最終章-5「美徳の蒼焔」
「Odd I's」
最終章「オッドアイの英雄」
第41話「美徳の蒼炎」
ボコォン!!
爆発により、海面が盛り上がる。
その様子を船の上から見て笑みを浮かべる男。
紗良(くはっ…!!…っ~~!)
変身はしたものの負傷し、痛がる紗良
紗良(こいつら…ガチであたしを殺しに来てる…!クルージングに誘われた時から罠だったの…!?…くっ……ま、色々考えるのはあと!今はとにかく…酸素!!)
「ゴぼぼ…!」
青ざめる紗良
上に向かって泳ぐが…
ピクッ…
何かが目の前に現れる。
人の数倍はある巨体、ヒレのような腕、鋭い牙と一本角…
そして驚いたのはそのスピード。
水中を泳ぐ生物の最高速度は約時速100㎞ほどだが、このモンスターはおそらくそれを倍以上、上回っていた。
紗良(上には行かせないってこと?ヤル気まんまんだね……でもちょっとやばいかも……もう…息が苦しい…!)
紗良は太刀を構え、集中する
紗良(…時間はない…この一太刀で決めてやる…!!)
グッ…!…ビュォオオ!!
紗良の殺気を感じるやいなや、モンスターはヒレで水流を叩きつけ、その隙に紗良へ攻撃を仕掛けた。
ギンッ!!
紗良(っ!!)
まるで太刀のような鋭いヒレを受け止める。
が、踏ん張ることも出来ないのでそのまま流されてしまう
上に行きたいのに、ずんずんと下に追いやられてしまう紗良
水圧により、全身が締め付けられ、届く光量も少なくなる。
あと何秒潜っていられるのかも分からないのに、激しい動きによってどんどんとその時間が短くなってしまう。
焦りと、死の恐怖が襲ってくる
紗良(どうしよう…どうしよう!!)
能力も使えず、ダメージも受け、水の抵抗でまともに動けず、冷静に考えることのできない状態で戦闘を強いられている。
紗良(がっ……!!…もう……ダメ……………)
ベキィッ!!
首元へ太刀のようなヒレが直撃する
ダメ押しに尾ビレで、海底めがけて叩きつけられる。
力なく沈んでいく紗良…
その意識も深く深く沈んでいく…………
*
ガバッ…!
お花畑で目が覚める子供姿の紗良
視界を遮る物は辺りになにもない……
水辺の方へ歩いていくと向こう岸に人影が見える
紗良「…………!」
「…っ!!」
愛おしそうにお花を見つめていた女性。
紗良にはその人がハッキリと自分の母親だと気づいた。
紗良「ママ!!」
ばしゃん!! ざぶざぶ…!!
急いで川を渡ろうとするが…
「来ちゃダメ!!」
紗良(ビクッ!!)
紗良の生みの親、優子は悲しそうな顔で紗良を制止する。
紗良「なんで!?なんでなの!?…やっとママともう一度会えたのに!!」
優子「……紗良……ダメなの…こっちに来ちゃ………お願いだから戻って…………」
紗良「嫌だ!!今度こそママと一緒にいる!!ずっとずっとママと一緒にいたいもん!!!」
じゃばじゃば…!!
紗良はどんどんと進もうとし、下半身は完全に水に浸っている。
優子「ダメぇ!!」
優子の大きな声に驚き、拒絶されたことで哀しみの涙を流す…
紗良「なんで……どうしてそんなこと言うの……??…やっぱりママはあたしのこと嫌いなんだ……あたしが悪い子だから…嫌いになっちゃったんだぁあああ…!」
大泣きする紗良
それを見て涙を浮かべる優子
優子「紗良……………。っ……紗良…あなたにはまだやることがあるんでしょう?」
紗良「うぅ……っぐす………??」
優子「…思い出して…ここに来る前にしていたことを……」
紗良「…………………!!!」
今の姿に戻り、先ほどまでの記憶を取り戻す
紗良「っ!!……あたしは…そうだ…戦ってる最中だったんだ…!」
ザザ……!
川の水が腕に当たる…
優子は寂しそうな顔でこちらを見つめている…
紗良「………ママ…あたし…もう行かないと………向こうには友達も…パパも…新しいママも……妹も待ってるから………」
紗良は振り返り、現実世界の方へと歩いて行く……
優子は安堵するも、やはり表情は暗い…
岸に上がると紗良は振り返る
紗良「っ…!ママーー!!」
優子「!!」
紗良「ずっとずっと!大好きだからーーーーー!!!!」
優子「!!!!!」
大きな雫がぼろぼろとこぼれ落ちる…
紗良「あたしっ……!!……ママがいなくても頑張れるから……!!!…苦手だったお野菜もちゃんと食べてるしっ…!…ぐすっ……勉強もちゃんと頑張ってるし……嫌だったプールの授業もちゃんと出てるから…っ!!」
優子「う…うぅ……!」
紗良「お熱出ちゃったときは…ママにいっぱい迷惑かけたけど……あれから風邪もひいてないからっ……!…何度か危ないことしたりしてるけど……あたし…!元気にやってるからぁ!!」
優子「うっ……よかった………よかったぁあ………!!」
お互いに号泣する。
どれだけ距離は遠くとも…想い合う気持ちが胸にある……
紗良「…あたし…自慢の娘になるからっ…!!ママがいつまでもいつまでも誇りに思ってくれるような子になるからあああああ!!!!」
優子「…………うん……!!」
紗良「だから……もうちょっとだけ見守ってて…………」
袖で涙を拭き、振り返る。
現実世界へ足を踏み入れる瞬間
優子「紗良ーーーー!!!!」
紗良「!!」
優子「あたしもっ!!ずっとずっと愛してるからああああああああああ!!!!!」
紗良「…!!…………うん!」
優子「………いってらっしゃい………」
*
カッ!
瀕死の状態で目が覚める。
警戒しながら旋回していたモンスターは紗良の意識が戻ったことに気づく
紗良(戻ってこれたけどチャンスは一回……これで決められなきゃ死ぬ…!……でも……不思議とさっきまでの恐怖はない……それに…出来るような気がしてくる……!!だってあたしは二人の優しいママの…娘なんだもん!!)
クァッ!!! ビシュンッ!!!
開眼。
金蒼の瞳が聖なる輝きを放つ…!!
ブオオオオオオオ!!!
モンスターが紗良にめがけて突進してくる
紗良(炎が使えないのならその分……心の焔を燃やせばいい!!)
構えた太刀に蒼いオーラが纏う
ズン!!
突進してきたモンスターに突きで攻撃。が、それは避けられてしまう。横に避けたモンスターにすかさず太刀を当てる。その反動でクルリと体を回転させ、その回転で強烈な斬撃を繰り出す!!
ガンッ!!
が、それも防がれる。
紗良
しかしそれは計算済み。回転したことでモンスターの上になり、そこに斬撃の衝撃で後ろに流されるので紗良は結果的に海面へと上昇した
追いかけるモンスター
だが、こちらも言うなればモンスター。フィジカルで劣りはしない!
海面に近づくと、今まで旋回していた爆発魚が一斉にこちらに向かってくる。
紗良(あともう少し…!!どけええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!)
シュンシュンシュンシュン………ッボォオオオオオオオン!!!!!!!!!
「っ!なんだ!?」
紗良「っはぁ!!!!すぅーーーーーー……………」
爆発と共に飛び出る紗良
そして虚空に向かって叫ぶ
紗良「サラマンダァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
グォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
トカゲのようだった守護獣は成長し、炎の竜となっていた。
サラマンダーの背に乗り、上空へ翔け上がる…!
そして紗良は太刀を横に構える…
紗良「焔刃……爆蒼ッ!!!!!」
シュォオオオオ!!!!!
全身を大きく包む蒼い焔が溢れ出す!
サラマンダーの翼からはアフターバーナーのような焔が噴射し、凄まじい加速をする。
宇宙空間まで飛び出し、大きな焔の翼を広げる
煌々と燃ゆる太陽すら覆い隠すほどの……
紗良「愛と正義の情熱が…あたしの心に勇気の焔を灯してくれる!!」
グンッッツ!!!!!!!!!!
サラマンダーは急降下する。
摩擦熱により、さらに発火。
朱色の炎に染められた全身を一瞬にして蒼焔で覆いかぶせる!!
紗良「家族の愛に応えるため…己の道を照らすため……悪の力を、灼き払う!!!」
『一・撃・必・殺!!!!!』
炎の塊となり、数百メートルの水しぶきを上げて水中に突撃する!!
シュッ………ッバッツ!!!!ザパァアン!!!!!!
水中でも…宇宙空間でさえも…
火なんてつくはずのない、心の中でさえも…
美しく、誉れ高い『蒼の焔』を宿し闘う少女。
彼女の名は……
ドシュゥウン…!!!!!!!
紗良「……はぁ……はぁ……やっと……やっと終わった…………はぁ…しんどかった………」
視界がぼやける。極度の疲労と、酸欠によって気を失ってしまう。
??「おっと……ふ…よく頑張ったな………あとはゆっくり休んでくれていい………」
何者かが、紗良の体を抱き留める。
その者は金色の鎧を身に纏い、紗良と同じく大きな太刀を携えている。
このヒーローは…!?
*
瑠玖と巫言もその頃、街中で激しい戦闘をしていた。
ドォオン…!!
チリチリ………
瑠玖「はぁ…はぁ……もうやめて!街がなくなっちゃうよ!!」
巫言「ハァ――ッ……ハァーーッ………」
瑠玖(言葉が通じない……きっと巫言ちゃんも同じ物を植え付けられたんだ……!でもどうして……一体どこで……?)
巫言「ハァッ!!」
瑠玖「っ!!」
バァン!!!
紫の粉塵が爆発する
瑠玖「うっ……」
周りの人をかばいながら戦うせいでかなりのダメージを負う瑠玖
そして巫言は以前、洗脳状態。
瑠玖(巫言ちゃんの頭の中にいる虫を潰すにはもっと近づかないと……しかも…かなりの時間止まってもらわないと巫言ちゃんを傷つけちゃう…!…このままだと他の人を巻き込んじゃうし…一体どうしたら……)
*
寄生虫に行動を支配され、無差別に爆破を繰り返す巫言。
瑠玖はなんとか止めようとするが、瑠玖の能力では完全に威力を相殺することは出来ない。
貴峰の能力であれば一瞬で片が付くのだが、今はどこで何をしているのか……
これ以上の被害を抑えるため、瑠玖は最終手段をとる…
次回『想いと意地』




