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Odd I's  作者: TEAM,IDR
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二章-7「運命なんてクソくらえ!!」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第21話「運命なんてクソくらえ!!」


閉園時間までどこか遠くを見続けるという異常な行動に園長と村長は話し合いの末、あの家族を連れてくることにした。



村長「申し訳ございません、買い物の途中なのに呼び止めてしまって…」

ママ「いえいえっ、もう買い物も済みましたしもう帰るだけなので大丈夫ですよ~」

ワンちゃん「なつろー君、もう一回見れるの?」

ママ「うんっ、そうみたい!」


誰もいない園内に入り、奥に進むとドラゴンが八城家の方を向きながら座っていた。

なつろー君を独り占めできることに興奮し、駆け出すワンちゃん。


ワンちゃん「わー!なつろー君だー!!」


なつろー君の胸元に飛び込み、ふわふわの毛並みを抱きしめる。

村長たちも歩いて近づくと、やはり強い興味を示す。


村長「なぜだか、あなた達のことをとても気に入っているようです…」

ママ「へぇ~、不思議だね~」

パパ「…そうだな…」


ドラゴンが首を垂れたので、頭を撫でようとするママだが、ドラゴンは鼻を体に押し当ててきた。


ママ「うわっ!」

村長「…これは…食べ物をねだっている時の仕草ですね…」

ママ「えっ!?…さっき買ったお土産が欲しいのかな~?」


そう言って買い物袋を前に出すが、ドラゴンは首を横に振る。


ママ「えっ…これじゃないの?」

村長「違うみたいです…この子はYESの時は縦に、NOの時は横に首を振りますから。」

ママ「へ~賢いね~!ん~でも他に食べ物なんて持ってたかな…?」

パパ「そもそも雪に反応しているのか?」


と言い、娘を呼んで雪と距離を取る。

すると、チラリと横を見るものの雪だけに反応しているようだ。

また、鼻をこすり当てる。

そうこうしていると、園長も様子を見に来た。


雪「え~!もう何も持ってないよ~!ど…どうすればいいの~?」

村長「う~~ん……なつろー君がおかしいのは貴方に何かがあるみたいですが……」

園長「どうしちゃったんですかねぇ……いや、私どももこのような事態は初めてでして……」

ワンちゃん「ママずるい……」

パパ「…………」


考えても理由が分からず、一同が困っているとなつろー君も困ったように「キュゥゥゥン……」と鳴いた。そして、何かを思いついたかのようにドラゴンは目を閉じて鼻を押し当てる動作をやめた。


ドラゴン「……………………………」

雪「……………………………!!」

園長「!…なにか…分かりましたか…!?」

雪「分かったかも……でも………」

パパ「少し試してみるか……」


パパがそう言うと、ドラゴンの周りを不自然に吹く風が発生する。

パパ(…これのことか…?)

なつろー君を撫でるように風が一周すると、パパの方を向きコクリと頷く。


パパ「…もしかして…アレを…欲しがっているのか…?」

雪「……う~ん…そうだと思う……」

村長「何か、心当たりがあるのですか?」

雪「はい……でも………」

パパ「…持っていても処分に困るしな…これも何かの縁かもしれないぞ?」

雪「…いいのかな…?…でも……」

パパ「…見せるだけ見せてみるか?」

ワンちゃん「………?」


雪は少し考えたあと、「分かった」と頷き、空間に穴を空けて武器を取り出した


村長「え!?」

園長「うわぁ!!?」


大きなハンマーが何も無いところから出てきたように見える。

ズン…………!!!

優しく持ち手を地面に付けただけなのに、大地が振動するほどの重みを感じさせた。


ドラゴン「!!?」


ドラゴンは驚きながらも「それだそれだ」と訴えかけるように首を上下に振る。そして、口をパクパクと動かして見せた。


園長「あ…!この仕草は食べていいか聞いている時の行動です!」

雪「…ずっと、これに反応してたのね…」

村長「な…え…ど…どういう……どうなってる……???」


ドラゴンは真っ直ぐ雪を見つめ、何かを訴えかける


ドラゴン(それを私に預からせてください。貴方が思う相応しい人物が現れるまで、どうか私に貸していただけないでしょうか……?)

雪(…この武器が創られた理由を知っているの?)

ドラゴン(ええ、なんとなくですが分かります…)

雪(それはドラゴンの力?)

ドラゴン(貴方の力とも言えます。私は貴方の強い力を感じ取っている…。ただそれだけです。)

雪(そう…。不思議ね…なんかそれだけで納得できちゃう……。…いいよ。貴方はパパと同じで優しい竜さんだから特別に……)

ドラゴン(よろしいのですか…?)

雪(だってそうしないと帰らせてくれないでしょ?貴方もずっとお部屋に帰っていないみたいだし。)

ドラゴン(…申し訳ない…。本来ならば力づくで奪いたいほど魅力的な力なのだが…何をしたところで貴方方には勝てないでしょう……一人でもどうしようもないというのに3人もいるとは…。見ただけで屈服してしまいました…ドラゴンの末裔として恥ずかしい限りですが…そんな恥を忍んで改めてお願いしたい。その力を…私にお与えください…)

雪(うん…でも、一つ聞かせて?借りたいと言っていたけれど、借りてどうするの?)

ドラゴン(…誇りを示すためです……)

雪(…………そう………なんとなく分かった……)

ワンちゃん「ママお話してるの?」

パパ「あぁ、そうみたいだな。」

村長「何か起っとるんか……」

園長「なんだか不思議な雰囲気ですね…」

雪「決めましたっ!わたし、この子にコレ、あげますっ!」

村長・園長「「えぇ!?」」


そう言うと村長、園長が止める間もなくドラゴンはハンマーをパクりと食べてしまった。


村長・園長「「ああーーっ!!!?」」

ワンちゃん「あっ!食べちゃった!」


村長と園長が唖然としていると、ドラゴンは立ち上がり八城家へお礼をしてから檻に戻ろうとする。

いつものように園長を催促して戻ろうとするドラゴンに「はっ!」と我に返る。


雪「あっ!そうだ、記念にお写真撮らせてもらおうよ!」

ワンちゃん「撮るー!」

村長「あっ…写真!?」

園長「…あっ!そうですね、じゃなつろ…」

と、言い終わる前に八城家の後ろにスタンバイ


パパに肩車をされたワンちゃんがなつろー君の頬を撫で、その様子を微笑ましく見守る雪の姿が写真に収められた



この日からしばらく、何事もなかったかのように振舞うなつろー君にすっかり安心した村長と園長。しかし、その安堵はそう長くは続かなかった…


ハンマーを飲み込んだことを知っていた二人は獣医を呼んで診断をさせようとするが、ドラゴンはそれを激しく拒絶した。


ドラゴンを抑えることも出来ず、麻酔銃などを使おうとした際は建物を破壊し、子ども達の背に隠れるように逃げた。

子ども達の目の前で強引な手段を用いることも出来ず、検査は諦めることとなった。



ドラゴンは日に日に大きくなっていき、それに伴って動きが無くなっていった。

一日中座って過ごすことが多くなり、触れ合いコーナーは終了する運びとなった。

食事も次第に取らなくなっていったが、不思議と衰えているようには感じなかった。むしろパワーが増しているかのように思えた。

そのパワーとは単にドラゴンの活力や筋力の話ではなく、強力なパワースポットのように運気を上げてくれるようなスピリチュアルなパワーに感じる。

実際、訪れた人々はその効力を実感しているようで様々なコメントがネット上に投稿されている。



村の中で、これらの原因を知っているのはただ二人。村長と園長だけだ。

どう考えてもあのハンマーが原因だと思っていたが、あの時の不思議な出来事を何の証拠も無しに公表することは出来なかった。それに、以前に比べれば愛想を振りまくことはなくなってしまったが今のこの状況はドラゴンが望んだ結果のような気がしてならない。

触れ合うことが出来なくなっても人気は衰えていない。むしろ、パワースポットとして有名になりつつある今、別の目的を持った人までも訪れるようになった。




1年後、村は動物園からパワースポットへと変わった。

スタジアムを改造して作られた建物にドラゴンは佇み、接触禁止の見世物となった。


数えきれないほどの人々の願いを受け、その願いを支えた

崇められ、感謝された

神々しいオーラを放ち、ただただ静かに見守っていた

その在り方、姿は神と形容するに相応しかった…



村長は、もうただのパワースポットではなく、神聖で荘厳な場。神が顕現した場所だとするべきだと考えていた。

そんな矢先、村で一人の女の子が産まれた。

その子はこれまた不思議なことに、ドラゴンと同じ色のオッドアイを持っていた。


神の導きを感じた村長はその子に巫女の役割を提案する。

両親はそれを受け入れ、名前に「みこ」と入れることにした。



雪の話を聞いたみこ。

ドラゴンに武器を食べさせたという話を聞き、自分がオッドアイを持って産まれた経緯を推測する。


長い沈黙の後、雪の「運命って信じる…?」という質問の意図を理解した。


みこ「…………はぁーー…………なるほどですわ…………」

雪「みこちゃんがその武具を受け継いだ訳は分からないけれど、全く接点が無いはずのわたし達が会えたのはその武具のおかげねっ。…そう思ったら、なんだか『運命』って感じがしない?」

みこ「……運命だとしたらなんですの?運命だったのならこれまでの不幸が納得できるとでも言いたいのですか?」


みこは腕を組んだまま語気を強めて言う


雪「いやっ、そういうことじゃなくて…この出会いがなんだか運命みたいですごいなって思っただけで…」

みこ「………だったら………そんな運命なんてクソくらえだ…!!」


バッと立ち上がって歩き出す


雪「どこ行くのっ!?」

みこ「…散歩ですわっ!!」


バタン!と勢いよく玄関を開閉して出て行ってしまった


パパ「…部屋の掃除と片付け、終わったが……どうした?」

雪「…う~ん…ちょっと怒らせちゃったかも……謝りに行かないと……」



ズンズンと当てもなく歩き続けるみこ


みこ(何が運命だ…!!ふざけんな…!

………たまたま村にドラゴンが来て…それがたまたま人懐っこくて…あいつらと出会って…武器を食わされて…その影響だかなんだか分からないけど(わたくし)が産まれて……巫女にされて………あんな事が起こって……この力を手にして……あいつらに出会ったことが…運命?

……運命…………嫌いな言葉だ……ただの偶然を…全部仕組まれたみたいに言いやがる………これが運命ならアレが起こったのは何のためだ……何故私(わたくし)から全てを奪った?何故私(わたくし)をこんなにも不幸にした!?………力が無ければこんなにもあっけないと悟らせるためか?……っ~~!)

みこ「クソがッ!!」


道路を蹴りで破壊し、険しい表情で周囲を睨みつけながら歩く


みこ(…………だが今はもう違う……運命があろうがなかろうが、この力があれば振り回されることなんて………)


歩みが止まる。


そしてこれまでを振り返る…

村が壊滅し、家が無くなった後は野宿をし、獣を狩って食べようとした。だが、そんな生活を続ける気にはなれなかった。

過酷で寂しかった…

食事をしなくても生きていける感覚はあったが、佇むだけの生き方などまっぴらごめんだった。

途方に暮れていた所を保護された。結局、誰かに頼らねば…社会にまもられなければ満足な寝床すら用意できない無力さに打ちひしがれた。


みこ(………力があっても……無力だと言いたいのか………)





人気の無い廃れた神社を見つけ、拝殿の目の前に座った。

脚を抱えて顔を埋める。


みこ(…………(わたくし)の人生は…これからどうなるの…………)


心労からうとうとしてしまうみこ……



竜神村爆破事件が起きてから、気を張り続けていたみこ


神社で眠りについたみこは過去の情景を夢に見る…


次回『神子とは…』


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