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Odd I's  作者: TEAM,IDR
19/58

二章-5「巫女と爆発」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第19話「巫女と爆発」

空を覆いつくす飛竜、パニックで逃げ惑う人々

ぐちゃぐちゃの身体で激しい憎しみを抱く巫女

竜はその巫女を一飲みにした。

竜の腹の中を彷徨う巫女。

薄暗い腹の中でぼんやりと光る紫色の武器を見つける。


それはハンマー


彼女は望む

破壊を…

力を…

理不尽を打ち砕く圧倒的な力を…!!


武器を手に取り、鎧を身に纏うとそのハンマーを中心に大爆発が起きた。

眼を焼く閃光とともに、爆風が辺りを溶かし…吹き飛ばす…


その爆発の後に残るは2匹

鱗を焼かれ、爆轟による衝撃波でボロボロになった火竜はそれでも何とか立ち上がり、ハンマーを手にする少女に咆哮を浴びせる。

少女はハンマーを掲げ、地面を爆破。

爆轟に押し出された少女はとどめの一撃を喰らわせる…ッ!!




数日後

紅葉探偵事務所にて


楓「あ~!これ懐かしいね~!山の中にわんちゃん探しに行った依頼!」

依頼の報告書を眺めて言う

ワンちゃん「おい、サボるな!」

楓「サボってないよぉ~休憩を兼ねて、書類の整理してるだけ~」

ワンちゃん「ったく……」

掃除を続けるワンちゃん


楓「ワンワンもちょっと休んだら~?そんなに急いでやらなくても時間はいっぱいあるよ?」

ワンちゃん「……ま…そうだけど、こんな時間でもなけりゃ中々こんなとこまで掃除できないだろ?…掃除が済んだら、ホームページの手直しとか、道具の点検とか……いろいろと考えなきゃだからな……」


棚の上を雑巾がけするワンちゃん


楓「………気にしてる?」

ワンちゃん「はぁ?なにがだよ……」

楓「一ヶ月も営業停止になったこと。」

ワンちゃん「ぐ……っ…気にしてるよ……勝手なことしちまったし、そのせいで迷惑かけちまった…その分なんかしなきゃなって思ってんだよ……」

楓「……もう気にしてないって言ったでしょ?…ウチもワンちゃんがそういう人だって知ってたのに…うまいこと出来なかった…。だからお互いさま。…ねっ?」

ワンちゃん「………はぁ……分かったよ……ちょっと休むか。…何か飲むか?」

楓「ん…じゃ~コーヒー!お砂糖たっぷりね~」

ワンちゃん「はいはい…」


ピロピロピロ!

携帯が鳴る


楓「はい、紅葉探偵事務所です。……はい……はい……えっ!?……はい…分かりました………ワンちゃん、警察の人から依頼の電話だって。」

ワンちゃん「警察!?しかも依頼ってどういうことだ?」

楓「ワンちゃんの力を見込んでの依頼だって。しかも、協力してくれたら営業停止処分を取り消すって…」




陽介「また会いましたね」

ワンちゃん「おめーらの顔なんか見たくねぇんだがな…」

陽介「それはこちらも同じです。貴方を呼んだのは上の命令です。」

ワンちゃん「なんでワタシなんかを頼るんだよ」

陽介「捜査範囲が広くて、危険生物がまだいる可能性があるからじゃないですか?」

ワンちゃん「んなことは分かってる。護衛が必要なら警察連中で用意すりゃいいだろ。なんでわざわざワタシなんだよ。」

陽介「さぁ…人手不足なんじゃないですか…」

「その道のプロだからって聞きましたよ?」


若い女性隊員が近づいてきた


女隊員「全国各地で害獣駆除をしてるプロフェッショナルなんですよね!しかも超強いとか!」

キラキラとした瞳で話しかけてくる

ワンちゃん「ま、まぁな…」

女隊員「竜と戦ったこともあるんですか?」

ワンちゃん「あるわけねーだろ……と言いたいところだが…まぁあれも龍みたいなもんか…竜よりもヤバいヤツと戦ったことはあるぜ」

女隊員「へ~!すごいですね!じゃ、もしも何か出て来たらその時はお願いしますね!」

ワンちゃん「あぁ、分かってるよ。…それが仕事だしな…」(まぁ単純に人手不足なのかもな…もしあんなことになってなけりゃ今頃ロボット達が手伝ってくれたかもしれないってのにな……)

陽介「さ、そろそろ行きましょうか。車に乗ってください」


3人は現場へと向かった




村に近づくにつれ焼けた木々が増えていき、焦げた匂いが漂った。

村に到着するとそこには焼け焦げた建物の残骸が散らばっており、地面が大きくえぐれている箇所もある。


二つの班に分かれ早速調査を開始する。陽介とワンちゃんはそれぞれの護衛役として付き、安全を確保する。


調査は順調に進み、竜の肉片と思われる物も回収した。


ワンちゃん「これがあの祀られてた竜の肉か…?」

隊員1「ええ、おそらくは…」

女隊員「可哀想ですよね…あんなに可愛がられてたのに……私、子どもの頃来たことあったんですよ…」

ワンちゃん「そうか…実はワタシも来たことがあるんだ。触ったこともあるし、背中にも乗らせてもらったんだ」

女隊員「えー!いいな~私ももっと早く来てたら触れたのに~」

隊員2「羨ましいです。僕が行こうとしてた頃はもう予約でいっぱいで諦めちゃいましたよ」

女隊員「その時の写真とか無いんですか!?」

ワンちゃん「あるけど実家に行かないとだな…」

女隊員「え~残念…」


そんな会話をしていた時、一瞬影が彼らを覆った


ワンちゃん「っ!?」


見上げるとそこには体長約4メートルほどの飛竜が一匹、空を飛んでいた。

ワンちゃん「おい、九頭堀!!」(無線で報告)

陽介「分かってます。すぐに追いかけましょう」


二人は飛竜を追いかける。が…

ボンッ!!

という破裂音とともに首が吹き飛び、地へ落ちる。

爆心地から離れ、まだ木々が残っている辺りまで走ってきた二人。


ワンちゃん「なんだ…?急に破裂したのか?」

陽介「……今回の事件と何か関係があるのか……」

ワンちゃん「ん?おい…あれ人か?」


ワンちゃんが指を指す方には白い着物のような服を着た小柄な人がいた。

近づいてみるとそれは女の子だった。


??「なに、あんたたち」


女の子が警戒しながら話しかけてくる。

ワンちゃんはしゃがんで女の子に目線を合わせる。


ワンちゃん「ワタシらはこの村で起きた爆発事件を調査しにきたんだ。お嬢ちゃんは?」

??「(わたくし)はこの村の巫女……あんたたち警察?」

陽介「そうだ…君はこの事件の生き残りか?」

女の子は少し考えて言う

??「……警察なら(わたくし)を早く助けなさい。御覧の通り家族も家も失って腹ペコですわ。」

上から目線の態度に驚く二人

ワンちゃん「…はっ!元気そうじゃねぇか。ついて来な。ワタシの弁当分けてやるよ」

??「………まぁ今はそれで我慢しますわ……」


女の子が歩き出すとその後ろから猛スピードで突進してくる獣がいた。それは熊の屈強さに狼の俊敏さを加えたような獣だった。だが、一目で既存の生物ではないと分かるほどの歪な邪悪さがあった。


女の子は振り向きざまにギロリと睨みつける。紫色の粉が獣にかかるが…

ワンちゃん「オラッ!!」


飛び掛かってきた獣を、持っていた戟で打ち落とす。

ワンちゃん「かってぇな!」

陽介「そいつは任せます。おれはこの子を…」

??「触るな!!」

「「!!」」

??「…逃げる方向だけ教えろ。走るくらいできる。」

陽介「……こっちだ」


二人は隊員たちが居る方へ逃げる。

九頭堀は不気味な獣を見た事で、ある出来事を思い出す…



「あの女を試す…もしあの女の持つ力がバラレンジャーのように脅威となるかどうかをハッキリさせるんだ…」

陽介「…どうすれば…?」

「任務中に人気の無い場所へ誘い込め…そしたらこの発信機のボタンを押すんだ。お前のことはもう登録してある。お前には攻撃しないはずさ…」

陽介「どういうことでしょうか…?」

「お前も詳しく知る必要はない。やることは分かったろう。…上手に生きるコツは…知り過ぎないことだ…よく覚えておけ小僧」



陽介(……あれのことを言っていたのか…?あいつを殺そうとしているのか?)


陽介は走りながらチラリと後ろを振り返ると…

そこには狂気の笑みで獣の首を叩き斬るワンちゃんの姿があった。

陽介は足を止める。


陽介(……何がワンちゃんだ………狂犬じゃないか………)



隊員3「お帰りなさい。ご無事で何よりです」

陽介「あぁ…。あっちに飛竜の死体と突然現れた四足歩行の獣の死体がある。後で回収を頼みます。」

隊員3「は!かしこまりました。……ところでその女の子は?」

??「…………………」

ワンちゃん「生き残り…だよな?」

??「…………」

隊員3「はぁ…そうですか…幸運ですね。あの爆発で生き残ったなんて……竜神様の加護のおかげですかね」

??「ちっ!」

ワンちゃん「あ、おい!」


女の子は舌打ちをし、隊員を睨みつけてその場を去る



ワンちゃん「ほら、弁当持ってきたぞ。」

??「…………」

ワンちゃん「腹が減ってたら何事もうまくいかないからな。ほら、食べな!」

??(ぐぅ~~……)


女の子は弁当を受け取る。

手を合わせ、「いただきます…」と言ってから食べ始める。


ワンちゃん「どうだ?美味いだろ?ワタシの手作りなんだぜ。しかも今日のは自信作、上手く作れたんだ~」

??「…………まぁ…悪くないわね……」

ワンちゃん「…! そうだろそうだろ…!全部食っていいからな!」


ワンちゃんは隣で見守った。


??「ごちそうさまでした…」

ワンちゃん「おう!…少しは落ち着いたか?」

??「(わたくし)はずっと落ち着いてます。」

ワンちゃん「………何か事件について知ってることがあったら教えてくれないか…?」

??「…………はぁ…それを話して(わたくし)になんの得があるというのかしら?お金でもくれるっていうの?そんなことよりも早く新しい寝床を用意しなさいよ…!」

ワンちゃん「……困ったヤツだな……」

??「………………」

ワンちゃん「………………」


取り付く島もない女の子と、掛ける言葉が見つからないワンちゃんは少し無言の状態で過ごす。

そしてワンちゃんは立ち上がり、言う


ワンちゃん「…じゃ、ワタシは仕事に戻る…。寝床の件は警察にでも話すんだな。」

??「え……あなた警察の人間じゃないの?」

ワンちゃん「ワタシは護衛で雇われただけだ。ただの探偵だよ……害獣駆除専門のな。」

??「っ!待ちなさいよ!…あなたが(わたくし)を助けなさいよ!…………」

ワンちゃん「…………なんでワタシなんだ?」

??「………っ…あんたが一番マシに見えるからよ………」

ワンちゃん「……なんでマシに見えるんだ?」

??「……………」


ワンちゃんはしゃがんで優しく聞く。

女の子は必死に言葉を考える


??「……あいつら……なんか嫌なの………絶対私(わたくし)を利用する……(わたくし)のことなんか…どうせどうだっていいんだわ…………ここで起きたこととか……(わたくし)のこととか…知りたいだけでしょ…!うんざりなのよ……穢い大人は……!」

ワンちゃん「…そっか……ワタシもだ…!」


ワンちゃんはそっと女の子に耳打ちする。そしてニカっと笑う。


ワンちゃん「なんつーか人の心を分かってねぇよなぁ……悪い事をしたら否定するだけで……まぁそりゃそうなんだけど…。理解を示そうとしないで、権力や法律にがんじがらめになってる感じがよぉ……」

??「…………あなたも…分かるの……?」

ワンちゃん「へっ…まあな…!」

??「……やっぱりあなたが助けなさいよ……(わたくし)この村の巫女でしたのよ?知ってることは多いはずですわ。……もし(わたくし)を助けてくださるなら…ここで何が起こったのか教えてあげてもいいわ。」

ワンちゃん「……んー……助けるか……それはワタシにはちょっと難しいかもしれないな…」

??「なんでよ!」

ワンちゃん「どうせお前、警察にいろいろ聞かれるぞ。んで…その後はどっかの施設に送られるんじゃねぇかな……もう親もいないんだろ…?」

??「そんなの嫌!あんな知らない大人どもに話す気なんてないわ!…あんた、知りたくないの!?」

ワンちゃん「…ん~さっきは成り行きで聞いたけど、ワタシは別に何が起こったのかそこまで興味はねぇしな。…言ったろ?ワタシは警察側の人間じゃないんだよ。」

??「………じゃあ…どうしろっていうのよ…………」

ワンちゃん「………。…ワタシは警察のこと嫌いだけどな、悪いやつらじゃないぜ?…あっちも仕事でやってるから…ま、ちょっとは嫌なことあるだろうけど、安全は守ってくれるはずだ。……どっちにしろ行かなきゃなんだから…な?」

??「………………」


納得していない様子の女の子。


ワンちゃん(……っつ~…困ったなぁ……この子の説得なんて仕事じゃねぇんだからやんなくてもいいんだけどよぉ……こんな子どもほっとけねぇし………)

チラリと女の子を見る

(……辛い思い……してんだろうなぁ………)

「はぁ………」

(…ルールや社会に縛られてんのはどっちだよって話だよなぁ…。大の大人が情けねぇ………こんな時…楓だったら何て言うんだろうな……楓だったら………っ!)

ワンちゃんはポケットから名刺を取り出す。


ワンちゃん「ほら!」

??「なによ…これ…」

ワンちゃん「ワタシの探偵事務所の連絡先だ。何でも屋してるわけじゃねぇから出来ることは限られるけど…出来ることならしてやるよ。…これからはワタシに頼りな!……(ニッ!)」

優しく頭を撫で、ニッと笑う

女の子は名刺を両手で受け取る。

目線は合わせないまま「…うん……」と小さく返事をする。




その後、女の子は警察に保護されしばらく取り調べを受けることとなった。

女の子は事件を知る唯一の人物だったが、頑として口を割らなかった。


ワンちゃんの方はというと、護衛の任務を完遂したことで営業停止処分が解かれた。そして、これまでの害獣駆除の実績を高く評価され政府から新たに依頼を受けることとなった。その依頼とは……


楓「ドラゴン狩り~~!?」


「朝のニュースです。昨晩午前3時頃、竜神村爆発事件の生存者である少女が行方不明になりました。少女が保護されている建物内で原因不明の爆発が起こり、見張りの警官が消火活動をしている際に行方が分からなくなったとのことで……」


ピンポーン!

ワンちゃん「はい、紅葉探偵……っ!お前…!?」



竜神村の巫女は脱走し、唯一の頼りであるワンちゃんを訪ねる。

彼女の身に何があったのか、彼女は何を思い、何を望むのか…

次回『奇跡的な偶然』


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