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Odd I's  作者: TEAM,IDR
37/58

最終章-1「怒りのケルベロスVS憤怒のユニコーン」

「Odd I's」

最終章「オッドアイの英雄」

第37話「怒りのケルベロスVS憤怒のユニコーン」


ずっと前から…思っていた……


こんな風に…相手を殺すほど強く、激しく、暴れてみたいって……



それはこの“力”を手にしたからじゃない……

物置で見つけたトリシューラを手にした時思った。

こんな力が欲しかった!この力があればどんなことだってできる!この力を試したい!この力で…全力で暴れてみたい!!


そんな気持ちが抑えられなかった。

身体の奥底から闘争心が沸き上がった。


その気持ちに気づいた時にハッとした。

こんな気持ち、持っていちゃダメだと。これは力を手にしたことで出た悪い影響なんだって思うようにした。

その思考こそが、醜い本性の証明であるとも分からずに…



試し切りとして熊をぶった切った。

よく、人里に降りてくる狂暴なヤツだった。

だから村の人達は喜んでくれた。

そう…

これは村のためにやったんだ……自分のためじゃない……皆が喜ぶと思ったから………悪いヤツを退治してヒーローになりたかったから………


返り血に染まる体。

強敵との命のやりとりで得た興奮。

初めての快楽に醜悪な笑いが止まらないなんて、そんなことあるわけがない。

こんなの「ワタシ」じゃない…

ワタシは優しいパパとママに育てられた優しい子なんだ……!

こんなの……こんなの……!!ワタシじゃない…ッ!!



「ねぇ聞いた?あの子また喧嘩したらしいよ…?」「聞いた聞いた、不良30人を相手にボコボコにしたとか」「あの子暴走族のヘッドなんでしょう?」「え!?あたしは極道の娘とかって聞いたけど?」「こわ~い」

「なぁ、アイツ…ケンカ超強いんだって?」「バカ、強いなんてもんじゃねぇよ。武器持ちの高校生に囲まれても圧勝したらしいぜ?」「高校生相手に?」「あぁ、その中には格闘技やってるやつもいたってのに相手にならなかったらしいぜ」「そういや、どっかの不良がバイクで轢こうとしたけど逆に吹き飛ばされたとか噂で聞いたことあるぜ!」「そんなことあるかぁ?」「いや、これマジらしい」


学校でワタシは腫れもの扱いだった…

なんにもしてねぇのに文句ばかり言われる…誰もワタシのことなんて信用しちゃくれない…


「ワンちゃ~ん!」


コイツ以外…


楓「次、移動教室だよ?一緒に行こ」

ワンちゃん「……なんでお前はワタシに絡むんだ…勝手に行きゃいいだろ…」

楓「え~それだとワンちゃんがつまらないでしょ?」

ワンちゃん「ほっとけよ…ワタシは一人で行く」

楓「じゃ、ついてく~」

ワンちゃん「おい…」

楓「嫌じゃないでしょ?」

ワンちゃん「…ったく…」


「楓、あんなのとも付き合ってあげるなんて人気者は違うね~」「あんた知らないの?」「なにが?」「あの狂犬は楓に飼われてんのよ」「どういうこと?」「楓、ああ見えてお嬢様だからお金かなんかで雇ってんじゃない?って噂。だから、楓に歯向かう人なんていないのよ」「え~!そうだったの~!?」



ユニコーンを追うように飛び続けるトリシューラ。

それを挟み撃ちにするように四足で駆け回るケルベロス。

口に咥えた両剣で攻撃を仕掛ける。

それを超高速で避け、時には瞬間移動しながら反撃するユニコーン。



あの時の噂…根も葉もないものだと思っていたが…実は本当だったんじゃないかと今になって思う…

ワタシは時々、数分前に何をしていたのか分からなくなる時があった。

勝手に時間が進んだり、知らない汚れが服や鞄についていたり……

夢みたいなぼんやりとした記憶があったり……


………………あぁ…………………そうだ…………本当は分かっていた…………ただ認めたくなかっただけだった……『もう一人の自分』がいることに………


あんな醜い顔…自分のだと思いたくなかった……

あんなことで得る快楽なんか……あんなにも湧き上がる闘争心が……

あんなもの…ワタシの中にあっちゃいけないんだ…!



『アタシ』を…否定するのか…?

…っ!?

ハッ!無理だね!アタシとお前、どちらの方が『本能』に近いか…分かるだろ…?

黙れ!!…ワタシは…狂犬じゃない!!

ハハハッ!!お前は狂犬だ!!この状況に満足しているだろう!?戦いを求めているのが分かるだろう!?全身全霊で叩きのめしたいと思っているだろうがァ!!?


ケルベロス「グルルルル!!ウゥ…!!!グゥオオオオオオオーーー!!!!!」


……ざけんな……っざけんなぁ!!!!この体はワタシのもんだ!!!!この人生も!!!家族も!!!てめぇに乗っ取られてたまるかよ!!!!!!!


ケルベロスの背後に「焔の輪」が現れる


ケルベロス「グゥオオオオオオアアアアアアアアアアああああああ!!!!!!……ケルベロス!!!!」


激しい攻防の中で唸り、吠え、叫び、呼ぶ。

呼びかけに応えるように守護獣の「ケルベロス」が現れる。

手数の多さに耐えきれず、ケルベロスの引っ掻き攻撃をもろにくらうユニコーン。

膨大な熱量の発生により、溶けた地殻に突っ込む。


灼熱のマグマの上で守護獣を従えて滞空するケルベロス。


ケルベロス「くく……はーっはっはっはっは!!!!!ワタシの勝ちだぁ!!!てめぇの力なんぞ必要ねぇんだよ!!二度としゃしゃり出てくんなぁ!!…はぁ…はぁ……ワタシは…家族のために戦うんだ……楽しむために戦う…てめぇとは違う……!…そうだ…!二人のとこに行かねぇと……ワタシの家族を奪った世界を…潰さねぇと…!!!」


紅く光り続けていた瞳のオーラが更に大きくなる





汝は何故戦う…?


……………許せないからだ………

見ろ……世界はこんなにも…汚れている………

地球外生物の侵攻が無くなってからまた戦争が始まった。一度は手を取り合い、共闘した仲だというのに…

地球の中で戦い続けたって何にもならないのに……同じ人間同士、手を取り合うことすらできない…!

そこに利害の一致が無ければ助け合うことすらできない。共通の敵がいなければ仲間にすらなれないだなんて…そんなの同じ人間だと言えるのか…!?


危機感が無くなる度に犯罪が増えた…

本来、誰かを護るためにあるはずの力を、誰かを傷つけて奪うことに使う人間が多すぎる…

ヒーローが人々を護るために使い、進化させたその力を悪用する人間が後を絶えない。

いくら技術が発展しても、それを使う側が何も進歩しちゃいない。

人を騙したり、言いくるめたりして搾取する人間だらけだ。

人々が手を取り合い、ともに歩んでいける社会なんてどこにもない。

何が悪い?誰が悪い?

明確な敵がいなければ変わることも出来ない…

こんな世界……父さんが目指した世界じゃない……



……世界の各地を回り、真実を見てきた。

「過去投影」の能力で、その場で起こったことを沢山見てきた…

どれも酷いものだった…

人間というのはここまで残虐で、自己中心的なのだと知らされた…

…あの研究所での実験は特に酷かった……人間を物のように…いや…それ以下の扱いかもしれない……


見れば見る程……

考えれば考えるほど、人間の愚かさを知らされる。

こんな世界に価値があるのか?愚かな人間を護った意味なんてあったのか?

父さんが守り、信じた世界は…果たしてこれなのか……




「壊したい………」

許せない……

抑えきれないほどの憎悪が心と思考を支配する。

邪悪な光に包まれ、自分が自分ではなくなるようだった。

内から湧き上がる怒りが破壊を望む

抗おうとしても抗えない…

僕は探し続けた。人間の存在意義を、護る理由を。だが、見せられたのはあれだ!!

抗えるわけがない!

破壊衝動を抑えていた最後の砦は「人に攻撃してはいけない」という子どもでも分かるような道徳心だけだった。


でも…それももう終わりだ……

もう抑えられない…

光の力が高まるほどに心の闇が強くなる…


「壊してやる……全てを…ッ!!!!!!」


ピシュン!!

マグマの中で黄色く光る眼。

カッ!!!シュゥン!!!!

ケルベロス「っ!?」


ケルベロスまで届くほどの光線が横切る。

そして光のオーラに包まれたユニコーンがマグマを切り裂いて出現。

左手の鞘の先には剣が装着され、その剣を伸ばすように強い光のエネルギーがついている。


ケルベロス「……はっ…第二ラウンドってわけかぁ!?」

ユニコーン「……オオオオオオオオオオオオオオーーーーーー!!!!!!!!!!」


光の剣と戟が激しくぶつかり合う


ケルベロス「しつけぇんだよ!!!!!!!」


戟を投げ、四つ足で突進する「ビーストモード」で戦い、守護獣も突進させる

攻撃を瞬間移動で躱すユニコーン。即座に移動先を探すケルベロス。

が、姿は見えない。

集中して待っていると、背後から切り付けられる。


ケルベロス「!?」


それに実体はなかった

通り抜けた光の塊は攻撃を仕掛けてくる。

再び加速し、突進するケルベロス。だが、攻撃は当たらない。


ケルベロス(ちっ!偽物か!)


それに実体はない。が、エネルギーの塊であるため油断をすれば攻撃される。

光の分身が二体増え、3対1+1+戟の構図となった。


二体の分身がケルベロスを襲い、その隙にユニコーンは戟を弾き飛ばした。

ユニコーンがケルベロスに向かい、二体の分身が守護獣に攻撃を仕掛ける。


ユニコーンの剣撃に距離を取るケルベロス。それを見計らっていたユニコーンは瞬時に分身を集め、エネルギーを集中する。

剣を前に突き出し、亜光速で突進する!


庇う守護獣。戟でガードするケルベロス。

それを全て貫く光の剣。

ケルベロス「っかあ!!」


貫いた剣をケルベロスごと振り下ろす。

マグマへと落ちるケルベロス。




ワタシは…なんのためにこいつと戦ってんだ…?

湧き上がる怒りで頭がいっぱいになって…ワタシは……

ちっ……こんなにも頭に血が登っちまうなんてな………ダメージはくらったが…すぐに行かねぇと…!

「終わらせんのか?」

っ!?

「こんなにも楽しい時間を終わらせちまうのかァ?」

…もういいだろ…

「いいや!ダメだね!アタシは満足しちゃいない!!こんなにも心躍る瞬間はもう二度と来ねェ!!本当の本気を全て出せるチャンスだ!!!」

やめろ!!!

「アタシを出せッ!!!!アタシの全力をぶつける!!!この心の渇きを潤す時が来たんだァ!!!!!!!」



ッパァン!!!!

マグマを吹き飛ばしながら上昇するケルベロス


ケルベロス「クハハハハハハァ!!!!!最高だ!!最高だぜユニコーン!!!!こんなにも滾る想いは初めてだ!!!!」


真紅のオーラを体にまとわせ、特大の「棘の輪」を背後に光らせる。

これまで以上のエネルギーを「トリシューラ」に集中させていく…


ケルベロス「コイツは餞別だァ!!地獄まで持って行きなァ!!!!!!」

ユニコーン(っ!!凄まじいエネルギー……!!)「星ごと壊す気か!?」

ケルベロス「テメーにはこれくらい必要だろうよ!!止めたきゃ止めてみろォ!!!」

ユニコーン(こいつ…!!)


ふざけたやつだ…!!

こんな悪魔みたいな人間がいるから人類は…!

許せるかよ……

生かしておけるかよ……

破壊してやる……破壊しつくしてやる…!!!


ユニコーン「……僕に力を貸せ!!ユニコ――――ン!!!!!!!!!!」


剣を両手で持ち、叫ぶ。

光のエネルギーを放出させ、巨大な剣を形成する。


ケルベロス「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!星ごと砕け散れェエエエエ!!!!トリシュゥウラァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


全エネルギーを込めた戟をユニコーンに投げる!!!


ユニコーン「ふざけるなぁ!!!!砕けるのは貴様の方だ!!!破壊しろ!!!エクスカリバァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」


全エネルギーを込めた剣を上空に突き刺す!!!



互いが勝手に怒り、勝手に暴走し、勝手に暴力をぶつけ合う。

互いの言葉のやりとりに意味はない。

しかし力の解放には意義がある。


今までどこにもぶつけることのできなかった怒りが初めて矛先を見つけて発散されている。


互いの力の先には何があるのか…

次回『届かない光…』


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