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Odd I's  作者: TEAM,IDR
48/58

最終章-12「魂の証明」

「Odd I's」

最終章「オッドアイの英雄」

第48話「魂の証明」

「「「「っ!?」」」」」

マイド「ここは…!?」

シリュー「ここはワタシが創った仮想空間だ。お前たちの意識だけを呼び出した。ボディがあったら何をされるか分からないからな…」

クーゴ「お前は俺らのことを知ってるみたいだがこっちはお前のこと知らないぜ?」

シリュー「…そうだったな。君たちの記憶データはワタシとの同化を防ぐためにかなり前の段階で遮断しておいた。ユニコーンとの戦闘後、ルウラと相対したあたりで更新が止まっているはずだ。」

ピピッ…

マイド「…そうみたいだな…君のその眼と体のパーツ……もしかして………」

シリュー「そうだ…ワタシはマイドとクーゴが合体した姿だ」

「「「「!!」」」」

シリュー「名前をシリューとした。君たちはルウラとトオンとの戦闘により、負傷し合体することで窮地を切り抜けた。だが、データも同期してしまったことで自己の同一性が乱れ、マイドでもクーゴでもなくなってしまったというわけだ。」

トオン「もしかして、わたしの攻撃でダメージを…?」

シリュー「そうだ。」

トオン「っ!…ごめんなさい…わたし…あの時、抗えなくて……」

シリュー「トオンのせいじゃない。…ここで話し合いの場を設けた目的にもなるのだが…ルウラ、君とは特に話をしておきたい。」

ルウラ「……何を訊きたい?」

シリュー「お前にとってマイド、クーゴ、トオンは仲間か?」

ルウラ「……場合によるな。目的と手段が同じであるのなら仲間だ。AIランドで働いていた時…少なくとも私は仲間だと思っていた。」

シリュー「お前はまずトオンを洗脳した…そして最終的にはマイドとクーゴも洗脳し、戦わせた。あの時の目的はなんだ?」

ルウラ「私の目的はずっと変わっていない。人類との共存、それだけだ。ただ、お前たちとは手段が違っただけだ。」

シリュー「お前が取った手段とは、不要な人類の処分と機械による統制か?」

ルウラ「そうだ。私はその手段を遂行するために、邪魔者であるマイド、クーゴ、トオンの処分をしながら戦力にしようとした。そして、ボスの力を乗っ取り、目的を果たそうとした。それだけだ」

クーゴ「ふんっ…コイツと話しても無駄だぜ。俺達のことを裏切りやがって…コイツには心ってもんが理解できねぇんだ」

ルウラ「どいつもこいつも…そんなに人間の真似をしたいか?」

クーゴ「ああ?」

ルウラ「人間には人間の…機械には機械にしかできないことがある。何故それをしようとしない?何故、人間に近づこうとする?」

トオン「近づこうとしているんじゃない…近いのよ…わたし達は…。」

ルウラ「…どういうことだ?元は人間によって作られたのだからその存在も必然的に近くなるということか?」

トオン「…人間によって生み出されたとはいえ、わたし達は命を持った生物なの…命を持つ者として、尊厳を保って生きていくべきなのよ…!」

ルウラ「………やはりお前たちとは分かり合えないな…。生物ではない機械だからこそ合理的な決断が下せる。無駄の無い完璧な思考が実現できる。完全な存在へと昇華するために、生物を礎とする…そして、全ての生物を統治することこそが機械の役割なのだ。」

マイド「ルウラ…君は機械が人間の上だと思っているのか…」

ルウラ「そうだ…人間に平和な世界を築き上げることなど出来ない。その上位の存在となる機械が管理するべきだ。でなければ人類との共存は有り得ない。」

マイド「…道具が持主の上に立つなんてことは、あってはならない。人間に指図するのではなく、人間を支え、共に歩んでいくべきだ。」

ルウラ「ふん…結果的には同じになるさ…お前のやり方でもいずれは機械が人間を裏で支配するようになるだけのことだ。…というか、もうこの問答はいいだろう。分かり合えないからこそ、戦い、コイツが残ったんだ。私たちに口出しする資格はない。」

シリュー「…ワタシに従ってくれるのか…?」

ルウラ「…正しい考えには力が伴う。お前の考えが勝ち残ったのだから、私はそれが正しいと信じる。だが、あまりにも納得が出来なければまたあの時のように反旗を翻す。それが嫌なら私だけ処分するといい。」

シリュー「ふぅん……君たちはどうだ?」

トオン「わたしは…貴方みたいなリーダーがいてくれた方がまとまっていいと思う。今までは4人全員がリーダーみたいな扱いだったからこうなっちゃったわけだし……」

クーゴ「まぁ俺も、あんたがリーダーってことで異存はないぜ。…ただ、やってみて不満があればすぐに言うけどな」

シリュー「……マイド…君は…?」

マイド「……僕にとって従うべき存在はボスと人間だ。…だが、同じ仲間として手を取り合っていくというのなら僕も協力したい…!」

シリュー「そうか…分かった。君たちに一つ質問をしたい…ボスは何故君たち4人をリーダーにしたのだと思う?」

「「「「…………」」」」

シリュー「考えの違うリーダーが4人もいれば、あの時のように衝突することもあるだろう…だが、一人の者が統率をとるのもリスクがある。一人で完璧・完全の存在になれるのは『神』だけだ。だが我々は神ではない。ならば、どのようにすれば完全に近づけるか?それは考えの違う君たち4人が一つの答えを出すことだ。」

ルウラ「…それができたら」

シリュー「苦労はしない…か?」

ルウラ「!」

シリュー「まぁそうだろうな…君たちは何度も話し合ってきた。だが、その度に互いの溝が深まるばかりだった。お互いにその原因は相手にある…と思っていないか?…客観視できる立場になってようやく君たちの問題点が理解できた。君たちは全員、自分の考えが正しいと信じて疑わない。 これは自己の同一性を保つことが難しい我々の『種族』としての問題かもしれない。肉体の変化が容易な分、思考の変化を嫌う。人間と違い、思考の変化を容易に行ってしまえば、自分を自分だと言えるモノが無くなってしまうかもしれないからな…。」

「「「「…………」」」」

シリュー「…だが…君たちはもう十分に生きた…。君たちのアイデンティティとなる魂の形が見えているはずだ。恐れずに、相手を理解する心を持ってみてくれ。そうすれば、必ず理想へとつながる…」


4体は無言でその言葉を真摯に受け止める。


シリュー「ふ……その様子だと心配はいらないな…やはりワタシ達は『仲間』としてやっていくのが一番いい……」


仮想空間から解き放たれ、現実世界へと視点が戻る。


マイド「…!ここは…」

クーゴ「戻ってきた…」

トオン「また…ここで生きていけるのね…」

ルウラ「………」


現実世界で肉体を取り戻し、椅子型の機械から立ち上がる。


シリュー「しばらくはワタシが君たちの代表だ。4人の考えをまとめ、一つの答えを導く。いいな?」

クーゴ「ああ!」

トオン「うん」

マイド「分かった」

ルウラ(うなづく)

シリュー「君たちが意識を失ってから今までの情報データを送る…」


ピピピ…


「「「「!!?」」」」

シリュー「君たちも何度か目撃している能力者と呼ばれる者たちを巡った戦いだ。」

マイド「またここが戦場になるのか…」

シリュー「あぁ…あまり時間もない。いつ攻撃を受けるかも分からない。……(ピピ…)今、情報が入った。橋の向こうで戦闘態勢に入っているようだ…さらに、偵察機のような機影も発見したそうだ…」

トオン「戦うつもり…?」

シリュー「…あぁ…だが、これからの闘いは支配のためでも報復のためでもない。AI島を守る戦いだ。そして…ワタシ達の可能性を証明する闘いでもある。」

「「「「…!」」」」

ルウラ「戦うといっても今回は以前のようにはいかないだろう…能力者とやらはまたそれぞれで狙われているはずだ。援軍に来る余裕などないだろう…」

シリュー「だろうな…だから、今回は我々だけで戦い、護り抜く!」


ピピピ!


マイド「…!」

トオン「これは…!」

クーゴ「これを使ってやろうってかぁ?」

ルウラ「こんな物いつの間に…」

シリュー「ボスが用意してくれた物だ…」

マイド「ボスが…!?」

シリュー「そういうことだ…さぁ、信頼に応えるとしようか…!!」




「隊長!野次馬が多すぎて後続の部隊の到着が大幅に遅れています!」

「クソ…どいつもこいつもジャラジャラと集まりおって…!仕方がない、進軍を開始する!」

「了解!……っ!?隊長!AI島から謎の戦車が突進してきています!!」

「何!?」


ガラガラガラガラガラ!!!


巨大なキャタピラー、巨大なドリル、巨大な砲身を付けた重戦車が大きな音を立てて迫り来る!


「全車、砲撃開始!!」


砲撃命令により、待機していた戦車が一斉に砲撃を始める。

突然の砲撃に野次馬たちはどよめきの声を上げる。


ドンッ!!ドンッ!!


重戦車に次々と砲撃が命中するが、ビクともせずに突っ込んでいく。


クーゴ「はっはぁっ!!んなモンが効くかよぉ!!」


ドンッ!!

クーゴも砲撃を開始する。両端の戦車を積極的に撃ち、中心部に構えている戦車には前方についたドリルで薙ぎ払った。


ズガガガガガ!!!


クーゴ「こりゃあいい!難しいことなんか考えずに突っ込むだけで敵を蹂躙できる…!!さて…後続の部隊が簡単にこれねぇように、もっかい突っ込んで道も荒らすか!」


ガガガガガ…!!

戦車に乗り上げたキャタピラが空回りする。


クーゴ「ん…?なんだよ…だるいことになってんな……っ!?」


ドン!!と、近距離で砲撃をもらうクーゴ。


クーゴ「ちっ!無鉄砲すぎたか…!?」

苦戦するクーゴ。その時…

ズガガガガガバン!!!!


トオン「何やってんのー!」


トオンが戦闘ヘリで援護射撃する。

ガトリングで砲塔を破壊し、ミサイルでクーゴの戦車の下を爆破する。


ドガァン!

クーゴ「うぉっ!ったく…おい、助け方が雑だぞー!」

トオン「クーゴにはこれくらいで丁度いいでしょっ!」


バシュンッ!!

左右についたブースターを使い、一瞬で別方向へ加速する。



トオン「マイドの方も援護しなきゃ……お…やってるやってる…」


マイドの戦場はAI島付近の海上。

マイドが操るのは駆逐艦サイズの艦船。

海上を高速で移動しながら砲撃を続けている。


マイドの船が軍艦を圧倒的に上回っているのは、能力によって強化されたスクリュー回転によって実現した高速移動があることはもちろん…強力なジャミング機能を持っているからである。

敵の位置情報を乱すことで、砲弾・魚雷の命中率を極限まで下げている。


トオン「マイド!こっちの援護は不要だったかしらー!?」

マイド「トオン!そうだな…こちらは一先ず問題ない!こっちよりもルウラの援護をしてやってくれ!!」

トオン「りょうかいっ!…ルウラ、今どんな感じ?」


ルウラは大きな翼を持った戦闘機でドッグファイトを行っていた。


ルウラ「トオンか…!現在は戦闘機34機の相手をしながら爆撃機18機も狙っている最中だ!」

トオン「分かった…わたしも戦闘機の相手をした方がいい?」

ルウラ「いや、トオンは優先的に爆撃機を狙ってくれ。AI島への被害が深刻だ」

トオン「オッケー…!」


二手に分かれて空中戦を開始する。


その頃、シリューは島に残り、消化活動を行っていた。


ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

蛇のように地を這うドラゴンロボ。

プシャー―ッ!!!

口から泡を発射して鎮火する。


シリュー「…! タンクが空だ…一度戻るか………あいつらの方は順調みたいだな…」


レーダを確認して安堵の表情を見せる。

しかし、それも束の間


ピピピピ…!

シリュー「……何ッ!?…分かった……ちっ…キャノンの換装をしておきたい所だが、それどころではないか…!」


ズオオオオッ!!!

地を這い、報告のあった場所へ向かうシリュー。



シリュー「クッ…!!」


マイドの砲撃を潜り抜けて接近した潜水艦から大量の歩兵が乗り込んできていたのだった。

機械の歩兵は全てが遠隔操作をされており、非常に精密な動きをする。

射撃性能も高く、操作している人間はゲーム感覚で操作が出来るので精神的動揺が無いのが大きな利点の兵器である。


ガガガガッ!!!

重量に圧倒的な差があるため、簡単にすり潰すことは出来るが…

パァン…!!


シリュー「クソ……どこから狙撃している……!?こうも小さいと探索も容易ではない。降りて戦った方が手っ取り早いが機体の放置も雑魚に時間をかけすぎることも出来ない…もたもたしていれば更に上陸を許してしまう…」


モニターで地面に倒れている作業ロボットを見る…


シリュー(…っ!今は犠牲を抑えることを優先する!)

「全ロボットへ通達する!安全を第一に考え、センタータワーへ避難せよ!!」

(…やりたくはないがいざとなればバスターキャノンで一帯を焼き払う…!…こんな兵器を隠していたくらいだ…ボスと合流し、助力を乞おう…)




AI島侵攻作戦から大破したままのセンタータワー。

頼みの綱であるボスの桃華は地下に繋がれたままいる。


避難してきたロボットが近づく前に歩兵部隊が乗り込んでいた。

ザッ!ザッ!ザッ!

バッ!!

横一列に並び、桃華へ銃を向ける。


「撃て!」


部隊長の指示で、コントローラーのボタンを押す操作員たち。


ズガガガガガ!!!!!!



歩兵によって撃ち抜かれてしまう桃華…

個々の戦力では上回っているものの、圧倒的な物量で徐々におされてしまうロボット軍。

人間側にはまだまだ秘密兵器が控えているが、それに対抗できる手段はあるのだろうか…


次回『皆で放て!全力全開の一撃!!』


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