第二章:星の誓い ― The Oath of Stars
光の渦をくぐり抜け、レオン・サイルは宇宙の真っ只中に漂っていた。
《オルカ号》の機体は損傷しているが、奇跡的に稼働している。
周囲には無数の星々が散らばり、遠くに黒曜石のような艦影――《セレーネ》が浮かんでいた。
通信機が点滅し、銀髪の女性――セラ・ヴァルンの声が響く。
「レオン・サイル、応答しなさい。あなたを救助する。」
レオンは少し戸惑いながらも、返答する。
「……はい。受け入れます。」
《セレーネ》への接近中、彼は初めて反乱組織の実態に触れる。
艦内の通路には、制服を纏った兵士たちが忙しなく動き回っており、戦術ホログラムが浮かび上がる。
金属と光の匂いが混ざり、まるで巨大な都市の中に入り込んだようだ。
案内役は無口な戦闘アンドロイド《クロス》。
黒い装甲に傷跡が刻まれ、目は無表情な青の光を放つ。
『セラ司令がブリーフィングルームで待機中。』
レオンはため息をつきながらその後をついていく。
ブリーフィングルームの扉が開くと、中央にはホログラムで投影された銀河地図が浮かんでいた。
セラ・ヴァルンは静かに立ち、鋭い視線で彼を見つめる。
「レオン・サイル。あなたは“あの光”を起動させたのね。」
「光?」
「星海の力よ。帝国が三十年間探していた遺物に触れたあなた――偶然で起こったことではない。」
レオンは息を呑む。
「……俺はただの運び屋だ。戦争も、帝国も関係ない。」
「それでも、あなたは選ばれた。理由は問わない。」
ブリーフィングルームの隅で、老兵グレイが低く呟く。
「坊主、お前がどう思おうと、帝国はお前を標的として動かす。」
視界の端には、修理や補給を行う若い兵士や整備士の姿。
その中で、赤い髪の少女ミラが笑顔で手を振る。
「おおっ、新顔か! あたしミラ!整備担当だよ!」
レオンは微かに微笑む。
この艦には、人々の“希望”が確かに息づいていることを感じた。
セラはホログラムに手を触れ、帝国艦隊の情報を映し出す。
「皇帝ダル=ザールは、銀河全体の星海を支配しようとしている。
そして、あなたが触れた光の核を狙っている。」
レオンはその映像を見つめ、胸が締め付けられる。
「……母さんは、これに関わっていたのか?」
「ええ。リーナ・サイル。あなたの母は光の巫女であり、星海の力を守る者だった。」
胸の奥で、懐かしい記憶が蘇る。
砂漠の村、母が星空を見上げ語った言葉――
「星たちは私たちの意志を聞いているの」
「……星海って、母さんが言ってたことだよな。」
セラは頷き、低く囁く。
「あなたはもう、運び屋ではない。選ばれた者――星海の継承者よ。」
数時間後、レオンは艦内で訓練を受けることになった。
ペンダントを手に取り、AIチップのアシストでエネルギー制御を試みる。
「光の核の反応を、船体で増幅させてみろ。」
レオンは手を広げ、ペンダントに力を注ぐ。
青白い光が指先から船体に流れ、浮遊するツールが宙に漂う。
ミラが目を丸くする。
「おおっ! 見て! あれ、操縦席のAIも反応してる!」
レオンは息を整えながら、初めて自分の力が本物であることを実感する。
「……これ、俺の力なのか……」
「そうよ。でも制御はまだ不完全。帝国と戦うには、もっと鍛えなければ。」
その夜、艦の外壁に警報が響く。
帝国艦隊が迫っている――スクリーンには、漆黒の旗艦の姿が映る。
その艦橋には、黒衣の将軍ヴァルド・ケインが立っていた。
「星海の継承者、レオン・サイル……生かしておく理由はない。」
副官が報告する。
「将軍、星の誓い艦の座標特定済みです。」
「追跡せよ。光の核を奪取する。」
レオンは操縦席に戻り、スラスターを確認する。
胸の奥で、星海の光が脈打つ。
「……やるしかない。」
《セレーネ》艦内で、レオンは仲間たちと初めて正式に交流する。
グレイやミラ、クロス――彼らの温もりと共に、初めて「守るべきもの」を意識する。
窓の外、星々が銀河を貫くように輝く。
その光は、次の戦いの予兆――帝国との衝突を告げていた。




