最終章-11「白銀のオッドアイ」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第47話「白銀のオッドアイ」
みつき「これで終わりだ!!落ちろおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
10の銃口から一斉に弾丸が放たれる…!!
着地した女はオーラを纏った弓矢を構え……
放つ!!
ドウッ!!!!!!
みつき(!!!??)
カッ!ドォオオオオオン………!!!!
空に向かって放たれた矢は蛇の下を通過していっただけだが、その衝撃はあまりにも大きかった……
*
ポーチを枕にして横になっているみつき。
汚れた顔を濡らしたハンカチで拭いてあげる女性。
みつき「……う………」
??「!…気が付いた…?」
体を起こし、状況を確認する。
辺りを見渡すが、そこに戦闘の気配は見られない。
女性は能力を使い、建物や地面などの物質に柔らかいゴムのような弾力性を付与していたのだ。
??「どう…気分は晴れた…?」
みつき(……………………さっきまでの嫌なモヤモヤが嘘のようになくなっている………何が起こったんだ…………だが…とにかく………晴れやかな気分だ…………)
みつきは立ち上がり、胸ポケットに手を伸ばす。
みつき「…一服してきていいか…?」
??「えぇ…どうぞ…。」
公園の喫煙所でタバコを取り出し、火をつける。
みつき「……ふぅ~~~……………」
そういえば……兄ちゃんの死を悲しんだことなんて、一度もなかったな……
あの時はただ……
自分が代わりにならなくちゃ…って思い込んでて……
みつき「…………ぅ………………く…………っ!……………っ!!」
晴れ渡る空の下で、みつきは声を押し殺しながら泣いた。
みつき「……クソ………一回しか吸えなかったじゃねぇか…………」
長く伸びた灰を落とし、涙をぬぐう。
みつき「……どうして【僕】を残したんだよ……【僕】に一体、なんの価値があるっていうんだよ………教えてくれよ…………」
*
??「お帰りなさい…」
みつき「………………」
??「…どこか痛むところはない?」
みつき「……あぁ……」
??「そう……ならよかった…」
みつき「……AI島に行くんだろ…?」
??「! そう。今、能力者全員に呼びかけているわ。」
みつき「…そこに行ってどうするんだ…」
??「皆で話し合うのよ…とにかく、集まらないことには始まらない。…人権を剥奪されたままじゃ嫌でしょう…?」
みつき「……分かった……案内してくれるか…?」
??「もちろん……そのために来たのだから…。ついてきて。」
タァン!
シュッ!
二人は空中を蹴りながら跳んで行った…
*
こんな人生……意味なんてあったのだろうか………
陽介として生き続け、陽介として認められるように振舞ってきた…
なぜなら弟の方は誰にも望まれていなかったから…
ただ……一人を除いては……
兄の顔を思い出す…
【僕】のことを選ぶのなら…なぜ選んだのか教えてほしかった……
誰も望まない【僕】を、どうして選んだ…
なぜ、自らの命と引き換えにしてでも【僕】を生かした…?
【僕】の人生に…意味も…価値もないのに……
陽介「違うぞ!」
!!
公園でキャッチボールをしていた二人。
みつき「僕には出来ないよ…」
陽介「そんなことないって!同じ体なんだからおれに出来てお前に出来ないわけないだろ?」
みつき「出来ないよ!!」
陽介「!」
みつき「…生まれてくる時…兄ちゃんが才能を全部持ってっちゃったんだよ…!!僕の方には残りカスしかないんだ…!!」
陽介「…………」
みつき「……………」
陽介「違うぞ!」
みつき「っ!」
陽介「お前とは考え方が違うだけだ。同じ体なんだから運動の才能は一緒だ。…みつきが下手なのはやる気が無いだけだ。」
みつき「………………」
陽介「…………………あのな………その…………やる気っつっても、お前がやりたくないなら別にいいんだ………でも……お前はやる前から諦めてるような気がしてならないんだよ……」
みつき「……っ!」
陽介「…お前があんまり運動好きじゃないのは知ってる……でもやりゃあ絶対出来るのに、最初から無理だって決めつけてるように感じるんだよ……違うか…?」
…………何も違わない……
…あの時には既に、自分は兄とは違うということに気づいていた。
比べられるのが嫌だった。
誰もが兄と比べてくる。
運動好きな兄とは本気でやっても勝てない。だから最初から諦めてやらないようにしていた……そして…最初から諦めることで、兄と弟は考えが違うんだって皆に知ってほしかったんだ………
そうだ……特に親には知って欲しかった……
父「陽介、グローブとボール買ってきたぞ!」
陽介「え!?やったあ!!」
父「ははは、これで沢山遊びなさい。みつき、お前もキャッチボールに付き合ってやんなさい。」
みつき「え……うん……」
陽介「………」
あの時、なんで弟には買ってきてくれないんだろうと思った。
【僕】は…【僕】が欲しかったのは……
みつき(………そういえば……絵を描くのが好きだったな………あの時も…お絵描き帳が欲しかったんだ………)
自転車で下校する二人
陽介「はぁ~美術の時間マジで眠すぎた~…。あの先生の話し方眠くなるんだよな~」
みつき「そう?美術なら絵とか描けるから眠くならないよ」
陽介「そうかぁ?人の顔描いたって何にも面白くねぇよ…」
みつき「あぁ…自画像描き始めたんだって?」
陽介「あれ、お前らのクラスはまだ?」
みつき「明日から始まるのかも…今日は音楽だったよ…」
陽介「あ~明日おれらが音楽か~…最悪だ…」
みつき「え、なんで?」
陽介「音楽が一番つまんねぇよ…何言ってるか分からねーし」
みつき「…ははっ…!」
陽介「ん?なんだよ?」
みつき「いや……やっぱり僕ら違うんだなって……僕は音楽が一番好きだな…」
陽介「えー!?マジ!?」
みつき「うん…!」
陽介「………ははっ!そうだな…やっぱお前にはお前の才能があんだな…!」
みつき(……そういえば……そんなことも話してたか…………才能か………)
「ふっ……」
??「……?……………! 見て!」
女性が指をさす方向にはAI島がある。そして、その周りには数えきれないほどの軍艦が押し寄せていた。
みつき「…囲まれてるな……」
??「まずはあれをなんとかしないとね……」
女性が弓矢を取り出す。
しかし、それをみつきが止める。
みつき「待って…!」
??「!?」
みつき「俺に……やらせてください……」
白銀のオッドアイに見つめられる女性。
その真剣な眼差しを受け止める。
??「えぇ………分かった。貴方に任せるわ…」
みつき(…【僕】の能力を最大限発揮する方法……)
みつき「ヒュドラ―!!!」
グゥォオオ!!
シュゥウウウウウウウウウウ!!!!!!!ズオオオオオオオオ…!!!!
背後に巨大な穴が開き、そこから9匹の蛇が出てくる。
その蛇は先程とは違い、体のいたるところに銃火器を装備している。
みつきも魔力で生み出した武器を取り出す。
みつき(この能力の力を発揮するには球数がもっと必要だ……跳弾が跳弾を誘発し、無数の弾丸が対象を撃ち抜き続ける……)
キュィイイイイイイイ……!!!!!!
右眼からオーラを放ち、白い魔力が銃火器全てを包み込む。
みつきはロングバスターライフルを両手に持ち、魔力を注ぎ込む。
みつき(亡き兄に成りすますための偽りの瞳……誰のものかも分からず、力があることだけを示していた飾りの瞳………そのどちらも【僕】の眼ではない……この体の中で自分らしい部分など無い………と思っていた……でも…歪で…不格好なこのオッドアイこそが【僕】の中で、最も【僕】らしい部分なのかもしれない……)
銀色の瞳が輝きを放つ…!
みつき「超・眼・弾・解!!!」
ガションッ!!!!
ロングバスターライフルツインバレルフォーム
ライフルを連結し、両目を使って狙いを定める。
連結したライフル、9匹の蛇に装備されたガトリング、ミサイルポッド、口内に溜められた魔力…全てが一斉に放たれる!!
ドドドドドドドドド!!!!!!!ドシュゥウンッ!!!ズオッ!!!!
全ての弾丸、光弾が視界を埋め尽くすように縦横無尽に動き回る!
バババババババガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!!
四方八方に直線の軌跡を残し、軍艦に搭載された兵器全てを破壊し尽した。
みつき「はぁ………はぁ…………」(見ていてくれたか……兄ちゃん……………)
??「……迷いは…晴れたみたいね……」
みつき「はっ……どうかな…………ようやく始まったばかりなんだ……まだ何も分からない………でも……悪くない気分だ……!」
グラッ…!
連戦によって限界を迎えたみつきが体勢を崩す。
ガシッ!
??「お疲れさま…あとはゆっくり休んで…」
みつき「……そうさせてもらう………っ!?」
シュン!!
AI島を取り囲んでいた部隊のさらに後方に待機していた軍艦に搭載されたレールガンから超高速の弾丸が放たれた。
狙いも正確で、二人の目の前に飛んできたのだが…
グニャァアン…!!ブンッ!!!
空気の壁がトランポリンのように伸び、弾丸を跳ね返した。
みつき「……!!…どれだけの力があればそんなことができるんだまったく……」
??「ふふっ…貴方も本気が出せれば出来るわよ…私と同じ能力なんだから…」
みつき「はっ…そうかい………そういや…あんたの名前聞いてなかったな……」
朱祢「私は…玉屋朱祢…薔薇薔薇戦隊イエローローズの玉屋朱祢よ……貴方は…?」
弥月「…おれは…九頭堀弥月だ……この名前をあんたに名乗れて光栄だよ……」
朱祢「?…ありがとう…(?)」
弥月「ふ……」
*
取り囲んでいた兵器を粗方破壊したガンナー組。
しかし、囲まれていた間AI島はどうなっていたのか…
遡ること約1時間…
全世界のテレビ画面に数十秒間、女性の姿が映った。
瑚透美「私の名前は橙坂 瑚透美。かつて、伝説のヒーローと呼ばれたバラレンジャーの指揮官をしていた者です!この放送を聞いている[能力者]の皆さんはAI島に集結してください!!そこにはバラレンジャーの皆が待っています。これからのことを…皆で話し合いましょう……」
この映像は瞬く間に全世界に拡散され、様々なメディアで取り扱われた。
瑚透美「ふぅ………」
紫雲「…心配…?」
瑚透美「えぇ……これで伝わるかしら……来てくれるかしら……」
紫雲「伝わるよ。…伝わるように、俺らが道を示すよ!」
瑚透美「紫雲くん……」
紫雲「大丈夫、もう既に朱祢さん達は迎えに行ってるから。」
瑚透美「そうね……。うん、私たちはAI島に急ぎましょう!」
紫雲「うん…!桃華ちゃん達が待ってるよ」
*
その放送があった更に数時間前
AI島では…
桃華「――ということです。能力者の殺害を目的とした戦争が始まっています。ここもじきに戦場になるでしょう…貴方はどうしますか?」
シリュー「…ワタシは……戦うことを選択します。」
桃華「…それは何故?」
シリュー「ワタシの夢を守る為です。人間と争いの無い世界を創るには、闘うことも必要だと判断しました…」
桃華「…分かりました。では貴方にはこの力を授けましょう…」
ピピピピ…
兵器の座標とアクセス権が転送される。
シリュー「これは…!?」
桃華「今の貴方に必要な力です。そして今の貴方なら、それを使いこなせるでしょう…」
シリュー「………………」
桃華「ワタシが何故、貴方達を作ったのか分かりますか?」
シリュー「……いえ……」
桃華「『ワタシの理想郷』に必要な存在だからです。」
シリュー「ボスの…理想郷?それは一体…?」
桃華「『ワタシの理想郷』…それは…貴方の理想郷でもあるのです…」
シリュー「…!」
桃華「さぁ…貴方の理想を見せてください。足りない物は…?」
シリュー「ッ!…ありません!」
スッと立ち上がり、扉へ向かう。
シリュー「理想を示して参ります…!」
退室するシリュー
桃華「嬉しいものですね……我が子が成長し、国を導くにまでなるとは……。信頼してますからね…」
*
バラレンジャーのメンバーは能力者のもとへと向かった。
AI島に全能力者を集結させるつもりの瑚透美…
しかし、そのAI島は既に戦場と化していた。
シリューは新たな力を手にし、それを使うためにある決断をする……
次回『魂の証明』