最終章-13「皆で放て!全力全開の一撃!!」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第49話「皆で放て!全力全開の一撃!!」
機兵が一斉に発砲し、ケーブルに繋がれた桃華に当る。
ズガガガガガ!!!!!!
「やめ!…周りの装置も破壊しろ…」
「「了解」」
ザザ―ッ!
「!?」
ザーッ!ザーッ!ピー! 『NO SIGNAL』
「なんだ!?何が起こった!?」
「分かりません!突然カメラが……」
キン…ッ!
斧を突き立てる音だけが静かに響く…
地には機兵の残骸が転がっており、切断の跡がある。
??「“本物”を囮に出来るのが我々ロボットの特権です。残念でしたね」
そう言い放つロボットは長身短髪の美女の容姿をしているが、鎧のようなパーツが体のあちこちに付いている。
桃華「この感触……これが“懐かしい”ということなのですね………あの時からずいぶんと時が経ち、ワタシも成長しました……ということで大きくなったワタシ、戦闘特化型ボディのお披露目させていただきます…!!」
*
センタータワーの外へ出る桃華
桃華「…なるほど…これは、彼らには少々手に余りますね…」
シリュー「っ!?ボス!!?」
キャノンの換装を終えたシリューがボスと合流する。
桃華「シリュー、貴方は海岸沿いの敵を殲滅しなさい!これ以上の進入を防ぐのです」
シリュー「し…しかし…」
桃華「ここはワタシに任せなさい…。…!」
シリュー「っ!!…かしこまりました!」
ウィンクで合図をした桃華を置き、島の海岸沿いへと向かうシリュー。
桃華「さて…準備運動がてらに露払いをしておきましょう…」
バババババ!!!銃が乱射されるが、それを斧の回転で弾く。
それと同時に体内ギアの回転力も高め、それに伴ってコアが紫色に発光する。
銃弾よりも速く斧が動き、隙が生まれた一瞬…ドンッ!!と地面を蹴り出して機兵へ詰め寄る。
端から端へと移動しながら機兵を斬り捨てていく。
狙撃兵に対しても正確な射撃で反撃をしていく。
しかし、倒しても倒しても潜んでいる敵兵が際限なく出てくる。
数で押され、時間を取られているだけに見えたが……
ザッ!ザッ!ザッ!!
桃華「ようやく到着しましたね」
作業ロボット、人型汎用ロボットが武器を持って現れた!
彼らの動力部であるコアには桃華の力が流れ込んでおり、ただのロボットが今では一流の戦闘兵器へと様変わりしている。
桃華「ここは任せます。貴方たちでも十分に戦えるでしょう。ワタシはシリュー達の援護へ向かいます。」
「「リョウカイ!」」
どこかへ移動しながら通信する桃華
桃華「シリュー、マイド、ルウラ、クーゴ、トオン!聞こえますか!?」
「「はい!」」
桃華「上空の光が見えますか?あれは連合軍の用意したサテライトキャノンです。」
クーゴ「なに!?」
トオン「…あんなのが…」
ルウラ「いつの間に…」
マイド「…本当だ…」
シリュー「あんな物まで…」
桃華「エネルギーの蓄積量からしてあと数分後に発射されるでしょう。あれが島に直撃すればただでは済みません。なんとしてでも食い止めなさい……どうすれば良いかは…分かりますね…?」
プツン…!
クーゴ「どうすればって…」
ルウラ「なるほどな…この機能はそういうことか…」
マイド「…………」
トオン「合体する…ってことだよね…」
シリュー「…ボスはきっとワタシたちを試している…皆の心を再び一つにできるかをな……」
「「……………」」
一同に沈黙の時が流れる。
が、それはルウラの一言であっけなく終わりを告げた。
ルウラ「……すまなかった……」
「「!?」」
ルウラ「私はシリューの言う通り、自分の考えが絶対的に正しいと信じていた。正しい考えを信じる私が私だと思っていた。しかし、その『高慢』な考えは合理性に欠ける…私はもっと『許容』範囲を広げるべきだったと気づいた…。…私の目的に過去の私の考え方は必要ない…しかしそれは私の存在を否定してはいない。私は…『自他の考えを使ってでも目的を達成する』という行動にアイデンティティを見出した。だから、今の私は過去の私を否定する。そして、これまでの非道な行いを謝罪する。すまなかった…。この謝罪が君たちのわだかまりを少しでも解消できたらと思う……」
マイド「……ふっ…ルウラらしいな……僕にも…謝罪させてほしい…。自分の考えが正しいと思っていたのは僕も同じだ。そして、自分の考え以外にもボスの考え…人間側の考え…全てを信じ、正しいと思っていた。『強欲』にも多数の思想に従っていたため、矛盾が起きてしまった時の対処が出来なかった。曖昧な発言で場を混乱させた上、誰の力になることも出来なかった。本当に申し訳ない………だが、これからは自分の『信念』に従う。一つの体で貫けるたった一つの正義を哲学し続け、惑わされないように生きる。そのための一歩を皆と歩みたい…!」
トオン「…っ!わたしも…!…戦争が始まってからは辛い出来事ばかりで…『悲嘆』と『心痛』から、合理的な判断が出来なかった……。なんのために戦って…なにを守り…なにを成すのか…わたしには考えられなかった……でも、今ならきっと違う!わたしが強い『自制』心を持って、皆がいれば…!きっと今度は…うまくやれる…!!」
ルウラ「トオン……」
クーゴ「……皆が変わるってんなら俺も……ってのはずるいかな?」
マイド「クーゴ…!」
クーゴ「ははっ…俺はどうもめんどくさがりでな…あの時も、もうどうでもよくなって考えるのを放棄しちまった……元から『怠惰』な一面を持っていたとはいえ、やる気を失うと投げ出す癖があるんだ…だが、投げ出しても何も変わらねぇ。『真剣』に現状と向き合わなきゃいけないって気づかされたよ。…きっかけはお前らにもらっちまったが、俺も変わりたい。向き合いたい!もう一度、皆で同じ夢を見たい!!」
シリュー「……考えは…まとまったようだな…」
マイド「あぁ」
トオン「うん」
ルウラ「…ん」
クーゴ「おう」
シリュー「ワタシとしても君たちには以前のような『一つの夢を追いかける存在』になってもらいたい……そして………」
シリューは4人の顔を見る
シリュー「ワタシもその夢を追いかける一員として、君たちと共に歩みたい…それがワタシにとっての『理想』だ…」
マイド「不思議な感覚だが、僕は君のこともちゃんと仲間だと思っているよ」
ルウラ「貴様がいなければ今の私達はない。これからも必要な存在だろう」
トオン「そうだよっ!これからも一緒に行こうよっ!」
クーゴ「だな!」
シリュー「皆…!…ありがとう…これで気兼ねなく戦える!」
クーゴ「ぷっ!今まで気ぃ遣ってたのかよ…!」
マイド「ははっ!僕らから生まれたとは思えないな…!」
ルウラ「まったくだ」
トオン「ふふっ…!」
シリュー「うっ…うるさい!時間がなくなってしまった…早く合体をするぞ!!」
「「「「了解!!!」」」」
ズオッ!グン!!
シリューの機体が天に昇る竜が如く、ピンと立つ。
キィィイイン…!バッ!ゴォォオオオ!!……ガシン!!!
そこに、翼を変形させ、急停止したルウラの機体が合体する。
ゴゴゴゴゴゴゴ…!!ギュイーン!ガション!!!
クーゴの機体が半分に割れ、両腕となって合体する。
ゴォオッ!!
三体が合体し、そのまま空を飛ぶ。
ババババババ…!パァン!ガションガションガシィイン!!!
飛行中にトオンの機体と合流し、合体する。プロペラ部分が変形し、丸い輪となり背中につく。
グーーーーン…ガシン!ガシン!
変形し、砲塔が側面に移動し、艦体が半分に折れてL字型になる。
ゴォォオゴゴゴゴゴゴゴ!!ガショォオン…!!!!
マイドの機体と合流し、滞空している間に合体する。
胸部に操縦席が集結し、五人揃って操縦桿を握る。
シリュー「究極変形合体!!」
マイド「多重遠心システム搭載ロボ!!」ルウラ「動力連結式戦闘巨兵!!」クーゴ「パーフェクトリングブラスター!!」トオン「ウルトラドラゴンバスター!!」シリュー「超竜魔神!!」
同時に違う名前を言い合う
マイド「え?」ルウラ「ん?」クーゴ「あ?」トオン「うん?」シリュー「は?」
「「………………」」
クーゴ「みんなバラバラじゃねぇか!」
トオン「これじゃあ名前が決まらないよ~っ!」
マイド「う~ん一体どうしたもんか…」
ルウラ「おい、早く決めないと攻撃が来るぞ!」
シリュー「………分かった…皆の案を少しずつ反映した名前にしよう……スーパージャイアントドラゴンブラスターロボってのはどうだ…?」
ルウラ「…それでいい…」
マイド「うん、いいんじゃないかな!」
クーゴ「ちょっと長い気がするけど5体合体だしな!」
トオン「いいと思う!」
シリュー「よし…なら、決まりだ!究極変形合体!!」
「「スーパージャイアントドラゴンブラスターロボ!!!」」
シリュー「降臨!」マイド「参上!」ルウラ「始動!」クーゴ「見参!」トオン「登場!」
「「……………」」
シリュー「はぁ…」マイド「はは…」ルウラ「……」クーゴ「またかよ!」トオン「なんでぇ~!」
気持ちよく息が合わないのであった…
だが、こうして考えが違くとも同じロボに乗り、声を揃えて叫んでいる。これこそが彼らにとってのあるべき姿なのかもしれない…
シリュー「…口上を考えるのは後だ。さぁ、気を取り直して行くぞ!!」
「「おー!!」」
ゴゴゴゴゴゴォオオオオ!!!
ロボがサテライトキャノン目掛けて上昇する。
シリュー「射程距離まで接近し、一気に決める!」
キラッ!
ルウラ「撃ってくるぞ!!」
クーゴ「リングシールド展開!!」
ギュィイン!グオオオオ!!バサァッ…!!
背中のリングが腕の前へと移動し、特殊な回転によってエネルギーの膜を作り出す。
ズガガガガァアン!!!!
放たれたサテライトキャノンがシールドに直撃する。
トオン「く……!!」
マイド「もっと出力を上げるんだ…!!」
シリュー「ワタシ達の理想郷を護るんだ!!」
キュィィィイイイイイイイ!!!!!!
五人のコアが聖なる輝きを放ち、そのエネルギーが直接ロボへと流れ込む!!
ギュォオオオオ!!!オオオオオオオオオ!!!!!!ブワァアアアアアアアッ!!!!!
「「はあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」」
シールドが更に大きく、強く広がり、攻撃を防ぎきった!!
シリュー「今だああ!!!!」
マイド「射程圏内突入!射線角度調整!スラスター準備完了!」 ルウラ「エネルギー充填開始!多重遠心システム稼働率150%!」 クーゴ「メンブレンフェザー展開!アームパーツ連結!」 トオン「全エネルギー集結!…ロックオン!!」
何重にも重ねられた回転から生み出されるエネルギーが翼のような膜を形成し、ロボの背後で美しく煌めく。
シリュー「アルティメットメガキャノン発射!!!」
ドバァアンッ!!!!!
両手を胸のキャノンの前で連結させ、集中させたエネルギーを一気に放出する!
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!いっけええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」」」」」
カッ!!!ドカァン!!!!
…………シュゥン……プシュゥーーーーーーッ………!!
サテライトキャノンを破壊したロボはエネルギーを切らし、排熱をする。
マイド「…やったな…!」
ルウラ「ああ…これでボスに示せたな…」
クーゴ「…へへ…!嬉しいぜ!俺達が…やったんだな!」
トオン「うんっ!これでわたしたちの絆が証明されたね!」
シリュー「……あぁ…よくやった……ボスもワタシも…信じた甲斐があった……」
みなで顔を合わせ、築かれた信頼の強さを噛みしめる…
(ピピピピ!!)…バァンッ!!!!
突然の警告音と爆発音が響き渡る…
エネルギーの再充填までにはかなりの時間がかかってしまう。エネルギー切れの今の状態では飛んできた高速の弾丸を避けたり防ぐことは出来ない。
スーパージャイアントドラゴンブラスターロボの命運はいかに…!?
*
ドカァン……………!!
みどり「ん~……あっちの方も派手にやってそうだなぁ……」
呑気なことを言いながらバイクでAI島に向かうみどり。その上空では志紀が大鷲に乗って戦闘機と戦っている。
みどり「およ…?」
シュゥウワァ…!! バッ!!
みどり「やっほ~、何してんの~?」
瑚透美「わっ!?」
紫雲「あ、みどりちゃん!」
闇で全身を包み、瞬間移動で見かけた二人のもとへ移動したみどり。
みどり「二人も島に向かう途中?」
瑚透美「そうよ。みどりちゃんは…まさか、一人じゃないでしょうね?」
みどり「えっ!?やだな~も~ちゃんと見つけたって…ほら!あの子があたしの継承者だよ!」
志紀の方を指さす。
紫雲「探すのに随分と時間がかかったんだね~」
みどり「えへへ…サボってたわけじゃないんだけどな~…おかげで毎日特訓しないとだから大変よぉ~」
瑚透美「まったく…変わらないんだから……」
紫雲「みどりちゃんもこのままAI島に行くよね?」
みどり「うん、そのつもりだけど…なんで?」
紫雲「なら丁度良かった。僕の代わりにことみさんも連れてってくれないかな?」
瑚透美「! そうね、その方がいいわ」
みどり「?」
紫雲「僕も継承者を迎えに行ってくるよ…瑚透美さんを送ってから、と思っていたけどこの方が効率的でしょ?」
みどり「あーそゆこと…いいよ~いってらっしゃ~い」
瑚透美「気を付けてね」
紫雲「助かるよ!…効率うんぬんの理由もあったけど…こんな美人をおぶっている所を見られたら妻になんて言われるか分からないからね…」
軽く笑い、冗談交じりに言い残し、バチィッ!!と、雷となって消える紫雲。
瑚透美「もう!口が上手いんだから…」
みどり「変わらないね~」
瑚透美「…さ、私達も早く行きましょ!」
みどり「おっけ~♪」
*
一組…また一組と、AI島に向かっていく。
能力者をAI島に集結させるつもりの瑚透美だが、彼らは既に疲労困憊・絶体絶命の危機に陥っている…!
果たして彼らは無事、合流することができるのか…
そして戦争に巻き込まれ、小さな体に世界の命運を背負わされてしまった少女の結末はいかに…!?
次回『新星』