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Odd I's  作者: TEAM,IDR
39/58

最終章-3「本当の自分」

「Odd I's」

最終章「オッドアイの英雄」

第39話「本当の自分」

ワンちゃん「……楓…?これはどういうことだ…?」


楓を睨むワンちゃん

それに恐怖を感じながらも答える


楓「……本気は出せた……?」

ワンちゃん「…アァ?」

楓「やっぱり…ワンちゃんは喧嘩もすごく強かった……。あいつらきっとまたやり返しにくる……もしかしたらもっと強い人を連れてくるかもしれない……そうなったら…ワクワクする…?」

ワンちゃん「なに言って……」

楓「…ワンちゃんがケンカしても大丈夫なように他のことはウチがやるよ……ここの位置なら防犯カメラに映ってるし…店員さんに声かけてから来たから、学校にも事情を説明してくれるはず………この後あいつらが報復しに来ても正当防衛になるよ……どう…?」

ワンちゃん「………………」


ワンちゃんは難しい顔をする

一通り話し終えた楓は、落ち着くために一度大きく深呼吸をした。

そして、いつも通りの表情と話し方を意識した


楓「…ケンカはいまいちだった?ワンちゃんがワクワクするようなことじゃなかったかな?」

ワンちゃん「…どういうつもりだ…?」

楓「ワンちゃん。答えて。」

ワンちゃん「…………………」


真剣な表情でワンちゃんを見つめる楓。

ワンちゃんは視線を逸らし、少し考える。

先程の感触を確かめるように拳を握る。


ワンちゃん「………正直……戦うのは楽しいかもな……」

楓「!…そう…やっぱり?」

ワンちゃん「やっぱりってなんだよ…」

楓「ワンちゃん、本気になるとよく笑うから…」

ワンちゃん「!…そんな癖あったか…?」

楓「ふふ…あるよ。ウチらが出会ったばかりの頃…ワンちゃん、よくケンカしてたじゃない?その時もよく笑ってたよ」

ワンちゃん「………………」

楓「ウチ、考えたの。ワンちゃんが本気になれない理由。ケンカの時は笑えるのに、スポーツだと笑えない理由。」

ワンちゃん「…なんだよ…」

楓「ワンちゃんは本気になると相手を怪我させちゃうんだよ。楽しくなって、力が入り過ぎちゃう。ワンちゃん自身はたぶん、怪我しちゃうくらい激しくぶつかり合うのが好きなんだと思うけど…その一方で思いやりの心も持ってる。…その優しさがあるから相手がスポーツマンだと本気が出せないんだよ。」

ワンちゃん「…………」

楓「だから、ワンちゃんが本気を出せるように悪い人を用意したの。」

ワンちゃん「…用意した…?」

楓「そう。来てくれるって信じてたから、時間見計らって絡みにいったんだ~。…めっちゃ怖かった!」

ワンちゃん「…お前なぁ………」

楓「…ありがとね、助けに来てくれて。あと…ごめんね…急に巻き込んで……」

ワンちゃん「……もういいよ。……こっちこそ…悪かった……」

楓「…何が?」

ワンちゃん「……突き放すようなこと言ったろ?あれ…怒らせちまったんじゃないかと思ってな……」

楓「あぁ!あんなの気にしないよ~。あの時はちょっと考え事に集中してただけだからっ!」

ワンちゃん「そっか…なら、よかった…!」


二人とも笑顔になる。

仲直りも出来たことで互いに緊張から解放された。


楓「ふふっ…!……お腹空いたね!」

ワンちゃん「そうだな…なんか買って帰るか」

楓「うん」




買った食べ物を頬張りながら歩く二人


楓「ねぇ」

ワンちゃん「…ん?」

楓「これからのこと…ウチに任せてくれない?」

ワンちゃん「これからのこと…?」

楓「そ!…ちょっと考えてることがあるんだ~」

ワンちゃん「……そっか……」


ワンちゃんは目を閉じて楓のことを考えてみた


ワンちゃん「なら、お前に任せるよ。」

楓「うん、任せて~悪いようにはしないから」

ワンちゃん「…楓に任せて悪くなったことなんてないしな…!」

楓「光栄でーす」



この件をきっかけに、楓を頼るようになった。

楓はまず、いつも通り授業に出るようにと言った。

つまらないと思いながら授業に出た。

退屈な日常を送るうちに校内で噂話が広まっていた。

「不良とのつながりがある」だの「たむろしている不良をボコボコにした」だの…

そんな噂を耳にした教師に呼び出しをくらった。

事情を知っているということで楓も加わって話し合いになったが、楓の巧みな話術で全てがうまい方向へと変わった。

まず、授業を休んでいたのはケンカの傷を隠すためだったということになった。

ケンカ相手の不良についてはそこに居ないのを良いことに、あることないことを付け加え一方的に絡まれてケンカになったということになった。

楓が絡まれていたところを助けたという事実もやや誇張しながら話した。それだけではなく、この救出劇が学校中に広まったおかげで、今までのイメージから一転し「ヒーロー」のような扱いを受けることとなった。


数日後、学校付近で待ち伏せした不良をボコしたことで、その「ヒーロー」の仮面がさらに強化された。

楓の方はというと、不良をボコボコにする「超強い奴」と一緒にいるという事実が楓の格を上げていた。

それだけではなく、わずかに残った「不良」のイメージまでも上手く使い、「不良の子とも仲良くできるコミュ強」・「不良とも仲良くしてあげる人気者」・「不良に物申せる実力者」などのプラスのイメージを植え付けていった。


楓に任せてから何もかもが上手くいった。

アタシの方も気兼ねなく、「戦闘」が出来るので満足していた。

だが、そんなある日、事件が起きた。




楓が拉致され、人気の無い場所へと呼び出されたのだ。


そこにはチンピラどもが何十人と待ち構えており、武器も持っていた。


アタシはその時……ワタシじゃなくなった………


思うがままに暴れ、相手が動けなくなるまで攻撃をする。

体から湧き上がる「闘争」を解放してやることが楽しくて…快感だった…


手足を縛られて動けない楓は悪魔のようなアタシの姿を見た


「ハハハハハァ!!!!…アァ~…………もう終わりかよ…………」


血で汚れた服、手。

力の解放の影響で紅く光っている目。

荒々しく暴れる赤い髪。


楓は不良どもに拉致されたことより、ワンちゃんの姿に驚いて恐怖していた。

ワンちゃんが近づき、拘束をほどく。


ワンちゃん「…アタシはなぁ……コレが好きなんだ……!血が滾るような戦いが……!!」

楓「………!!」


目を見開いて熱弁するワンちゃんに驚く楓


ワンちゃん「………アァ………ずっと隠してたのによ………こんなのおかしいよな………」


楓の方を見る


ワンちゃん「分かってんだ……こんなの異常だってな……でも止められない……アタシの…本当の心なのに………どうしようも…………」


親友の前で醜い本性を晒してしまった…

恥ずかしいし、抑えられなかったことが悔しいし、両親には申し訳ないし、でも楽しかった…

複雑な感情が心の中でぐるぐるとする…


初めての感情…初めての解放…。思春期の子どもの頭では整理がつけられない…

それでも……


楓「ワンちゃん…!!」

ワンちゃん「…!」

楓「すごかったよ…!さすがだよ…!やっぱりウチの見込んだ通りだった…!」


同い年の子どもなのに、それを受け入れてくれる…

震える声で話を続ける


楓「ちょっと怖かったけど…それが本心なら、大切にしなきゃ駄目だよ!」

ワンちゃん「……でも……」


楓はワンちゃんを抱きしめる


楓「大丈夫…!!」

ワンちゃん「…っ!!」

楓「それはワンちゃんの才能だから…!!…他の人には受け入れ難いのかもしれないけど…ウチがなんとかするから…!その才能が活かせるようにするから…!」

ワンちゃん「……っ!…楓…なんで…そこまで………」


楓は瞳を潤ませ、ワンちゃんを見て言う


楓「だって…最初に助けてくれたのは(はじめ)ちゃんでしょう?」

ワンちゃん「っ!」





公園で出会った二人

砂場で遊んでいた楓のところにボールが飛んできて、作っていたお山が崩れてしまった。

泣いている楓の前で、謝りもせずにどこかへ行こうとする男の子をボコボコにする小さな女の子。

それが八城 一だった。



ワンちゃん「…あんな昔のこと……」

楓「…あの時からウチは、ずっと助けられてばかりだったから……」

ワンちゃん「…そんなこと…ない……いつも……いつも助けてくれんのは……」



仲良くなり、よく遊ぶようになった二人。

だが、力も語気も強く、目つきも悪い一はなかなか他に友達が出来なかった。

そんな時、楓がある提案をした


楓「ねぇハジメちゃん!」

一「ん?なに?」

楓「ウチ、英会話教室で習ったの!」

一「?」

楓「ハジメちゃんのお名前って、数字で一って書くでしょ?」

一「うん」

楓「一って英語で[one]って言うんだって。」

一「うん」

楓「だから、ハジメちゃんは英語で言うと[ワンちゃん]になるんだよ~!」

一「ワンちゃん…!」

楓「可愛いあだ名でしょ!?」

一「うん!」

楓「これからワンちゃんって呼んでもいい?」

一「いいよ!」




楓「ワンちゃ~ん」

一「なに?」

「え!ワンちゃんって一ちゃんのこと?」「えー!なんでワンちゃんなのー?」

楓「えへへ、それはね………」



あの時、つけてくれたあだ名のおかげでアタシはいろんな人と話せるようになった……

一人だったワタシを……

一「…いつも助けてくれんのは楓の方だったろ…」


楓へ優しい微笑みを向ける


楓「…そう?」

一「そうさ…」

楓「…ふふっ、ならお互いさまだね!」

一「…そうだな…!」


ウ~~!


楓「あ、警察が来た…」

一「え?」

楓「ウチが呼んどいたの!あんなに怖かったのに何もしてないわけないでしょ?」

一「…やっぱすげぇよ…お前は…」

楓「それはこっちのセリフ…!…ケンカはもう十分楽しんだでしょ?今度は人間以外の相手をしてみない?」

一「何か考えがあんのか?」

楓「まぁね~」

一「…任せる…!」

楓「…うん!」





「…………っ!!!」

「……どうだ…思い出したか?」

「…………あぁ………」

「……楓はアタシのことも認めてくれた……これまでだってアタシのことを上手く使ってくれただろ…?」

「……あぁ……」

「アタシのことは信じられなくても楓のことなら信じられるだろ?」

「……」(うなづく)

「……もう記憶も力もお前の物だ……ホラ…早く体に戻れよ……家族も仲間も…待ってんぞ……」




一「…う……」


目覚めると陽の光も遠くにあるクレーターの深部


一「あれから…どうなったっけ………ユニコーンは………とにかく今は上を目指さねぇと……」


登るために歩きだす


一「っ…!…ってぇな……力も……すっからかんだ……飛べるかなぁ………」


ザザザザァ…!


一「ん?」


音のした方を見ると


ユニコーン「くっ!……!!」

一「…ユニコーン……」



正気を取り戻した二人がついに出会う。

二人は激戦による負傷で疲労困憊。

しかし、そんな二人に魔の手が迫る!

いよいよ最終局面、オッドアイズの最後の戦いが始まる!


次回『宿命としての戦い』


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