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Odd I's  作者: TEAM,IDR
29/58

三章-4「ヒーローと…」

「Odd I's」

第三章「悪の力」

第29話「ヒーローと…」


両親があまりの出来事に落ち込み、それがようやく回復してまずは警察へ相談しようと考えていた頃、娘は帰って来た。


「「!!!」」

「ただいま……」

母「あぁ!!…無事で良かった……」

父「あぁ…心配したぞ……」

「ごめんなさい……」

母「っ!?その眼はどうしたの!?」


左眼は白いままだが、右眼が桃色に変色している。


「え…?どうなってる?」


鏡を見る。


「あの人と同じだ……」

母「あの人って……」

「…ママ……あの魔女さん…悪い人じゃなかったよ……」

母「……どういうこと……?」





「…………分かった……わたし……使い魔になる……」


長い沈黙の後、娘がそう答えると、魔女は闇の下でニヤリと笑った。


みどり「そうこなくっちゃ…♪なら、契約完了ね。」


そう言って、魔女は娘の胸に手を当てて闇の力を流し込む

自分の体内に得体の知れない何かが入り込んでくる。

そのことに対して緊張し、身構えるがすぐに終わってしまった。


みどり「はい、おしまい。…どう?力がみなぎるでしょ?」

「…………っ!!……すごい………!!」


娘は両手を握ったり、開いたりしてみた。

それだけで感じることが出来た。

全能感を…!


意識は同じなのに、体の感覚がまるで違う。

例えるなら、今まではカタツムリに乗っていたのに、いきなり戦闘機に乗り換えたかのようだ。

比べ物にならないほどの変化。「己が生物の中で無敵であること」を確信させてくれる。

力を手に入れたことの喜びを感じる……が、それと同時に2つの恐ろしさもあった。

一つはこの力の底が知れないことである。

どこまでも際限なく上がっていきそうなほど湧き上がるエネルギー。攻防、隙の無いスタイル…どれほどの速さの物でも捉えられる眼力…

まるで神にでもなったかと錯覚するほどだ。

星の破壊すら可能だろうと思える力に恐怖した。


そしてもう一つ……

そんな力を簡単に譲渡できる魔女は……そんな自分よりも圧倒的に上のステージにいるのではないか………

だとしたら……


みどり「ホントはね…その力、友達の子どもにでもあげようかと思ってたんだけど……ちょっと無理になっちゃってね……。どうしようかと迷ってたのよ。そろそろ誰かに渡さないとな~って思ってたからちょうど良かった…!じゃあ、これで正式にあたしの使い魔だから、よろしくね♪」

「…………はい………あの……これから…どうすれば………?」

みどり「ん~そうねぇ……今は特にやってもらいたいことないし…帰っていいよ」

「えっ!?」

みどり「明日も学校でしょ?ただ、その代わり!放課後、またここに来なさい。その力を使ってね。あと、一人で来ること!分かった?」

「え…あ…はい……」

みどり「じゃ、また明日ね~」

「…………………」

みどり「…………ん?どうかした?」

「……ほ…本当に…帰っていいんですか……?」

みどり「いいよ。………なに?そんなにあたしのこと信じられない?」


そりゃそうだろ……と思うアンシィ。娘も頷くことなど出来ないためどうしようかと迷っていると…

魔女がフードを外した


みどり「そういや、これ被ったままだったね…。どう?これで少しは信じられそう?」


長く、美しい銀髪が桃色の瞳を引き立てている。

みどりはニカッと笑ってみせる。


みどり「や~、こういう所に住んで噂も立ったからには…一度は魔女役、やってみたかったんだよね~。夢が叶ってよかった♪」


ポカンと口を開け、固まる娘


みどり「…ふふっ…魔女だと思ってた?ざぁんね~ん、ただの美少女、みどりちゃんでした~。ごめんね、ちょっと意地の悪いことしちゃって…でも、あたしのやることは気まぐれだから…ねっ♪」


情報が渋滞してしまい、全然反応できない


みどり「ほらほら、早くしないと暗くなっちゃうぞ~、お母さんたちも心配してるでしょ。帰りな帰りな」

「わわっ……」



で、貰った力を駆使して帰宅したのであった。



次の日 学校にて


「えーっ!!しきちゃん、どうしたのー!?その眼!」

「わ~きれー!」

「ほんとだぁ~…いいなぁー…」

「こ、これはね…病気でこうなっちゃって……!」



体育の授業。ドッジボールをやる。


「二和のやつ、なんかいつもと違くね?」

「なー!いつもならすぐに当たるのに…それっ!」


スッと避ける


「くそっ!…なら…!」

「きゃっ!」


別の女の子に当ったボールが宙に浮く。

そのボールに手を伸ばして飛ぶ娘。空中でボールを取ると一回転し、そのひねりでボールを投げる。

眼で見た情報を絶対的速度で処理する能力。絶対視認(アブソリュート・アイズ)


「うわっ!?」

「きゃっ!」

「あっ!」

「うぉ!?」

「あ………4人アウトだーっ!」

「「わあああああ!!」」

「すっご~い!」

「しきちゃん、今のすごかったねー!」

「あ、ありがとう…!」

「なんだ今の!?すげー!」



体育で大活躍し、ここでも注目を浴びた。

体調を悪くしてから急激に覚醒した、何もかもが最強になった!

と思われていたのだが…


先生「ここはね…こうして……」

「うぅ………」

「勉強は苦手なまんまなんだね…」



放課後 魔女の家へ行く


みどり「お、来たね!入って入って~…あっ!…闇の力にはもう慣れた?」

「えっ!…う~ん……まだ…慣れてはないかも……」

みどり「そ!じゃあ慣れるために、この扉を開けずに入ってきな~」


バタン!

扉を閉められた…


数秒後

スゥゥウウウ……!

闇を纏って、扉を通過した。

みどり「おっ!飲み込みが早いね~…次からはずっとそれでいいよ~。勝手に入ってきな~」

「は、はい。わかりました…」

みどり「……あれ?左眼…治らないね……なんでだろ?」


みどりが、娘に近づく


みどり「痛い…?」

「い、いえ…」

みどり「ちゃんと見えてる?」

「はい…」

みどり「ん~~…まぁいっか!どうせ、その力があれば大丈夫だから!」


みどりは振り返り、台所へと向かう


みどり「とりあえず…コーヒー飲む?」




いつものように淹れたコーヒーを飲むみどり。

砂糖とミルクをたっぷり入れた白いコーヒーミルクを飲む娘。


みどり「…そういえば…お嬢ちゃんのお名前、聞いてなかったよね?なんて言うの?」

「あ…………」


娘は絵本の内容を思い出して言いよどむ。


みどり「……まだ信用できない?」

「…………あ……あの………絵本に……魔女に…名前教えちゃいけないって……書いてあって……」

みどり「絵本?あー…そういえば最初もそんなこと言ってたっけね…。(あんだけ魔女ごっこしてたのに今更魔女じゃないって説明するわけにはいかないわね…)わかった、じゃあ…しばらくはお嬢ちゃんって呼ぼうかな♪」

(コクリ…)

みどり「…あたしのことはなんて呼んでくれる…?あ、あたしの名前は若竹みどりっていうの。どう?」

「う~ん………みどり……先生…?」

みどり「みどり先生か…!…うん、いいね♪気に入った♪じゃ、先生らしく色々と教えてあげようかな~」



それから娘は放課後になるとみどり先生の家に行くようになった。

そこでは能力の使い方を教えてもらったり、庭の手入れを手伝ったり、怪しい薬の調合を見たり、学校で何があったのかを話したり、他の使い魔と森の中を散策したり……


友達と遊ぶのも楽しかったが、ここに来るとまさに絵本の中の世界のような非日常を味わえる…。それが、たまらなく楽しかった。楽しいと思うようになっていったのだ。



すっかり明るい性格になり、力を制御できるようになったことで自信もついた。

もう誰かを嫉むようなことはなくなり、学校では老若男女問わず人を惹きつけるようになった。



「いってきま~す」

母「は~い、いってらっしゃい。ふふっ、すっかり魔女さんの弟子になったのね」

「…! そうだね……なんかもうあそこに行くのが普通になっちゃった!」



シュワァァァ…!


「先生~、おつかい行ってきましたよ~」

みどり「ん、ありがと!…コーヒーミルク、飲む?」

「うん!」


二人でコーヒーを飲みながら話すのも日常になり始めてきた。

パチパチパチ……

冬以外でも暖炉に火が灯っているこの家では沈黙が癒しのBGMとなる。


「………………」

みどり「………………」

「……あの…みどり先生……」

みどり「ん?どうした…?」

「あの……これまでのお礼を言わなきゃって思って……」

みどり「なに、急に~?」


ニヤニヤと聞き返すみどり


「…先生は、ママの病気も治してくれたし…わたしのことも助けてくれました……前までは他のみんなのこと…いいなぁって思ってたんだけど…今ではそんなことなくって……」

みどり「うんうん…」

「だからその……本当に…ありがとうございました…!」


膝に手を乗せ、頭を下げてお礼を言う。


みどり「…あたしはお礼されるようなことはしてないよ。お嬢ちゃんを助けたのも気まぐれだし…いつかお嬢ちゃんには戦ってもらう日が来るかもしれないし……」

「それでも…!わたしにとってはヒーローだったんです…!」


『ヒーロー』という単語が何故出てきたのかは分からない。

でも、この子にとってみどりは魔女ではなく『ヒーロー』であったのだ。


そして、久しぶりにヒーローと言われ、懐かしく…嬉しい気持ちになったみどり。


みどり「……そっか…じゃ、素直に受け取っておこうかな。ありがとね、おじょーちゃん♪」

「あっ…それと……」

みどり「ん~?」

「わ……わたしの名前…志紀です……。二和にわ 志紀しきって言います!」

みどり「!…志紀ちゃんか~、いい名前だねっ♪」




みどりを信じられるようになった娘はついに本名を打ち明ける。


二人の仲もさらに深まっていき、修行も捗ったそうな…

修行…?

志紀はなんのために修行をしているのやら…

ヒーローの弟子なのだから、悪を倒すための修行なのかな…?


では、この世の悪とはなんなのだろうか…

人に危害を加えるような獣を野放しにすること?

機械だからと、問答無用で破壊すること?

人を弱らせて殺すようなウイルスをバラまくこと?

それとも……

人を操って好き勝手に動かすこと?


また新たな闇がこちらを覗く……


次回『寄生虫』


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