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Odd I's  作者: TEAM,IDR
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二章-2「英雄の灯火」

「Odd I's」

第二章「伝説の神獣」

第16話「英雄の灯火」

数日振りに学校へ顔を出した少女。

授業もほどほどに聞きながら、家族のことを考える。



放課後。

帰宅する。

家に入る前に「よし…!」と気合を入れて扉を開ける。


美久「あっ!おねーちゃん!おかえりっ!!」

「…ただいま……」

詩奈「お帰り…」

「………………」

詩奈「……………」


姉に抱き着く妹と、その両側で気まずそうに視線を外す二人。

 美久「……??」

(………うぅ~………たった一言……たった一言言えばいいのに………なんで……なんで言えないの~…!)

詩奈「……………っこのあと!…少し話せる…?」

「…っ!……わかった………」



美久を別の部屋に行かせ、二人きりで席に着く。


「……………………」

詩奈「………………………」


しばらくの間、無言で目の前にあるお茶を見つめていた。

長い沈黙の末、詩奈が口を開く。


詩奈「………あなたのお母さんは………優子はね……わたしの親友だった………。とっても優しいお母さんで…あなたのことっ……本当に愛してた……」


ここまで話すと涙を浮かべた。


詩奈「…あなたのこと話す時…ほんっとに嬉しそうで…………うぅっ………………なのにっ……急にいなくなって…………。…優子はたぶん…亡くなる寸前まであなたのこと考えてたと思うわ……。それに比べたらわたしの愛情は足りないのかもしれない………でもっ…!…亡くなった優子のためにもっ!…あなたのこと愛そうとしてたのはホントよ…!!……美久にも優しくしていくれる良いお姉ちゃんだし……優子がいなくなって悲しかったはずなのに、わたしにも笑顔を向けてくれたあなたのことが好きなの………………………わたしのこと、お母さんだと思わなくてもいい………でも……美久とお父さんのことは嫌いにならないで……優子のために、危ないことはしないでよぉ……!……………う……うぅぅ…………」

「…っ!…………」


詩奈は想いを伝えて泣いた。

そして、泣き声に気づいて美久が部屋にリビングに入ってくる。


美久「あー!お母さん、なんで泣いてんの!?んーー!!!!?もしかして…おねーちゃん…??」


美久に、怒った顔で見られるが視線を逸らす。

泣く詩奈の背中をさすり、なぐさめる美久。

瞳を閉じ、しばらく無言で考え込む少女。

(……こんな時……こんな時どうすれば……!!)

(拒絶するか…?こんな面倒な関係……家族とやらの関係を……)

(…………いいや……あたしは決めたんだ……仲直りするって……拒絶するというのなら…あんたの考え、そのものだ…!!)

(……我を拒絶するか……ハハハハハ…それも面白い……その先に何がある…?…人間……)

(………どうやって仲直りすればいいんだろう………)

(…気づいてください…。貴方の中にある相手を理解する気持ちを…。大丈夫…必ず分かり合えます……信じなさい…貴方の心を……)

「っ!………」


そして、泣き声が少し落ち着いた時、ようやく話し始める少女。


「………ごめんなさい……。……あたし……なんでも出来ると思いあがってた……調子に乗って……危ないこと繰り返してた………」

詩奈「………!」

「…時々自分でも分からないくらいガーッ、ってなる時があって……って言っても、言い訳だよね………ごめんなさい……もうやらないようにする………」

美久「…む~~、ほんとうにもうあぶないことしない?」

「う…うん、もうしない…!」

美久「……どうする?なかなおりする?」

詩奈「ふふ…うん。仲直りする。…約束よ?おか…わたしもあなたのことが心配なんだからね……もしまた何かあったら優子に顔向けできないから……」

「うん………うん?またって何?あたし、何かやらかしたっけ?」


顔が青ざめる少女。

最近、能力が覚醒している彼女は数多くの交通違反を犯していた。てっきりそのことだと思っていたのだが……


詩奈「…そういえばこの間の時も覚えてないみたいだったわね……」

「え…何が?」

詩奈「…四条さんのお家で遊んでいた時、車で遊んで大事故を起こした時のことよ。…覚えてないの?」

「え…………四条くん家で……事故……?」

ガチャ…

虎羽「ただいま……」

美久「あ!お父さんだ!おかえりー!」

詩奈「あら!もうこんな時間。話はお夕飯を食べてからにしましょう…」


詩奈は虎羽にこれまでの話を要約して伝えた。

そして家族で夕食をとり、仕切り直してからまた話し合いを始めた。



虎羽「…そうか…あの時のことを覚えていないのか……頭も打っていたからな…ちょっとした記憶障害があるのかもしれない。だがまぁ、軽いものならいつか戻るだろう…今からする話で思い出すかもしれないしな…。」


父である虎羽は真剣な顔で話を始める。


虎羽「記憶障害もあってあの時の話を忘れてしまったかもしれない。そして、まだ小さかったお前には理解できていなかったかもしれないからもう一度話す。お前の、その能力についてを…」

「あたしの…能力……」

虎羽「…お前は小さいころ事故で大きな怪我を負った…。正直言って完全に治すのならあの力を使うしか方法はなかった…。その方法というのが、お前の持っている武具の力だ。」

「あの武器が傷を治してくれたってこと…?」

虎羽「そうだ…あの武具はボク達バラレンジャーが力を込めて作ったものだ。あの武具を扱う者は強靭な肉体を手に入れ、それぞれの能力を手に入れる。お前の傷が治り、回復したのは言ってしまえば[あの程度のダメージではビクともしない体に再構成された]という状態だ。」

「ふ~ん…そうだったんだ~」

虎羽「だが、リスクもある。あの武具を手に入れると…この世界の悪い気とでも呼べばいいのか…。その悪い気が体に入ってくるようになるんだ。」

「悪い気…?どういうこと?」

虎羽「……その武具を創った目的は…この世界の罪の浄化だ。…今の世界は邪気に満ちている。それはお前が生まれるよりもずっと前から始まっていた。…以前ボクはバラレンジャーとして世界を救ったことが何度かあるが、その時にとった方法が原因でもある。あの時、技術や精神の成長を促してきたつもりだったのだが、世界のエネルギーはだんだんと邪悪な方向へと傾いてしまった……。それに気づいた四条紫雲さんがその邪気を吸収する武具を創り出した。……だから、その武具を持っていると世界中の邪気が集まってきてしまうんだ。だから、お前が暴走してしまうのは仕方がない部分もある。」

「………そっか………」

虎羽「……………すまないと思っている……。」

「え…?」

虎羽「…まだ子どものお前にそんなものを託してしまったことを……そして、そんな多感な時期にこのような邪気を浴びせてしまっていることも……お前の暴走を制御できないことも………。…正しい道を選んできたつもりだったのだが…大人の道理とお前の感情はどうしても食い違う。…それを全て考慮しての正しい判断は、ボクには出来ていなかった。…ついカッとなってしまって手をあげそうになったことも謝罪する。悪かった……」

「え……いい、いい、いい!」


手をブンブン振る少女


「もう……顔あげてよ……。…パパの話…難しくてよく分かんないとこもあるけど……結局、あたしがやらかしちゃったのが原因だしさ……それにこの力だって別に悪いことばっかじゃないし……パパは悪くないよ……」

虎羽「…………紗良……」

詩奈「…仲直り…できた?」

紗良「……うん……!」

虎羽「………ん(うなづく)」

詩奈「………それはそうと、その~…邪気を集め続けるっていうのは、どうにかならないの?」

虎羽「…世界が聖の方向に傾くまで続くだろうな…。さっきも言った通り、この武具を創った目的は浄化だ。世界中に分散されてしまった邪気、罪を集中させて浄化するのがこの武具の役割なんだ。」

紗良「結局あたしは何をすればいいの?」

虎羽「具体的なことは何もない。…実はボクらもこの邪気や罪についてしっかりと理解できているわけじゃない。しかも、それを認識できるのは今のところ紫雲さんだけなんだ。だから、抽象的なことしか言えない…」

詩奈「紫雲くんにも分からないってどういうことなの?」

虎羽「あぁ、紫雲さんが言うには人間の電気信号、電磁波などを感じ取って…それが高い次元の何かを通じて投影できて…その結果人類が良くない方向へ進んでいることがハッキリと分かったとか言っていたような…。まぁつまり、邪気が溜まっていてそれを浄化しなければならないということだけは分かっている状態なんだ。…ついこの間、AI島で戦争があっただろう?あれもこのことが影響している。このまま進んでしまえば何が起こるか分からない。もしかしたら世界中を巻き込む大戦争が起こったって不思議じゃない。」

紗良「じゃあ早くなんとかしないとじゃん!」

虎羽「…まぁな……だが…お前をこれ以上危険に晒すわけには…………」

紗良「…パパ…!」

虎羽「!」

紗良「あたし…やるよ…!!…あたしに出来ることがあるのならやりたい…!」

詩奈「っ!!ダメっ!戦争に巻き込まれるようなことがあったら、許しませんからっ!!」

紗良「…でも……あたしがなんとかしなきゃ、罪は浄化されないんでしょう?」

虎羽「……あぁ…」

紗良「だったら!」

詩奈「ダメです!あなた、どうにかならないの…?」

虎羽「…………………」

娘を見つめる父

紗良「…パパ……」

虎羽「………紗良、お前が危ないことをするようになったのはなんでだったか覚えているか?」

紗良「え……なん…で……?」



紗良「ママー!!みてみてー!…ほら!すごいでしょー!?」

優子「わ~!こんな高い所も登れるようになったんだね!すごいね!」

紗良「えへへへ!」


あれはママにすごいって言ってもらいたくて……


紗良「ねーみて~!ほら~!!」

優子「っ!あっ…すごいすごい……もう分かったから!早く降りてらっしゃい!」

紗良「え~~!」


もっと出来るのにだんだんと心配されるようになっちゃったんだっけ……


「お母さんのこと…残念だったわね…」

「元気出して!いつだってお母さんは紗良ちゃんのこと見てるよ!」

紗良「……うん…!…あたしすっごいこといっぱいやって、ママに見てもらう!……うぅ…いっぱいいっぱい…褒めてもらうんだもん…!!」


あたし……天国に行ったママに褒めてもらうためにどんどんいろんなことに挑戦するようになったんだ……

あの時は泣いたなぁ………あんなに泣いてたのに…ちょっと忘れちゃってた……

あたし…何もできてないかも………。危ないことばっかして……これじゃあ心配でママがゆっくり眠れないな………


ドカァンッ!!!

「紗良ちゃん!!」

「救急車呼ばないと!」

虎羽「紗良…!紗良!!大丈夫か!?」

紗良「ご……ごめんなさい………あたし……もっと出来るかと思って…………」

虎羽「どうしてこんな………」

紗良「……いっぱい…いっぱいすごくなったら……パパもママも喜ぶかなって…………」

虎羽「っ!」

紗良「…………ごめんなさい………」

虎羽「………紗良………。紗良、もしすごい力があったら…ヒーローみたいなすごい力があったら…もっとすごいこと出来るか?」

紗良「…………うん。」

虎羽「……必ず生きた状態でパパとママに報告すると約束できるか?」

紗良「……うん…必ずするよ…」

虎羽「……分かった……なら…パパにもっとすごいことを見せてくれ……なってくれ………英雄(ヒーロー)に…!」



紗良「思い……出した……!!」

虎羽「…お前はボクの子だ。そして、優しい母が二人もいる。ボクは紗良になら出来ると思ったから力を託したんだ。たとえ世界を背負うような重責であっても、必ずやり遂げてくれると信じている。」

紗良「…うん…あたし、やるよ。天国のママが安心して自慢できるような娘になる…!」

詩奈「でも…!」

虎羽「母さん!」 紗良「ママ!」

詩奈「っ!」

紗良「…あたしを信じて……」

詩奈「……………」

虎羽「もう紗良は大丈夫だ。信じてあげよう。…時には信じて送り出すことも大切だって最近教わったんだ…。これが親の役目だろう?」

詩奈「………絶対……絶対に帰ってくること!……約束しなさい。」

紗良「うん、約束する。」

詩奈「…………」

紗良「…………」

詩奈「…はぁ…わかりました…」

紗良「…!」

詩奈「あなたも絶対この子を護るって約束してね!!」

虎羽「うっ、も、もちろん…!」

美久「おはなしおわった~?」

詩奈「うん、終わったよ」

美久「ぜんいん、なかなおりした?」

紗良「うん!」

美久「…! よかった!じゃあみんなであそぼー!」

詩奈「はいはい…!」


美久に手を引かれて一つの部屋に集まる。

話し合いの末、家族の仲をなんとか取り戻した。


彼女は己のやるべきことを思い出し、使命と共に果たすことを誓う。

彼女はこれから起こる波乱に巻き込まれながらも彼女なりの

『英雄』を目指して進んでいく…

これからは己惚れた結果選んだ道ではなく、等身大の彼女が選ぶ道を進んでいく…





 ようやく家に帰ることができた紗良。対照的に雷の少年は早々に帰宅しぐーたらと過ごしていた。そして同じく、あの戦いから帰った瑠玖はというと同室の女性に優しく励まされながら傷を癒していた。姉のような存在の女性に心を開き、仲が深まっていたある日、二人は藍と再会する。

次回『原因との際会』


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