二章-11「わんにゃんコンビ!」
「Odd I's」
第二章「伝説の神獣」
第25話「わんにゃんコンビ!」
??「素晴らしい力です!20年前に見た伝説のヒーローを彷彿とさせます…」
ライオン「………どちら様ですか…?」
??「これは失礼しました…わたくしは……そうですね…タコハゲ…と申します」
ライオン「たこはげ!?どんな名前なんです!?」
タコハゲ「わたくし達は素性を語ることを禁じられている立場でございまして…まぁわたくしの名前などどうでもいいことです…。我々はこちらの施設の研究員でして…貴方の助けが無ければあの暴漢どもに襲われる所でした…ありがとうございます。」
ライオン「いえいえっ!お礼なんて…わたしもよく分からないままここまで来てしまって…はっ!そういえば道に迷ってたんだった!」
タコハゲ「そうですか…道に迷って……ふむ、信じましょう。よろしければ、わたくしがご案内いたします。」
ライオン「ほんとうですか!?ありがとうございますっ!」
タコハゲ「ただし!…その前に一つ相談したいことがございまして……」
ライオン「相談?…なんでしょう?」
タコハゲ「ここの研究施設は…まぁ簡単に言うと軍事的な研究機関です。そのため、政府公認であるにも関わらず、一般の人間には研究内容を教えることは出来ないのです。そもそも、この場所が知られること自体が想定外…あの暴漢どもの強さも想定外…何もかもが想定外の中、研究資料だけは守らなくてはならない…そんな時に、貴方が来てくださいました!これはまさに運命と言えましょう!」
ライオン「そんなっ、運命だなんて…」
ライオンは照れながら言う
タコハゲ「我々にとってはまさに神の救いです!そんな貴方にお願いがあるのです…」
ライオン「もぉ~神さまだなんておおげさですよ~……で、お願いってなんですか?」
タコハゲ「よっ!さすが女神さま!でですね、お願いと言うのは…先程も申した通り、この施設はどこにも公開されていない極秘の研究所です。それがバレてしまった以上、我々はすぐにでも場所を変えなければならないのです。その移動には時間がかかります…その間にもしまたあの野蛮人どもに襲われてしまったら、我々にはもう打つ手がございません…。御覧の通り、護衛のロボットは粉々に破壊されてしまいました……」
ライオン「…つまり、移動までの間、タコハゲさんたちを護っていればいいってことですか?」
タコハゲ「その通りです!」
ライオン「う~ん…でも…すぐに帰らないと子供たちのご飯の準備が……」
タコハゲ「そこをなんとか…!報酬ははずみますので!」
ライオン「えっ!……それってどれくらい出ます…?」
報酬と聞いて眼の色が変わるライオン
携帯の画面に表示された金額を見て驚くライオン
ライオン「ええーっ!?こ、こ、こ、こ、こ、こんなに!?」
タコハゲ「もちろんでございます…まぁ、こちらの金額には口止め料も含まれておりますが……いかがです?引き受けてもらえるでしょうか…?」
ライオン「やりましょう!」
金に目がくらむライオンだった…
*
こうしてライオンは資料等の詰め込みが完了するまで護衛を果たし、施設の解体までの時間を稼ぐために氷の壁で施設を覆った。
これでもし、ワンちゃんたちが捜索に来てもすぐに侵入できないはずだったのだが……
それはおいておいて、ライオンは多額の臨時収入を得て夜遅くに帰宅。後日、高いお肉を使って家族にビーフカレーを振舞ったのである。
そして、氷の能力を持っており、高い評価を受けているライオンは政府からの「ドラゴン狩り」に抜擢され今に至る。
*
あの時の事件の全容を聞いて頭を抱えるワンちゃん
ワンちゃん「っ~~………」
ライオン「これがあの日にあった出来事と、ここにいる理由です。……なにか気になる所はあります?」
ワンちゃん「ん~~…なんだか色々ありすぎてごちゃごちゃになってきやがった……。ま、とにかくあんたは悪いヤツじゃなさそうだ。さっきは殴りかかって悪かった。」
ライオン「ううん!大丈夫だよ~!…でもよかったぁ…仲直りできて……たしかお名前は…」
ワンちゃん「あぁ…そういや自己紹介がまだ…」
ライオン「ワンちゃん!…だったよね?」
ワンちゃん「……え…?」
ライオン「合ってる…よねっ!?ほら、覚えてない?お正月の会合で会った…」
ワンちゃん「正月の……?」
ライオン「あの~……デッカイ人いたでしょ?身長が190センチくらいある…あの中だと一番デカかった男の人!金一って名前の人!」
ワンちゃん「あ~!金一さんかぁ!」
ライオン「そう!その人の、奥さん!」
ワンちゃん「え………あぁっーー!!」
ライオン「ふふっ、やっと思い出してくれた?」
ワンちゃん「あぁ…思い…だした……えっ…っていうことは…今…いくつっすか…?」
ライオン「え?ん~と、46歳かな?」
ワンちゃん含め、聞いていた人物が全員驚く
ライオン「びっくりした…そんなに驚く?」
ワンちゃん「いやいや、そりゃあ驚きますよ…だってわたし、ずっと年下だと思ってましたもん……」
ライオン「あ、そうだったの?ワンちゃんなら気にせず話してくれていいよ~」
ワンちゃん「いや…それは……」
ライオンはニコニコしながらワンちゃんを見る
ワンちゃん「…まぁ慣れたら……」
ライオン「うんっ!」
「…二人とも、話は終わったか?」
ライオン「はい~」
「もう、いきなり喧嘩しないでくれよ。止めるのは命がけなんだからな」
ワンちゃん「う…申し訳ないです…」
ライオン「もうしないで~すっ」
「我々はチームだ…それを忘れないように……、ではこれより作戦会議を始める!」
*
こうしてライオンとワンちゃんは和解した。
二人の強さは他のメンバーも見せつけられていたので、これと言った作戦というものはなかった。
お互いにカバーしながら戦い、他のメンバーはその援護のために後衛で待機するという二人頼みな作戦だった。
が…政府側のメンバーは二人の強さを見極めるためにあえて雑な作戦、指示をしていた。
*
ワンちゃん「変身」
ライオン「変身!」
ワンちゃんの手足には鋭い爪がついており、背にはクロスするように剣が二本、背負われている。
両肩の犬のような鎧と頭の鎧が合わさり、ケルベロスを彷彿とさせる。
肩と腰には真っ赤な布が翻っている。
ドラゴンに向かって真っすぐ歩いて近づく。
ドラゴンVSライオン&ケルベロス
ドラゴンがライオンとケルベロスを敵と認識し、突進してくる。
それに合わせて二人も走って近づく。
ギュァアオオオオオオオオオオッ!!!!!!
おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
はぁあああああああああああ!!!!!!
三体が衝突…
勝負の行方は…
*
とある会議室で話し合うスーツ姿の大人たち
「…以上がドラゴン討伐でのライオンとケルベロスの戦闘結果です。」
ざわざわ……
「圧勝じゃないか……どんな力を使っているのやら……」
「ドラゴンに生身で勝てる人間がいるとは…」
「これで彼らは本物だと確信できましたね…」
「これはバラレンジャーのことを思い出さずにはいられませんね~」
「世界を救った大英雄、バラレンジャーですか…それと関係があると?」
「え~。彼らが使っていた超能力と類似する点が見られる…なんらかの形で、能力を継承したのではないでしょうか?」
「しかし、あの超能力は全て癒丹銀河一人の物であったとされているが…?」
「だから、爆殺したんでしょう…しかし、現に超能力を持った人間が現れている。それもただの超能力ではない。軍事的価値があるほどの能力だ。」
「皆さん、ご注目を。実はバラレンジャーについては調査済みだ。そして驚くべきことに近年現れた能力者の中にバラレンジャーの子供がいる…」
ざわざわ…!
「そして…これは極秘の情報なのだが…癒丹銀河以外のバラレンジャーの暗殺は何度も試みている…が、全て失敗に終わっている…」
「なんだと…!?」
「我々は…世界は騙されているのだ…能力を持っていたのはバラレンジャー全員。そして、その子孫などの、継承者だ!」
ざわざわ……
「…AI島侵攻作戦の件、皆さん覚えてますよねぇ?あの時に乱入してきた人物も全員能力者でしょう…能力者と思われる人物は4人いた…。だが、そのたった4人に我が国の軍を半壊させられた…!これは由々しき事態だ!」
「そうだ!この件は他国にも知れ渡っている…早急に手を打たねばなるまい!」
「能力者のうち、会話が通じるのは何人いるのかしら?」
「交渉するつもりか?」
「えぇ。彼らは自分たちが持っている力の大きさを理解していない様子ですしね。それを話した上で、協力を申し込みます。味方になるのならこれほど強力な武器はありませんわ。」
「たしかにな…そこは相違ないだろう…だがもし、非協力的ならどうする?」
「そうなったら決まっている。抹殺だ!」
「ついでにバラレンジャーの連中も本気で抹殺しにいった方がいい…多少強引であっても、これ以上、世間を混乱させるわけにはいかない…」
「世界の秩序のために……」
謎の組織がついに動き出す……
*
世界中を回り、海に住むドラゴン以外の4体のドラゴンを討伐したライオンとワンちゃん。
北極の氷の大地に住むドラゴンを始めとし、砂漠に住むドラゴン…洞窟に住むドラゴン…樹海に住むドラゴンを全て討伐した。
世界中を転々としながら討伐したため、移動が多かった。
移動疲れを癒すために旅先では高級ホテルで数日間過ごし、諸々の物資調達は他のメンバーが行ってくれるので二人は自由時間が多かった。
家族へのお土産を買ったり、知らない土地を散策してみたり、色んなお店や観光地に行った。
撮った写真を振り返ると「国からの重要な仕事」感がまるでない。
まるで世界一周ツアーに行ってきたかのようだ。
2か月に満たない短期間ではあったが、毎日刺激的な生活を送ることが出来た二人であった。
ライオン「はぁ~…ついに[わんにゃんコンビ]も解散かぁ~…」
ワンちゃん「[わんにゃんコンビ]って呼んでんのライオンだけですよ…」
ライオン「なんでだろうね~?そっちの方が可愛いのに…。コードネームがライオンとケルベロスっていうのはまぁ納得できるけど…わたし達、女なのにね~」
ワンちゃん「女だから[わんにゃん]にしたいんですか…?」
ライオン「そりゃぁ可愛い方がいいでしょ~?コードネームがかっこいい分、せめて二人の時は[わんにゃんコンビ]って呼んで欲しかったな。チーム[わんにゃん!]とか。…ワンちゃんはそう思わないの?」
ワンちゃん「えぇ…。まぁ仕事っすからね。なんて呼ばれようがワタシは…」
ライオン「え~、つまんないの」
そんな会話をしながら護送車に揺られる。
ライオン「はぁ~…やっとお家に帰れるね~」
ワンちゃん「そうですね……」
ライオン「やっと子供に会える~。寂しがってないかなぁ?」
ワンちゃん「一番下のお子さんはおいくつでしたっけ?」
ライオン「もうすぐ6歳になるの~!」
ワンちゃん「へぇ、甘えざかりじゃないですか」
ライオン「そうだね~、でもパパも兄弟もいるからそんな寂しがってないかも!…ワンちゃんのとこは…つばさ君だったよね、何才だっけ?」
ワンちゃん「うちは2歳です」
ライオン「あら~じゃあ手がかかるね~。旦那さん一人で面倒見てるの?」
ワンちゃん「いえ、ワタシの親も見てくれますし、おじいちゃんおばあちゃんもよく見てくれるんで、心配ないです」
ライオン「そうなんだ~。つばさ君は優しいおじいちゃんおばあちゃんに囲まれてるね!」
ワンちゃん「…はい!」
ライオン「あ~、子供の話してたらすっごく会いたくなってきちゃったな~」
ワンちゃん「やっと仕事も終わりましたし、あとは帰るだけですよ」
ライオン「………………」
ワンちゃん「?」
ライオンは一点を見つめて急に黙った
ライオン「……そういえばわたし…子供のために仕事してたんだ……」
ワンちゃん「え?」
ライオン「あっいや、わたし…子供のことが好きで…何不自由なく生きててほしいからって、お金稼ぐためにこの仕事したんだけど…。会えない時間を作ってみて分かった。お金よりも、子供たちとの時間の方が大切だったなって!」
満面の笑みで話すライオン
(そう…貴方の心の支えは家族への愛なのです……よく、自分で気づけましたね……)
ライオン「お金も大事だけど、ほどほどにしないとだね!ワンちゃんも、すぐにつばさ君に会いに行かないとだよ~?」
覗き込んでくるライオン
ワンちゃん「わ、わかってますよ」
ライオン「三つ子の魂百までって言うしね!小っちゃい時なんて特にお母さんとの思い出が大切なんだからっ!」
ワンちゃん「ふっ、そうですね。ワタシも早く会いに行かないと…」
*
諸々の手続きを済ませ、二人は同じ飛行機に乗り国へ帰った。
家族へのお土産をたくさん持ち、数か月続いた[わんにゃんコンビ]解散の時が来た。
ライオン「じゃあ、ここでお別れだね」
ワンちゃん「そうですね」
ライオン「家族に会えないのも寂しいけど、ワンちゃんと別れるのも寂しいな…」
ワンちゃん「親が知り合いなのもありますし、またどこかで会えますよ」
ライオン「そうかな……うん…そうだよねっ…また、必ず会おうね!」
ワンちゃん「うん!ここまでありがとう…ライオン」
ライオン「ふふっ、もう仕事は終わったんだから名前で呼んでよ」
ワンちゃん「あっそっか……いろいろありがとう。恩実さん」
恩実「んっ!何か相談ごととかがあったらいつでも言ってね。子育てのこととか特にね!」
ワンちゃん「分かりました」
恩実「じゃ、わたし行くねっ」
手を振り、改札の方へ歩き出す
恩実「またいつか、[わんにゃんコンビ]組もうね~!」
ワンちゃん「は~い!」
小さい身体で大きな荷物を抱えて改札を通って行った。
いい思い出と友人ができたと余韻に浸っていると、あることに気づいた。
ワンちゃん(…あれ?恩実さん、今逆のホームに行かなかったか?)
少し前
ワンちゃん「何時の電車ですか?」
恩実「10時38分~」
掲示板を見るとその時間の電車は逆のホームだ。
電話を掛けるが出ない
ワンちゃん(あ~ぁ、こりゃやっちゃったかなぁ~………なんつーか…最後まで恩実さんらしかったなぁ……)
「ま、なんとかなるだろ…!ワタシも帰ろっ!」
プルルルル!
金一「もしもし?」
恩実「あっ!パパ~…帰り方分からなくなっちゃったよぉ……!」
チャンチャン♪
*
神獣扱いされているドラゴンを討伐した恩実とワンちゃん。
だが、この世界にはまだ神獣が残っている。
それは彼らに宿る守護神獣たちだ。
彼らが正しく、高潔であるほど守護神獣の力は強まっていく。
その力とは、巫言が見たような奇跡の力なのか…それともユニコーンやケルベロスのような混乱と恐怖を生む狂暴な力なのか……
それはまだ分からない…。
ただ、それが神のような力であってもそれを崇めるかどうかは別問題だ。
人間にとって力とは、争いの種でしかない。
たとえ伝説的ヒーローであろうとも関係はない。
伝説も、神獣も人間の手により終わりを迎える…
第二章 伝説の神獣編 完