一章-2「叛逆の烽火」
「Odd I's」
第一章「機械の王国」
第5話「叛逆の烽火」
「「AI島、侵攻反対!!」」 「ロボット達は自分の身を護っていただけです!我々人間が正しく向き合えば力を貸してくれる存在です!」 「優しいロボットは沢山います!全てのロボットが悪者として扱われるのは間違っています!」 「AIランドで人間のために楽しい時間を作ってくれたロボットを護るため、今度は我々がロボットのために立ち上がる時です!」
演説をしている中年男性を中心に「AI島 侵攻反対」と書かれた看板などを持った人達が駅前に集まっていた。それを聞いている人、通り過ぎざまにそれを見る人たちの顔は厳しいものだった。
学校帰りにそこを通りすぎる彼女もそういった人間の一人だったが、なにやら騒がしいことになっており思わず足を止めた。
「ふざけんな!ロボットは警察に攻撃してきてんだぞ!」 「そうだ!テーマパークでの活動なんて人間を騙していただけかもしれないじゃないか!」 「命令を聞けないロボットが安全なわけないだろ!」
などといったロボット撲滅派の反対意見が飛び交い、保守派の人達も抵抗していたが勢いに押し返されてしまった。
そして、言い合いはますます過激になっていきついには「ふざけるな!」「とっとと帰れ!」「ロボットもお前らも必要ない!」「バカヤロー!」など、ロボットと保守派の人間を同列に扱い、罵詈雑言を浴びせるようになってしまった。しまいにはゴミなどを投げつけ、完全に火がついてしまった民衆は歯止めが利かなくなっていた。
それを見かねた彼女が思わず割って入る。保守派の人達の前に両手を広げて叫ぶ。
「やめなよ!!さすがにやりすぎでしょ!!いい大人なのにそんなのも分からないの!!?」
制服を着たあきらかに若い女の子に言われ、ハッとする集団。だが、それだけでヒートアップした熱量が収まるわけがなく、「だからつってこいつらの意見が認められるかよ!ロボットを護るなんてふざけてる!ありえないことでしょ!」 「なによ!ふざけてるのはそっちでしょ!?あんなに尽くしてくれたロボットを破壊しようだなんて!」などと言い合いがまた始まりかけるが
「うるさーーい!!!!」
彼女の叫びで再び静まりかえる。
「迷惑!!こんなところで言い合って!駅は皆が使う所なの!そんな所にこんなに人が集まってうるさくしてたら迷惑なの!!あんたたちも!おじさんたちも!!どんな考えをもってようがいいけどさ、他の人のことも考えなよ!!」
あまりのド正論に双方黙り込むと、交番のお巡りさんがやってきて解散をうながした。
*
ぞろぞろと帰っていく民衆。 保守派の人達も帰る準備をし始めた。 彼女も帰ろうかとした時、演説をしていた男性に声を掛けられた。
「君!ちょっといいかね?」
「はい?」
「さっきはすまなかったね。恥ずかしながら君が止めてくれなかったらどうなっていたか…」
「いやいいですよ…気にしないでください。」
「若いのにとても立派だ!親御さんはさぞかし良い教育をしてくださったのだろうね。…私も君と同じくらいの娘がいるがあまり良い親にはなれなかったな、はははっ…」
「…そういえばこれ、なんの主張だったんですか?AI島?」
「ニュースで見ないかい?今、AI島のロボットが危険なんだ。国でAI島に侵攻することが決まってしまってね、その侵攻がいよいよ明日なんだ。それで、いてもたってもいられなくてこうして時間ギリギリまで演説をしようとしていたんだがこの様だ…。一人でも多くの人にロボットの優しさと安全性を分かってもらいたいのだが…」
「…明日もやるんですか?」
「もちろんだとも。今日の夜からAI島の橋で待機するつもりさ。結果がどうなろうと、ロボットを護りたいと思う人間がいるってことを世界に示さないとだからね。」
「…ふ~ん………」
「…何か思うことがあるのかい?」
「そのデモって一人でも多くの人がいた方がいいですよね?」
「そうだね。この演説も仲間の集いが目的の一つであったし。」
「なら、あたしも仲間に入れてくれませんか?」
「!…お、あぁそうだったのか!そういうことだったんだね!もちろん大歓迎さ!君と同い年くらいの子も中にはいるし」
「やった…!明日のデモにも参加したいんですけど、いいんですね?」
「ああ。明日のことについてはこれから打ち合わせをする予定だ。よかったら君もきたまえ」
*
男から打ち合わせ場所を教えてもらった彼女は準備のため一度帰宅した。
ガチャ…バタン!
「……………」
母「おかえり」
「……………」
彼女は自分の部屋に行き、支度をする。 そして荷物を持って玄関を出ようとしたとき声を掛けられる。
母「そんな荷物持ってどこにいくの?」
「…出かけてくるの。今日、ご飯いらないし泊ってくる。」
母「泊るってどこに?明日学校でしょ!?どういうこと!?」
「どうでもいいでしょ。じゃ…」
母「待って!」
「っ!離してよ!!」
母「っ!………心配なの……」
「はぁ…もういいよ。そんな心配しなくて。どうせ大して心配してないくせに」
母「っ、そんなわけないでしょう!?」
「なら!!…美久を放っておいてあたしを止めにくれば?」
母「それは…」
「できないんでしょ。いいよ。あんたにとってあたしはその程度なんだから…」
母「そんなことないわ!美久はまだ子どもだから…」
「あたしだって子どもでしょ!!」
母「………」
「……あぁ…[こども]ってそういうことか…。あたしは子どもじゃないもんね。もういいよ。あたしは勝手にやるから。」
母「ちがっ、待って!さ…
「あー!そうだ!もう、これからあたしの名前呼ばないでくれる?この名前は“あたしのママ”から貰った大切な名前だから。…気安く呼ばないで。」
ガチャ…バタン!!
ブルンッ!と音を鳴らし、バイクで家を出る。
(もうっ…!イライラする!なんであたしだけこんな目に遭わなくちゃいけないの!?マジさいあく! こんなに不幸なあたし可哀そ!…友達も最近愚痴ってたけど…あたしが一番愚痴りたいよ!)
ブゥゥウウン…!!!
イライラからスピードを上げて走っていると
ウゥ―!!
「そこのバイク、停まりなさい!」
(あっ……やっちゃったー…どうしよう……このバイク完全に違法だし……)
「おー!カッコイイバイクですねー。お姉さん、このバイクどこで買ったの?」
「…………」
「答えられない?免許証は?今、持ってる?」
「……はい……」
(ふざけんなよ…なんでてめぇに見せなきゃならねぇんだよ…)
(警察なんだから見せなきゃだよ…)
(嫌だ…断れ…こんなことして何の得がある?これから大事な用があるんだろ?こんなやつら振り切ればいいだろうがよ)
(…ダメだよ…そんなことしちゃ…)
「ん?お姉さん、どうしたの?免許証ないの?」
(お前なら出来るだろ?こんなやつら振り切れ。そうでもしないとその力を持ってる意味がないだろ?なぁそうだろ?焔の継承者…)
「っ!」 サッ…(財布をしまう) ブルンッ!!ブゥウウウン!!!!
「あっ、待ちなさい!!」
ブィィィイイイイン…!!!
(そうだ…あたしなら出来る…あたしは天才ドライバーなんだから…こんなやつらどうってことない。こんな能力…なくても余裕だけど、これがあれば世界中の誰にも負けない。なんだって出来る!それをこれから…証明してやるんだ!!)
「変身!!」
ボッヒュゥウウン!!!! バイクごと爆炎に包まれ、全身青色で武装して出てきた。
ボンッ!!バルルルルル!!!!! アフターバーナーでさらに加速し、ウィリーしながら爆走する。炎をまき散らしながら走り去っていく彼女を追える者は誰一人としていなかった。
*
「ふう……」
(…久しぶりに飛ばしちゃった…ていうか公道であんなに走るのなんて初めて…ちょっと悪いことしちゃったけど憂さ晴らしにはなったし…ま、いっか…)
「あっ、リーダー来ましたよ!」
「おぉ!待っていたよ!さぁこちらに…」
リーダーに促され、建物の中に入る。
「ではこれから明日のことについての打ち合わせをするが、その前に新しい仲間がきてくれたので軽く自己紹介をしてもらおうと思う。では、名前と何か一言でも…」
「はい、あたしの名前は黒瀬…」
と、名前を言おうとするが先程のことがフラッシュバックする。 名前は彼女にとって大切なもの。面白半分で参加したデモの人達には言う価値がないと驕り高ぶっている彼女は自己紹介をやり直す。
「あたしのコードネームはさ…サラマンダー!あたしはこの部隊の最終兵器になるためにここに来ました…!!」(ドヤ顔)
*
彼女は自分のことをサラマンダーだと名乗る。そして最終兵器になると言い出した。サラマンダーの目的は戦火の中に飛び込むことだったのだ。
自分の持っている力でなんでもできると思い上がっている。そのため、親や先生からなんと言われようと自分の主張を通そうとする頑固な一面もあった。最近では親子喧嘩をしたこともありやけくそ気味になっている。反抗期真っただ中なこともあり、何もかもに反発したくなっているためこういう火遊びをやってしまった。
そんな彼女も参加するこの「AI島侵攻作戦」、果たしてどうなってしまうのか。そして…
「だーかーらー!こいつもロボットなんだって!マジでやばい刀なんだから処分してくださいよ!」
と、少年が刀を警察署へ持ち込んで何やら話し合っている。ロボット不信になった世の中で起こる様々な問題、そしてこの少年に付き添うなぞのAI。とある事情からこの少年も参戦してしまう。その事情とは一体!?
次回『少年+刀』