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ひゃくものがたり

5. 1個足りない

作者: 久那 菜鞠


 私の小学校ではこんな噂がある。

「夕方に桜河間公園で遊んではいけない。遊んでしまうと、幽霊にあの世に連れて行かれる」

桜河間公園とは、小学校から東の方の地区の端にある、なかなか大きい公園だ。

広いグランウドは野球やサッカーにちょうど良いし、遊具もたくさんある。私の小学校の学区にある公園の中で、シーソーとジャングルジムがある公園は、そこだけだ。小学生にとっては絶好の遊び場であり、放課後のたまり場だった。


 この言い伝えは、ずっと昔からあるらしい。みんな小学校に入学すると、洗礼のように上級生からこの噂話を聞く。私も1年生の時は、近所の6年生にこの話をされて震え上がったのを覚えている。そしてあの頃の私は純粋だったので、夕方どころか昼間でも、絶対に桜河間公園には近づかなかった。

 しかし,自分が上級生となって洗礼を与える立場になってから感じたのは、上級生はこの怖い話をすることで、相手の反応を楽しんでいたんだろうなということだった。

現に自分も4つ離れた弟やその友達に話すときにはより怖がるようにちょっと大げさに話したし、半泣きになってる弟たちを見てちょっと嬉しいようなもっと怖がらせてやりたいような、変な気持ちになったりした。私がそうなんだから、友達や卒業していった人達もそうだったんだろうなと思う。

きっとこの噂がずっと語り継がれているのは、友達と怖い話をして盛り上がったり、人が怖がる姿や雰囲気を楽しんだりしようとする、人間の心理とかなんかが働いた結果なんだろう。


 桜河間公園は、夕方になると人がいなくなる。噂を信じる小学生は、空が赤くなりはじめるとそそくさと帰ってしまう。私の友達には、6年生になった今でも桜河間公園で遊ぶのは嫌がって他の公園で妥協している子もいる。小学生だけではなくて、中学生とか大人とか大きい人達も、夕方以降は公園に近づくことを避けているように感じる。


 もともと東の地区の端は小学校からも結構な距離があって、広い地区内でも自転車を自由に乗り回す最上級生や近所に住んでいる子達が遊ぶ割合が多かった。その内、恐がりな同級生達は公園に来ないか夕方前には帰るし、近所の子達は絶対夕方前に引き上げていく。

前に一度、公園の近所に住んでいる同級生になんで夕方前に帰るのかを聞いたら、

「そうしないとすごい怒られんだよね。明るい内は遊んでても別に何も言わないのにさ。ママが言うには、あそこは日が暮れると真っ暗だし、無駄に広いから名前呼んでも声が向こうまで届かないって。だから暗くなる前に帰れってさ。まぁでも確かに、昼間は良いけど夜は気味悪いんだよ、あの公園。」

って言ってた。

ついでに、「うちの中学のお兄ちゃんもあの言い伝え?噂?知ってるんだけど、昔わざと暗いときに友達と遊びに行ったんだけど、なんかずっと後ろから人がついてくる気配がして、怖くなって皆で逃げたんだって。幽霊か不審者か分かんないけど、不審者だったら普通に怖いからもう夜には近づかんって言ってたよ。まじで真っ暗になると不審者出たりするし、気を付けた方が良いよ」とも言ってた。

確かに幽霊よりも不審者の方が怖いかもと、その時の私は思った。



 私のクラスに、Dという男子がいる。目立ちたがり屋ででしゃばり、いつもうるさい馬鹿の典型みたいな男子だけど、底抜けに明るいからクラスの中では人気者の部類だった。そんなDが、六時間授業の日の放課後に、教室に残ってお喋りしていた私と友達に声をかけてきた。

「なぁ、桜河間公園に行かねえ?」

Dはにまにまとろくなことを考えてなさそうな笑みを隠さずにそう言ってきた。後ろには数人のDの男友達が2人立ってる。

「え、もう4時になるよ?今から行ったら、夕方になっちゃうじゃん」

友達のMちゃんがちょっと嫌そうな声で言う。Mちゃんはしっかり者だけど、実はけっこう恐がりだ。

「だから行くんだろ?俺らも6年だし、別に平気だろ?それともなに、門限とかあんの?」

「6時には帰れば大丈夫だけど・・・」

Mちゃんと私の家は、東の地区の隣の地区だ。自転車で10分ぐらいで家から公園に行ける。

学校から家まで歩いて15分ぐらい。家から公園まで自転車で10分。いろいろ準備したとしても、4時半ぐらいには公園に着くだろう。今は11月の初めで、4時半にはもう日が落ちかけているだろうけど、門限までに1時間ぐらいは遊べると思う。

たった1時間のためにそんなに頑張ろうという気は、私はなかったけど。


私はちらりとMちゃんを見た。DはMちゃんの反応をにまにましながら見てる。

Dは典型的な馬鹿なので、好きな子をいじめるタイプだ。普段は強がりだけど実は怖いのが苦手なMちゃんの反応を見たくて、わざと怖い話をしたり脅かしたりすることが今までも何度かあった。

そしてMちゃんはD・・・ではなく、Dの後ろにいる男子の内の1人が好きだ。Mちゃんは好きな人に自分から話しかける勇気はないタイプなので、一緒に遊べる機会なんて稀だろう。

だからこの後どうなるのか、私はなんとなく分かっていた。


Mちゃんが、縋るように私を見てくる。「・・・ねえ、一緒に遊べるよね?」

まあそう来るだろうとは思ってた。正直に言えばめんどくさいし、男子と一緒に遊ぶのは好きじゃなかったけど、ここで断ったらMちゃんに恨まれるだろうなと思った。

「うん。私は遊べるよ。別に、平気」私はそう答えた。


 それから各自家に帰って、桜河間公園に集合という流れになった。

Mちゃんと私の家は近所だから、ランドセルを置いたら一緒に公園に行く約束をした。

ただいまもそこそこに自分の部屋にランドセルを放り込み、リビングでテレビを見ているおばあちゃんに遊びに行ってくることを伝えた。

おばあちゃんは「暗くなる前に帰るんよ」と言いながらテレビの時代劇を見ている。私のおばあちゃんはのんびりしていて、がみがみうるさいお母さんよりも好きだった。リビングを出る前に、食卓の上に放り出された棒付きのキャンディーの袋が見えた。そういえば、残り5本で今日遊ぶ人数にピッタリだ。一応数えてみたが、ちゃんと5本あった。私はキャンディーの袋を遊び用の鞄に適当に詰め込み、家を出た。


 公園に着くと、男子3人は既に到着していて、ジャングルジムに登って何やら相談中だった。

嫌な予感がするなと私が思っていると、こちらに気付いたDが、またあの嫌なにまにま笑顔でジャングルジムから飛び降りてきた。

「なあ、缶蹴りしようぜ!」

Dが、ジャングルジムの隣にあるベンチに置かれた空き缶を指さして言った。

最近男子の間では本気の缶蹴りが流行っているらしく、学校にもこっそり登校道に落ちてた空き缶を隠しておいて、休み時間に先生に見つからない秘密の場所で遊んでいるらしかった。

正直走って遊ぶのは嫌だったけど、もう暗くなるとDに急かされ、あれよあれよと缶蹴りが始まる空気になってしまった。

「鬼はじゃんけんで決めようぜ」とDが言う。鬼はやりたくなかったが、私はあっさりジャンケンで負けてしまった。「うわ、お前かよ~」とDが嫌そうに言う。

実を言うと私は走るのは得意で、クラスの中で男女合わせても三番目ぐらいに速いのだ。さっさとみんな捕まえて帰りたい。私はそう思った。


 私は缶に片足を乗せて30秒数えることになった。この公園は広いので、隠れるのは遊具のある方というざっくりとしたルールを決めて遊び始めた。


「いーち、にーい・・・」私は目を閉じて数え始める。静かな公園で1人数えていると、なんだかお腹がぎゅうっとなるような、不安な気持ちになってくる。心なしか、数える声が段々速くなっていく。

「にじゅうろく、にじゅうなな、にじゅうはち、にじゅうきゅう、さーんーじゅ!」


私は目を開けた。たった30秒数えただけなのに、周りの景色は驚くほど薄暗くなっていた。

(後ろから誰かついてくる・・・)友達の話を思い出して、ちょっと怖くなる。後ろを振り向いてみるが、誰もいない。ほっとして、私はどこかに息を潜めて隠れているであろう4人を探し始めた。


 Mちゃんは、近くに隠れていたのですぐ見つかった。たぶん怖いから、見つかりやすいところにいたんだろう。私と目が合うと、ほっとしたように笑ってた。

「Mちゃんみーっけた!」他のメンバーに聞こえるよう、声高らかに缶を踏む。

それから、男子も割と早めに見つけることができた。トイレの建物の裏にいた奴、すべり台に寝そべって死角に隠れてる奴、テーブル付きベンチの、テーブルの下に潜り込んでた奴。全員、缶を蹴られる前に捕まえてやった。

最後に見つけたDは、見つかった瞬間思い切りダッシュされて危うく缶を蹴られそうになったが、缶を蹴ろうとした瞬間、砂で豪快に滑って転んだ。心の中で、ざまあみろ、と笑ってやった。

「D、みーっけた」

これで、全員だ。


 辺りは想像していたより、暗くなっていた。薄暗くて、ちょっと離れると相手の顔が見えづらくなっている。さすがに帰るか、と男子の誰かが言った。もうちょっと遊ぼうよ、とまた男子の声がする。

「ここ、暗くなると不審者出るって聞いたよ。男子がまだ遊ぶなら、私とMちゃんはもう帰るね」

Mちゃんのもう帰りたい雰囲気を確認してから、私はDに言った。

Dは文句を言いたそうにしながらもしかたねーなー、と自転車の方に歩き始めた。

みんなもその後に続く。


「あーあ、つまんねーの。幽霊も出ねーしさ!」

Dが大きな声でそう言って、後ろを振り返る。正確にはMちゃんの反応を見ていたんだろうけど、当のMちゃんからは、この機会を逃さないように好きな男子の隣を歩いて話している、ちょっと緊張したような声が聞こえてくるだけだった。

Dは面白くなさそうな顔をして、前を向いてもう一人の男子と肩を組んで歩いていく。

私は目の前を歩く男子の背中は、薄暗い闇の中に溶け込んで見えづらい。その3人の背中を眺めていると、私は唐突に思い出した。


「あ!!」と声を出すと、Dがビクッとして急いで振り返った。

「な、なんだよ!脅かすなよ!!」

「あ、ごめん。わたし、飴持ってきたの忘れてた」

私は鞄を開けて、中から棒付きキャンディーの袋を引っ張り出した。

せっかく持ってきたのに無駄になるところだった。

「残りが人数ピッタリ分だったから、持ってきたの。食べる?」

そう言って、薄暗い中近くにいる人影達に袋差し出した。みんな口々に、「ありがとう」「さんきゅー」なんて言いながら袋に手を突っ込んで飴を取っていく。ガサガサと袋の中をみんなの手が探っている感触が伝わってきた。

誰も袋に手を入れる人がいなくなり、全員に飴が行き渡ったのを確認してから、私は自分の分を取ろうとしたのだが、


「あれ?」

袋の中は空っぽだった。

「ちょっとD、2本取ったでしょ?」こんなことをするのはDしかいないので、私は暗くてよく見えないけど多分Dであろう顔を睨み付けた。

「はあ?俺1本しか取ってねーし!」Dがちょっと怒ったように言い返してきた。

「でも、1本足りないんだけど」

「俺じゃねーよ!他の奴じゃねーの?」

Dが思ったより本当に嫌そうな反応をしているので、私は他のみんなの方を振り返った。

「ええ・・・?誰か、2本取った人、いる?」

「私、1本だよ。たぶん苺味のやつ」

「俺もう舐めちゃったけど、ぶどうだった。それだけだよ」

「僕1本もらったよ」

「俺も1本だよ。これ、見える?」

多分Mちゃんの好きな男子が、目の前に飴をかざしてくる。暗いけど、確かに1本に見える。

「え、でも確かに5本あったよ。家出る前に数えたし・・・。なんで足りないんだろう・・・」


私は空っぽの袋をのぞき込んで、色々な可能性を考える。

数え間違えた?鞄の中に落ちてる?鞄の中をまさぐるが、ない。やっぱ、誰かが2本とった?

違う味が良くて、2回を取ったとか・・・

みんなが飴を取る、ガサガサとした袋の感触を思い出しながら、

私は突然、ヒヤッとした。


「・・・ねえ、今日って、5人だよね?」ちょっと声が震えていたかもしれない。

「は?なに言ってんの?数も数えらんねーのかよ」疑われたことを根に持ってるのか、Dが不機嫌そうに悪態をついてきた。

「いいから!・・・5人だよねッ?」思わず強く言い返してしまう。

私が焦っているからか、なんだか緊迫した雰囲気が漂ってしまっているが今はそんなところではない。


私は、ついさっきみんなに飴を配ったときの状況を思い出しながら、早口に訴えかける。

「私、みんなが飴取ってる間袋もってたけど、5人が袋の中に手を入れる感触したよ!?

 みんなが手を入れるとき、なんとなく数えてたの。飴取ったの、5人だった!

 それに、さっき歩いてるとき、私、目の前に3人いるって思ってたけど、Mちゃん達って私の後ろ歩  

いてたよね!?1人、多いんだよ!!」

自分で言ってみて、サァッと背筋が寒くなる。胸がゾワゾワして、今すぐここから逃げたい気持ちがどんどん大きくなっていく。

みんなの顔を見るのが怖い。こうしている間にも、辺りが更に暗くなって、みんなの顔が闇と同化していく。


「缶蹴りの時、みんなどこに隠れてた!?私、何人見つけてた!?」

しばらくの沈黙の後、Mちゃんの震える声が聞こえてきた。

「私、缶のすぐ近くの水飲み場の後ろ・・・」

「俺、すべり台に寝そべってた」

「俺は、トイレの裏にいた」

声で誰かを判断する。残る1人は・・・

「俺、公園の入り口のとこの看板の影に隠れてた・・・。鬼がよく見える場所、そこだから・・・」

Dが、そう答えた。これで、5人。遊ぶ約束をした、クラスメイトで友達の5人だ。

じゃあ、それなら。


「・・・テーブルの下に隠れてたのって、誰?」

自分の声が震えてる。目の前の、ほとんど見えなくなってる影の数を、数えることができない。

誰もが沈黙して、息をする音さえも聞こえない暗闇の中、微かにふうっと生温い風が、公園の奥の闇の中から吹いてきた。


「 ぼ く だ よ 」

なんだか酷く歪んだ、すぐ近くにいるような、でもすごく遠くからきこえるような、耳を覆いたくなるほど冷たくてなんの感情もないような声が、耳元で、そう答えた。


 そこからは、みんな蜘蛛の子を散らす勢いで走り出し、自転車に乗って全力で公園を離れた。

怖すぎるときって、ろくに叫び声も出ないんだって後から思った。

逃げてる最中はそんなこと考える余裕がなかったから。でも一応、Mちゃんが一緒に逃げているか確認していたことは本当に偉かったと思う。

男子達も、必死で自転車をこぎながらも、互いの名前を呼び合ってちゃんといるかどうか確認したらしい。そうしないと誰かが紛れ込んでいそうで、怖くて仕方がなかったというのもあるだろうけど。


 Mちゃんはパニックになってて、家の前についてもわんわん泣いてたので、インターホンを鳴らしてMちゃんのお母さんに事情を話してMちゃんを家に入れてもらった。

Mちゃんのお母さんは「家まで送ろうか?」と聞いてくれたが、やってはいけないことが家族にばれてしまう気がして、「大丈夫です」と答えてしまった。

家の玄関に飛び込むまでのほんの数分が、怖くて怖くて泣きそうだった。


 玄関に勢いよく飛び込んでリビングに駆け込むと、両親はまだ帰ってなくて、おばあちゃんだけがいた。それでもとてつもなくホッとして、私はおばあちゃんに抱きついてしまった。

おばあちゃんは驚いたように「なあに、どうしたの?なにかあったの?」と聞いてくる。

背中をポンポンと叩いてくれる感触にさらに安心感が募って、私は今さっき経験したことを全部おばあちゃんに話していた。話してる途中泣きそうになったけど、そこはもう子供じゃないと我慢した。


話を最後まで聞いたおばあちゃんは、そうかい、怖かったねえと私の背中を優しくさすりながら、しばらく何かを思い出すように天井を見上げて、それからゆっくりと、こんな話をしてくれた。


「おばあちゃんもね、昔からこの辺りに住んでるからね。あの辺りはあんま良くない土地だってのは聞いたことがあるんだよ。土地も悪いし、名前も縁起が悪いってね。あの辺りは、昔はなんにもない空き地でね。でも、やっぱり黄昏時にゃあそこで遊ぶなって言われたよ。黄昏時ってのはね、逢魔が時って言ってね。あの世とこの世が混じって、境目が曖昧になるんだって。だから、あっちから良くないのがいつの間にか混ざってて、誰かが増えたり減ったりするんだってさ。本当にいなくなった子もいたみたいでね、絶対行くなっていわれたねぇ。お祓いなんかもしてみたらしいけどね、そんなの向こうの人達にゃ、なんの意味もなかったんかもしれないね。」


 黄昏時は夕方、薄暗くなってくる時のことらしい。ちょうど、私達が遊んでいた時のような。

黄昏時は、逢魔が時。あの世とこの世が曖昧で、何かが混ざってくる時。

私は、最後に返事をしたあの声を思い出して、また背筋が凍った。

なんで、そんな場所に子供が遊ぶ公園を作ったんだろうか。

そしてなんで、あんな名前を付けただろうか。

桜河間公園。おうがまこうえん。おうがまこうえんとおうまがとき。ただ似ているだけかも知れないけれど、私は考えてしまう。誰が、何を伝えたくて、こんな名前を付けたんだろうか。



 次の日、学校で顔を合わせた私を含めた5人は、恐る恐る昨日の出来事を確認し合った。Mちゃんのことは心配だったが、怖がりながらも1晩何もなかったことに、とりあえずホッとしたようで、思ったより冷静に話し合いに参加してくれた。

私としては、事の発端を作ったDをこれでもかと責めてやりたい気持ちだったが、Dもひどく意気消沈している様子を見て、悔しいけどやめることにした。

 

それから私達がしたことは、この体験を面白おかしく同級生に話すのではなく、学校に伝わる噂に新しい話を少し付け加えることだった。近所のおじいちゃんが昔幽霊にあったらしいとかなんとか理由を付けて、新しい噂話として友達や下級生に話し、伝えていった。


「夕方は、逢魔が時。逢魔が時に桜河間公園で遊んではいけない。知らない誰かが増えている。遊んでしまうと、幽霊にあの世に連れて行かれる。気付いたなら、すぐ逃げろ」


 私達は誰も連れてかれなかったが、もしあのとき誰かが逃げ遅れてたらどうなったんだろう。

私はこの言い伝えを話すとき、真剣に、絶対行くなという気持ちを込めて話す事を決めた。

きっと私達のように、いつかあの公園で夕方に遊んでしまう誰かが、この言い伝えを思い出してくれること願って。

私達が経験したあの恐怖を味わう人が、少しでも減りますように。みんながこの話を語り継いでくれますように。

そんなことを願って、私は今日もこの話をするのだ。


                       終








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