三章-3「…と思った?なんちゃって…!」
「Odd I's」
第三章「悪の力」
第28話「…と思った?なんちゃって…!」
母「……だれ…?」
みどり「死神~♪…と思った?なんちゃって…!」
母「……もう…オムかえがキテシマッタのね…」
みどり「いや、死神じゃないって~。貴方の娘さんに頼まれて来たの…[魔女の力でママの病気を治してください]って」
母「…シキが…?」
みどり「無理だって断ったんだけど~…ま、いろいろあってね…暇だし、やってみよっかな~って感じ。じゃ、早速検査するね~」
ブワァアアア…! と、母親の身体全体を闇で覆う。
みどり(この力で精密検査するなんてね~…………ん~……ん~~?なんかコレおかしい気がするなぁ~……………なにコレ、ウイルス?…すごいいっぱいあるけど………)
そのウイルスを念入りに観察する
みどり(………どんどん喰ってる…!?キッモ……原因はこれだろうなぁ………こういうの銀ちゃんに頼むのが一番手っ取り早いんだけどなぁ……めんどくさいけどあたしがやるか……)
闇の力でウイルスを身体から通過させ外に排出する。
みどり「あ!これ外に出したらまずいやつかなぁ……空気感染しちゃうやつ?」
注意深くそのウイルスを観察していると、空気中でもなかなか死滅する様子がない。
しかも、また体内に入ると活発に活動し始めた。
みどり(これ新種のウイルス的なやつ…?空気感染するならまずいなぁ……この病院にいる人も…あの家族も……もしかしたらあの村も…?)
「めんどくさぁ~!そんな大勢面倒見切れないよ~…やっぱ引き受けるんじゃなかったかなぁ~………も~~あたしってば正義の味方って感じじゃないのにぃ………っ!?」
ここで母親の体内のウイルスの異変に気付いた。
みどり(え……さっきまでいろんな細胞喰ってなかった…?…なんか…修復しようとしてない…?)
同じウイルスが真逆の行動を取り始めたのだ。
みどり(ん~~???なんで?…んもう訳わかんなくなってきちゃった~)
「はぁ…………」
ため息をついて横になっている母親(闇に飲まれている)を見る
(…なんか良さそうだからしばらくこのままにしとこうかな……どうせあのままだったら一日もたなかっただろうし……このウイルスはどうしよっかなぁ…宇宙に捨てるか……や、シーくんのところ持ってったら何か調べてくれるかな?)
母親を闇から解放する。少しの闇を体内に残して…
みどり「…じゃ、あたしもう行くから。あ、そうそう…もし、貴方の病気が治ったら…娘ちゃんは代償としてもらっていくから……」
母「っ!?」
みどり「じゃーねー」
シュワァァァ………
闇に包まれて消える魔女
*
数日後
「ママーーー!!!」
母「あぁ…!」
病院の前で涙を流して抱き合う二人。
母「あぁ…よかった……また会えて…!!」
「うん…!ママだいすき…!!」
父「本当に良かった……一時期は本当にダメかと……俺も…お前がいなくなったらと思ったら………」
父も涙をこらえきれない。
母「はぁ…安心したらお腹空いて来ちゃった!何か食べに行かない?」
「うん!行きたい!行きたい!」
父「…そうだな。よし!ファミレスにでも行くか!」
母「は~い!」
「わーい!!」
*
車に乗り、ファミレスへ向かう。
3人、で談笑していると
「…!!…ッゴホ!ゴホッ!!」
母「?…大丈夫?」
「う…うん、大丈夫!気にしないで!」
抑えていたハンカチをゆっくり覗くと、娘の予想通り吐血していた。
(どうしよう……せっかくママが元気になったのに…これじゃ心配かけちゃう………なんとか隠さないと……)
*
ファミレスで食事をする3人
母は病み上がりなのに調子が良いらしく、たくさんの料理が目の前に並ぶ
父「おいおい、そんなに食えるのか?」
母「うん!ずっと点滴だったからもうペコペコなの!」
「ママ、元気になってよかったね!」
母「うん!さ、料理が冷めないうちにいただきましょ!」
父はいつも通り、母はいつもよりも多く食べている。娘もいつも通りの量を注文したのだが、食事が喉を通らない。
父「…どうした?あんまり減ってないけど…」
「! ううん!なんでもない。ちょっとおトイレ行きたくて……ちょっと行ってくる!」
*
「はぁ……はぁ……うっ!…おええええ…!!!…………はぁ……はぁ……はぁ………なんで……?…どうして………」
嘔吐する娘。
食欲が湧かない。喉も焼けるように痛い。これ以上、空元気を通せそうにない。
せっかく良い雰囲気なのに自分のせいで壊してしまう…
嘘をつこうにも、上手い言い訳が思い浮かばない。これ以上食べられそうにもない…
暗い顔をしてトイレから戻ると…
母「っ!!?志紀ッ!!その眼、どうしたの!?」
「え……」
娘の眼の色が落ち、白くなっている。特に左眼の変色が強い。
父「さ…さっきまでこんなにはなってなかったぞ…!?」
母「ま…まさか………早く病院へ行きましょう!」
「あ……う………ぅ………」
*
急いで会計を済ませ、車で病院へ向かう。
自動運転モードにし、病院へ電話をかけようとする父
母「大丈夫……ママもすぐ良くなったんだから…きっと大丈夫……」
「……うん………」
力強く娘を抱きしめる。
涙目になり、不安になる娘。
母「お医者さんに診てもらえばきっと大丈夫だから……」
みどり「お医者さんねぇ……」
そこに突然出現する闇…
母「!!? なに!?」
「あ………」
みどり「久しぶり…お嬢ちゃん♪」
母が抱きしめる娘を暗闇の顔が近づく
みどり「契約……覚えてるよね…?」
「……………」
母「契約……??」
みどり「ママを助けてくれるんなら、両目を失っても、両腕を失ってもいい…全てを捧げる覚悟があるって言ったよね?」
青ざめる母
母「…は……あぁ……あれは……夢じゃ……なかったの………?まさか志紀……本当に……」
「…………(コクリ)……」
みどり「よかった…ちゃぁんと覚えてたんだね。…じゃあ……守れるよね?」
「………」
母「だめ!!お願いです…死神さん…!この子は連れて行かないで……私は…私はどうなってもいいから…!この子だけは……!!」
娘を抱いたまま必死に訴えかけるが……
みどり「ん~…貴方でも悪くはないけど~…あたしはこの子が気に入ったの。それに、この子はママを救うためにあたしのとこへ来たんだから。それじゃ本末転倒でしょ? あたしの方の役目は果たした。だから報酬としてこの子は頂いていく。」
ブワァァアアアア…!!
闇に包まれていく
母「志紀ぃいいいいいい!!!!!!」
「ママーーーーーーーー!!!!!!!」
お互いに手を伸ばすが引き離されてしまった……
*
魔女の家にて
娘はずっと泣きっぱなしだ。
みどり「はいはい、泣かない泣かない。約束でしょ。ホントに目をえぐったりしないから大丈夫だって」
そう言いながら娘を座らせ、コーヒーを淹れ始める。
その音を聞くと不思議と心が落ち着く。
沢山の木々に囲まれたこの家で…火を使ってお湯を沸かし…水が流れる音がして…人の生活音が子気味良いリズムで流れてからコーヒーが淹れられるからだろうか。
娘はまだ泣き止まないが、コーヒーが入るころには最初より落ち着いていた。
サーッ……
クルクル……
コト……
みどり「はいどーぞ。まぁこれでも飲んで落ち着きなって。」
「………………」
少女は目の前のマグカップと黒い液体。そして直前に入れられた謎の粉を見て、絵本の毒を飲まされた少年を思い出していた。
そして次に思い出すのはママとパパの顔…
口をぎゅっとつむんで、大粒の涙をいっぱい目に浮かべて液体を飲む。
数口飲んでマグカップをテーブルに置く
「苦いよぉ…!…うぅ……うわああああああん!!!!」
みどり「えぇ!?お砂糖けっこう入れたのに!?泣くほど!?」
*
ミルクも入れて、砂糖もいっぱい入れてあげた。
毒ではないと分かって泣き止んだ娘。
みどり「落ち着いた?」
「………はい……」
みどり「…お母さんの病気のこと少し分かったよ。」
「…!」
みどり「友達の研究員曰く、あれは新種のウイルスだったらしいよ。しかも、人工的に作られた形跡があるって…もしかしたらママは実験体にされてたのかも…」
「……………」
みどり「ま、冗談はさておき…あれは空気を伝わって感染するからお嬢ちゃんも感染してるのよ」
指をさす
みどり「お母さんはたぶん免疫が弱いから他の人よりも早く発症してる。…で、お嬢ちゃんもその血を引いてるからすぐに感染しちゃったの。」
「……………」
みどり「で…この病気を治すためにはどうすればいいと思う?」
「…え……わからない………」
みどり「…答えは簡単、強くなればいいの♪…このウイルスは強い個体と弱い個体を選別してるみたいね。強い個体は生かし、弱い個体は殺す。単純な原理で動いてるのよ…つまり、今お嬢ちゃんの体が弱ってるってことは[弱い個体]として見られた…ということね」
「………どうしてこんな話するの……?」
みどり「え?」
「…わたしのこと…こ…殺すんでしょ…?」
みどり「殺さないよ…でも、ちょっとやってもらいたいことがあるの。そのために話してる…ってのが答えかな♪まぁ、最後まで聞きなさい。…ウイルスの話したけど…とてもまずいことになるかもしれないの…。ウイルスは世界中に広がって、今のところ[弱い個体]として見られたら治療手段はない。…死ぬ確率100%ってこと」
「…………」
みどり「でも、貴方のママは治ったでしょ?どうしてか分かる?」
「…………強い人になった…から…?」
みどり「せいかい!!あったまいい~!賢いのね、おじょーちゃん♪」
「あ……へへ……」
不気味な容姿ではあるが、快活な女性の声に褒められてちょっと嬉しくなっちゃう娘
みどり「あたしのこの闇の力あるでしょ?これを少し分けてあげたらママの容体はみるみる良くなっていったの。…つまり…お嬢ちゃんがこれから生きるか死ぬかはあたしの気分次第ってこと」
「………!」
みどり「……でね……ここからが本題なんだけど……お嬢ちゃん…あたしの使い魔にならない?」
「……??」
みどり「あたしの言う事を聞き続ける人になるの。…たとえば……」
魔女は席を立ち、怪しげな本を手に取る。
本を広げて見せる。
みどり「これと同じ草を取ってきて…とかね」
「?」
みどり「あとは……あ!買い物行って来てくれると助かるなぁ~」
「??」
みどり「あと……もしなんかあったら…この子たちと一緒に闘ってくれるとか…」
パチン!と指を鳴らすと…
バサバサッ!!ドサァ!!と、大きな音が外から聞こえた。
魔女が扉を開けると闇のオーラを漂わせる大きな獣が4匹いた。
人の数倍もでかい鷲、烏、狐、猫が家を囲む。
「???」
みどり「この子たちも賢くて良い子なんだけど…基本的に人避けくらいにしかならないから…昔はそりゃぁ役に立ったんだけどねぇ~今はもう悪戯小僧しか来ないし……ってことで、どうかな?あたしの使い魔になってみない?今ならちょー強い力をおまけするよ~」
「………………」
*
母を救った代償…
己の生死が掛かった状況…
娘が取る決断はもちろん……
次回『ヒーローと…』