異世界謀略恋愛「アパートの隣の部屋に住む女の子が王子様に見初められたと自慢・・もとい相談しにきた~よろしい、私が成り代わってあげましょうっ!~」
ここは異世界。ところは欧州中世風な佇まいが広がる王都の下町。そんな庶民が寄り添って暮らす地域の更に端っこに私が部屋を借りているアパートはある。
まぁ、王都とはいえ端っこという場所的条件及び築333年といういつ倒壊してもおかしくないような物件なので格安なのだが、それ故に住んでいる者たちは私を含めて大抵貧乏人、もしくは田舎から出てきたばかりであまりお金を持っていない若者たちだ。
でもまぁ、だからと言って環境は荒んだりしていない。なんせ泥棒に入ろうとしてもみんなが『平等』に貧乏だから盗まれるような価値のあるものを持っている人などいないから泥棒も寄り付かない。
勿論、人生を儚んで酒を飲み酔っ払ってまわりに迷惑をかける者もいない。だってみんな『平等』に貧乏人だからお酒なんて滅多に買えないのだ。
そんな貧乏人街は寝静まるのも早い。だって明かりをつけるにもお金が必要だからね。だけどそんな夜の20時頃。ボロアパートの私の部屋の玄関から扉を叩く音がした。
コンコン
うん、このアパートってボロだから呼び鈴はとっくの昔に壊れていてボタンを押しても音が出ないのだ。なので訪問の合図は大抵ノックになる。
因みにノックの回数も所属する階級や地域で色々マナーがあるらしいが、そんなのを気にするのは他に拘る事がない生活勝ち組くらいだ。
いや、本当に上流階級って変なところに拘るのよね。お茶碗の位置なんて別にどうでもいいじゃないっ!問題なのはどれだけ量があるかよっ!更に料理が美味しければ最高なのっ!
コンコンコン
だが、私が無視していると尚も玄関を叩く音が続いた。終いにはシクシクと泣いているような声まで聞こえてきた。
ちっ、仕方ない。面倒だけど出てやるか。
うん、なんで私が訪問者に対して直ぐに対応しないのかというと、尋ねて来た者の素性が予想できたからだ。
そう、十中八九、私の部屋を尋ねて来たのは隣に住む女の子である。で、こいつがまた、四六時中なにかあると私に相談しに来るのだ。それも大抵は男がらみの事である。
まぁ、確かに彼女は可愛い側に属する容貌を持っている。更に勤め先が接待付き酒場だから客とのその手のトラブルは日常茶飯事だ。
この前なんか、別のトップキャバ嬢が散々貢がせた挙句捨てた男にさらわれたので私も怖いとかほざいてきたわ。
いや、あんた。確かにあんたは可愛い側に属してはいるけどそこまでのランクではないと思うけど?
しかし今回の愚痴・・もとい相談事はある意味自慢話だった。そう、なんとこいつったらこの国の王子に見初められたらしいのだっ!
がーんっ!
そんな馬鹿なっ!幾らなんでもシンデレラ過ぎるだろうっ!そもそも何処で王子と出会ったっ!まさかあんたが勤めている場末のキャバクラじゃないよなっ!
で、私は事の詳細を根掘り葉掘り聞きだすべく災害時用に大切に取っておいたロウソクに火を灯し、尚且つこれまた災害時用に備蓄しておいたミネラルウォーターにちょっとだけウオッカを垂らして出し口を軽くさせる作戦に出た。
まぁ、そんな事をしなくてもこいつは私に自慢したいだけだろうからペラペラ喋ると思うけど念には念だ。そう、備えあれば憂い無しなのである。
で、話を聞くところこいつと王子が出会った経緯は、とある日の夕刻、お忍び中で一般人の装いをしていた王子が乗った馬車が薄暗い森で盗賊に襲われていたところを偶然通りかかったこいつが助けたという事らしい。
うん、なんか立場が逆な気もしなくはないが突っ込むと話が脱線しそうなので私はぐっと堪えて話の先を促したわ。
で、その時彼女はお店で客に出す幻惑作用のあるキノコを採取した帰り道だったらしいのだけど、このキノコって直ぐに下処理をしないと幻惑効果がなくなっちゃうのよ。
なのでこいつは王子が止めるのも聞かずにその場から帰ってきちゃったんですって。
まぁ、その時は服装から相手がまさか王子とは思っていなかったらしいので気にもしていなかったらしいのだけど、なんとこいつったらちゃっかり自分の名前(但しお店での源氏名)とお店の名前と住所を書いた『名刺』を置いて・・、もとい落としていったらしいのよね。
成る程、Bランクと言えどもこいつはキャバ嬢だな。営業に抜かりがない。
で、後日王子はその名刺を手がかりに部下にこいつのお店を訪ねさせて現場に残っていた靴跡とサイズがぴったり一致する事を確認させたらしい。
成る程、一応靴がらみのイベントは発生したのか。でも足跡で捜索人を確定するのってどうなんだろう?証拠としてはちょっと不十分なんじゃないかしら?
で、なんで王子がそんな手間のかかることをしたのかというと、多分賊に襲われた時は薄暗くてこいつの顔とがよく見えなかったんだと思う。だから一応状況証拠として足跡で確認を取ったんじゃないかしら。
で、証拠が揃った事により今日の昼間、こいつは王子から明日迎えを寄越すから王宮に来るようにとの呼び出しを受けたらしい。
で、その事をこいつは私に自慢・・、もとい相談に来たというのが事の顛末らしい。
成る程、生きていればたまにはこんなラッキーも起こるのね。でも残念ね、あなた相談する相手を間違えたわ。
なので私は彼女が浮かれて目を離した隙に彼女のグラスに大量の睡眠薬をぶちまけた。そして私は何食わぬ顔で彼女におめでとうと告げると乾杯しましょうとグラスの中身を飲み干させた。
数分後、こいつは夢の中へと旅立った。あの量の睡眠薬ならば24時間は起きられない。そして私はいそいそと彼女の部屋に移動すると髪型を彼女に似せて王子からの迎えが来るのを待ったのだった。
因みに私の足のサイズは彼女よりちょっと大きかったけど本当にちょっとだけだから問題ないっ!
で、翌日。まんまと彼女に成りすました私は王子が寄越した馬車に揺られて王宮に向かった。
-続くっ!-
いや、続かないです。というかもうオチはわかるでしょ?なので結末は各自で想像して下さい。
でも100万ptくらいの評価が付いたら書くぜっ!←桁がふたつ、いやみっつ多いぞっ!身の程を知れっ!




