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46話 検証とテスト


「それじゃ、俺達は先に行くから戸締まり宜しくね」


「はいにゃ、行ってらっしゃいにゃ」


 用事があるというセドナを抜きにして、トレーシーと俺の肩に乗ったルビアと共にギルドへ向かった。

 ちょっと時間が早かったので、着いたら丁度ギルドの入口が開けられる所だった。


「あら? マサユキさん、今日はお早いですね。そして今日もルビアちゃんはかわいいですねぇ〜、もふもふですねぇ〜」


「わふぅ〜ん」


 ユニさんに撫でられてルビアは満足そうな顔をしている。いつの間にこんな仲良くなったんだ?


「すみませんユニさん、こんな早くから。まだ開いてないですか?」


「いえ、外の掃除はこれからなんですが中は入ってもらっても大丈夫ですよ。受付開始はもうちょっと後になるかもしれませんが……」


「我々は依頼だけ確認したらすぐ出発しますので、お気遣いなく」


 そう伝えて、さくっと依頼掲示板を確認。


「キツケ草はとりあえず募集があるから、ひとまずは大丈夫そうだな」


「うーん、他は……特に気になる依頼は無いかなぁ」


「じゃあそのままマルクさんの所へ向かうか」


 ユニさんにお礼を言ってから、いつも通り徒歩でマルクさんの屋敷へと向かった。


 西門を出て、そこから道を川沿いに北へ向かえば三日月湖がある。彼の屋敷はその近くだ。

 とりあえず三日月湖でのテストは、マルクさんの所で用事を済ませてからだな。少し後ろ髪を引かれつつ、湖から離れる。


 今回は道中で野生動物に出くわす事も無かった。やはり俺がオドのコントロールが出来るようになってからは遭遇する機会が少なくなっている。今日に至っては遭遇が皆無だったので、俺のコントロールも更に上達したんだろうか。

 彼らにとっては他の生物のオドも、必要な栄養みたいな物なんだろう。餌がいい匂いをさせて歩いてたら、そりゃ襲われるのも当然だよな。

 今回みたいにいつもの頼れる前衛がいない時には俺がトレーシーの前に立つしか無いので、出てこないならありがたい。毛皮とかでの副収入は得られないが、安全であるならその方がいい。


「あっ、見えてきたよ」


「相変わらずデカい屋敷だな」


 何度来てもそう思ってしまう。

 ルビアが肩から飛び降りて、門の方へと走っていく。その先には大きな白い狼がいた。


「アクア、おはよう。突然の訪問で申し訳無いんだけど、マルクさんはいるかな?」


『おはようございます。今呼んできますね、少々お待ち下さい』


 もうすっかり馴染んだアクアは、番犬と言うより執事の風格すら出て来ているな。とても頼りになりそうな感じだ。

 既にエギア家にはノリスさんという執事がいるが、彼も楽が出来てたりするんだろうか。


「アクアちゃんもすっかりエギア家の執事さんだねぇ」


「俺もトレーシーと全く同じ事を考えてた」


 そんな事を言って笑い合ってたら、ノリスさんが玄関から出て来て応接室へと案内をしてくれた。


「ノリスさん、アクアはちゃんと働いてますか?」


「それは勿論です。私も歳ですので、外の仕事を彼女がやってくれるので主に腰が助かっております」


 待っている間、ノリスさんは紅茶を用意してくれた。実に香り豊かで、とても美味しい。銘柄とかがわかるような知識は無いのだが、ペットボトル飲料とは全然違う風味だ。

 そんなしょぼい感想しか出て来ないのが悲しい。あのレベルのものがいつでも低価格で飲めるというのは、こちらの人間からしたらファンタジー以外の何物でもないかもしれないけど。


「こちらはラティメリアから輸入している物です」


「ラティメリアって農業が盛んなんでしたっけ?」


「はい。他にも、この辺では採れない素材等も買い付ける事が御座います」


 なるほどねぇ。無事辿り着けたら、何かお土産になるようなものでも探してみるか。



「マサユキさん、お待たせ致しました」


「すみませんマルクさん、連絡も無しに突然お邪魔してしまいまして」


「いえいえ、全く構いませんよ。して、本日はどのようなご用件でしょうか?」


「実はマルクさんに見てもらいたい物があるのですが……少し危険な物かも知れないので、アクアも同席してもらった方が良いかも知れません」


「ふむ……わかりました。アクア、いらっしゃい」


 マルクさんが呼ぶと、アクアは彼の横へすっと座った。なんか、実に堂に入っているな……。


「これなんですけど……」


 トレーシーが、シャルから借りた魔法のバッグを取り出す。そしてその中から獅子の仮面を出し、机の上に置いた。


「先日これを拾いまして、その後ちょっとした事故で私の顔に仮面が引っ付いてしまったんです。そうしたらオドを吸われるような感じがして、気を失ってしまいまして。これが何なのかわかりますでしょうか?」


「ふむ……失礼しますね」


 暫くマルクさんは仮面を眺め、それから手袋を取り出して自分の手に着けた。


「この手袋は、魔法が付与された道具からの干渉を防ぐ物です。それでは、少しお借りします」


 彼は仮面を手にとって様々な角度から眺めたり、レンズで細かい部分を観察したりしていた。


「……これは確かに魔道具の一種のようですね」


「魔道具?」


「先日お見せした判別布や、今お持ち頂いてる魔法のバッグのような物は、総じて我々錬金術師は魔道具と呼んでいます。魔法の付与された道具だから魔道具、という単純な呼び名ですけど」


「私も無知ゆえに初めて聞いた呼び方なんですけど、一般的に広まってる呼び名なんですか?」


「まぁ魔道具はそのどれもが高価な物で、一般には縁遠い物であるかも知れませんね。少なくとも、錬金術師には通じる言葉ではあると思います」


「なるほど。すみません、話の腰を折って。それで、これはどのような効果のある魔道具なのでしょうか?」


「正確には私も専門外なのでわかりませんが、お話を聞いたように装着するとオドを吸い取るのかも知れませんね」


「でも、オドが枯渇したら普通は動けなくなってしまいますよね? これを着けていた人間は、何事もなく平然と活動していました」


「そうなのですか? 仮説として、とんでもなくオドの量がある人であればそのような事が可能ではある……かもしれないですが」


 それは俺も思い付いていた。しかし他人の持つオドの量なんて知りようがない以上、あの黒女がそれ程までに大量のオドを保有しているとは考えにくい。

 いや、可能性の一つとしてはあるのか……?


「トレーシーさんはこの仮面を着けてみましたか?」


「いえ、流石に私はやってないです……。そもそも彼の時も事故みたいな状況だったので」


「魔法使いの方は一般的に、多くのオドをお持ちです。なので、試してみるならトレーシーさんが一番適任ではあるかも知れませんね」


 それは……ちょっとな。俺からはあまり言いたくないし、試して欲しくも無い。


「……オドの枯渇による人体への悪影響と言うのは、何があるんですか?」


「私も水薬作りにオドを使いますので、熱中しすぎて何度かやらかした事はありますが、基本的には気を失う程度ですよ。暫く休めば、後に残るような事は事はありません。勿論、それが致命的になる状況もあるとは思いますが、ここなら安全ですから。オド枯渇を補う水薬も沢山ありますしね」


 マルクさんの言う事も一理ある。

 実際、自分もこれまでに何度も枯渇の経験はあるが、特にこれと言った不具合を感じた事は無かった。

 ただし、しんどい思いをすると言うのは間違いない。


「……判断はトレーシーに任せるよ。俺としてはやって欲しくないけど」


「うーん、でも私も好奇心も少しあるし……うん、やってみる」


「それではノリス、オド回復用水薬を。ああ、お代は要りませんよ、私も結果に興味がありますので」


「ありがとうございます。トレーシー、ヤバそうだったらすぐに外すからな? 後、念の為に魔法強化の時みたいに身体に触らせてくれ。もしかしたら二人分のオドで耐える事が出来るかも知れない」


「うん、わかった。じゃあやってみるね……」


 俺がトレーシーの肩に触れると、彼女は恐る恐る仮面を着けた。


「……確かにオドがちょっと吸われる感じがあるかな。でもオドの減り方より、何かが通り抜けていく感じの方が強いかも」


「やはりそうですか。しかしマサユキさんが触れてる事にどのような効果が……おや、マサユキさん?」


 トレーシーが仮面を着けた瞬間から、以前イザークの魔法を強化した時と同じレベルの虚脱感が襲ってきた。

 立っていられなくなり、その場に膝をつく。


「えっ、マサユキっ!?」


 トレーシーが大慌てで仮面を外して、俺を支えてくれた。そうしたら虚脱感は無くなっていき、なんとか少しのダルさだけが残る感じにまでにはなった。


 ……まさか俺の方が先にダウンするとは。

 今までは仮説感が強かったが、俺の魔法強化には術者のオドを肩代わりするような効果がある事はやはり間違っていないようだ。

 しかしそれだけだと外付けオドタンクとして使える事はわかるが、魔法が強化される理屈にはならないように思える。

 俺のオドは、マナへの干渉力が強いのだろうか。俺単体では全く魔法が使えないのに、変なの。


「ふぅ、とりあえず気絶まで行かなくてよかった……」


 おっさんの気絶なんて画にならないからなぁ。都会の駅では週末の夜に沢山見られるが、実にみっともない姿としか思えない。


「どうですかマサユキさん、水薬を飲みますか?」


「いえ、この感じなら大丈夫そうです。ちょっと想定外の事はありましたけど、やはり仮面の効果として、オドを吸収する事は間違いなさそうですね」


「すみません、何もお役に立てずに。リピディスティアにいる親類であれば、魔道具が専門なのでお役に立てたかもしれませんが……」


 えっ、そうなの!?


「実は今日伺った目的の一つとして、私達にラティメリアまで行く用事が出来て、暫くラテオラから離れるのでその挨拶を、と言うのがあったんです」


「そうでしたか。であればリピディスティアで魔道具研究をしている、パウ・エギアという者を是非とも訪ねて下さい。私の従姉妹になるのですが、仮面の事について何か分かるかもしれません。私から手紙を出しておきますね」


「それはとても助かります!」


 これは来た甲斐があった。とりあえず分かった事もあるし、それなりの収穫だ。

 ありがとう、マルクさん。


 それから少し世間話をしてから、マルクさん達にお礼と挨拶をして俺達は屋敷を出発した。

 答えは得られなかったがヒントは得たので、旅の目的が一つ増えたな。モチベーションになるから、良い事だと思う。


 さて、ここからは俺のわがままに付き合って貰おうかな。


 再び三日月湖まで歩き、そこで魔道具の竿入れからタックルを取り出す。


「セドナちゃんへのお土産?」


「いや、こないだ作ったルアーのテストをしたいんだ」


 取り出したるは、マルクさんから貰った塗料で仕上げたペンシルベイト。ウェイトとなるのは金具とフックだけなので、ほぼ水平浮きになる筈だ。

 ダイレクトリールから糸を取り出し、ガイドへと通していく。そしてスナップ経由でペンシルベイトを取り付けた。


 早速キャスト。スプールを押さえながら軽く投げると、勢い良くハンドルが逆回転していく。レベルワインダーも同様に動くので、感触がなかなか面白い。

 バックラッシュはしなかったが、飛距離はちょっと物足りない。


 とりあえずアクションさせてみよう。

 竿先で弾くように軽く動かすと、初動は真っ直ぐ動いただけだったがその後はちゃんと首振りアクションをし始めた。

 うん、これなら使えそうだ。


 二投目はもう少し力んで投げてみる。意外と糸は膨らまなかったので、もう少し行けそうだ。


 三投目では少し垂らしを長めにして、フルキャストをしてみた。

 ……大体、三十メートル程だろうか。まぁ、こんなもんかもな。ルアー自体もそこまで重くは無いし、これだけ飛べばなんとか釣りにはなると思う。

 しかしトップウォーターの釣りは動かしているだけで楽しい。チョンチョンチョンと竿先を動かすと、それに合わせてクイックイックイッと左右に動きながら泳いでくる。

 ドッグウォークではあるが、スケーティング成分の方が強い動きだな。ウェイトを仕込めば、もっと移動距離の少ないドッグウォークになるだろう。


 その時、ルアー近くの水面がゆらりとした気がした。そして、ボシュッと言う音と共にペンシルベイトが消えた。


「うわっ、出た!」


 慌てて合わせを入れたが、同時にスプールとハンドルが回る音がした。更に慌ててハンドルを掴むが、手遅れだったようだ。

 既にペンシルベイトは元の場所に浮かんでいた。


「なんかいたね!」


「いたけど、やっちまった。このリールは合わせる時にスプールかハンドルを押さえないと、勝手に逆回転しちゃうのを忘れてた……」


 かーっ、くっそ! 悔しい!!

 そもそもトップの釣りでびっくり合わせは厳禁なのだ。逆転を押さえてたとしても、乗らなかっただろうなぁ……。


 その後はテストを忘れて本気で狙い始めてしまったが、結局何も起きずにラテオラへ帰る事となった。


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