二章-10「猫に小判」
「Odd I's」
第二章「伝説の神獣」
第24話「猫に小判」
口に咥えていたトリシューラを手に取り、ライオンに向かって勢いよく振り下ろす!
ライオンは驚き、謝りつつも手に持っていたトンファーで防御する。
ワンちゃん「見つけたぜぇ…!!ライオン女ァ!!」
ライオン「い、いきなり何!?ていうかなんでここに…!?」
ワンちゃん「驚いてんのはこっちだ…だが、ここで会ったが百年目…!あの時の落とし前…きっちりつけさせてもらう…!!」
鍔迫り合いになっていると、基地と先程ワンちゃんが乗っていたマシーンから人が出てくる。
「ストップ!ストップ!」と二人を止めに入る。
*
基地の中の一室で数名に囲まれながら、一つの机に二人で座る。
ライオンが変身を解くと、童顔で小柄な女性だった。
ワンちゃんは鋭い眼光で頬杖をつきながらライオンを見る。
重たい空気の中ワンちゃんが尋ねる
ワンちゃん「…わかってんだろーなぁ…?」
ライオン(ギクッ!)
ワンちゃん「…ワタシがまず聞きたいのは誘拐した女の子をどこへやったかだ…!」
その言葉を聞くと、先ほどまで子猫のように怯えていたライオンがポカンとした。
ライオン「……誘拐…??…女の子を……???」
ワンちゃん「あ?なにとぼけてんだ!!」
ワンちゃんが机をバン!と叩く。
ライオン「ほんとに!何も知らないんですぅ!そのことに関しては!……てっきりわたしはこの武器のことで怒ってるんだと思ってて……」
ワンちゃん「………どういうことだ?」
ライオン「…わたしのこの武器を取り返しに来たんじゃないんですか…?」
ワンちゃん「………………」
話が噛み合わない。
ワンちゃん(……とぼけているようには見えない……てかそもそもこいつ、嘘なんてつけんのかぁ?……どうなってる…?)
ワンちゃん「…お前…あの時、変な獣を手懐けていたな…?あれはどういうことだ?」
ライオン「え…う~~ん…そういえばそんなことがあったかも……なんで懐いてたんだろう…?…人懐っこい動物なのかなぁ~って思ってたけど……」
ワンちゃん「っ!……(ふ~…ふざけんな!って怒鳴るところだった…)……あの獣は仲間じゃないのか?」
ライオン「仲間ってどういうこと?…知らないけど……」
ワンちゃん(………クッソォ…!何も分からねぇ……やっぱ、楓がいてくれりゃぁな………)
ワンちゃんはしばらく考えた。
ワンちゃん「…よし…お前、あの日の出来事全て話せ。」
ライオン「えっ!?わ…分かりました……えぇと…あの日は……」
*
ライオン家にて
通帳を眺めるライオン
ライオン「はぁ……お金がどんどん減っていってる……紡来は大学行きたいって言ってるし…その次は結衣も大学かな……あぁ…その年には紬が就職か……引っ越しにお金かかるかな………」
机に伏せて不安になるライオン
(やばいよ~このままじゃまずいよぉ~~っ! お金なくなっちゃうよぉ~~~ 生きていけるのかなぁ~~っ!? 子どもの面倒がみれるのかなぁあ~~っ?)
ライオン「はぁ……そうだよね…………最近お金使い過ぎなのかな……節約しないとかぁ……収入も増やさないと……………はぁ……パパはなんであんなにお金に対して能天気なんだろう…………いざとなったらお義父さんお義母さんたちに………いや、ダメダメ!」
自分の頬をパチンと叩く。
ライオン「弱気になってちゃダメダメ!あの人を支えるためにも、子供たちを支えるためにもわたしが頑張らないと!」
立ち上がって、気合を入れる。
ライオン「………とは言ったものの…何から始めようかな………やっぱ節約からだよね……今まで以上に節約しないとかなぁ……」
そう思って節約を始めてしばらく経って……
ライオン「…う~~ん……節約ってなかなか大変だなぁ………子供たちのためにも食費は削りたくないし……お出かけも大切な家族との思い出だし………う~~ん…………!…そうだ!家の物の整理も兼ねて色んな物、売ってみようかな!?…………うん!そうすればいらない出費に気づけるかもしれないし……よぉ~し!」
ライオンは家の物を片付け始めた。まずは自分の服や、鞄などを見直した。
数回しか使っていない家具や家電なども片付け、売却の準備を進める。
ライオン「ふぅ!…ひとまずこんなもんかな!…………」
ライオンは家を見渡し、夫の部屋の扉で視線が止まった。
ライオン「…………ちょっとだけ……見ちゃおっかな……」
ガチャ……
誰もいないが、なんとなくこっそり開ける。
ライオン「おじゃましま~す………うわぁ…なんかすごくいけないことしてる気分………ううん!ただ見るだけだから…!勝手に売るわけじゃないから…!」
ライオンは夫の部屋に入り、引き出しを開けたり、棚を物色したりした。
夫の趣味はゲームとスノーボードだ。
ゲームは皆でやることも多いのでリビングにある。スノーボードはクローゼットの奥にしまってあるが、コレクションしているわけでもなく、高価な物を買ったわけでもない。
ライオン「……う~ん…やっぱりあの時一緒に買ったやつだ………高い板を買い込んでるかなぁと思ったけど…やっぱりそんなことないよね……」
しばらく部屋考え込む
ライオン「……パパがあんまり気にしてないだけなのかな……売れる物も無さそうだし…諦めよっと……」
立ち上がり、部屋を出ようとすると…ゴトンッ!と何かが倒れる音がした。
「ん?」とクローゼットの奥を見る。
そこに何かがあるような気がして荷物をどけてみる。
そこには毛布にくるまれた1メートルほどの物体があった。
ライオン「なんだろうこれ……もしかしてお高い物だったりして…!」
期待に胸を膨らませて毛布をどけると…
シュゥウウーーーッ!!!
何かがライオンの中に物凄い勢いで入っていく。その勢いに、思わず目をつぶる。
ライオン「…!!……な…なに…今の…!?」
手元を見ると、毛布の中にはもう何も無い。
ライオン「あれ……わたし…何かやっちゃった…?」
家にあった謎の物体を吸収して数日後………
家にあった物を売却した帰りの車内。
自動操縦モードを解除して運転するライオン。
ライオン「はぁ~…どうしよ……まだバレてないみたいだけど…いつか絶対バレちゃうよね…あんな凄そうな物が無くなったなんて……気づかれたらどうしよう………」
ハンドルを切る
ライオン「はぁ……」
ハンドルを切る
ライオン「はぁ~……」
ハンドルを切る
ライオン「はーーーーーっ………」
ハンドルを切る
ライオン「…ってここどこーっ!?」
知らない場所に到着する。
ライオン「はぁ…まぁ、自動操縦で帰ればいいか…。ん…?神社…があるのかな?…ちょっとお参りしていこうかな…」
そう言って近くに駐車し、山の中にある神社へ向かう。
*
別場面
楓「匂いで見つけられるなんてホントにワンちゃんだね~」
ワンちゃん「うるさい…!…でもまぁ楓に言われなきゃこんなこと思いつきもしなかったかもな……っ!…匂いが強いところがあるが…あれは家だな…。他にも匂いはあるが…」
楓「どう?」 村の地図を見せながら聞く。
ワンちゃん「…学校……通学路……ん…?」
楓「どうした~?」
ワンちゃん「…山の中に匂いがあるな…キーホルダーがあった場所からかなり離れているが…」
楓「ここらへん?う~ん…まぁ怪しいなら行くしかないでしょ~」
ワンちゃん「そうだな。行くぞ!」
カシャ…ピピピピ…!
ルウラ「…体温は低いが何かが居る…こっちを偵察しているのか…?トオン!お前も見えるか!?」
トオン「え!…あ!うん、見えた…!」
クーゴ「おいおい早速かよ…」
ルウラ「トオン、マーキング弾を撃てるか?」
トオン「りょうかい!」
パァン!
トオン「よっし!命中!」
ルウラ「お前ら!追うぞ!おれとトオンが先行する。マイドとクーゴは後ろに付け!」
「「了解!」」
ルウラ「マイド!隊長に現状報告しろ」
マイド「了解」
*
ライオン「はぁ……はぁ……ここ……どこぉ…!?」
神社を目指していたはずのライオンが何故か遭難している。
ガサガサ……!
ライオン「ひぃ!?な…なに…!?」
ガサァ!!
ゴリラのような獣が飛び掛かってくる
ライオン「きゃあああああああああ!?」
カッ!!!
ピシィィィイイイイッ………!!
迫る獣を変身した勢いで吹き飛ばす。
変なポーズで琥珀のスーツを纏うライオン。周りには冷気が漂う。
ライオン「……へ…?…なにこれ…?あっ!」
手を見ると、あの時一瞬見えた棘のついたトンファーが握られている。
ライオン(これってあの時の……これなら戦えるかも……!でも…この状況どうしよう…)
警戒する獣が数匹、ライオンを取り囲む。一匹が攻撃を試みる。
ピクッ!
それに超反応して構えるライオン。その後ろには百獣の王たるライオンのオーラが出現し、獣を威圧する。
ビクッ……
獣たちは王に仕える従者のように、ライオンの前に跪いた。
ライオン「わぁ…!?急にどうしたんだろう……怖がっていただけだったのかな…?」
手を伸ばして撫でようとしてみる
そこに現れたのは……
ワンちゃん「おい!お前!そこで何してる!?」
ライオン「ひっ!?」
獣たちは王を護るかのように突然現れたワンちゃんに襲い掛かる。
ライオンは真逆の方向に走り出す
ライオン(と、とっさに逃げちゃった~!だって絶対あの人やばいもん!でっかい武器持ってたしぃ~!)
ライオン「はぁ…はぁ……(っていうかわたしも武器持ってるやばい人じゃん………なんて説明しよう………あれ?なんだろうこの建物……?)」
ライオンは森を抜けて謎の建物の前に出る
ワンちゃん「待ちやがれ!ようやく追いつめたぞ。」
ライオン「ひぃ!!」
マイド「ワンちゃんさん、この人は一体なんだって言うんですか?」
ワンちゃん「わからねぇ…だが、あの獣たちがこいつの味方なのは間違いない。」
ライオン(あれっ?もしかして…あの子知ってるかも…?…どこで見たんだっけ………う~~ん………あっ!金一さんのお友達の娘さんだったような!ん…?金一さんの知り合い…?ってことは…もしかして……もしかして…こ…この武器を取り返しに来た…ってこと!?)
ワンちゃん「お前が犯人なのは分かっている!何のためにこんなことをした!」
ライオン(うわーっ!!犯人ってやっぱりバレてる…どうしよう……何のためって………)
ライオン「……………………お…お金のため………?」
ワンちゃん「金…だと…!?金なんかのためにっ…!」
ガコン!
話の途中で、壁の扉が開き蜘蛛のようなロボットがわんさかと出てきた。
ルウラ「!?次はなんだ!?」
クーゴ「…やばいかもな」
ライオン「うわっ!?(なになに!?なんか出てきた!?)」
ロボットはライオンを護るように一斉掃射する。
戦闘になるが、ライオンはよく分かってないのでその場であまり動かないでいる。
すると、銃を持った女性ロボットに何かを撃たれる。が、トンファーではじく。
その後、視覚外から先程の数倍の威力、速度の弾丸が飛んでくる。
それは確実に殺すための弾丸だった。
ガンッ!!! ピキピキィ…!!
陽介「なっ!!?」
弾丸は空中で氷に包まれて止まった。
ライオン(確かに…わたしは結果的に人の物を盗ってしまった…でも…殺される筋合いなんてないはず…!)
「…さすがのわたしもここまでされる覚えはありません。…怒りましたよ…!!」
ルウラ「なんだ!?」
ワンちゃん「コイツは…!?」
ピシィ…!ミシミシ…!!!
ライオン「これより一歩でも入れば本気で打ちます…!!今すぐどこかへ行ってください…!!」
ワンちゃん「ハハハ…おもしれぇ…!!」
マイド「ワンちゃんさん!ここは一旦退きましょう!」
ルウラ「こいつは強い。それにこちらは準備も出来ていないうえに情報の共有も出来ていない。一度整理するべきだ!」
ワンちゃん「…そうだな…仕方ねぇ帰るぞ!」
襲ってきた人達が退いて行った。
ライオン「………………行った…かな………はぁ~……なんだったんだろう……この力もそうだし……もう……疲れちゃった……」
ライオンが疲れているとウィ――ン…と音がして謎の建物の扉が開いた。
??「素晴らしい力です!20年前に見た伝説のヒーローを彷彿とさせます…」
パチパチと手を叩きながら出てきた白衣を着た男性
この男性は一体…!?
*
ライオンの行動の謎が明らかになった。
だが解明された謎はまだほんの一部…
謎の男…
謎の建物…
そしてライオンはなぜ北極にまで来ていたのだろうか…
次回『わんにゃんコンビ!』