最終章-18「バラバラから始まる物語」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第54話「バラバラから始まる物語」
一室で話し合う能力者たち…
銀河「約束って…どうするんだ?」
瑚透美「…そのことなんだけど……」
瑚透美はバラレンジャーの面々を見て、真剣な眼差しで訊ねる。
瑚透美「……さっきも少し話したけれど…私はあなた達の力を使って人類を脅すようなことはしたくないの。条約だの契約だの…結局は破ったら攻撃するってことでしょ?そんな力でものを言わせるようなやり方、したくないの…」
虎羽「…ルールとは守られなければ意味を持ちません。皆が守るように罰の存在は必要です。ボクらにとって、その罰が攻撃に当るというだけですよ。」
龍牙「そうだ…そもそも、条約を無視された時点で戦争は避けられない。それはオレ達に関わらず、他の国でも同じはずだ…」
瑚透美「…うん……確かにそう……でもね……私は、あなた達、全員が特別な存在だと思ってるの。これまでにないようなやり方ができる…全世界を真の平和に導ける力があると思ってるの…!…だから、歴史的に見ても前代未聞のやり方で解決したいの…!」
桃華「…そのやり方、というのは具体的に決まっているのですか?」
瑚透美「…そうね……バラレンジャー、オッドアイズに人類兵器が効かないなんてことは嫌というほど分かったはず。そして、まともにやり合えば絶対に勝てないなんてことももう十二分に示せたと思う。」
藍「ふん…当然ですわね」
瑚透美「だから、私たちが要求するのは他の人間と同じ人権、これまで通りの日常よ。みんなにもそれぞれの生活があるんだから……」
黄慈「何の条約も結ばないってことかい?」
瑚透美「えぇ…私たちは個人であって国家じゃないしね。」
黄慈「でも、何のルールにも守られていない状態で平穏な日常を過ごせるのかい?」
瑚透美「ちょっとやそっとのことじゃ平穏は乱されないでしょ。病気や事故の可能性がある一般人の方がよっぽど危険よ。」
雪「でも、もし能力がない友達や家族を人質になんてとられたら……」
瑚透美「その時はバラレンジャー全員で解決しましょう!人質は生きてなきゃ価値がないんだから、そうなってもなんとかなるわ。」
雪「あっ、そっか…」
瑚透美「……今後、悪い人にいろいろされるかもしれない……でも、今回みたいな大ごとにはもうならないはずよ…。なぜなら、チームオッドアイズのメンバーが頑張って浄化をしてくれたんだもの…!これで膿は出切ったはずよ。あとは、これまでの情報を全て集めて全世界に公開しましょう!オッドアイズに対抗するためにどれほどの悪行を重ねてきたのか…全世界に知らしめてやるのよ!」
全員が瑚透美を見て頷く。
瑚透美「では、順番に知ってる情報を話してもらいましょう。桃華!記録は任せるわよ」
桃華「かしこまりました」
それから夜が明けるまでオッドアイズメンバーたちと話し、人類が世間に隠していた悪事をまとめていった。
バラレンジャー達はその情報を基に証拠品を集めるべく奔走した。
*
瑚透美「ふぅ……これで全部かしらね……」
桃華「はい、そのようですね。あとはワタシがまとめておきますので瑚透美さまはゆっくりとお休みください…」
瑚透美「桃華ちゃん、私はこれでもバラレンジャーの一員なのよ?あの時もはちゃめちゃに忙しかったんだからこのくらい平気よ!あなた達といると元気も出るしね…!」
朱祢「それは私たちがエネルギーを送ってるからでしょ…」
みどり「そうだよ~あんまり無理すると寿命が縮んじゃうよ~?」
瑚透美「一日の徹夜くらいどうってことないわよ。」
みどり「え~ほんとに~?瑚透美はもうおばちゃんなんだから無理しない方がいいよっ」
瑚透美「誰がおばちゃんですって!?…と言いたいけれど最近ほんとに疲れがとれなくてね…いいわね、あなたたちは老けなくて…」
朱祢「………」
みどり「まぁね~♪」
瑚透美「………あなた達にその力が渡ったのは…やっぱり特別な意味があるんだと思うわ……不老不死でいられるのも、ずっと人類を見守っていけるようにってことなんじゃないかな…?」
みどり「そんな深い意味あるかな?」
瑚透美「あるわよ…きっと…!…さて、桃華ちゃん?もう原稿はまとまった?」
桃華「はい、できております。」
瑚透美「うん…じゃあこの流れでやってしまいましょう。全世界に向けてのスピーチと情報開示…あとはこれまで通りの『日常』の要求ね。」
桃華「はい。」
瑚透美「…じゃあ…始めましょうか…」
銀河「ちょっと待ったぁ!」
銀河が割り込む
瑚透美「どうかした…?」
銀河「動画でやるんだろ?だったら一個、入れて欲しい演出があるんだけどよ…!」
*
放送が始まった。
インターネットを通じて全世界同時に放映される。
視聴者は爆発的に増え続け、開始5分と経たずに各メディアに取り上げられた。
その放送では地球外生命体を改造した生物兵器を作っていたこと、
寄生虫を使い生物を操る研究がされていたこと、
またそれらの研究に人体実験も含まれていたこと、
人質をとってまで能力者を殺害しようとしていたこと、
周囲の危険を顧みずに暗殺や戦闘を試みたこと、
など様々な悪事が証拠付きで暴露されていった。
瑚透美「………えー、そして最後にこちらのウイルスの件を報告いたします。」
画面にはウイルスの諸情報が表示される。
瑚透美「こちらのウイルスは〇〇村で発見されました。出所はその村の山奥にあるこちらの研究施設でほぼ間違いありません。このウイルスの特徴は感染した宿主を強弱で選別するというところにあります。強弱の基準は明確には分かりませんが、端的に申し上げますと力が強いだとか、知能が高いなどと判断されると強者と判断されるようです。このウイルスに強者として認定されると積極的に細胞内に入り込み、その活動の補助をするように働きます。しかし、弱者として判断されてしまった場合は、逆に積極的に細胞を破壊しようとします。
このウイルスの影響で一人の女性が瀕死に追い込まれる事象が発生しております。このウイルスは選別のためか、非常に長い潜伏期間をとると考えられ被害はまだ顕在化しておりませんが、それも時間の問題です。
そして、このウイルスは空気感染し、なおかつ非常に長い期間空気中に漂うことが出来ます。…え~御覧の通り、様々な方法でウイルスの除去を試みましたが、体内、そして空気中にまで漂っているウイルスまで除去することはできませんでした……」
ウイルスの研究資料が表示される。
瑚透美「ですが…ご安心ください。そんなウイルスも彼らの能力があれば解決できます!」
パッ!
映像が切り替わり、AI島の中心部にある広場でオッドアイズメンバーが集まっている。
*
誇温「…出番か…」
シリュー「任務はウイルスの駆逐だ。そして、それを可能にする能力を持っているのは君だけだ。出来るか…?」
誇温「…はい…やります!」
誇温は真剣な眼差しで答える
弥月「さっき、君の父親が、聖剣の解放には11人全員の力が必要だと言っていたが詳しいことは分かるのか?」
誇温「いえ…それが何も…」
巫言「合図はもう出ていますわよ。早く始めなければ…」
貴峰「そうだね…。とにかくやってみましょうよ!」
一「とにかく、全員の力を集めてぶっ放せばいいんだろ?簡単じゃねぇか」
紗良「一ちゃんはすーぐ適当なこと言う…ま、否定はしないけど!」
瑠玖「簡単…なのかなぁ?」
志紀「できるかな…」
恩実「大丈夫!やればなんとかなるよっ!」
琉富「そーっすね、あんま気負わずにいきましょう」
誇温「よし…では…やってみましょう!」
「「おー!」」
誇温はエクスカリバーを胸の前で掲げ、オッドアイズ全員がエネルギーを込める。
すると、エクスカリバーの鍔にある球体がゆっくりと回転し始める。
一「お!反応してんじゃねぇのか!?」
シリュー「しかし…まだ回転が弱いように見える…」
弥月「もっと力を送ればいいのか?」
誇温「はい…!お願いします!」
一「よし!そうと来たら変身だ!皆、ありったけを込めるんだ!!」
全員が頷き、息を合わせる。
変身!!!
一斉に全員が変身する。
オッドアイズが聖なる輝きを放ち、その力がエクスカリバーに集中する。
キュ……ィィイイイイイ……!!
先程よりも素早く回転し、虹色の輝きを放ち始める。
*
銀河「実はな…その武器を造ろうって言いだしたのはおれなんだよ。力が込められればなんでもよかったんだけど…武器にしたらカッコイイんじゃねぇかって思ってな!」
「「…………」」
銀河「まぁその話はおいといて…誇温!お前の武器についてなんだがな…。おれはお前にそれを託すって決めてた。だから、お前の武器は一番強くなるように創った…!親バカだし、依怙贔屓なんだけどよ…そこは堪忍してくれや。」
コホンと仕切り直す。
銀河「だが!強く創ったと言っても、君たちはまだ若い。たくさん悩んで、たくさん考えてる最中だろう…。そこでだ!そんな思春期の少年にいきなり力を解放されないようにその武器にはロックがかかっている。全部で11個のな。で…その解放条件は……」
*
誇温(…聖なる力を11通り集めること……そうすればウイルスを駆逐することなんて簡単だって言ってたけど……できるのか……そんなこと……このぼくに………)
荒れ狂うエネルギーの渦の中で考える誇温
一「ユニコーン!」
誇温「!!」
一「迷うな…お前の力を…『正義』に導け…!」
誇温(ッ!!…ぼくの……『正義』………!)
心の内にある『正義』の心を意識する……
カシン…!
ロックが黄金に光り、解除される。
誇温が一の方を見ると目が合う。
一(アタシはお前よりもちょっと先輩だからな…先輩らしくアドバイスしてやる……同じ苦しみを分かち合った仲だしな…。お前が悩んでいること…お前がどうにか立ち直ろうとしていること…なんとなくだが伝わったんだ…。だからその言葉をくれてやる…あとはお前が気づくだけだ…己の本心にな……)
一の『優しさ』がエネルギーに込められ、伝わる……
恩実「ワンちゃん……」
一(…………一番強い武器…なんだったよなぁ…?だが、アタシはお前が一番だとは思っちゃいない…隠された力があるってんなら見せてみろ…!!アタシの『本気の闘争心』を満たしてみなァ!!!)
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」
カシン…!
球体を囲んでいたロックが紅に光り、解除される。
恩実(ワンちゃんがロックを外したんだ…わたしも頑張らないと…!……わたしだって……わたしだって、やれば出来るってところ見せるんだからっ…!!)
金一、そして家族の顔を思い出す
恩実「はぁああああああ!!!!!」
カシン…!
ロックが琥珀に光り、解除される。
その様子を見て仕組みに気づいたシリュー。
シリュー(なるほど…やはり我々のエネルギーをトリガーにロックが解除されるのだな……だが、その鍵はなんだ…?)
キュィイイイイイイ!!!!!!
コアをフル回転させてエネルギーを高めるシリュー
シリュー(…………特定のエネルギー量にするわけでもないのか…?では何が……エネルギーの質…?聖なる力とやらに変えればいいのか…?だがどうやって……あの二人はどのような方法で………)
ピピピピ……
二体のロボットが融合したボディで、倍以上の演算を実行する。
が、すぐにそれをやめ、コアの回転を緩める。
プシューーッ……!
シリュー(…おそらく…ワタシが今考えているようなことではないのだろう……ワタシが今考えるべきことは方法ではない。己が信じる、最も価値のある神聖な夢と向き合うことだ…!)
放出するエネルギーの総量は減ったものの、新たな輝きを放ち始めている。
シリュー(これがワタシの考える、『聖なる力』だ……どうか届いてほしい……)
「ハァッ!!」
カシン…!
ロックが山吹に光り、解除される。
その様子を見てコツを学んだ貴峰
貴峰(…そういうこと………なら私は大切な人への愛を…この力に込める……!)
「はああああああ!!!」
カシン…!
ロックが撫子に光り、解除される。
隣にいた瑠玖はその愛情を感じ取った。
瑠玖(お姉ちゃん……私も、同じ気持ちだよ……私も…お姉ちゃんたちみたいに、この光の中にいたい…!暗くて辛い闇の中じゃなくて…正しい輝きを放つ、光の中に…!)
「うぉおおおおおお!!!!」
カシン…!
ロックが翡翠に光り、解除される。
その意思を感じる志紀
志紀(…闇……わたしも嫌だった…怖くて泣きたくなっちゃうような場所……でも、今は違う。ししょーがいたから……どんなに暗い道にもイイことはあるって知ってるから…!)
「はぁっ!!!」
カシン…!
ロックが純白に光り、解除される。
半数以上のメンバーがロックを解除する。その様子を一番端から眺めていた巫言
巫言(……これは儀式……各々が魂の浄化を果たし、己の道を示す儀式………なら…私が示す道は…?……それは覇道…。誰も歩んだことのない道をたった一人で切り拓く…そんな生き方。今まではぼんやりとそんなふうに考えていましたわ…でも、今やっと見えた気がします…私が切り拓く、誰かのための道…それはきっと……あなたたちのために………)
「ウオオオオオオオアアアアアアアアア!!!!!!!!」
カシン…!
ロックが紫紺に光り、解除される。
エネルギーに込められた想いが紗良にも伝わる。
紗良(みんな…すごいなぁ……。あたしはあまりこれからのことなんて考えたことなんてなかったのに、みんなはちゃんと考えてる…。辛い出来事もたくさん経験してて…それでも頑張ってるんだ……あたしは………うん…。あたしは、あたしのままで生きる。パパとママからもらった、この『勇気の焔』を胸にただ進み続けるだけ…!…自慢できるように…!)
「ハァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」
カシン…!
ロックが青藍に光り、解除される。
残すロックはあと3つ。誇温の隣で不安を感じる弥月
弥月(あともう少し……だが…全てが解除されなければ力は解放されない…。………できるのか……【僕】に………何も残っていない【僕】に……望まれず、望まなかった弥月としての生に『聖なる力』などという、輝かしいモノがあるのか…?)
暗い表情で考え込む弥月
弥月(………………………………こんな時…兄がいてくれたら………。…………兄ちゃんの声が聞きたい…………教えてほしい…………答えてほしい……………僕は……一体どうすれば……………)
陽介「お前なら、やれるだろ?」
弥月「っ!!」(……この言葉は…僕がピアノを弾けるかどうかの話をしていた時に言ってた言葉か……)
「なぁ弥月!」(虹色の流れ星を見ていた頃の陽介)
「お前は自分の人生を」(一緒に遊んでいた頃の陽介)
「進むんだ…!」(中学生の陽介)
どんなに望んでも、もう思い出の中にしか存在しない兄…
記憶の中の言葉…
それを勝手に継ぎはぎし、都合の良い解釈をしている…
でも……
それでも…!
これまでの人生を取り戻すために、必死に前に進もうとしている…!
弥月(……こんなもんにすがるなんて……僕はまだまだだな………ごめん……ごめんな兄ちゃん………これからも兄ちゃんの言葉を借りるかもしれない………でも、僕…いつか必ず…乗り越えてみせるから…!【僕】だけの人生を、歩み続けるから…!)
仮面の下につたう涙……
「…ッ!…ハッ!!!」
カシン…!
ロックが白銀に光り、解除される。
弥月、一、瑠玖、志紀、巫言、紗良に囲まれ、なんとなく見ていた琉歩
琉歩(…………………………あっ、オレもか!)
AI棒「おい…」
琉歩「わりっ……はあああああああああ!!!!!!!!!」
カシン…!
ロックが漆黒に光り、解除される
バシィッイイイイイイイン!!!!
11個全てのロックが解除されたことで、球体の横の部分が緩み…カシャン!!と、鍔のように開く。
そしてそこから光の剣が真上へと伸びているのだった…
*
オッドアイズはそうやく一つに力を合わせることに成功した。
その力は一体、どのような輝きを見せるのか…
次回、最終話『名を刻んだ英雄』