最終章-7「アイの集い」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第43話「アイの集い」
瑠玖と巫言、二人の前に現れるモンスター。
二匹のモンスターは二足歩行から四足になり、突進してくる。
巫言「これが最後の闘いですわ!気張るわよ、瑠玖!」
瑠玖「うん!」
絢爛華麗の琥珀と紅桔梗の意志
碧眼と翠眼の優しい煌めき
己を象徴するオッドアイが聖なる力を呼び起こす!
巫言「武真威砕…!!」
瑠玖「神麗開鳥…」
掛け声と共に、二人は光に包まれ、変身する。
巫言「行きますわよ!」
瑠玖「うん!!」
大剣を弓に変形させ、左手で空間に穴を空ける。
巫言は右手で穴にエネルギーを送り込むと、すぐにモンスターのもとへ向かう。
巫言の能力が付与された矢を放つ瑠玖。
モンスターはそれを避けるが、矢の爆発に巻き込まれ体勢を崩す。
その一瞬の隙をつき、ハンマーで粉砕する。
それを見たもう一匹が巫言に襲い掛かる。
数度の打ち合いの後、鍔迫り合いになるが巫言は不敵な笑みを浮かべる。
チリチリィ…!
(ピクッ!)
ババババァン!!!
巫言の周りで粉塵爆発が起こる。なんとか飛び退くモンスターだが
ズガンッ!!!!!
強力な重力場により、身動きが取れなくなる。
後ろに回り込み、斬りかかる瑠玖。爆煙から飛び出てハンマーを振り上げる巫言。
モンスターは爆発四散し、大剣とハンマーがぶつかり合う。
まるでハイタッチのように
瑠玖「やったね…!」
巫言「えぇ…よくやったわね…!」
瑠玖「うん……でも……ちょっと…疲れたかも…………」
ふらっと倒れる瑠玖を受け止めるが
巫言「私も…さすがに堪えますわ……」
力が抜けてしまう巫言
*
貴峰「はぁ……はぁ…………」
野山を駆ける貴峰
貴峰(…私……なにされたんだろう………頭が回らない……五感の全てが麻痺してるみたい……気分も最悪………藍さま……こんな時藍さまなら………)
樹に寄りかかって座り込む貴峰
貴峰(……………ううん……駄目だ…すぐに藍さまに頼ろうとしちゃ……まずは…私に出来ることを精一杯やるんだ……!)
虚ろな目をキッと力ませる。
貴峰(冷静になって状況を整理しよう……私は病院で何かをされた…恐らく普通の人なら死んじゃうほどの何かを…。更に念を押すように銃で撃ってきたし、今でもたぶん追ってきてる…。私の命を狙ってきているのは確実…。この状況で頼れるのはどこだろう……病院に行って診てもらえる…?いや、その病院で襲われたのだから信用できない…警察は?……いや…それも駄目……私を狙ってきているというのなら能力者全員が狙われているはず……そして、一般市民を巻き込みながら戦闘だなんて普通じゃない…なりふり構わなくなってるってことは世界中の人たちが狙ってくるはず……なら、この世界で唯一信用できるのは……)
「同じ能力者同士だけだ………まずは…なんとか合流して…回復しないと…………藍さまの所へ行けば、巫言ちゃんも、瑠玖ちゃんもいるはず………」
ゆっくり立ち上がる貴峰
ガサガサ…ッ!!
貴峰「っ…!?……………変身……」
シュゥウウ……カッ!パリィン!
囲まれている気配を感じ、臨戦態勢になる貴峰。
貴峰(…今は回復が優先…戦う必要なんてない…守護獣を使って逃げよう……)
「「グアアアアア!!!」」
茂みから飛び掛かってくる獣。鋭い爪と牙で攻撃してくるが…
ヒュンヒュン!! スパスパスパ!!!
体がボロボロとは言え、難なく対処する貴峰。しかしそれは囮…
カッ!!
貴峰「っ!!?」
バッ!! ゴォオオオーーーーーッ!!!!!
バリアを張ってなんとか防ぐが、木々を一瞬で焼くほどの熱放射を目の当たりにして驚く。
貴峰「…………逃げようかと思ったけど……アレは放置できないかな……」
視線の先には口から火を吹いたモンスターがいる。
胸の辺りには赤く光るコアがあり、近づけないほどの高温になっている。
貴峰「くっ…!?」
それだけではない、あのコアからは生物に有害な放射線を放っている。
「防いだか……」
貴峰「っ!?じゃべった!?」
「ハハハ…この口で話しているわけではないがな…私の意思を人間の言葉に出来るように改造してもらったのだ……」
貴峰「…あんた…元々この星の生物じゃないってわけ…?」
「そうだ……私たちは20数年前の戦争に駆り出された戦闘種族だ。」
貴峰「へぇ~どうでもいいんだけど今急いでてね…色々知ってそうだから始末するかどうか悩んでるんだけどどうされたい?」
「私を始末すると…?面白い…そんなことが出来るなら試してみるがいい!!」
モンスターは熱風を噴射し、生物とは思えないスピードで突っ込んでくる。が…
ビタァ……!!
「!!??」
斧を喉元に突きつけられ、静止する。
貴峰「…あんたを改造したのがどこかも気になるし、他に仲間がいるのかも気になるからこのまま放置していこうかな……」
「能力者…!!侮っていた……まさかここまで強力な力を持っているとは…!…デビルキング様がやられてしまったのもやはり真実のようだな……だがッ!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!
コアが輝き、凄まじい熱と光を放つ。
貴峰「くっ!」
貴峰の拘束を振り切り、攻撃を仕掛ける。
「ハハハハハ!!!!これが核エネルギーとの融合の力だ!!生物の限界を大幅に越えた最強の力なのだぁ!!!!」
ドンッ!!!
貴峰を蹴り飛ばす。
周囲を熱で焼きながら暴れ回るモンスター
貴峰(やばい!…ダメージのせいで全然能力が使えない!!抑えきれない…!)
ついに山から飛び出し、街中に叩きつけられる貴峰
「街もろとも吹き飛ぶがいい!!!」
ゴォオオオッ!!!!!
口から炎を吐きだそうとするモンスター
貴峰「っ!!やめ……」
ボオオオオオオオオオオッツ!!!!!!!
貴峰「このっ!!」
バァアアアアア…!!!!
上空に大きなバリアを張って街を護ろうとするが…
貴峰(やっぱ……力が……全然……!)
ミチミチ…!! ボッ!!
貴峰「ああ!?」
バリアが割れ、隙間から熱光線が出てしまう。
「きゃあああああああああ!!!!」
街中はパニックになり、あちこちの建物や人が一瞬で焼かれてしまう。
バリアを割り、モンスターが貴峰に突進。激しい殴打をもらい、吹き飛ばされる貴峰。
貴峰(やばい…あいつから絶え間なく変なモノが出てるせいでどんどん体が機能しなくなっていく……あの時始末しておくんだった……!)
貴峰「ホーク!!!」
ピギャアアアアアアアッ!!!!
飛んできた大鷹につかまれて上空に逃げる貴峰
貴峰(いったん体勢を立て直さないと…街からもあいつを引き離さないとだし……っ!?)
高速で飛行する鷹を上回る速度で飛んでくるモンスター。
熱噴射で加速し、その勢いのまま鷹ごと貴峰を叩き落とす。
守護獣のオーラは消えてしまい、貴峰も動けない。
ドンッ!!!
貴峰「かっ…!!」
落下してきたモンスターに踏みつぶされる。
「いくら貴様が超能力をもっていようが、所詮は生物!代謝が出来なければ死あるのみよ!!」
貴峰「このッ!!!」
鎧の下から桃黒のオッドアイが光る
「オオォ!?」
体の内部が膨張し、破裂しそうになる。
死を直感したモンスターは切り出す。
「いいのか!?私のコアを破壊すれば、内部のエネルギーが周囲を焼き尽くすぞ!!?」
貴峰「っ!?」
力が弱まる
「……ハハハ…そうだろう…他の人間を巻き込みたくないだろう……」
貴峰「…卑怯な…!!」
「フッ…化け物に言われたくはないな…どんな手段を使ってでも勝つ!それが我々の種族の誇りなのだ!!」
貴峰(うぅ……もう駄目かも………)
泣きたくなるようなこんな時…
思い出すのは藍の姿…
貴峰(くっ!!私はぁ……!!)
藍(貴峰……)
貴峰(っ!?)
藍(貴方なら出来るはずよ…自分の力を……信じなさい……)
貴峰(藍さま……)
父(そうだぞ…貴峰なら大丈夫だ…!)
母(信じてるわ…貴峰…!)
貴峰(お父さん…お母さんも………)
貴峰「ッ!!!」
「!?」
ビシ……ビシビシ……!!!
モンスターの周囲を固定する。
貴峰「勝つのは……私だッ!!!!! 飛翔しろ!!ホークッ!!!!!!」
ピギャアア!!!!!
空高くに現れる大鷹。
貴峰の掛け声を受け、急降下する。
「キッ…サマァ!!!」
モンスターが貴峰を攻撃しようとするが、その前に鷹に捕獲され貴峰から離れる。
ブシィ…!!
「グオオォ!?」
鷹の爪で肉体を貫かれるモンスター。
ダァン…!!!!
「ガッ!?」
そして見えない壁に叩きつけられる。
貴峰「天技ッ…圧翔!!!」
(高く舞え!!そして勝利をつかみ取れ!!!)
聖なる輝きを放ち、飛翔する貴峰
貴峰(私は…独りじゃない…!!)
斧を振りかぶる…!
「待て!!私を殺せば街が…」
貴峰(私は、私を愛してくれる人に…)
ザンッ!!!!!!!!!
見えない壁ごと斬り裂き、大きな斬撃を空に描く。
カッ!!! 桃黒のオッドアイが豊麗な輝きを放つ。
貴峰はその能力を覚醒させ、モンスターを時空ごと固定した。
鷹の背に乗り、モンスターから離れる。
ドッ……ドッ………ド………
モンスターは何度も小さな爆発を起こして絶命した。
貴峰「私は、私を愛してくれる人に胸を張って生きていきます!!」
ドォン!!
最後の爆発と共にモンスターの体は砕け散った。
『色欲』に踊らされ、何もかもを失った少女
絶望の淵に沈み、死を望んだ少女は運命的な出会いを果たす。
大きく、美しい女性に希望を見出した少女は這い上がることを決意した。
ゆっくりと歩みを進める少女だが、希望の光にすがっている現状に憂いていた。
そしてついに、大罪との関わりを絶ち切り自分の道を見つけることができた。
だが、それは決して一人で進む道ではない。
いつも傍には大切な人が…
『愛情』がそこにある…
誇りと愛を翼に込め、希望の光へと飛翔する少女の名は…
―――空野 貴峰―――
*
鷹の背に乗り、施設を目指すのだが…
貴峰(なんとか…なったけど……もう……限…かい…………)
パァアア…!と変身が解け、気絶する貴峰。
その横を通る一発の弾丸…
九頭堀(……こっちは間に合わなかったか……だが…大丈夫そうだな………今のところ戦闘がありそうな能力者の居場所は3つ…ユニコーンとケルベロスのいる所…氷のライオンがいる所…そして……)
*
志紀「わああああああ~~!!」
鷲に乗りながら戦闘機とドッグファイトする志紀。
みどり「がんばれ~」
地上でバイクに跨り、気の抜けた応援をするみどり。
数分前、弾丸を飛ばして能力者の居場所を探っていた九頭堀は志紀の戦闘を目撃する。
様子を見ようと近づいた瞬間、みどりに弾丸をつかまれてしまった。
蛇に戻った弾丸にみどりは話しかけた。
みどり「ん~もしかして君も能力者かな?どんなつもりか知らないけど、こっちには来なくていいよ~。ほら…主人の所へお帰り。」
手から離れた蛇は弾丸に戻り、跳弾しながら引き返した。
みどり「…敵じゃなさそうね…それにあの能力は………」
*
九頭堀(あそこにも能力者がいたが…あれは大丈夫だろう……というかアイツは誰だったんだ…?)
「ったく…どいつもこいつも簡単に弾丸に触れやがって………自信なくすぜ……」
リボルバーをホルスターにしまい「ヒュドラー…」とつぶやく
すると、時空に穴が開き蛇の頭が顔を出す。
その蛇の口に手を突っ込み、ボルトアクション式のライフルを取り出した。
九頭堀(今度こそキッチリ決める……)
スコープを覗き、呟く。
「…パーティの始まりだ……」
*
いよいよ彼の独壇場
銃口が火を噴く時がついに来た
スコープを覗くその瞳は…
トリガーを引くその指は…
飛んでいく弾丸のその先は……
次回『銀眼のスナイパー』