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Odd I's  作者: TEAM,IDR
32/58

三章-7「高嶺の花道」

「Odd I's」

第三章「悪の力」

第32話「高嶺の花道」


瑠玖「ふぅ~お腹いっぱい…!おいしかったね!」

「ね!あそこのイタリアン、おいしいって話題だったから行けて良かったよ~」

巫言「お洋服も汚さずに食べられましたしね」

「そうだね!瑠玖ちゃん、本当に食べ方が綺麗になったね~」

瑠玖「本当?えへへ…お姉ちゃんたちのおかげだね!」

巫言「教えた甲斐がありましたわ…!」

「ふふっ…!またお出かけしようね!」

瑠玖「うん!次はどこに行く~?」

「ん~…ミコちゃんはどこか行きたい所ある?」

巫言「う~ん……そうですわね…………」


一組の男女とすれ違いながらしばらく考え、ちらりと彼女の顔を見る


「…?」

巫言「貴方は…?」

「…え?」

巫言「いつも(わたくし)たちの行きたい所ばかりではありませんか。(わたくし)たちのことをいつも気に掛けてくれるのは嬉しいですが…(わたくし)たちからすれば、貴方の気持ちも大切なのよ……?」

瑠玖「…! そうだよ!お姉ちゃんはどこか行きたい所とかないの!?」

「わ、私!?…う~ん……私の行きたいとこか……」


彼女が考えていると一人の男性が近づき、声をかけてくる。


「あれ?カナちゃんじゃね?奇遇だねぇ、何度か連絡入れたんだけど…もしかしてブロックしてる?」

「あっ………」

瑠玖「カナ…ちゃん…?」

「なにこの子?友達?この二人もパパ活してんの?」

瑠玖「パパ活…?」

巫言「ちょっとあんた、用が無いならどこか行ってくれます?困ってるでしょう…!」

「困ってるって、ひどいなぁ~俺ら何回も一緒に寝た仲じゃん!最近、あんまセックスしてなくてさ~久しぶりにヤんない?」


男が近づき、肩を触れようとする。

その手を払いのけ

「やめてください!」

「!?」

「……私…もうそういうの止めたんです…。もう関係はありません…もう関わらないでください………行くよ…!」

瑠玖「う、うん…」


二人の手を引いて通り抜けようとすると、男は「おい、待てよ!」と言いながら肩をぐいっと引っ張った。

その瞬間、両サイドの瑠玖・巫言のオッドアイが光を放つ。


「うっ!?」


男は手のひらが地面に吸い寄せられるようにバランスを崩して倒れる。

そして周りには紫色の粉塵が舞っている。


瑠玖「お姉ちゃん、嫌がってるでしょ…!」

巫言「もう一度近づいて来たらぶっ殺しますわよ…?」

「あ…ふ…二人とも……もう行こ……」


碧・翠のオッドアイと琥珀・紅桔梗のオッドアイに睨まれ、威嚇された男は何も言えずに去っていった。


巫言「………行きましょ…」

「…うん……」

瑠玖「お姉ちゃん、大丈夫…?」

「うん…大丈夫…」




その後は…あまりしゃべらなかった。

瑠玖ちゃんに話すにはちょっと早すぎるし…巫言ちゃんは気を遣って何も聞いてこない…

どうしよう……またあんな風に絡まれたら……

……誰に相談しよう……………

友達も親も居ない私が相談できる人なんて……




カウンセリングルームで話をする二人


藍「……そう………」

「はい………藍さま……ごめんなさい……忙しいのに…巻き込んでしまって………」

藍「そんなこと気にしないで。私は貴方の親同然なんだから、どんどん頼りなさい。」

「…………私……本当に自分が情けないです……」


藍がこれからのことを考えていると、彼女は声を震わせながらつぶやいた…

そして、次第に涙も流れ始め自責の念に苛まれていた…


「…藍さまのお役に立ちたいと言っておきながら…いつも迷惑かけてばかり……私一人じゃ…何にも出来ない……役立たずで………」


ボロボロと涙を流し、膝に置いていた手のひらに力が入る。

すかさず藍が近くに行き、後ろから抱きしめる。


藍「役立たずなわけないでしょう。瑠玖や巫言の面倒も見てくれるし、他の子どものこともよく気に掛けているでしょう?貴方のその関りが、皆に笑顔をもたらしているのよ。…もちろん、わたくしにもね。」

「っ!…藍さまにも…?」

藍「そうよ?貴方が一生懸命に頑張っている姿が、わたくしや他の職員に元気をくれるのよ…。貴方が一生懸命生きているだけで、わたくしはとっても嬉しいの…だからそんなこと気にしないで…。必ず、わたくし達大人が貴方を守るから…」

「…うぅ…!藍さまぁ…!!」


藍の腕をぎゅっと抱きしめて泣く。


藍「ほらほら、いつまでも泣いてないの。」


彼女にティッシュの箱を差し出す

鼻をかみ、少し落ち着いたところで藍は再び対面の席に戻り、話を再開する。


藍「……ねぇ…わたくしが初めて貴方と出会った時にした話、覚えているかしら?」

「はい…!覚えてます…!」

藍「今でも、わたくしの従者になりたいと本気で考えている?あの時は、貴方に将来の希望をもってもらいたくて言いましたけれど…もし他にやりたいことが出来たのなら…」

「藍さま…」


藍の言葉を遮る


「私は藍さまのおかげで今ここに居ます。こうして生きていけるのも藍さまのおかげです。そのご恩に報いるために、藍さまに尽くしたい…この気持ちは本物です。」

藍「………」

「ですが、それだけではありません。命を救ってもらったから従いたいのではありません。その気持ちを差し引いたとしても、藍さまを大好きになったこの気持ち!尊敬する藍さまについて行き…世界を見たいというこの気持ちがあるから…!私は…藍さまに仕えることを夢にみています…」

藍「………貴方の気持ち…よく分かったわ………(貴方になら……きっと………)」



後日 学校終わりの帰宅中に絡まれてしまう。


「よう、カナちゃん。今一人~?」

「っ…!」

「今から俺らと遊ばね?もちろん、断らせないけど」


3人の男に囲まれ、以前会った男から動画を見せられる。


「カナちゃん、あそこの大学いんだよね~?もし断るならこの動画ばら撒くけど、どうする?」

「……分かった…人気の無いところに行きましょう…」

「お?ヤル気になったね、そうこなくっちゃ」


彼女が男を先導し、狭い路地に入る。

人の目が無くなった瞬間、4人は不思議な空間へと誘われた…




「「!?」」

「なんだっ!?ここ!?」

「ここはわたくしが創り出した特別な空間……」


どこからか聞こえる声が男たちを混乱させる。


「ここで起こった出来事は元の時空では1秒にも満たない……そしてここでは[結果]だけを創り出すことが出来る……」

「なんだぁ!?」

「何言ってんだ!?」

「元の時空へ戻れば結果だけが残り、その因果が後からついて来る……。例えば、ここで貴方が殺人を犯しても、元の世界では[死]という結果だけが残り、死に至る理由は後から世界そのものが付け加えるわ。だから絶対に貴方のせいにはならない…ここで起きたことは誰にも咎められないわ…。」


話している途中、何らかの力により男達の口はふさがった。声も出せず、「んー!んー!」と唸っている。


「…さ…貴方はどうしたいのかしら…?」

「私は………」

「殺したいのなら殺してもいいのよ?貴方にはその権利(力)がありますわ…」

「……殺してやりたい……こんな奴ら………私たちの人生をめちゃくちゃにした悪人ども全てを……!私の人生を侵したゲス以下の汚物をっ!!」


ブチッ!


首に巻いてあったネックレスの鎖を引きちぎる。

その鎖についていた斧を膨張させ、その刃先を男の喉仏に突きつける。


「「「んーーー!!!!」」」


男たちは泣きながら首を横に振る


彼女は険しい表情で睨んでいたが、力を抜いて武器を下げた



「…っく…!……………こいつらを殺しても…何も帰ってこない…。私は……嬉しくない……こんな奴らを殺しても…お父さんとお母さんは喜ばない…。誇れなくなっちゃう………。藍さま………私は…どうすればいいですか…?……私は……こいつらを…殺すべきなんでしょうか…」


潤んだ瞳、哀しい表情で訴えかける


藍「…………」

近づく藍。

「…………」

少女は抱きしめてもらいたそうに、腕を胸の前に当て、肩を縮める。

藍は一瞬手を少女に伸ばすが、腕を組んだ。そして、肘を押さえながら片方の手で少女の頬を優しく撫でる。


藍「…貴峰」

「はい……」

藍「貴方はとても優しくて賢い子よ。わたくしに聞かなくても、何が正しいのか…貴方には分かるはずよ…。」


藍は少し下がり、腕を組んで見守る。


「……藍さま………」


(………正しいことってなんだろう……。私は…こいつをどうしたいの…?)

「……!!」ピクピク……

(………やっぱり……殺してやりたい……こんな力があるのなら尚更……!…こいつだけじゃない。私の人生を穢した全ての悪に…!!!)

斧を強く握りしめる…!

一歩踏み出す。

だが………


(……………………どうして……こんな時に思い出すのは…優しい笑顔なんだろう………………)

父と母の笑顔を思い出す…

(……お父さん………悔しくないの……?金儲けしたい大人たちに殺されて………。…お母さん……嫌じゃないの……?好きでもないことやって…無慈悲に殺されて………。……私…復讐できるかもしれないんだよ?神様がやっと与えてくれたチャンスなんだよ?叩き潰したいと思わないの…?気が済むまで悪を蹂躙したいと思わないの…?)


想像される父母は首を横に振る。そして、優しく娘を抱いて静かに消えていく………


「………~っ!」


涙がこぼれる


(……分かったよ……お父さん…お母さん……私……!)

ガンッッッ!!!!!! (斧を地に突き刺す)

「変身ッ!!!!」


突き刺した斧を中心に、空気、光、熱、空間が引き寄せられる。

一瞬、少女の周りが静止。

それがパリィン…!と弾けると舞い落ちる羽の向こうには神聖なヒーローの姿があった。

桃色のスーツを身に纏った少女は静かに男に近づく。


「……っは!やめろ!何する気だ!?」

「覚悟を決めたんだ…!お前にはこれまでの悪行を償ってもらう…!!」


斧を振りかぶる


「待って!!カナちゃん!!許して!!お願いだ!あああああああああ!!!!」

首に真っ直ぐ振り下ろされる斧


ガァアアアアンッッ……!!!!!


男の頭の上の地面に突き刺さる斧

男は涙、鼻水、小便を垂れ流して気絶した。


貴峰「私の名前は!空野(そらの) 貴峰(たかね)ですっ!お父さんとお母さんがつけてくれた、大切な名前です!」


斧を圧縮し、付いていたチェーンをネックレスのようにして首に巻く。

そして藍に近づく


貴峰「私、貴峰です!空野…貴峰です!」

藍「…ええ、知っているわ。」


腕を後ろに回して少し前かがみになる貴峰の頭を優しく撫でる藍。


貴峰「…私…お父さんとお母さんの子で良かった…。そうじゃなかったら道を間違えていたかもしれません…。藍さまは私のこと、賢いって言ってくださりましたけど…私には何が正しいかなんて正直よくわかりません…。でも、お父さんとお母さんに恥じない生き方をしたい。そう思っただけです。たとえどんな悪人であろうと…どんな力があろうと、誰かを殺したり、奪ったりだなんて、したくありません。…これが私の答えです。正しいことです。……どう…ですか…?」

藍「……貴峰。やっぱり貴方は賢くて善い子よ…。わたくしの見込んだ通りですわ…」

貴峰「! …えへへ…! 私、藍さまに出会えて本当に良かったです!…さっきも迷っちゃいましたけど、私のやりたいことは藍さまに尽くすことです!藍さまにも恥じないように、誇りを持って生きていきます!」

藍「ええ…。わたくしについて来るのなら、誰よりも優雅に、気高く在りなさい…!ご両親から貰った、その名前に恥じないように高く飛び続けるのよ」

貴峰「はい!」

藍「……。さ、行きますわよ。(パチン!)ブラウン!後始末は任せますわ!」

ズンッッ!!!

ブラウン「もういいのか?」

藍「えぇ…好きなようにやって頂戴」

ブラウン「分かった…任せてくれ。」

貴峰「わっ!あの人、知り合いなんですか?」

藍「ええ、頼れるヒーロー仲間ですわ。こういう悪人相手のプロですわ。あと、ネットや法律に強いヒーローにも協力を頼んでありますわ。これからも安心して暮らしなさい」

貴峰「~っ!!流石藍さまです~!!」

藍「オーッホッホ!当然ですわ~!」



車の中で疲れて寝てしまった貴峰を膝枕している藍。


藍(この子は本当に強くなりましたわね……)


初めて会った時の車内でのやりとりを思い出す



「あ、あの!」

藍「?」

「お名前!もう一度聞いてもいいですか?」

藍「星乃藍よ」

「藍…さま………」

藍「そういえば貴方の名前も聞いておかないとね。カナは源氏名でしょう?貴方の本当のお名前は?」


私は…

(もうこの名前は必要ない…これからは本当の私で生きていくんだ…!)

私の名前は…

(それを誓う…誓いの証明…大切なお父さんとお母さんから貰った、大切な名前……)

空野…貴峰です…!


藍「………いいお名前ね…その名に恥じないように生きなさい。」

「はい!」

藍「行くわよ、貴峰!」

「はい!!藍さま!!」



何度も失敗し…何度も試練を乗り越えた…。

絶望の中で希望を見つけ、それに頼った。

しかし、依存することなく己の道を選び取った。

猫のように懐き、メス豚のようだと罵倒された彼女だが

彼女は気高く舞うことが出来る『空』と『羽』を手にした。

彼女は勉学に励み、周りの人のために知恵を使い、考えることを放棄しなかった。

賢く、美しく、飛翔する彼女の姿は『鷹』だ。

そして

いずれは誰もが羨み、手を伸ばしたくなるような高嶺の花へと成長をしていくのだろう……

更に……更に高く………

次回『予感』


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