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Odd I's  作者: TEAM,IDR
20/58

二章-6「奇跡的な偶然」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第20話「奇跡的な偶然」

営業が再開し、数日経った紅葉探偵事務所にて


楓「ドラゴン狩り~~!?」

ワンちゃん「あぁ。世間ではあまり知られていないが、地球にはドラゴンが生息してるらしい。」

楓「竜神様みたいな?」

ワンちゃん「そうだ。その竜神様を襲ったドラゴンが居たように他にもいるみたいだ。」

楓「どこにいるのよ?」

ワンちゃん「政府のやつらの情報によると、地球に住むドラゴンは全部で7体いるそうだ。その一体が竜神村に祀られていた竜神様。もう一体がそれを襲った火を吹くドラゴン。残りの5体はそれぞれ…砂漠…熱帯雨林…洞窟…北極…太平洋にそれぞれ潜んでいるらしい。」

楓「へぇ~……で?ワンちゃんがそれを討伐しに行くの?」

ワンちゃん「らしいな…」

楓「それで出発が3日後?」

ワンちゃん「あぁ。まず、北極付近にある基地で他のメンバーと合流する。そこから順番にドラゴンを狩っていくって流れだな。」

楓「ワンちゃんが強いのは知ってるけど……まさかそれで戦うつもり…?」


楓はワンちゃんが愛用する戟、「トリシューラ」を指さす


ワンちゃん「当たりめぇだろ?それ以外何で戦うんだよ」

楓「生身でドラゴンと戦うことのどこが当たり前なのよ!ドラゴンを倒すなら戦車でも使えばいいじゃない!」

ワンちゃん「…戦車とアタシ…どっちが強いと思う…?」

楓「…………ワンちゃんの方が強いだろうけど……」

ワンちゃん「だろ?」

楓「…………」

ワンちゃん「心配すんなって!こんなことワタシにしか出来ないんだから。…この依頼が終わったらちゃんと帰ってくるし、ドラゴンを倒したなんてこれ以上の宣伝文句ねぇじゃねぇか…!ワタシは誰かの役に立つためにこの力を使ってるんだからさ!信じてくれよ…」


ワンちゃんの眼差しをなんとも言えない表情で受け取る楓

数秒後、観念したように瞼を閉じた後に真剣な表情でワンちゃんに言う


楓「ワンちゃんの力は特別なんだからね!悪用されないように気を付けるんだよ!?絶対約束だからね?」

ワンちゃん「あぁ、分かってるよ。」

楓「…危ないとか怪しいと思ったらすぐに帰ってくるんだよ?」

ワンちゃん「あぁ。」

楓「ドラゴンだけじゃないよ?政府の人間だって完全に信用しちゃダメだからね!」

ワンちゃん「分かった、気を付ける。」

楓「……絶対に約束だからね……」

ワンちゃん「あぁ……」


しばらく見つめ合う二人


楓「ふぅ……分かった。この話はおしまい。明日の依頼の準備するわよ」

ワンちゃん「おう…!」


すると、ピンポーン!とインターホンが鳴った。

ワンちゃん「はい、紅葉探偵……っ!お前…!?」


そこに居たのは、あの時の女の子だった


??「とりあえず、タクシー代を払ってくださるかしら」



「朝のニュースです。昨晩午前3時頃、竜神村爆発事件の生存者である少女が行方不明になりました。少女が保護されている建物内で原因不明の爆発が起こり、見張りの警官が消火活動をしている際に行方が分からなくなったとのことで……」


ピッ(テレビを消す楓)


楓「逃げたてホヤホヤね」

ワンちゃん「どうしたんだ?こんなとこまで来て。」

??「助けてくれるって言ったのはあなたでしょ?だから来たの」

楓「…え~とまずお名前聞いてもいいかな?」

みこ「……………みこ……」

楓「…巫女なのは服装みればなんとなく分かるけど…テレビでも言ってたし…」

みこ「名前も[みこ]よ。みこちゃんって呼ばれてたんだから………その友達はもういないけど………」

ワンちゃん「そういやあの時名前も聞いてなかったな…みこって言うのか。」

楓「みこちゃん…ピッタリな名前ね…!ウチは楓、楓お姉さんでいいよ~」

ワンちゃん「ワタシは…」

楓「こっちはワンワンね」

ワンちゃん「おい!」

楓「ぷっ…!いい加減慣れなよ~ワンワンの方が覚えやすいし、言いやすいでしょう?ね!」

みこ「あぁ、ワンワンとかワンちゃんさんとか言われてたのって本当に貴方のことだったのね。ずっと何かと思ってたわ。…そういうこと……」


名刺に書かれていた名前を見て合点がいった様子


みこ「ま、そんなことはどうでもいいわ。本題を話させてもらうわ。…(わたくし)、ずっと考えていましたの…これからどうしていきたいのか…この力を…どう使うべきか……」

ワンちゃん「……力…か……お前、やっぱり何か持ってるんだな?」

みこ「…えぇ……あなたもでしょう?でなければあんな化け物、倒せるはずありませんわ。」


初めて会った時のことを思い出すみこ


みこ「……(わたくし)は知りました。この世は力が全てなんだと。力が無ければ何も護れず、何も救えず、何も出来ず、生きることすらできない。…自由に生きるために必要なのは腕力だけじゃない……社会の人間どもに文句を言わせないための力も必要だと(わたくし)は学んだ…。」


黙って聞いている二人


みこ「………テレビ、見ましたわよね?あの警察どもが何故私(わたくし)を必死に探しているか分かります?あの爆発を起こした張本人だと疑っているからですわ。…今の(わたくし)に暴力以外の力は無い…追っかけてくるやつら全員をブッ殺したとしても(わたくし)の望む生き方にはならない…かと言ってあいつらにおめおめと捕まって利用されても望んだ結果にはならない。…ならどうしたらいいのか…(わたくし)、考えましたわ。(わたくし)は…今まで通りの生活をして力を蓄える…。学校に行って勉強をする。そして金も手に入れて社会的地位も手に入れる。どんな手を使ってでも王になる…!誰も逆らえない…そんな力を手に入れる…!!……と、誓いましたの。その野望のためにまず、あなた達を使いますわ。(わたくし)を警察から解放させ、施設とやらに行かせなさい。あんな大人が介入してこないような居場所を用意して。出来るわよね?」

楓「…ん~~~~…………」

ワンちゃん「……むっずかしいなぁ…………」

みこ「(わたくし)にはここしか頼れる場所がありませんの。もし、出来ない、やらないというのならここを爆破しますわ。」

楓「爆破って…爆弾でも持ってるの?」

みこ「知りたいかしら?試してみましょうか?…ここで。」

ワンちゃん「やめろ…。楓、こいつの能力は本物だ。たぶんアタシと同じ…」

楓「そっか……特殊な能力を持ってるってことはもうバレちゃってるの?」

みこ「無関係とは思ってないでしょうね。でも、証拠は何もないわ。(わたくし)もそんな能力があるなんて言ったのはあなた達が初めてですわ。」

楓「ふ~ん…ならまだワンチャンスあるか…?いや…でもやっぱ無理かな……」

ワンちゃん「何がだ?」

楓「誰にも言ってないなら、しらを切ればゴリ押しできるかと思ったんだけど…ほら、AI侵攻作戦ってあったじゃない?あの時、ワンちゃんと同じように能力者っぽい人が何人かいたよね?そういった存在が世間でも知られるようになっちゃった今、疑われた時点でかなり厳しいと言わざるを得ないね…」

ワンちゃん「嘘貫くのは無理ってことか……逆にワタシみたいにその力を使って生きた方がいいんじゃねぇか?」

楓「そんな簡単なわけないでしょ。ワンちゃんが守られてるのはお父さんとお母さんのおかげでしょ!この子は一人なのよ…どんな扱いを受けるかなんて分かったもんじゃない……癒丹銀河さんが爆殺されたようにね。」

ワンちゃん「!!……そっか…そんなに難しいことだったのか……」

楓「これはもう、国家権力や世論、世界を相手にしてるようなものよ。考えれば考えるほど分が悪いわ。…一度、あなたのお父さんお母さんに相談してあげたら?確か…知り合いに孤児院をやっている人がいなかったっけ?」

ワンちゃん「あぁ!確かにいたな…!パパとママの知り合いならもしかしたら…」

みこ「ならそこに案内しなさいよ。(わたくし)の人生が掛かってるのよ。」

ワンちゃん「そうだな…善は急げだ!」

楓「うん、いってらっしゃい。今日は依頼も来なさそうだし、明日の準備はやっておくから。」

ワンちゃん「わるいな…じゃあ行ってくるぜ」





パパ「なるほどな……」

ワンちゃん「どう?なんとかなるかな…?」

ママ「そういうことなら心強い味方がいっぱいいるから大丈夫!」

パパ「あぁ。とりあえず、藍さんには連絡しておく。そこに行けば一先ず安心だ。警察やマスコミなんかからも護ってくれるだろう。」

ママ「ネットの情報は桃華ちゃんに頼もっか。あと…虎羽くんにも協力してもらう?」

パパ「そうだな。まぁ、オレらに任せておけ。なんとでもなるさ…」

ワンちゃん「そっか!何とかなるってよ!良かったな!」

みこ「えぇ…!それで、いつ頃になるのかしら?」

パパ「そうだな…今から連絡は入れるが、交渉は向こう次第だ。いつになるかは分からないが、君を護ることは約束しよう。ここに居てくれてもいいし、藍さんの施設に行ってもいい。どちらにせよ、安全は保障する。」

みこ「…!…そ……よくやったわ……」

ワンちゃん「じゃ、話もまとまったししばらくゆっくりして行けよ。パパとママはこう見えて宇宙一強ぇから!絶対護ってくれる。だから、安心して休みな!」

みこ「え…えぇ…」


ワンちゃんは仕事に戻り、両親はみこを泊めるための準備をした。



ソファに腰かけて待つ、みこ。

隣に座り、話しかけるママ。


ママ「自分の家のようにくつろいでいいからね~」

みこ「はい…ありがとうございます…」

ママ「……みこちゃんは運命って信じる…?」

みこ「運命…ですか…?」

ママ「そう…そうなることが初めから決まっていたかのように歯車と歯車がバッチリ噛み合うような感じ…感じたことない?」

みこ「…………」


みこは考える。

何か言いたそうなみこを待つ。


みこ「…………このオッドアイは…運命だと思いましたわ…」

ママ「そ~!詳しく聞かせて」

みこ「……(わたくし)は生まれつきこの眼を持っておりました…。琥珀の右眼と紅桔梗の左眼…この特徴的な目の色は…竜神様と同じでございます。(わたくし)は神に選ばれた巫女でございます…と…神事の度にこのようなことを言いましたわ。(わたくし)は産まれた時から、村のために巫女になることを決められていたんです………あなたの言う運命とはこのようなことですの?」

ママ「……そうね…。…みこちゃんはその運命のこと、どう思う…?……良いと思う?」

みこ「……………………最初は良かったかもですわね………(わたくし)も巫女を演じることが嫌いではなかった………」


窓の外を見つめるみこ


みこ「…村のために…一生懸命頑張りましたわ……それで皆が笑顔になって……だんだんと村や神のためじゃなく金儲けへと変わっていきましたが……ま、それもそこまで嫌だとは思いませんでしたわ。その時は…。」


スイッチが入ったように表情を少し険しくし、ママを見ながら語り始める。


みこ「村が襲われたのも運命で…!何もかもを失ったことも!穢い大人に囲まれて生きることも!…運命だと言うのなら…!……(わたくし)は絶対に許さない…!!…そんな運命を決めるような神がもしいるのなら…必ずそいつを叩き潰して差し上げますわ。」

(神なんているものか…!誰もが救いを求め、祈った神がいるのなら…あんな悲劇を許すものか…!神などいない……(必要なのは力だッ…!!力が無ければ何も救われない、護れない、変えられない……(神など不要だ…(信じるのは…願うのは…力だけだ…!!!)


神への憤り、これまでの不幸な出来事への不満をぶつけるかのようにママへ話す。

その感情を少し驚きつつも、無言で受け止める。

みこは言いたいことを言った後、腕を組み「フン!」とまた窓の外を見つめる。


しばらく考えるママがようやく口を開く


ママ「……わたしはね人との巡り合いって運命なんじゃないかなぁって思ってるんだっ」

みこ「…………」

ママ「もう20年以上前のことだけど、わたしヒーローをやっていたの。その時に出会った人がいるんだけど今でも付き合いが続いていて…出会えて本当に良かったと思ってるの。…パパと出会ったのもその時。だから…もしあの出会いが運命だったとしたら…わたしはそれでよかったと思う…。」

みこ「それはあなたが幸福な人生を送ってきたからでしょう?こんな良い家で何不自由なく過ごしてきたあなたに(わたくし)の不幸が理解できるはずがないわ…!」

ママ「…そうかもしれないね……わたしはあの出会いがあってとても幸せだからこんなことが言えるのかも………でも、わたしはあなたとの出会いも運命だと思ってるのよ?」

みこ「………」


眉を吊り上げたまま聞くみこ。


ママ「…あなたが持っているその力……実はわたしの物なの。」

みこ「………!!!!??」


一瞬、目を見開いて驚くが、すぐに真顔になり「どういうことですの?」と低い声で聞き返す。


ママ「………あなたが持っている武器はもともとわたしが貰った物……本当なら世界を救う素質を持った『ヒーロー』に託すはずだったんだけど……」



約15年前


11歳のワンちゃん「パパー!見て!なつろー君居るよー!」

パパ「あぁ…」

大きなガラス張りの檻の中にいるドラゴンを指さす。


ママ「ほんとだー!…ふふっ、ほんとに狼みたいだねっ!」

ワンちゃん「ねー!」


「なつろー」という名前は人懐っこい狼みたいだからという理由で付けられた名前らしい。

その名の通り、見物客には愛想良く振舞うことが多いとされている。それが顕著に現れ、大人気の催しがある。それは「世界史上初!ドラゴンとの触れ合いコーナー!」というイベントだ。

ワンちゃんはそれを楽しみに来ていた。


「まもなく、特設スタジアムにてなつろー君との触れ合いイベントが開催されます。皆様、ぜひご参加ください…」


というアナウンスが入り、ドラゴンは扉の奥へと入っていき、見物客も移動を始めた。


抽選に選ばれた小学生の子ども達は特別になつろー君と一緒に遊べるという内容である。

選ばれた子供たちの保護者は最前列の席に座り、動画や写真撮影をするその他の人たちはその周りを取り囲むようにしている。


ドラゴンが入場すると場は大盛り上がり。

近くで見ると生物としてのあまりの大きさに驚愕し、興奮する。


凛々しい顔立ちではあるが、温かく、ふわっふわの毛並みで穏やかな性格のギャップに魅了される人は多い。

脚を折り曲げて座ると、係員の合図で子ども達が一斉に近づき、撫でたり身体に登ったり話しかけたりなどする流れなのだが……その時だけは違った。


首輪やリードを付けた所で制御できるはずもないので、係員の指示だけが頼りなのだがその時は誘導を無視し、ワンちゃんの所へとゆっくり近づいた。

子ども達は興奮したり、あまりの大きさに驚いて泣いたりするが、ワンちゃんだけは動揺もせずに見上げる。


頭を近づけ数秒見つめた後、その親である二人を見つけてまた見つめた。

そして今度は観客席の方に近づき、二人の前でお辞儀のような仕草をした。


係員の指示を聞かずに、なんのバリケードもない席に近づいた時はさすがに会場がざわめいたがその後は何事もなく進行。


イベントの終わりにはなつろー君が翼を広げたり、ジャンプしたり、遠吠えをしたりなどのパフォーマンスがある。驚かせてしまったからか、いつもより長めにその時間を取りイベントは無事終了した。



いつもなら、係員の指示もなく檻へと戻るのだがそれもまた違っていた。会場の中から動こうとせず、お座りをして八城家を見つめていた…




ドラゴンは何を訴えかけているのか…

みこが背負った運命とは…

これまでの衝撃的な事実が次々と明らかになっていく…


次回『運命なんてクソくらえ!!』


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