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Odd I's  作者: TEAM,IDR
35/58

三章-10「FU〇K!!」

Odd I's」

第三章「悪の力」

第35話「FU〇K!!」

九頭堀家には双子の男の子が産まれた。

生まれつき銀色の目をしており、その輝きで赤子の頃から周囲を虜にしていた。


二人はぐんぐんと成長していき、成長と共に端麗な顔立ちが明らかになっていった。


社交性が高く、良い人間関係を作れる。器用で物覚えが早く、運動能力も高かったため、将来をとても期待された……………兄の方だけが…………



中学生にもなると兄弟の間で勉学と人気にも圧倒的な差が出来ていた。


「う~ん…兄の方はあんなに勉強ができるのにな……お前はどうも苦手なようだなぁ……」

勝手に比較され、教師を困らせたこともあった。


「あのっ…これ……陽介くんに渡してくれないかな…?」

兄に好意を抱いた女子から使いっぱしりにされたこともあった。


「陽介くんカッコよかったね!」「ね~!兄弟対決は兄の圧勝だったね」「ほんと…にしても…見た目はそっくりなのに弟の方は弱いね~」「陽介くんはサッカー部だけど…それを差し引いても…ねぇ?」「完全劣化版って感じ?」「ぶはっ!ちょっと言い過ぎ~」

陰口を言われるなんてこともしょっちゅうあった。




学校なんてつまらなかった…

学校だけじゃなく、人生の全てがつまらなかった……

同じ遺伝子を持って産まれたはずの双子なのに…全てを持って行かれたような気がして……人生の全てを持って行かれた様子を…ずっと見せられているみたいだった…………残りカスの自分を嘲笑うためだけのストーリー…そんな気がしてならなかった……


暗い顔をして、下校の準備をする弟


兄のことは好きになれない…

………嫉妬…とかはたぶんなかった………あんな風になろうとは思ってなかった………

ただ……勝手に自分のハードルまで上げさせられるのが嫌で仕方なかった……

兄さえいなければ!と、強い憎悪を持つこともなかった。嫌いじゃないけど、たぶんこれからも好きになれない…そんな人だ……


自転車を押し、校門へ向かう弟


「よっ!一緒に帰ろうぜ!」


兄に声を掛けられ、一緒に帰路へ着く。

ゆっくりと自転車をこぎながら会話をする。


「今日のテストどうだった?」

「………べつに…普通だよ………」

「音楽のテストは?お前得意だったろ?」

「……得意じゃないよ……ちょっと好きなだけだ……どうせ兄ちゃんの方が出来てるよ……」

「どうかな~?今回はお前もけっこう勉強してたみたいだし、もしかしたら負けるかもな~」


キッ…!

ブレーキをかけて止まる弟。


「うぉっ、どうした!?」

「……適当なこと言うのやめなよ。ぼくが何やっても勝てたことないだろ?」

「ご…ごめん……」

「…笑いに来たのか?暇つぶしか?ぼくと帰る意味なんてないだろ、さっさと先に帰れよ」


淡々と冷たく言い放ち、無言の圧力をかけ続ける。


「……違うんだ…おれ…そんなこと言いたかったんじゃない……ただ、お前と一緒に帰りたかっただけなんだよ……最近、一緒にいる時間ほとんどなかったろ…?」

「………一緒にいる意味なんてないだろ…一緒にいてもぼくが嫌な思いをするだけだ。」

「………おれたち兄弟だろ?一緒にいる理由なんてそれでいいじゃないか…」

「…………………」

「……な、明日の休み、買い物にでも行こうぜ?」

「は?」

「学校のやつらが居なかったらお前も嫌じゃねぇだろ?…な?」

「…………………」



一緒にいたくない理由は比べられたくないからだ。

同い年の兄にそこまで気を遣われたのも、頭の良さ含め格の違いを思い知らされたのも嫌だったが、一緒にショッピングモールに行くことになった




服を見た

(服なんてなんでもいいだろ…)


ゲームコーナーで遊んだ

(………普通に楽しかった……)


ハンバーガーを食べた

(普通に美味い…)


最後にケーキを見た


「どれにしようかな……」

「ケーキ買うの?」

「あぁ、もうすぐ母さんの誕生日だろ?」

「………………」

「う~ん…お前はどれがいいと思う?」

「………………一人で決めれば…」

「え?おい!どこ行くんだよ!?」


弟の肩をつかむ。


「どうしたんだよ……一緒に考えてくれよ…」


肩に乗った手を振りほどく


「………ぼくはもうあいつらに…関わりたくない………」

「!?」


衝撃的な言葉を聞き、しばらく固まる。


「……どういうことだよ……」

「………この前…言われたんだよ………陽介は勉強も運動も出来るのにお前にはがっかりだってね………」

「っ!!誰に言われたんだよ!?」

「父さんだよ!!」

「っ!?」

「………その時、母さんも近くにいた……でも何も言わなかった……二人して同じこと思ってんだ………」


視線をケーキ売り場に戻す


「ぼくが買っていっても喜ばないよ…!二人のお気に入りの兄ちゃんが買っていけばいいんだ…!」

「………………分かった………」


兄は悲しそうな弟を見て決意する。


「よし!…帰るぞ!」

「え…!?」

「やめた!そんなやつらにわざわざ買っていくことなんてねーよ!な?反抗期だ!もう帰ろうぜ!」


肩を組んでケーキ売り場と反対の方向に歩き出す。


「…………………」


そんなことしたら兄ちゃんまで嫌われてしまう……だからやめなよと言おうと思ったが言えなかった…


「おっ!浮いたお金でドーナツでも買っていくか!?」

「……ははっ、いいね……」


ドーナツを買おうとしたその時

バリィン!!とガラスの割れる音がした。

屋上から腕に翼のような膜をつけたモンスターが現れた。そのモンスターは建物内を素早く動き、近くの人間を軽々と吹き飛ばした。


そしてそのモンスターは何かを探すように辺りを見回す…

そして運悪く、その目線の先には…


「……やばい……こっち見てる………」

「はぁ…はぁ……どうしよう……」


―――I got you……———(見つけたぞ……)


何を言ったのかは分からなかった…が、何か言葉のようなものを発したと思う…


ギュオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!

と、大きな声で威嚇をする。


「逃げるぞ!!」


堪らず、背を向けて逃げようとする兄弟。その先には妊婦がいた。

黒い長髪をシュシュで結び、左肩から垂れさせている。

青色の服を着ていた、白くて惹きつけられる瞳を持っていた美人だった。


「はやく逃げて!!」


兄が妊婦の背中を押してモンスターから距離を取ろうとするが、すぐに追いつかれてしまう。

モンスターは伸縮性のある尻尾を伸ばし、先についた毒針で妊婦を狙った。

ガバッ!


妊婦は兄弟と一緒に横に倒れ込みながら回避した

「ありがとう」とお礼を言う間もなく、妊婦はキッ!っとモンスターを睨んだ。

すると、モンスターはそれに反応して後方へジャンプした。


警戒しているのか?このあとどう逃げればいいのか?あいつは何なのか?出口はどこか?どうして急にこんなことになったのか?あいつはどこから来たのか?妊婦を護って逃げられるのか?

様々な疑問が頭の中を巡る…しかし答えは出ないし、考えている暇などない


ギュィイイイイイ……!!!


モンスターは口から青白い光を発しながらエネルギーを溜めた

「「「!?」」」

驚くことしかできない。今から逃げて間に合うのか…

迷うことすら許されない残酷な数秒が流れ、強烈な光が3人を襲った…




そこからの記憶は曖昧だ……

気が付けば右腕は無かったし……というか右側が無かったかもしれないし、兄がどこにいるのか分からなくなったし、妊婦の女性が泣きながら何かを言っていた……


何を言っていたのだろう……


そして気が付けば病院にいて、気が付けば右半身は治っていて、気が付けば不思議な力を発現していた。


病院で目覚めた時…

母「!! 起きたのかい!!陽介!陽介なんだろ!?」

「…………助かったのは……?」

父「……助かったのはお前だけだ……」


それで全てを察せた……

生存を望まれたのは兄の方だった……

当然だろうな。弟は誰にも期待されていないし、誰にも望まれていない。

だからぼくは……

おれは…

「…陽介だよ…」

母「ああ!よかった…!!」


九頭堀 陽介となって生きた。




始めのうちは大変だった…

自分とは真逆の人生を演じなければならないのだから…

だが、案外なんとかなった。運動面は新たに手に入れた力のおかげでどうにでもなった。

コミュニケーション能力は兄の真似をしたらなんとかなった。見た目は同じだし。

勉強や、当人同士のやりとりは事故で頭を打ったから思い出せないなどの理由で通った。

大変ではあったが慣れれば楽しい人生だった。

なぜなら全ての人間に好かれたから。

生きていることを喜ばれ、望まれ、何かをすれば褒められた。

「陽介」になるだけで他人の態度が恐ろしいほど変わるのを見て虫唾が走った。

そして次第に、こんなにも薄っぺらいカスみたいなやつらの相手をしていたのだと、心底どうでもよくなった。

おれは元の人生でも陽介の人生でも生きる意味を見つけられなかった………


だから快楽に頼った……

もうそれしかなかった……

酒を飲めば他のことがどうでもよくなった…

タバコを吸えば気分がスッキリして嫌なことを忘れられた…

女を抱けば「陽介」であることのメリットと他人を従える全能感、快感などを存分に味わうことができた………




「…………おれの人生はクソだ…………」

「…え?なんか言いました?」

「……いや…独り言だ……」

「あ…もう立ち上がっても平気なんですか!?安静にしていた方が…」

「必要ない。」


出口の方へと歩き出す


「陽介さん!どこに行くんですか!?」

「………おれの名前は陽介じゃない」

「え…!?」


袖についた警察のワッペンを引きちぎる。

警察手帳も床に捨て、支給されている拳銃を抜く。

バン!バン!バン!バン!バン!バン!


突然の銃声に、辺りが静まり返る。

全弾を手帳とワッペンに撃ちこみ、拳銃を捨てる。


「今まで世話になった……」


そして振り向きざまに変身する。


「ちょっ、どこに行くんすか!?」



あてもなく、街へ飛び出す。

凄まじい跳躍力で壁や屋根を飛び跳ねながら移動する。


どこへ行こうか………


どこにも行く場所なんてない……


ただ…もうやめたくなっただけだ………


………何もかもに…………



最期のパーティを始めようか…

最期くらい…気に入らないヤツ全てに“コイツ”を突きつけて派手にぶっ放してやるか……


銀色の銃を両手に持ち、決意する…


次回『秒速20万キロのバトル!!』


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