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Odd I's  作者: TEAM,IDR
42/58

最終章-6「想いと意地」

「Odd I's」

最終章「オッドアイの英雄」

第42話「想いと意地」


「「ぐあああああ!!!!」」 「「ぎゃあああああああ!!!」」

藍「!?」


所長室で作業をしていると突然、大勢の叫び声が聞こえてくる。

急いで子ども達のいる場所へ向かうと、そこには職員を含めたほぼ全員が意識を失い、暴走していた。

かなり狂暴になっており、殴る、蹴る、引っ張る、噛むなどで攻撃し合っていた。


藍「なに…!?はっ…!」


藍の視線の先には先程食べていた食事。

よ~く目を凝らして見てみると小さなミミズのような虫がうごめいている。


藍「食事に…」

ビタァ…!!

「うっ!」「っぐ!」

全員の動きが止まる。


藍「食事に寄生虫を混ぜるだなんて……絶対に許せませんわ……!!」

藍は強く拳を握り、怒りを(あらわ)にする。


子供に近づき、膝をついて正面に座る。

そして目を閉じ、集中して脳内の寄生虫を探し……潰す。


「っ!」

藍「気が付いた?」

「うぅ~こわかったよ~!」

藍「よしよし…もう大丈夫よ…。さ、他の子も助けないとだから少し離れてなさい」


こうして藍は次々と洗脳を解いていく。


藍(ここにいないのは瑠玖と巫言と貴峰ね……貴峰はこの食事を口にしていないから大丈夫だとは思うけど…二人は今頃大丈夫かしら……)



瑠玖「巫言ちゃん……」

巫言「ハァッ!!」

瑠玖「っ!!」


ゴンッ!!!

ハンマーを振り下ろす巫言。それを大剣で防ぐ瑠玖。


瑠玖「巫言ちゃん!正気に戻って!!」

巫言「ウウウウゥアア!!!」


ハンマーを器用に振り回し、激しい追撃をしてくる。

瑠玖「くっ…!!」

ガンガンガンガン!!

それをなんとかいなし、ハンマーでの突きも飛び退いて避ける。

後ろに飛びながら、大剣を変形させ、弓矢で攻撃する。

ドン!!ドン!!ドン!!!

チリ………ババババァン!!!

だが、巫言に届く前に紫色の粉塵に触れて爆発してしまう。


その爆煙から巫言が飛び出してくる。

しかも紫色の球のようなものを持っている。


瑠玖「!!!!」


あれが爆発すればこの街はただでは済まない。そう直感する瑠玖


ズンッ!!!!!!!!!!!!!!

ドゴォッ!!!!


球を持ったまま、凄まじい勢いで落下して地面にめり込む巫言。

ググググ…!!!

瑠玖「ごめんね、巫言ちゃん…すぐに終わらせるから…」


巫言の周りだけの重力を強め、動きを止める。

すると…

パァン!!

ガンッ!

飛んできた弾丸を大剣で防ぐ。

瑠玖「何っ!?」


どこからか狙撃された。

パァン!!

瑠玖「くっ!!」

今度は違う方向から…

瑠玖(どうしよう……ほんとに私たちが狙われてるんだ……これじゃ集中できない……!)



黄慈との会話を思い出す。


黄慈「……というわけなんだ。今、君たちは世界の注目の的だ。世界中の国が議論し、動いている。その様子は君たちもニュースで見ているだろう。…もしかしたらこの先、急に戦闘に巻き込まれるかもしれない。でもそれが君たちにとっての『闘い』だ…。…その力を受け継いだ定めだと思って抗ってほしい。」


貴峰、巫言、瑠玖はうなづく。


黄慈「…この『役目』を全うできるのは君たちだけだ…頼んだよ……あ、もちろんそういうことが起こったら真っ先に僕や藍さんに頼ってくれていいからね」

「「はい!」」



瑠玖(………やるしか…ないんだ……私が…!闘わなきゃいけないんだ!!)


キッ…!

弓矢を構え、狙撃された方向を睨む

すると…

ヒュン…クンッ!…ビシッ!

瑠玖「!?」

不自然に曲がり、狙撃手に麻酔弾が当たる。



九頭堀「プレゼントだ…オッドアイのガキんちょ……能力者同士仲良くやろうぜ?」


ダァン…!!ダンッ!!


麻酔銃の後にリボルバーの弾丸を発射する。

リボルバーから放たれた弾丸は蛇へと変わり、その蛇が見た景色を九頭堀の視界と同調させる。

その視界を経由して能力を使用し、跳弾させて狙撃手に当てていた。



瑠玖(なんだろう……でも味方…?みたい……うん、これなら集中できる!)

視線を巫言へと戻す。


巫言「ググググググォォォオオオオ!!!!!」

瑠玖「っ!やめて!これ以上動かないでよぉ…!」


ズンッ!!!

地盤が陥没する。


瑠玖「お願い…動かないで…!これ以上やったら体が潰れちゃう…!!」

巫言「ウォオオオオオオオオ!!!!!」


ピシィ…!!ピシピシ…!!

紫色の球が弾けそうだ…


瑠玖(お願い……もう少しだけもって…!!)


グチュグチュ…ブチィ!


瑠玖(よしっ!あともう少し…!…っ!!!)


カッ!!!

弾ける球体。

瑠玖「サムルクッ!!!!――――――ッ!!」

バサァ…!!

瑠玖の背を包み込む緑色の翼

そしてそれをさらに包み込み、収縮する重力場。


ドッ…!!ドォン……………!



ドサ……パァン…!

倒れる瑠玖。変身も解けてしまう。

あの時、ユニコーンへやったように爆発の威力全てを重力の能力で押し込めた。

そのおかげで周りへの被害はなかったが、内側にいた二人はかなりの重傷を負ってしまった。

特に瑠玖は巫言や周囲を護ることに集中してしまっていたので瀕死の重傷である。



巫言「はっ!!」


巫言の四肢は肉壁のような物にめり込んでいて動かない。

自分の体の意識の外側から景色を見ているようだった。


巫言「瑠玖!?(わたくし)は…操られて……っ~!!クッソォ!!!!!………………………………(わたくし)は…また過ちを繰り返してしまうの…?強大な力に振り回され続けて…………結局……(わたくし)は無力なままだ……………」


力無くうつむく巫言…


瑠玖「……巫言…ちゃん……」

巫言「!! 瑠玖!!」

瑠玖「……息は…あるね……よかった………」


瑠玖は美しい羽を巫言の頬に当てる

スッ……

巫言「っ!?」

体が癒され、傷が治るのが分かった。


瑠玖「……………っ……」

瑠玖は意識を失ってしまった。


巫言「っ!……(わたくし)は……(わたくし)は…!あの時から…変わった!!力に従うだけの存在でも…非力を恨むような存在でもない…!!!救世主に出会い、心の強さを学んだんだ!!目指す先を見つけたんだ!!!こんなとこでッ!!止まれねぇんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」


「ウッ!!ウグアアアアア!!!?」


少しだが、外の意識にも干渉できるようになっている。


肉体は苦しんだあと、ゆっくりと立ち上がり、ハンマーを手にする。


巫言「虫けらがァ!!!!(わたくし)の親友を!!傷つけるなあああああああああああああ!!!!!」

「ガアアアアアアアアアアアア!!!!?」

巫言「がああああああ!!!!!!っ!!はっ…!はっ…!…瑠玖!!しっかりして!!」


意識が戻った隙に瑠玖に近づき、揺さぶる。

しかし、反応はない。

巫言「どうすれば……っ!!」

辺りを見渡すと近くに先程と同じ羽が一枚落ちていた。


巫言「瑠玖!!」


巫言はそれを急いで瑠玖の額へ近づけた。

スゥ…っと体へ溶けていき、傷を癒した。


瑠玖「……みこと…ちゃん…?」

巫言「っ!よかったぁ!!」


巫言は横たわる瑠玖を抱きしめる。


巫言「立てる…?」

瑠玖「…うん……なんとか……っつ…!」

巫言「うっ!」


痛がる瑠玖、頭を抑える巫言。


瑠玖「巫言ちゃん!?そうだ…まだ寄生虫が!」

巫言「……る……く………」

瑠玖「!?」

巫言「るく……今から……とびきりの一撃をこのクソったれな寄生虫にぶち込みますわ……それが落ち着いたら……コレを…取り除いてくださるかしら…?」

瑠玖「そんな……みこっ…うっ…!」


瑠玖が力を使おうとすると全身が痺れ、身体を動かせなかった。

能力が使えたとしても、あとほんの僅か…それこそ、この寄生虫を取り除くくらいの余裕しかないはず…それを感じ取った巫言は自爆の決断をする。


巫言「ぐっ!!!…っく…!うおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!!!!!」


ドンッ!!!

ジャンプで空高くへ上昇する巫言


巫言「これが(わたくし)の覚悟だ!!これが(わたくし)の強さの証明だ!!!」


ッドォオオオン!!!!

上空で大爆発が起こる


巫言(くっ…!!……負けるわけ……ないでしょう……苦しみも…哀しみも…怒りも…呪いも……喜びも…友達も…平穏も…幸せも理解できないちっぽけな虫けらに…!!!)

「わたくしの人生を…!!!奪われてたまるかああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


ドン!!!ドン!!!!!ボンッ!!!!ボボボボボン!!!!!


巫言「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!くたばりやがれえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」


連続で大爆発が起こる


瑠玖「巫言ちゃん…………」

(ううん……巫言ちゃんならきっと大丈夫……だって巫言ちゃんは初めて会った時から優しくて…いつも一生懸命で…たくさん勉強してるのに私の面倒も見てくれて……辛いことがいっぱいあったのに私たちのことも理解してくれる……強い…お姉ちゃんなんだから!!)


瑠玖「私は…私のできることをしないとっ………サムルクッ…!」

バサァ!!

瑠玖「お願い……!私に……もう一度頑張れるように元気を分けて…!」


激しい爆発により、巫言の鎧は砕け落ちる。

割れた仮面の下からは血まみれの顔が見えている。


巫言(キ……ッツイ…!!……だがっ…それがこいつに屈する理由にはならない…!!!取り返すまでは……過去を清算するほどの祝福を手にするまでは!!!!!)

瑠玖(体中が痛い……でも…もう折れたりなんかしない!…どんなに痛くても…どんなに怖くても…どんなに辛くても…絶対に悪に負けちゃいけないんだ!!守らなきゃいけないんだ!!約束を…!!友達を…!!なぜなら私は…!!あの時から……ッ!!)黄慈との約束を思い出す


巫言「負けてたまるかよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

瑠玖「ヒーローなんだああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


パァン…!と鎧が全て砕け、落ちる巫言。

落下地点に走る瑠玖。

後ろから飛んできたサムルクの背を踏み台にして、さらに跳躍。そして巫言の体を抱き留める。

瑠玖「うっ…!」

痛みに耐えながら能力を使い、ふわっと着地する。

そして、集中し、巫言の寄生虫を全て取り除いた。


巫言「………ん……あぁ………」

瑠玖「起きた?巫言ちゃん」

巫言「えぇ……ありがとう…瑠玖」



酷い環境で育ち、心を閉ざしてしまった少女…

自分の眼をえぐるほどであった精神は、ヒーローとの出会いをきっかけに次第に回復へと向かっていった。

すさんだ精神を反映していた『貪食』の癖はなくなり、『上品』で『優雅』な美徳へと昇華した。

恩人との約束を背に、癒しの翼で大切なものを守るために闘う…

少女の名は…

―――砂霧 瑠玖―――



力を恨み、力に溺れた巫女…

神を拒絶し、運命を拒み続けた結果、何も信じることが出来なくなってしまった…

やがて彼女は『傲慢』の罪に侵され、他人すらも否定しようとしていたが…

不思議な縁のつながりで、優しいヒーローと出会い、心を救われた…

そして、今まで向けていた力の方向を『理解』や『許容』に向けることで正しい道へと進むことができるようになった。

彼女は信じることができる己の道を見つけたのだ。

その轍は沢山の人の(しるべ)となるだろう…

覇道を往く、彼女の名は…

―――大賀 巫言―――



二人の前に何モノかが近づいてくる…


瑠玖「なんだろう…あれ…?」

巫言「話し合いが通じるタイプではなさそうね……」

瑠玖「倒さないといけない敵…だよね?」

巫言「ええ。……瑠玖、まだ戦えるかしら?」

瑠玖「えへ…正直もうダメかと思ってたけど…なんだかさっきので吹っ切れたみたい……もう少しだけなら!戦えそう…!」

巫言「ふふっ…(わたくし)も……同じですわ…!!」



ボロボロの二人の前に現れる敵。

こんな時、誰かが助けてくれれば……そういえば、あの時助けてくれた銃使いのアンちゃんは何を…?

あ~らこっちも大変そうだ~

なら、二人を助けてくれそうな貴峰は?

……他の人たちも大変そうだ~

「ならっ、私たちでなんとかするしかないね!」

「ええ、最初からそのつもりですわ~!」


なら、やってもらおう。二人には「ご褒美の力」もあることだしっ…!


次回『アイの集い』


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