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Odd I's  作者: TEAM,IDR
23/58

二章-9「ヒーローの救い」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第23話「ヒーローの救い」

パパ「…………………君は…誘拐されたことがあるか?」

突然、謎の質問をされる

みこ「?……いいえ…」

パパ「…オレは小さいころ、超能力を持っていたことが理由で誘拐された。10年以上もな…」

みこ「……………」

パパ「その間の苦しみは…どれだけ言葉を並べても伝えられる気がしない………酷く…長い時間だった…………しかも、それだけじゃない。そこから抜け出してきてオレはヒーローになったんだが……毎日毎日…人間の闇に触れてきた…。……自分で選んだ道だが、まともな精神ではやっていられない……とても大変だ…………」

みこ「…………」

パパ「…だが、支えてくれる人がいる。…オレはヒーローになった時、一生大切にしたいと思える友人が沢山できた…家族とも仲良くできたし…妻も娘もとても愛おしい…。…オレの人生は暗くて…辛い時間が長かった…今でも闇の中にいると言ってもいい…。だがそんな中でも、輝かせ続けることが出来ている、大切な正義がある。…それが出来ているのは、妻や娘…家族や仲間がいるからだ…。…大切な人がたくさんいるから、オレは自分のことを幸福だと思っている……」

みこ「……!!」

パパ「君の人生がどれほど不幸だったか知らないが、これから先の人生で幸福が待っているかもしれない…」

パパはみこの方を見ず、まっすぐ前を見て話した。

話を聞いたみこは思うところがあったのか、少し考えるような仕草をとった。


少しの間、無言が続く


パパ「…………そういえば…雪に対しても幸せがどうのこうの話していなかったか?」

みこ「……ええ……話しましたわ……」

パパ「………雪は…幸せだと言っていたか…?」

みこ「……ええ………運命の出会いがあったから…幸せだと言っていましたわ……」

パパ「そうか…………」


少し嬉しそうな声でつぶやいた。


パパ「………実は雪もな……辛い人生を送っていたんだ…。父親から虐待をされていた…」

みこ「!!」

パパ「…辛かった時間で言えば…オレよりも妻の方が長い………一生消えない傷がいくつあるのか……」

みこ「……………」

パパ「…だがそれでもオレ達は生きている…そして幸せだと言えるようにまで変わることが出来ている…」

みこ「…………」

パパ「……オレは口が下手だから…言えるのはこれくらいだ……。…オレや雪は君に手を差し伸べている……これから出会う人も、君に手を差し伸べてくれるかもしれない。その手を取るのかどうかは…君次第だ……」

みこ「…………………」


みこは長い間、沈黙して考えた

パパはその間、隣で静かに待ち続けた



そして…ようやくみこが口を開く


みこ「………(わたくし)は…生まれた時からお金を稼ぎ、注目を集めるための道具として使われましたわ……巫女としての役割を果たし、自己中心的な欲望にまみれた人間を数えきれないほど見て来ましたわ……そんな穢れた大人たちに囲まれて生きた(わたくし)は…もう親のことすら信用できなくなっていました……………力を手に入れ、全てを破壊して何もかもから解放されても、幸せにはなれなかった…泥水をすするような過酷なサバイバル生活を続けることなんてできず、警察に頼り、そこでも大人の底意地の悪さを感じて抜け出し、恥を承知でここまで来ました……。…っ……こんな自分に嫌気がさす……情けない……一人では何も出来ず…何かにすがろうとしている………心のどこかで助けを求めているのに、差し伸べられた手を信じることもできず、たとえそれが神の手であったとしても…拒絶したがっている……………。

 これまで散々、雑に扱われてきたからか…(わたくし)も、どうにも他人を見下したくて仕方がない……これまでの人生を言い訳にしているなんてこと分かっている…こんな自分になりたくないなんてことも分かっている……でも…止められない……」


みこは泣き出してしまう


みこ「…自分が一番不幸だったと思い込んで…他の人を下に見ようとしてる……

くだらない意地を張るために驕った態度をとっちゃったぁあ………ぐすんっ…最低だぁ………分かってる……分かってるのに……

…もう嫌だ……

…死んでしまいたい…………」


年端もいかない少女が心のそこから「死んでしまいたい」と発言している。

ここまでの道のりがどれほど過酷なものであったのか…

どれだけ心と体を痛めてきたのか…

たとえ数時間程度の語らいだけであったとしても、心中を察するには充分すぎた。


泣きじゃくるみこの背中をそっとさするパパ。


パパ「……すまないな……上手い慰め方を知らないんだ……」

みこ「うぅ……ううぇえ………うぐっ………うぅぅぅ…………」


泣き止むまで、優しくさすり続けるパパ



みこ「う……ぐすっ…………」

パパ「…………落ち着いたか?」

みこ「………はい………」

パパ「かしこまった言い方をしなくていい………お腹空いただろう?雪が美味しいご飯を作ってくれている。今は、美味しいご飯を食べてぐっすり寝よう。衣食住が揃ってなければ幸福にはたどり着けないからな。」

みこ「………うん…」



数日後

荷物を車に詰め終わり、玄関先で話をする四人

雪「いってらっしゃい。気を付けてお仕事するのよ?」

パパ「何かあったらすぐに連絡しろよ?」

ワンちゃん「分かってる、ありがとね…」


ワンちゃんはドラゴン狩りに行く前の準備と兼ねて、みこの様子を見に来ていた。


ワンちゃん「で…みこ、家の居心地はどうだ?」


ワンちゃんは前かがみになり、ぐいっと顔を覗き込む

みこはそっぽを向いて「……悪くはありませんわ!」と少し照れながら言った。


ワンちゃん「…そっか!元気そうで良かったよ。…じゃああとのことは任せた!」

雪「えぇ、ご心配なく~」

パパも頷く


ワンちゃんは車に乗り込み、仕事へ向かった

車が見えなくなるまで見送ると、振り向きざまにみこがつぶやいた。


みこ「…この家…とても良い場所ですわ…」

雪「えっ!?」


唐突な言葉に思わず聞き返すが、二度は言わない。


みこ「……少し、お話がありますの…この後お時間よろしいかしら?」



三人でテーブルに着く。 雪がお茶とお茶菓子を用意した。

みこは場が整うと、真剣な表情で語り始めた。


みこ「…(わたくし)…あれから色々と考えましたの……これからのことを……。」


二人は静かに聞く


みこ「(わたくし)は……力から解放される場所を探しますわ……。」

雪「………」

パパ「………」

みこ「…(わたくし)は「この世は力が全て」だと思っています…。力が無ければ何も出来ない…何も護れないし…利用される…安全な場所を確保することすらもできない……。(わたくし)はこれまでの人生で己の無力さを知りました。…(わたくし)はそんな世界を破壊したい……。力の在る無しに関わらず穏やかで…笑って過ごせるような…そんな世界を創りたい…。それが(わたくし)の夢ですわ…!」

雪「…っ!…うんっ、いいと思う!壮大で素敵な夢だね~っ!」

パパ「……難しいことを志したな……社会の構造ごと変えるつもりか?」

みこ「……難しいことだと思いますわ…今はただ、思いついただけで具体的な案は何一つありませんわ…。何をどう変えたいのか…自分は何になりたいのか……そんなこと想像もできません……だから進むのです。」

「「…………」」

みこ「(わたくし)がなりたい姿…それは…大雑把に言うのなら王様のようなもの……。平和な世界の王……自由に生きられて…何ものにも拘束されず…誰にも従わない…それでも無法ではなく、律せられた世界……そんな世界が欲しいです。」

雪「………そっか……辛いことをいっぱい経験してきたみこちゃんだから、辿り着いた答えだねっ」

みこ「………えぇ…。そして、本題はここからですわ。…(わたくし)を施設に連れて行く話はついているのでしょう?」

パパ「…あぁ、心の準備が出来たのならいつでも行ける。」

みこ「…ずっとここにいるわけにもいきませんもの…。早く学校に行ってお勉強しないとですわ。知力という力が無ければできないことがありますから…。」

パパ「…分かった……」

雪「……………」

みこ「……………」


三人はしばらく無言のままだった。

それぞれが思うことがあった。

それが最初に言葉になったのはパパだった。


パパ「…君はその夢を叶えるために、誰かの手を借りることはできるのか?」

みこ「……………………」

パパ「…誰かを信じることは…まだ出来そうにないか…まぁ、それでもいいだろう。だが、一つ覚えておいてほしいことがある。 信用していなくても差し伸べられた手を握ってもいいんだ。」

みこ「っ!!」

パパ「これから先、君の力となってくれる人は沢山現れるだろう。君は根が優しいから、その全てに誠実に応えようとしてしまう…。だが、それでは疲れる。衰弱した君はまた、これまでのように悪意に操られるかもしれない。だから変わるんだ。自分が幸せになるために、どの手を取り、何を信じるのか考えるようにな…」

みこ「はい……」

パパ「……施設に行っても、戻りたくなったらいつでもここに来ていい。」

みこ「え…!?」

パパ「もちろん、必ず戻ってこいなどとは言っていない。これはオレ達からの…優しさだ。この、オレ達からの手をどうするのかは…君が自由に決めればいい。…そういう話だ…」

みこ「…………」

雪「…これも何かの縁っ。だから…遊びに来るような感覚で気軽に来ていいのよ?」

みこ「………縁………」

雪「…運命の話、したでしょう?…どういう巡り合わせであっても、その力があなたにあるのならあなたはきっと『ヒーロー』に選ばれたんだと思う。わたしはあなたを信じるよっ。それに、これからのヒーローを支えるのもわたし達の役割なんだし、なんでも頼っていいから…ねっ?」


観念したかのように息が漏れる


みこ「……ふっ…分かりましたわ………なんだか今までのモヤモヤが嘘みたい…スッキリと、晴れやかな気分になりましたわ…。本当にありがとう…」

雪「ふふっ、よかった」

みこ「ここを出る前に話せてよかったですわ。…実は…ここに来た時から…貴方達を頼りにしたくて………」


恥ずかしそうにもじもじするみこ。その様子は最初の高圧的な態度とは正反対だった。


雪(かっ、かわいい~)

パパ「オレ達はヒーロー(大人)だ。困っている人の救いになれたのなら、嬉しい。」

雪「そうよ。それに、みこちゃんはと~っても大変な思いしてきたんだからその分甘える権利があるんだから。幸せになるために、周りの大人にたくさん甘えなさい」

みこ「う…うん…!…それと…もう一つ言いたいことが……」

雪「ん?どうしたの?」

みこ「(わたくし)の名前なのですが…信頼の証として貴方達には一番に名乗っておきたいのです。」

「「!」」

みこ「(わたくし)は巫女をしていたのもあり、みこちゃんと呼ばれ続けてきましたが…本当の名前は…大賀(おおか) 巫言(みこと)と言いますわ」




後日


パパ「藍さん、巫言の様子はどうですか」

藍「あらブラウン。来ていたのね。巫言のことなら心配いらないわよ。元気にやっているわ。」

ブラウン「そうですか。なら良かったです」

藍「数日間、貴方達の所へ行って正解だったわね。友達ももうできたのよ。…新入り同士で仲良くやっているわ。…そうそう、その友達の一人が食べ方が汚い子でね…わたくしの指導のおかげで少しはマシになりましたけど。それに比べて巫言は食べ方が綺麗だから良いお手本になるわ。食事の時は面倒をみさせているのよ」

ブラウン「ふっ……そうか……話が聞けて良かったです。オレはこれで…」

藍「会ってあげないのかしら?」

ブラウン「…そういうのは苦手なので。…あの子が会いたいと言うのなら…その時は…」


消えるブラウン


藍「ふぅ~ん…相変わらず積極性が無いわね…よくあれで雪とくっついたものだわ……」



巫言が施設で穏やかな暮らしを始めている一方、ワンちゃんは北極の過酷な環境に足を踏み入れていた。


キャタピラのついた箱状の乗り物で氷の上を走る。

少し吹雪いており、視界は良くない。

ワンちゃんは防寒着を着込んで前の席に座っていた。

しばらくすると基地が見えてきた。運転手が指をさすがそこには基地以外のモノも見えていた…


ワンちゃん「なんだありゃ!?」

運転手「えっ?わぁ!?」


基地の真横には四足歩行で、のしのしと歩くドラゴンがいた。

長い尻尾と、腕や背中についたヒレのようなものが特徴的で、全体的に見るとスラリとしている。だが、マイナス20℃の極寒の中を平然と歩く様子と、明らかに車両よりも数倍大きい身体から弱さは微塵も感じられない。


今にも基地を襲ってしまいそうだったが、それをオーラだけで威嚇した存在がいた。

ガオォォォォオオオオオオッッ!!!!!!!


ワンちゃん「…っ!!このオーラはっ…あの時の…!!」


全ての獣の頂点であることを分からせる圧倒的な威圧感。

そのオーラに気圧され、たじろぐドラゴン。

その隙に基地から出てくる琥珀色のスーツを纏った人間が出てきたが、ドラゴンは戦わずに逃げてしまった。


オーラを感じ、スーツを見てあの時のライオンだと確信したワンちゃんはマシーンを飛び出す。

眼をギラつかせ、紅いオーラを放つ。

口にトリシューラを咥え、犬のような走り方で突っ込んでいく。


ワンちゃん「rrrラァアイイオオオオオオオオン!!!!!!!!!!」

ライオン「え……ええええええ!!!??ちょ…え…なんでここに!?きゃあああああ!!!ごめんなさいいいいいい!!!!」



行方不明の少女を捜索していた時、獣を手懐け、研究施設を護って戦っていたライオンと再会する。

ライオンは敵か、見方か!?

あの時の謎が、今動き出す。


次回『猫に小判』


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