかりそうだ。

 レギンスよりは色の薄いピンクの上着の下には、丈の短い、黒いキャミソールを着ている。

 そもそも、そうしてヘソやら脚やらを出すなという感じなんだが。装備に刃物や突起物が多いんだから、危ないだろ。

 そしてウィーザー。親切心で止めているのはわかるが、顔はないだろ、顔は。

 しかし、キャプテンのやることに甘い女は、怒りはしなかった。誉めてほしいと云わんばかりの声を出す。

 「ラミア、ちゃんとお留守番してたよ」

 「ああ、助かる」

 ラミアを止めた手で、そのままウィーザーは頭を撫でてやっていた。いいかげんそろそろ子供扱いに怒りそうな年齢のはずだが、ラミアはにこにこと受けた。

 暗い金髪に、小麦色の肌。南の海の眼。十代の小娘がチームにいるのは、当然、それなりの理由がある。

 拾ったんだよな、俺とウィーザーとで。六年前くらいに。育てたのは俺じゃなく、当時はもうひとりいた女の先輩だが。あるていど育っていたとはいえ、俺に子育ては無理だ。

 栄養状態が良くなかったので、その時点で年齢ははっきりしなかったが。いま、たぶん十五か十六くらい。俺やウィーザーが《採掘師》になったころより若い。

 ラミアは二年前から仕事をしてる。おそらく歴代最年少の《採掘師》なんじゃないだろうか。

 「あたりまえだ。ちゃんと留守番できてなかったら怒るぞ」

 ウィーザーが飴なら、俺は鞭だ。そういう役回りなのは、しかたない。

 俺がチームのメンバーにやさしいことばをかけてやることってあったっけなーと、遠い眼をしなくもないな。べつに、この立ち位置がいやなわけでもないが。

 途端に、ラミアはムッとした。

 「副長の細マッチョ! 色白! おしゃれ眼鏡!」

 ……それは、悪口なのか……?

 反応に困るぞ、おい。

 さしあたり、眼鏡のブリッジをさわってみた。

 「少し語彙を増やせ、ラミア」

 「副長のあんぽんたんー!」

 「こんど、本を貸してやる。辞書もな」

 イーッとラミアは歯を剥き出した。

 六年前から船にいるから、ラミアはまともに教育を受けられていない。文字は俺が教えたが、本人は勉強をいやがる。読み書き計算ができないと、《飛行機(フライ・ドーム)》の操縦もできないんだがな。どうしたもんか。

 「というか、おまえ、おりてきていいのか?」

 「そろそろ交替だもん」

 ウィーザーは、すでにラミアを見ていない。女神を気にかけている。

 「女神はどうだ?」

 「今日は《飛行機(フライ・ドーム)》がなかったので、肩を飛ばして百メートル地点あたりを掘ってます」

 問いに応えたのは、もともと足場にいたキースだ。留守を任せてあった。俺とウィーザーより二歳年上の二十八歳。先輩採掘師ではあったが、うちのキャプテンの腕に惚れて、チームに入った男だ。

 「ああ、それでいい」

 人間で云ったら、腹よりちょっと上のあたりだな。女神の体はくびれがないので、胸も腹も腰も、位置がよくわからないんだが。

 《飛行機(フライ・ドーム)》がないと、頂上からってわけにゃいかないからな。下から登るしかないし。

 この女神は百五十メートル級だが、掘っていいのは上部五十メートルまでなので、限界ぎりぎりの位置をいま掘っているわけだ。上からじゃなく、足場から見て、百メートル地点な。

 「副長、これが報告書です」

 「ああ、ありがとう」

 まめにこの数日の報告書もまとめているが、キャプテンが読むわけない。心得ているキースは、俺にファイルごと渡してきた。うん、正しい。キースの律義さに、ときどき、俺はかなり癒されている。うっかり惚れそうになるな。

 「石炭は、思ったより量がありそうですね。この二日で、ケースふたつがいっぱいになりました」

 「お、増えたな。よかった、出てきて」

 俺たちが出発するときには、まだ五つくらいの欠片しかなかった。

 「ラミアも石炭、見つけたよ」

 「うん。よくやった」

 またウィーザーがラミアを撫でてやっている。へへ、とラミアはご満悦だ。

 誰が見つけたかは、たいして重要じゃない。

 なにが見つかったか、が肝要だ。

 塩は無色透明だから、表面に近ければ、なにかが見えたりもするが。だいたい女神の体は色づいていて、ほぼ外からは見えないため、掘り進めながら、そのさきになにが埋まっているかを知る。ベテランになると、だいたい勘で、すぐ近くになにがあるか察知できるようになった。

 ラミアはわりと勘がよく、大物を見つける機会が多い。

 女神の体のどこもかしこも掘るわけにはいかないからな。部分的に削っていくから、見落としているものもあるのだろう。

 女神を消滅させるわけにもいかないから、これはしょうがない。

 「今日じゅうに、もうひとつケースが増えそうです」

 「石炭だけでそれなら、もっといけそうだな」

 そろそろ、荷運び用に船の手配をしないとならない。俺たちのチームの船や飛行機では、この手の運搬には向かないからだ。

 月に二回は食料運搬のために《運び屋(トラクター)》に来てもらっているが、採掘した荷を運ぶとなると、船のサイズや数が変わる。塩だけだったら、食料や水と入れ替わりに渡すんだけどな。

 先月は、塩以外には小さなものしか出なかったので、まだ《運び屋》には渡していない。うちの船で保管していた。

 「そうか。ヴァイパーの爺さんに頼もう。打診はしてあるから、すぐ来てくれるはずだ」

 一本足のヘビ爺さんの塒は、ここからなら、そう遠くない。出番を待ってそわそわしているのが想像できた。じっさいに来たら、そんなの、おくびにも出さないんだけどな。

 《運び屋(トラクター)》のヴァイパーは、なんでも運んでくれるプロだ。うちとのつきあいも長い。きっちり指定の場所に時間どおりに運んでくれる。その点の心配はなかった。

 かつての《第七災害》以降、海が大荒れになる日は、年に何回もない。台風とかもあるにはあるんだけどな。

 「石炭がありゃ、爺さんも文句は云わないな」

 「前回は、文句たらたらでしたしね」

 「塩しか渡してないからな。しょうがない。《運び屋》にとっても、おもしろくはなかろうさ」

 真珠とか、ルビーとかも出てたんだけどな。小さいやつ。数も少ないし、《運び屋》に渡すほどじゃなかった。

 宝石類も、わるくはないんだが。今回の女神に期待していたのは、まさしくこれだ。化石燃料。

 大陸に油田もガス田も炭田もなくはないが、それですべてをまかなうには不安もある。過剰に汲みあげると地盤沈下が発生するから、生産量も限られた。ほとんど大陸内でかかえてしまい、点在する島々にまで行き渡りはしない。女神から出たものが、島に分配される。

 石油もガスも石炭もまた、昔、地球にあった動植物の化石からできている。理屈は知らないが、そうなんだそうだ。命の欠片を俺たちは燃料にさせてもらっている。

 人間がまだいなかった時代の、古い生命。

 (俺たちのためにありがとう、って感じだな)

 傲慢な考えかもしれんが。おまえらの命を無駄にはしない。

 女神から化石燃料が出るのは、大昔に海に沈んだものが、女神の体に取り込まれているからだ。

 石炭とか、明らかに、誰かが掘った形跡があるからな。炭田だか炭鉱だかから、すでに採掘されたものが、女神のなかにある。たまに、山盛りの籠ごと出るし。

 俺は現物を眼にしていないが、タンクローリーとかいう車を出した女神もいるらしい。中身はガスだったり石油だったり、牛乳だったり。たいてい車体に中身は書いてある。親切だな。

 《第七災害》からは、何百年も経過しているのに。おそらく、そのころのまま、女神に護られているのだ。

 (さて、と)

 俺は、足場にいるメンバーを確認した。

 俺、ウィーザー、ラミア、キース、アックス、ほかにひとり、キャリアが薄い者がいる。船のほうにもだ。《飛行機(フライ・ドーム)》がなかったが、百メートルくらいなら登れるだろうから、下にいるのはたまたまだろう。百メートルすら登れなかったなら、さすがにキースが報告している。

 いま女神についているのは、ハロルドとかか。ラミアがおりてきたから、上に三人しかいないな。

 「キース、《飛行機(フライ・ドーム)》が二日もなくて、だいじょうぶだったか?」

 交替のときにも使用しているので、なくていいものではない。

 《飛行機(フライ・ドーム)》がなくて移動に時間がかかるし、人数が減っているせいもあって、休憩は多めにとっていたようだ。

 まあ、誰にも怪我がなくて、なによりである。

 「なんとか。重いものは出ませんでしたし。事故もなかった」

 重いのが出たとしても、その部分の作業を止めたのだろう。俺たちが戻るまで。

 ひとが担げない重さのものは、《飛行機(フライ・ドーム)》でやるか、もしくは外部に連絡して《飛行艇(カーゴシップ)》で運んでもらうしかない。

 「出てほしいくらいなんだがな。でかいのに」

 俺が云えば、近くで会話を聞いていたアックスが笑った。

 「なに、心配いらねえさ、副長。この女神はイケてるぜ、俺が保証する」

 ウィーザーも頷く。

 「ああ、やさしい女神だ。一部だけでも、石炭をこれだけ出してくれているんだからな」

 「お宝いっぱいだぜ、きっと。楽しみだな」

 最年長のアックスは、背は俺より低いが筋骨隆々とした男だ。三十一歳。数年前、三十になったら引退するとか云っていたのに、まだやっている。来年あたりには、本気で引退するかもな。

 そんなに長くやっていられる稼業じゃないんだ。体力がいるし、海に出ていれば結婚もできない。

 体を壊しても、体力が衰えても、ひとが恋しくなっても、つづけてはいられなくなる。

 寒冷地組は事情が違うようで、四十、五十を過ぎてもやっているようだが。寒さに耐えられないと難しいので、転職先にはなかなか選ばれない。

 (北の連中はとくに、いわくつきだとか聞くしな)

 そのまま五人で話していたら、いきなりキースが耳を押さえた。無線か。押さえるとまずいとキースも気づいたようで、すぐにヘッドセットを外した。

 『おいおい、ちょっとー、もう時間じゃない? 交替はー?! いつのまにかラミアいないし! 落ちてないよな?』

 上にいるハロルドだ。声がでかくて俺にも聞こえる。

 ラミアが落ちてたら、さきにキースが無線で連絡はしていると思うぞ。

 ハロルドは、ラミアから近めのとこで作業していたんだろうな。ひとりひとりの間隔が空いているから、ほかに作業しているやつは、あんまり見えていない。

 キースは自身にヘッドセットのマイク部を寄せながら返事した。耳あての部分は、極力、離したいんだな。わかる。

 「ラミアはおりてきている、問題ない。連絡が遅くなってわるかった、戻っていいぞ」

 「《飛行機(フライ・ドーム)》がいるか、ハロルド?」

 俺も、キースの横から口を挟む。

 『あ、副長? おかえりなさーい。俺はなくていいっスね。自分でおりられます』

 無線を聞いていたほかのふたりからも、「俺もいいです」「問題ない」と返ってくる。こっちはハロルドと比べるとボリュームが小さめなので、キースはヘッドセットを近寄せていた。

 「じゃあ、俺があがるな。リックはどうする?」

 ウィーザーがいつのまにか、ヘルメットとアイゼンとを装備している。船までとりに行っていたのか。

 八人が十人に増えても、増えたふたりがどっちも上に行こうとしたら、交替がなんかよくない感じになるだろうが。

 「俺は《飛行機(フライ・ドーム)》で新人たちを送る役。キース、頂上でいいな?」

 「そうですね。肩からやったほうがいいでしょうし」

 どうせ上に送るんだから、ハロルドたちを回収してもよかったんだが。百メートルくらいなら、自力でおりたほうが、やつらには早いんだよな。回収するなら、いったん頂上まであがってもらわなきゃだし。

 ウィーザーは俺の返事を聞くと、すぐに女神に向かった。ピッケルを突き立て、さくさくと登っていく。

 「副長ー、俺も送ってくれや」

 アックスが笑っている。まあな。年齢的にキツいんだろうな。アックスは慣れてるし、普段はあんまり甘えは出さないが。昨日と今日と、大変だったんだろう。百メートル地点まで、往復をくり返してるし。

 (やっぱ二機、欲しいよなあ)

 金がないけど。

 掘る位置がまだ高いから、ベテラン勢でも乗せたりはする。掘るときには、乗りたがらないのはウィーザーくらいだ。島への移動とかなら、あいつも文句云わずに乗るが。

 「いいぞ。アックスもキースも送ってやるから、少し待ってろ」

 「おう。待ってんぜ」

 「了解です。ありがとうございます」

 キースから、ほっとした気配がした。こいつもキツかったか。

 「――キース、ちゃんと眠れてたか、昨夜。なんなら、ちょっと寝ててもいいぞ」

 事故を起こされるよりは、そっちのほうがいい。

 チームを監視しているの、気が抜けなかったか。わるかったな、と思う。まじめだからなあ、こいつ。ハロルドと手分けさせときゃよかったか。……そんでも、キースの負う部分が多いとは思うが。次があったら、俺がさきに分担しとこう。

 キースは、少し驚いた顔をした。

 「……では、十五分だけ」

 もう少し、休んでいてもいいくらいなんだが。俺が新人たちを送って戻ってくるのがそれくらいだと踏んでいるのだ。

 わかった。二十分で戻ってくるな。




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