最終章-14「新星」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第50話「新星」
瑚透美「きゃっ!?」
瑚透美をお姫様抱っこするみどり。
みどり「じゃ、いっくよ~」
ぴょ~ん!ぴょ~んと建物から建物へと飛び移りながら移動していく。
その様子を下から伺う存在があった。
みどり「……………」
巨体のわりに素早い動き…
四足で壁を蹴り、一気に近づき攻撃をしてくるモンスター。
瑚透美「きゃあ!?」
瑚透美を抱えたままその攻撃を避ける。
みどり「ふ~ん…なんだか強そうじゃん…!」
瑚透美「早く倒してよ~…!」
みどり「う~ん…これは志紀ちゃんにやらせようかな…お~い!志紀ちゃ~ん!」
志紀の名前を呼ぶ。
志紀「なんですか~!?」
みどり「この敵、倒しといてね~!宿題~!」
志紀「こっちも大変なんですけど~~」
みどり「言い訳しないの~!もっと速く対処すればいいだけの話でしょ~!」
モンスター2体の猛攻を、瑚透美に負荷がかからない程度のスピードで華麗に避けつつ会話をするみどり。
瑚透美「わわわわ…!もう!呑気なこと言ってないでよぉ!」
みどり「あはは、ごめんごめん」
ズォッ…!キィン!
闇の分身がモンスターを食い止め、その間にバイクの近くに移動する。
みどり「はい…しっかりつかまっててね~」
瑚透美「え…ちょ…なんでバイクに乗せるの…私、初めて乗るんだけど…」
みどり「だいじょぶ、だいじょぶ。自動運転だから♪」
瑚透美「みどりちゃんのバイク、そんな機能ついてないでしょ…」
みどり「今つける~」
ブゥオンッ!!ブルルルゥウウウウ!!!
闇のオーラをバイクにまとわせるみどり。
その時!
ドカァン!ボフゥ…!!!
志紀「けほっ!けほっ!…なに!?」
志紀が破壊した無人機から何かが噴き出した
みどり「……あれはちょっとやばそうだね……」
瑚透美「…え……?」
みどり「急いだ方がいいってこと!いってらっしゃ~い♪」
瑚透美「え!?きゃあああああああああ!?」
ブゥウウウン……!!
すごい勢いで発進したバイク。瑚透美だけを先にAI島に向かわせた。
シュン!
志紀「わっ!?」
みどり「志紀ちゃん大丈夫?」
志紀「はい…でもさっきのは…?」
感覚を研ぎ澄まして調べるみどり。
みどり「……またウイルスか……あれに感染するとどうなるか分からないけど、敵が持ってた物だからね、油断しないように」
志紀「はい…」
みどり「ま、志紀ちゃんは大丈夫でしょう…あれはすぐにはどうにか出来ないし、まずはあいつらを倒そう!」
下を見る志紀。
みどり「志紀ちゃん…貴方にはこれからテストを受けてもらいます」
志紀「わ……先生みたい…」
みどり「!ふふっ…そうでしょう…!コホン……今からあのモンスターを二体倒しなさい。ただし、条件があります。」
ズオオオオ………
志紀「う……なに……!??」
体の力が奪われていくのを感じる
みどり「まず一つ…最低限の力しか使わずに勝つこと。二つ…肉体・武具の性能を最大限引き出して勝つこと。…分かった?」
志紀「…最低限の力…性能は最大限引き出す……」
みどり「そう!よろしい。あたしの継承者ならそれくらいやってもらわないとねっ♪」
みどりは明るく話すが、それとは対照的に志紀の表情は暗い。
志紀「……あの……わたしは今なんのために闘って…どこに向かってるの……?」
志紀は戦争が起きた理由も、能力が託された真意も分かっていない。
それを聞いてみどりも表情を変える。
みどり「………志紀……あなたの中にはまだ、聖なる力が隠されてるの…」
志紀の胸を人差し指でトン…とつつく。
志紀「聖なる…力…?」
みどり「そう…その力を引き出してほしいの。」
志紀「……そうすると……どうなるの…?」
みどり「…………」
11に分けられた世界の大罪は全て浄化されなければならない。
『嫉妬』の大罪を背負っていた志紀はまだ、完全な浄化をしていない。
心の罪と向き合い、それを乗り越えた者だけが『神聖な力』を使う権利が与えられる。
その聖なる力を全て引き出すことで浄化が完了し、世界を平穏に導くことが出来るのだ。
だが、8歳の女の子にそれが理解できるか?
たった8年しか生きていない子どもに世界の命運を背負わせ、その先にあるモノを問われている……
みどり「…………なんのためなら戦える…?」
志紀「え…?」
みどり「…アレを放っておいたら街が壊されちゃうかもしれない…大切な人が傷つけられるかもしれない……」
志紀「………」
みどり「なにかを守るためなら戦える?」
志紀「………」
みどり「…実は志紀ちゃんは世界の中でも選ばれたヒーローなの。ヒーローとしての役割を果たすためだとしたら…戦える?」
志紀「…………」
志紀は答えない。
少しの間、空を切る風の音だけが聞こえた。
そして、みどりが次の質問をしようとした時、ようやく志紀の口が開いた。
みどり「………じゃあ…」
志紀「先生は…」
みどり「!」
志紀「……みどり先生は…あれを倒したら喜んでくれる……?」
真剣な表情で訊く志紀。
みどり「うん、もっちろん!出来たらすごいことだよ!」
笑顔で答えるみどり。
それを見て決心する志紀。
志紀「……分かった…わたし…やってみる…!」
ブゥオワァ…!!
闇に包まれた一瞬で変身し、武具を身に纏う志紀。
みどり「志紀ちゃんならできる!いっぱい修行もしたもんね…!」
志紀「うん!……わたし…先生に恩返ししたいもん!」
みどり「…!」
そう言って見つめる瞳には聖なる輝きが映っていた…
志紀「見てて…!わたし…頑張るから…!!」
みどり「…うん…志紀ちゃんのこと、信じてるよ♪」
バッ…!
飛び降りる志紀。
みどり(あたしが気に入った子だもん…絶対に大丈夫…あたし、勘はイイ方だからっ♪)
スタッ…!
着地するやいなや、モンスターが襲ってくる。
両腕につけた盾で二体の攻撃を防ぐ。
志紀(うっ……いつも通りに体が動かない…!?)
「きゃっ!」
防ぎきれずに吹き飛ばされる。
志紀(もっとよく見てガードしないと…!)
ギンッ!!
桃色のオーラを瞳に宿らせ、『絶対視認』を発動する。
スローモーションにすら見える敵の猛攻だが、真正面から受け止めるには出せる力が少なすぎる。
志紀(もっと……こう………っ!そうか…!こうやって滑らせて……)
盾で攻撃を逸らせることで防いだ。
志紀「ちょっとコツ分かったかも…?」
ガッ!!ガンガンガンガン…!!
挟み撃ちにされながらも攻撃を弾いていく。
体をしならせ…ひねる…
隙間を潜り抜け…次の一手を繰り出す…!
打ち合えば打ち合うほどに、巧みな体使いになっていく。
みどり「そう……それがあたし達のスタイル…!」
志紀「あはっ…!これが…!」
桃白のオッドアイが輝きを放つ!
闇の力に反応して盾の形状が変化する。
盾から刃が飛び出て、双剣のように扱える『剣撃モード』
ザンッ!
「「!?」」
一瞬にして攻撃に転じたことで不意をつかれるモンスター。
ヒュンヒュンヒュン!!
素早い剣撃に圧倒され、後ろに踏み出した瞬間…
ガクンッ!
「!?」
足先に『すり抜ける能力』が付与されたことで地面に足が埋まり、体勢を崩す。
その隙に刃を心臓へ突き刺す!
志紀「これが…!!」
志紀の背後からもう一体のモンスターが攻撃を仕掛けるが…
スカッ…!
爪は闇の残像を通り抜けただけである。
そして闇の中から突如現れた志紀。打撃に特化した『拳撃モード』に変形させた盾でモンスターの頭部を殴る!!
志紀「これが『策術転星』!!」
両手を広げ、エンターテイナーのようなポーズをとる。
ググググ…!ブン!!
モンスターが最後の一撃を志紀に向かって放つが、志紀の体を通過し、モンスター同士に攻撃が当たる。
ズゥン……!
倒れたモンスターの間から優雅に歩いて出てくる志紀。
パチン!と指を鳴らし…
志紀「イーグル!」
ピギィイイイッ!!
飛んできた大鷲の背に乗ってみどりと合流する。
みどり「すっごいじゃん…!さっすがあたしが見込んだ子ね…♪」
頭を撫でるみどり
志紀「えへへ…!…なんだか…誰かのために…って思ってたら力が湧いてきて……それで…!」
みどり「うんうん…!…その気持ち…忘れないようにね…!」
志紀「はい…!」
*
幼い少女にのしかかる受け止め難い現実。
不幸を嘆き、増大する嫉妬の大罪。
無垢な少女をそそのかす愚鈍の意思。
魔女との出会いを果たし結ばれた契約。
魔女の気まぐれで救われる母。
魔女の中から見出したヒーローの輝き。
罪を乗り越え、手にした『人気』。
たくさんのことを教えてくれて…たくさんのことを経験させてくれて…導いてくれた存在…
魔女でありヒーローであり先生である存在…
そんな大切な人に込めた『感謝』の気持ち。
その美徳がオッドアイの覚醒を促した。
小さな体で大義を成し、ヒーローとしての輝きを放った少女。
彼女の名は…
―――二和 志紀―――
*
ほぼ同時刻、AI島では…
(ピピピピ!!)…バァンッ!!!!
シリュー「くっ……なんだ…!?」
人類最高峰の武器の一つ…レールガンの弾丸が飛んできていたのだ…
直撃したかに見えたが、それは弾かれていた。
マイド「あれは!?」
ルウラ「!?」
トオン「えっ!?」
クーゴ「ボス!?」
そこには腕組みをし、ロボの頭部で仁王立ちする桃華がいた!
桃華「…あの時使っていた機体はバラレンジャー全員の力があってこその物…ですがこれはワタシ一人で最大限の力を発揮できるよう、『開天』を基に作製した機体……名付けて『開天Mk-Ⅱ』です!!!」
ジャキ――ン!!(決めポーズ)
桃華「可愛い部下のためです…絶対無敵の王者の姿…!貴方たちに示しましょう…!」
ウィーン…!
操縦席へと移動する。
桃華「来なさい!ワタシのドリルッ!!!」
クーゴ「なんだ!何が始まんだ!?」
マイド「ボスの戦いを拝見できるのか…!」
トオン「ボスかっこい~!」
飛んできたドリルパーツを接続し、両腕をドリルにする。
桃華「ドリルコネクトォッ!!!!」
ガッシィイン!!
桃華「貴方たち、刮目しなさい!これが王道を往く者の在り方です!!」
ギュイイイイイイイン!!!!!
レールガンを搭載した軍艦へと一直線に突っ込んでいく!
ルウラ「あれでは次弾が…!」
シリュー「何か策があるのか…!?」
ドンッ!
予想通り、放たれた高速の弾丸が直撃してしまう。
だが…ッ!!
クーゴ「…っ!無傷だ!」
マイド「すごい…!」
トオン「ボスにあんな物は効かないってことだー!」
桃華「これがキングとしての…格の違いです…!ましてや後ろに続く者達が控えているというのなら…尚更…退くものか!!」
回避など不要ッ!!
これが頂点が示す力!!
キングの誇りだッ!!
桃華「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!!アルティメットツインドリルッ!!!!!!」
ドカァン!!!!
レールガンを破壊し、大爆発をバックに勝利を決める『開天Mk-Ⅱ』
桃華「ふぅ……さて…残りも片付けてしまいましょう…シリュー、エネルギーはまだありますか?」
シリュー「は…はい!まだやれます!」
桃華「よろしい…では…(ピピピ!)ん…?」
バババババババガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!!
四方八方に直線の軌跡を残し、軍艦に搭載された兵器全てを破壊する弾丸。
桃華「……あれは…!」
朱祢「桃華…!」
*
合流を果たした桃華組と朱祢組…
いよいよ物語は最終局面へ移行する。
バラバラの地にいるオッドアイの能力者が集結へ向かう…!
が、その前に残った能力者が一人…
次回『隠れたセフィラ』