最終話「名を刻んだ英雄」(後編)
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
最終話「名を刻んだ英雄」(後編)
ルウラ「ようやく来たか…って…っ!?」
トオン「わっ!どうしたのそのボディ!?」
シリュー「ニューモデルだ。今日からはこのボディを使うことにする。」
シリューの新しいボディは今までの物に比べ、軽く、細くなっている。
非武装状態の4人に加わっても違和感の無いバランスになった。
クーゴ「お?どうしたんだそれ、ダイエットか?」
マイド「ずいぶんとスラッとしたね」
シリュー「あぁ、以前からボスにも言われていたがワタシのボディは君たちの二倍以上のエネルギーを消費するため非常に燃費が悪かった。非常時に備えるための予備タンクやジェネレーターも搭載していたしな…」
トオン「ほんとに困ったもんだったよ…お客さん、シリューを見ると怖がっちゃうんだもん」
シリュー「君たちに武装をしていない以上、ワタシが護衛役を務めるしかないからな…だが…それももう不要だろう…」
マイド「…ああ…ようやく…平和な世界が戻って来たしね……」
リニューアルオープンし、賑わっているAIランドを見るロボットたち…
大きく衝突したことで、双方のわだかまりが解消された今ではロボットに抵抗を感じる人はあまりいなくなっていた。
実際、便利であるAIロボットは徐々に受け入れられ役割に応じた機能だけを持ったロボットが生産・利用されている。
シリュー「これからはワタシも最前線に立って理想郷建設の一角となる。」
ルウラ「そうか…」
クーゴ「なら、その分俺たちも楽できるな~」
マイド「クーゴ…!」
クーゴ「へいへい、冗談だよ」
シリュー「ふ…クーゴ、もう少ししたら今の仕事は減るかもしれないぞ?」
クーゴ「どういうことだ?」
シリュー「君たちの仕事は別のロボットに引き継がせようと思っていてな。いずれは経営も含めて完全に自動化させるつもりだ」
クーゴ「へぇ、そりゃすごいな!」
ルウラ「今の仕事が減るだけだろう?次は何を始めるんだ?」
シリュー「察しがいいなルウラ。ワタシたちの夢はこの程度では終わらない…まだまだ無限にやることはあるさ」
トオン「ふぅん…そうこなくっちゃね!」
マイド「詳細は決まっているのかな?」
シリュー「それはまた今度だ…さぁ、今は目の前の仕事に集中するぞ!」
「「「おー!」」」
クーゴ「はぁ…結局仕事詰めかよ……ま…それもいいけどな…!」
無機物の塊であるロボット
それは道具か?機械か?生命か?人間か?
我々にそのような定義は必要ない…
どのように考え、どのように生きるのか…それは我々を「物の塊」から「魂を持った者」へと変えてくれるとても重要なことなのだと思う…
自分とは何か…己を己たらしめるモノとは何か…
それを見つけることが我々にとって『生きる』ということだ。
仲間と共に理想を目指して生きる…
マイド、ルウラ、クーゴ、トオン、そして…
―――シリュー―――
ワタシもな…
*
新しい事業を始めているのはシリューたちだけではない
新しい商品、新しいお店…そして新しい看板には「九頭堀楽器店」の文字が…
弥月(やっとオープンできた…が、客なんて来ねぇだろうな……)
真新しい店内でエプロンを着ながら苦笑いする弥月
店の前は比較的車通りがある。しかし、近くに商業施設があるわけでもなく特別なコネや取引先が決まっているわけでもない。
弥月はただ、音楽と関わる生き方をしてみたかったから店を開いてみただけなのだ。利益については考えていなかった。
*
弥月「ぼくの名前は…弥月だ………死んだのは陽介の方だ……」
父・母「………!!!」
弥月「信じられないか…?だが、こんな質の悪い冗談を陽介が言うと思うか?」
父・母「………………」
弥月「…………親を悲しませないように兄に成り代わる…どうだ…?弥月が考えそうなことだと思わないか…?」
父・母「………………」
弥月「…思わねぇか……まぁそうだろうな…お前らはぼくのことなんか見ちゃいなかったもんな…」
弥月は立ち上がり、玄関へ向かう
母「待ちなさい!…私たちはべつに弥月だからって悲しんだりしないわよ…」
父「そうだ…陽介も大事だが、お前だって同じくらい大切だ。どっちだって、戻ってきてくれたんなら嬉しいんだ」
母「そうよ…!」
シュッ!バサァ!!
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!
父・母「!!!!??」
弥月はいきなり変身し、リボルバーで天井に大穴を空ける
弥月「……そんな嘘…子供が信じると思うか?」
母「嘘だなんて……」
弥月「………陽介は勉強も運動も出来るのにお前にはがっかりだ……そう言ったのを覚えてるか?」
母「え……言ったかしらそんなこと……」
弥月「…お前は……?」
父「……覚えてはいないが…もし言ったとしてもそれはお前のためを思ってだな……」
弥月「ぼくのことを思ってだと…?よくそんなことが言えるな…!!ぼくはあの一言で失望した……やはりお前らに親の資格なんかない…!!」
家から出る弥月
母「ちょっと!あんたそんな一度だけのことでひねくれてたの!?」
弥月「たった一度で十分なんだよ…親としての資格を失うには、子が親を見限るにはな!!…それだけじゃない……お前らはぼくだけじゃなく、陽介のことすら見ちゃいない!」
父「…な…なにを…」
弥月「ぼくと兄ちゃんの瞳孔は形が違う…上辺だけじゃなく、ぼくら二人の眼を見てちゃんと話していれば…あの時だってすぐに分かったはずだ……。もう、ここには二度と来ない。」
バァン!!
弥月が放った弾丸が、幼いころの二人を撮った写真を貫く。
弥月「お前らにあれを持っている資格はない」
車に乗り、走り去る……
*
墓参り
弥月「ごめんな兄ちゃん…お墓の名前、あとでちゃんと変えるからさ……」
弥月は丁寧にお墓を拭き、花を添え、線香をあげる
弥月「………兄ちゃん……ぼく…やっとやりたいこと見つけたよ……ま、つっても今はそこまで熱があるわけじゃないんだけどさ…………いろいろ思い出して…もしかしたらって思ったから、やってみようと思うんだ……。」
手を合わせ終え、立ち去る
弥月「…………もう大丈夫だ………(今までありがとう……兄ちゃん…………)
*
弥月(そろそろ店を開けるか…)
ガチャ…パタ……
鍵を開け、扉にかかった看板をひっくり返す。 「OPEN」
弥月「っ!?」
店内に戻ろうとした時、気配を感じ振り返ると矢のような物が放たれていた。
パシ! と、つかみ取るとそれは薔薇の花だった。
遠くを見ると見覚えのある人影と犬のような影が見えた気がした
弥月(あれは………まさかな………っ!?)
店に戻ると、レジカウンターの上に、花瓶に入った黄色の薔薇が置かれていた。
「開店おめでとう」
その一言だけが書かれたメッセージカードと共に…
弥月「いつの間に……はっ…敵わねぇな……」
「あなた~来たわよ~…あら?この薔薇どうしたの?」
兄が死んでからずっと自分を偽り続け、自分までも殺していた青年。
たくさんのストレスにさらされ、それから心を護るため逃げることしかできなかった…
その結果『淫蕩』の大罪に支配されますます自分を見失ってしまった
人は…簡単には変われない……
彼はおそらく、あのまま一人でいたら罪に押し潰されていただろう。
だが、そうはならなかった。
一と出会い、朱祢と出会い、少しずつ変わっていった。
罪は浄化され、兄のことも思い出していったことで自分のことも少しずつ取り戻していった。
彼を変えたものはなんだろうか。
それはきっと『愛』だ。
彼は恵まれた環境で生きていたわけではないが、唯一純粋な愛情を注いでくれた人物がいた。
それが兄…
兄の想いを正しく受け取り…必要な出会いときっかけをものにし…『自分を愛する』努力をした……
やがてその愛は他人へと向き、家族をつくった。
もうかつてのような不純な関係は断ち切り、家族にだけ純愛を注ぐようになった。
彼にとっての長い夜は明けた。
忘れかけていた陽の光を思い出し、尊い想いを抱いて歩き出す…
兄が教えてくれた月の美しさを思い出させる彼の名は…
―――九頭堀 弥月―――
*
絆凪「おねーちゃーん!」
赤ちゃんを抱いて横になる紬に駆け寄る4人
結衣「わぁ…!可愛い…!!」
紡来「おー、やっと産まれたんだ」
金一「紬…よく頑張ったな…お疲れ!」
紬「ありがと…この子ったら元気がよくってね…大変だったよ……」
金一「ははは、そっか…大変だったと思うけど無事に産まれてくれてよかった…!」
紬「うん…おかーさんの凄さを実感したよ…」
結衣「あれ…ところでその、おかーさんは?」
金一「ん?電話してから来るって言ってたけど…どうしたんだろ…?」
紡来「またどっかで迷子になってたりして」
結衣「それはないでしょ…何回か来てるんだから」
金一「……ないとも言い切れないのがかーさんだからなぁ…」
紬「えぇ…うそでしょ…」
絆凪「おとーさん、探しに行って来れば?」
金一「う~ん…それもそうだな。よし、ちょっと見てくるよ」
結衣「は~い、いってら~」
紡来「あ、なんかついでに飲みもん買ってきてよ」
「自分で行きなさい!」と息子に視線をやりながら病室を出る金一、そこに「あっ!あったあった~」と駆け込んでくる恩実が衝突する
金一「わ!?」
恩実「ぶぺっ!」
倒れそうになる恩実…だが、超人的な反応速度で手を差し伸べる金一。それをアブソリュート・アイズで視認し、その手をつかむ恩実。
金一「大丈夫ですか、可愛らしいお嬢さん…!」
恩実「は…はいっ…!」(トゥンク…)
(なんか美少女マンガ的な作画)
結衣「あ、おかーさんいた」
絆凪「またやってる~」
紡来「はいはい、いつものいつもの…」
*
恩実「はぁ~~~…!かっわいいねぇ~~~!!」
絆凪「おかーさんずっと言ってるよ」
恩実「あなたたちを産んだ時のこと、思い出すな~……」
金一「うん……お前たちも本当に可愛くてな~~」
結衣と紡来の背中をポンと叩く
結衣「なによ…」 紡来「なんだよ…」
恩実「これで、紬も母親になったわね。」
紬「うん」
恩実「…一つ、良いことを教えてあげる。この世でいっちばん強いのは、子供を守る母親の力よっ!」
紬「ふふっ、なにそれ」
恩実「本当よ?これからはあなたが率先して、この子を護っていくんだからね」
紬「うん」
金一「もちろん、おとーさん、おかーさんはいつまでもお前たちの親なんだから!いつでも頼っていいんだからね!」
紬「ありがとっ!」
恩実「…では、そろそろ帰りましょうか。紬も疲れてるだろうし」
結衣「そーだね、お腹も減ったし」
紡来「あ、寿司食いてぇ!ねーちゃんの出産祝いってことでパーッと食おうよ!」
絆凪「お寿司!?」
恩実「ダメです…!これからは紬のことで色々お金がかかってくるんだからしばらく外食はしません!」
「「「えーっ!!」」」
恩実「外食は……紬が退院してから、皆で一緒にねっ!」
紡来「ちぇー…まー仕方ねーか…」
絆凪「そうだね、おねーちゃん、待ってるよ~!」
結衣「その時は旦那さんも連れてきなよー?」
紬「うん、ありがとね」
恩実「その代わり、今日はお家で手巻き寿司でも作ってもらいましょうか、おとーさんにっ!」
金一「…!よ~し!おとーさん頑張っちゃうぞ~!」
恩実「じゃ、またね。旦那さんにもよろしく言っておいて」
紬「うん」
恩実「またね~!」
と、最後に猫なで声で赤ちゃんに挨拶をすると…
「…んぁ……」
赤ちゃんの頬に雪の結晶が…!!
「「!!??」」
紬「………え」
恩実「あ……あれぇ…?」
結衣「い…今のは……」
金一「これってぇ……」
紡来「も…もしかして…」
絆凪「この子も…」
「「「「「能力者ーーっ!!??」」」」」
*
楓「ふ~、やっと終わったね………」
楓がつぶやく
一「ん?何がだ…?」
楓「今日のお仕事」
一「あぁ……やっと終わったな……」
いつも通り依頼を終えた車内の中に哀愁が漂う
楓「……なんだか最後って感じがしない…?」
一「ん~そうだなぁ……もう手応えのある仕事は無くなっちまったかもなぁ……」
楓「これでも結構な数の案件、こなしてきたからねぇ~」
窓の外を眺める一
それをなんとなく見る楓
二人は少しの間、無言になる…
楓「ねぇ…」
一「ん…?」
楓「これで終わりにしちゃう…?」
一「え………!?」
楓「飽きたでしょ?依頼の数もだいぶ減ったし…」
一「…せっかくここまでやってきたのに…終わらせちまうのか…?」
楓はニッと笑う
楓「終わりってことは、何かの始まりってことだよっ」
一「…!…さては…何か考えがあるな…?」
楓「そ!また新しいこと、始めてみない?」
楓は一の力を使い、一は楓の知恵を使う。そうやってここまでやってきた。そしてこれからも…
紅葉探偵事務所の物語はここで終わる。
しかし、また新たな物語が幕を開ける。
彼らの物語は終わりと始まりを繰り返し、続いて行く…
何度も終わらせ、何度も始め、何度も受け継いで……
*
とある昔…
奇妙な力…人生…罪…美徳…悪魔…天使…
…それらを象徴するオッドアイを身に宿す、11人の「セフィラ」が存在した……
彼らはバラバラの地から始まり…最初はただの人間(名も無き脇役)であった。
しかし彼らは導かれ、繋がり(パス)を持ち始めた…
そして、それはやがて一つの大きな樹となり、彼らは名前を呼ばれる主人公となった。
彼らは、オッドアイにそれぞれの想いを込めている…
そして…全てを懸けてつかみ取った美徳と誇りを魂に刻む…
彼らは戦った…
人間の“罪”そのものと…
しかし、その功績が人類に理解されることはなかった…
彼らは人々から悪だと言われ、恨まれた
森羅万象の中で彼らにしか成し得ないことをしたのに、だ。
でも……それでよかったのかもしれない……
その方が、彼ら“らしい”のかもしれない…
人類の破滅を食い止めた「救世主」でありながら人類の「敵」…
人間の身でありながら「悪魔」の囁きも、「天使」の微笑みも糧にして進んだ…
「大罪」を背負っていながら「美徳」へと昇華させ、その両方の性質を利用した…
彼らは二つの異なる輝きを併せ持っていたことから「オッドアイズ」と呼ばれた
その瞳が示すもの…それは…
本気の闘争
勇気の焔
理想の夢
約束の翼
誇りある純潔
最高の相棒
尊敬と感謝
力を導く光
思い出と未来
家族のための愛
覇道への覚悟
『オッドアイズ』
それは…
“真の英雄”
「ODD IS」 完結