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Odd I's  作者: TEAM,IDR
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二章-3「原因との際会」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第17話「原因との際会」

AI島侵攻作戦から数日が経過した。

世間では大きな論争を呼んだが、意見を述べるのは一部の人間だけである。戦争があれ以上大きくなることもなかったため、多くの人にとっては何も変わらない日常が流れていくだけであった。


星乃藍が会長を務める「流星会」の児童養護施設の子ども達にとっても何も変わらぬ日常が流れていくだけであった。


数日間ゆっくり休んだことで、精神も回復した瑠玖。その間に同室のお姉ちゃんとも仲良くなり、年の離れた従姉妹のような距離感になっていた。


「瑠玖ちゃん、今日が何の日だか知ってる~?」

瑠玖「え?ん~~なんだろう……」

「正解はね~藍さまが訪問してくださる日よ!」

瑠玖「藍さま?」

「ほら!一番最初に出会った、気品があってスタイルが良くて美人で完璧な赤髪のお姉さまがいたでしょ?」

瑠玖「あ~!星乃さんのこと!?」

「そうそう!みんなからは藍先生って呼ばれてるよ!」

瑠玖「へ~そうなんだ」

「あのお方は全てが完璧だから、子ども達にも大人気なのよ!だから取られる前に私が一番に話しかけるの!」

瑠玖「へ、へ~…」


目をキラキラとさせながら語る


ブゥゥゥウン……

(ピクッ…)「来たわ!私、お出迎えに行ってくる!」

そう言って、タブレットを持って部屋を出る



「あっ!!藍さま~~!!!」


施設の入り口付近で藍を見つけるやいなや、勢いよく飛びつく


藍「あらあら…うふふっ!元気だったかしら?」

「はい!もちろんです! これ見てください!私、こんなに勉強頑張ってるんですよ~!」

タブレットで講義ノートなどを見せる


藍「すごいじゃない!この調子で頑張るのよ?」

「はい!………あの……ご褒美に…その…撫でてもらえませんか……?」

藍「ふふっ」

「ふわぁぁぁああ………ゴロゴロ…♪」


頭を撫でられて顔がとろける。ご機嫌な猫のように

それを影でこっそり見ていた瑠玖

瑠玖(えぇぇぇぇええ!!??)


「お姉ちゃんに任せて!」 「瑠玖ちゃん、分からない所ある?お姉ちゃんが教えてあげる!」 「疲れてない?何か欲しい物があったら言ってね!」 「瑠~玖ちゃん!今日は一緒に寝ない?」(優しく頭を撫でて寝かしつけてくれる)


瑠玖(優しくてしっかり者のお姉ちゃんがあんなことになるなんて………えぇ……)


ちょっとショック…というか若干引く瑠玖であった。



藍が中に入るとすぐに子ども達に囲まれ遊びをせがまれる。

「あいせんせー!」 「藍先生!」

とあちこちから呼ばれ、大人気だ。


瑠玖「あれ?一緒に遊ばないの?」

「いいのよ…藍さまは皆のものだから…それに私は大学を卒業したらずっと藍さまと一緒に居るから…!」

瑠玖「お姉ちゃんはどうしてそんなに藍さんのことが好きなの?」

「聞きたい?いいよ、話してあげる!お部屋で話そ!」



部屋に戻り、お互いに楽な姿勢で話が始まる。


「……私のお父さんは病気でね…難病だったから治すにはお金が沢山必要だった…。お母さんはその医療費を稼ぐために沢山働いていた…」



「お母さん最近仕事変えたの?」

母「うん、前の所よりも時給がいい所で働けるようになったの。これからは帰りも遅くなるかもしれないけど、ご飯はちゃんと食べるのよ?作れない日はお金置いておくから、それで何か食べてね」

「…うん。」




「お母さん、最近なんか元気になったよね~」

母「え、そう?ふふふ…実は仕事が順調でね…この調子ならお父さんもすぐに治せるかも…」

「そっか…しかも、なんか綺麗になったし!女を取り戻したって感じ?」

母「え!?あはは…そうかもね!



学校にて

「ねぇ…ちょっといい?」

「ん?何~?」

呼び出される

「あのさ…これ……お母さん…じゃないよね…?」

「!!」

「わたし、昨日歩いてたらさ…なんか見覚えある人がいるな~って思って…でも隣の男の人は知らないからもしかしたら…って思って………あっ……ごめん……でも言っておいたほうがいいかなって………」




母を尾行する

「ここは…!?」



「お母さん……」

母「ん?なぁに?」

「風俗で働いてるんでしょ…」

母「っ!?ど…どうしてそれを……」

「~~っ!!最低だよ!!お父さんをほうっておいて他の男と寝るなんて!!」

母「っ!!!」

「……気持ち悪い……こんなお金いらない!!!知らない男から貰ったお金で私を食わせるな!!!」


バン!!  お金を机に叩きつけて出ていく


母「あ……うぅ……………」




連絡を貰い、仕事に行く母

母「なら、今日だけは何もかも忘れて楽しみましょう…私も…そんな気分……」

東「ありがとう…今日の分は色をつけさせてもらうよ…。そういえば近いうちに娘さんの誕生日とか言っていたね。それで何かプレゼントでも買ってあげてくれ…」

母「ええ……そうね……」

バァン!!

母「なに!?」

パパパパパン!!

東を殺しに来たテロリストに銃殺される。




「ただいま……」

暗い顔で家に入る。本来ならまだ母がいる時間だがいない

プルルルル…!

「はい……え…警察?………はい………え…………」




「AIロボット撲滅派かと思われるテロリストの襲撃に遭い、紫雲社の最高責任者である伊東 有馬氏が死亡しました。その際、一緒に自宅にいた愛人と思われる女性も死亡が確認されています………」

うずくまり、無気力になっている

プルルル…!

母の普段使いの携帯が鳴った

「……はい……」

「あ、新井ベーカリーの新井と申します。こちらは空野奏多さまのお電話でお間違いないでしょうか?」

「………はい…そうです……」

「バースデーケーキの件でお電話致しました。ご予約いただいたお時間を過ぎていらっしゃいますが……いかがされましたか…?」

(……………バースデー……ケーキ……?)

「営業時間を過ぎてしまいますとこちらで保管することも出来なくてですね…」

「すぐに取りに行きます!!」


プツ…!

「…………………」

バタバタバタ!!

急いで支度をして出かける




「はぁ……はぁ……バースデーケーキを取りに来た……空野です……」

「あっはい~、お待ちしておりました~。あっ…もしかして娘さんでいらっしゃいます?」

「え……」

「あ、実は予約の際、私が担当してまして~。娘さんをビックリさせたいってはりきってらっしゃいましたので!」

「……あ………」

「こちらがバースデーケーキでございます!お誕生日、おめでとう~!」

「う…うわあああああああああああああああ!!!」


大粒の涙をこぼしながら号泣する




数日が経過するが何事にも気力が起きないでいる


(あなたには才能があるわね~…その身体を存分に活かして鬱憤を晴らしたらどう~?男に抱かれればその悲しみも和らぐはずよ…)

「………………」

(思い出すんだ…君がやるべきことはなんなのか…今の君が手に入れるべきことはなんなのか…思い出すんだ…)

「………………お金……稼がなきゃ………」

スマホを取り出し、何かを登録する



デートをする。

お金をもらう。

(お父さんを治すために…お金稼がなきゃ…)


満たされない…


デートをする。

誘惑する。

抱かれる。

(アハハ……初めてだったのに気持ちよくなれた……私って才能あるんだ……)


「お母さん……」


男と会う。

ホテルへ行った。

抱かれた。

別の男と会った。

セックスをした。

別の男を見つけた。

セックスをした。

何度も。

何度も

何度も何度も何度も何度も何度も……



その快楽は私を慰めてくれた。

嫌なことを忘れさせてくれた。

友達だと思っていたやつらから「ビッチ」だの「アバズレ」だの「メス豚」だの罵倒されたことも…

お金を払わずにトンズラこくようなやつがいたことも…

一人かと思ったら大勢に囲まれて輪姦されたことも…

ろくな避妊もされなかったことも…

誰の男のものかも分からない子を孕まされた可能性があるということも…

こんなことを仕事にしていた母のことも……

治したいと思っていた父のことも……

全て……この快楽が忘れさせてくれる……



「性欲に溺れ、色欲に身を委ねることでしか…もう私は……………アーッハッハッハッハ!!!あーっはっはっはっはっはぁぁぁぁ、ああああああああああああ~~………あぁぁ…………うっうぅ………私は……わだじはぁ!!…っ!うわああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!おがあざぁぁあああああああああん!!!ごめんなさぁぁああああああい!!!!わだじっ…!!ほんとうにひどいこと言っちゃったあああああああああああ!!!!!!!とりかえしのつかないことしちゃったああああああああああああ!!!!!!!!あーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


少女はホテルのベッドの上で一人、号泣する


「ああああぁぁぁぁぁぁぁ……!!………う………うぅぅぅ……………」

(思い出せるか…君が手に入れたかったものを…!)

「……?」

(ここまで来た目的を!勝ち取りたかったものを!)

「…………目的……」

(父親の治療のためだっただろう?君のその行為でお金を得て、父親を治したかったのだろう?)

「…!!……そうだ……お父さんのところ行かなきゃ………」








父さんは死んでいた






夜道を一人で歩く

車の通りはあるが人はほとんどいない

大きな橋を渡る

下には川が流れている

見下ろすとかなりの高さがある


(ん~~~?どうしたのかな~~?暗い顔して~こんな時こそ欲を発散するのよ。適当な男にでも抱かれなさい…すぐに良くなるわ~)

「……黙れ…」

(落ち込むことはない。今回は結果が伴わなかっただけだ。次へ活かすことが出来るのならそれは決して敗北ではない。布石となるのだ。今は新たな目標を定める時だ…!)

「……っち…こんな幻聴まで聞こえるなんて…………アハッ…ちょうどいいか……死ぬのには………」


手すりの上に立つ


(…………これから死ぬっていうのに…何にも怖くない………身体が死にたがっているんだ…………)

「……お母さん……お父さん……今から、そっちに逝くよ…………」


フッ……っと体が前に倒れた瞬間

ビタァッ…!!

「!!?」

体が宙に固定される

そして後ろに倒れ、誰かに受け止められる


??「貴方!何をしているの!?」

「……??」

??「ここで死ぬつもりですの!?バカなことはおやめなさい!!」

「~~っ!ふざけんなっ!!なんで止めた!?私が何をしようとお前には関係ない!!」

女性の手から離れ、飛び降りようとするが止められる

「~~っ!!!クソッ!!なんなんだ!!?なんなんだよぉおお~!!!」

??「落ち着きなさい!どうしても死ぬというのならわたくしに事情を話してから死んでも遅くはありませんわ!」

「私がお父さんとお母さんを殺したんだ!!!」

??「っ!?」

「私のせいでお母さんが死んだんだぁあああああ~!!おどうざんもっ…!!!わぁあああああああああ!!!!!」


少女は泣き崩れる

その少女を優しく抱き留め、慰める女性…

少女は久しく忘れていた温もりを感じ、安らぎと同時に二度と親の温もりは感じられないという哀しみも感じていた…



どれだけ身体を重ねても心に空いた穴は埋まらない。

どれだけ後悔しても親の温もりを感じることは二度とない。

だが、たとえ死んだ方が楽な状況にあったとしても、進むことを諦めてはいけない。

進んだ先には必ず………

次回『希望』


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