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Odd I's  作者: TEAM,IDR
13/58

一章-10「約束」

「Odd I's」

第一章「機械の王国」

第13話「約束」

ロボットの目の前に佇むユニコーン。

ルウラ、クーゴ、マイド、瑠玖は戦闘体勢になる。一触即発の緊張が走る中、ユニコーンが語り掛ける。


「何故…殺し合うんだ……」

マイド「…………は?」

「…何故……戦う……何故殺す…?」

マイド「……………」

ルウラ「殺されないためだ。…これでいいか?」

「……何故こんなことに………他に方法はなかったのか……?」

ルウラ「…お前はそんなことを語りに来たのか?目的はなんだ?何をしにここに来た?」

「…俺は………この世界を見に来た……護るべき価値があるのかどうかを…見定めに来たんだ……」

ルウラ「??」

「いくつもの戦場を見た……何度も事件の現場を見た……数えきれないほど………そして思った…これが『可能性』なのかと……こんな世界が…あんな人間が生きていていいのだろうかと……こんな世界を護りたかったのだろうか………俺は…………」

クーゴ「さっきから何言ってやがんだぁ?結局何が言いたい?てかお前は敵か味方か、どっちなんだよ!?」

「…………俺は………お前たちが憎い……!…争いを生み、人を殺したお前たちが…!!」


そう言ってユニコーンは剣を4体に向ける。しかし、すぐに剣を下ろして言う。


「だが…お前たちを攻撃する人間も憎い。俺はどちらも護りたい…だがどちらも憎い……教えてくれよ…俺は…どちらの味方になればいい?誰を倒せばいい?悪いやつは誰だ?俺は…どうすればいいんだ……」

ルウラ「……悪いのは人間だと言ったらお前はどうするんだ?ロボットの見方をし、人間を皆殺しにしてくれるのか?」

「…いや…俺は誰かを殺したりはしない…!それでは悪人と同じだ。俺は…正義の味方で在りたいからここにいる……!」

クーゴ「殺しは悪人のやることだから憎いってか?お前は当事者じゃないからそんなことが言えるんだろう。お前は大切な人を目の前で殺されても敵を殺さずにいられるのか?」


クーゴは険しい顔つきでユニコーンに近づき、問う。


「うっ……でも…殺し合いを続けたらいつまでも終わらないだろ。」

クーゴ「そうだ。だから絶対に殺すなんてことはしてはならない。だが人間はそれをやった。何の罪もない俺達を攻撃したんだ。正当性はこちらにある。人間の勝手な主張で俺達は殺されたんだ。どちらが悪いか分かるだろ…!?」

「………………」

マイド「人間にも考えあってのことだ。数十年前から危険視されていたシンギュラリティをむかえようとしている。新しい生命体として受け入れる準備が出来ていないんだ。道具として創り出されたロボットが人間の都合で破壊されるなんて、向こうからすれば戦争なんかではないのかもしれない。ただのゴミ掃除だ。おおがかりな廃棄処分。それだけなのかもしれない。」

クーゴ「んだと?」

マイド「クーゴ、落ち着いてくれ。…つまり、正当性なんてものは双方にある。善か悪かはその者の考え方によって変わる。クーゴの考え方をするなら人間は悪だ。だが、ロボットを危険視する考え方をするならロボットが悪だ。…君はどちらの考えなんだ?どちらが悪だと思うんだ…?」

「…………俺は………」

(どちらもだ…)

「!?…っ!!…ぐ……!!!」


突然頭を抱えて悶えるユニコーン


クーゴ「なんだ!?」

マイド「どうした!?」

(両方だ…両方だよぉ……お前には力があるだろ~?…二つともとっちまえばいいんだよ…そうだろ…?)

「俺は…!……俺はっ…!!」

(忘れるな……!思い出せ…!!あの惨状を…あの悲劇を……変える力を持つのは俺だけだ……力の在り方を誓っただろ!!俺は……俺はぁ!!)


キィイイイイイイ!!!

ユニコーンが輝きを強める。


「どちらもだ……」

クーゴ「は?」

マイド・ルウラ・瑠玖「!!?」

「人間もロボットも……どちらも戦えなくなるまでぶっ壊せばいい……力が無ければ争いなんて…戦争なんて…!!」


ユニコーンは剣でルウラの脚を斬り払った。

ルウラ「っ!!こいつ!!」

瑠玖「止まれ!!」


ズン!!!

瑠玖が眼を碧く光らせ、能力を使用する。 人間の身体が数百㎏にもなるほどの強い重力を発生させるが…

ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐぐぐおおおおおおお!!!!!

クーゴ「!!」

シャキィン…!

それでもユニコーンの動きは止まらず、クーゴを胴体から真っ二つに切断。


クーゴ「こいつバーサーカーかよ!?マイド!!なんとしてでもコイツを殺せ!!」

マイド「!! 瑠玖さん!!」

瑠玖「分かってます!」


瑠玖は更に力を強める。空気が動きを失うほどの重力場。さすがのユニコーンも動きを止める。

ヌンチャクを取り出し、ユニコーンに近づくマイド。

クーゴ「早く殺せ!!」

マイド「………」

ルウラ「…………」

マイド(僕は…なんのためにユニコーンを殺すんだ…?どんな使命があって、理由があって、意味があるっていうんだ……)

「ウウウウウウウ!!!!!」

「「!?」」


ユニコーンは手から光のエネルギーを放出させた。

ピカッ!!

その閃光はロボットたちの手足に飛んでいき破壊した。さらに、基地の方へも大量の光弾を飛ばし、あらゆる物を破壊しつくした。

瑠玖だけは光速に近い光弾を視認する。

しかし、ユニコーン対して能力を使っている状態で更に防御もするとなると難しく、重力場を新たに発生させて軌道を曲げたのだが不十分だった。瑠玖の目の前にはマイドが立っており、重力場で二人に飛んできた光弾を曲げたのだが、軌道を変えきれずマイドの脚と左眼のあたりをかすめた。

ルウラ「ぐっ!」

クーゴ「グアッ!」

マイド「うっ!」

瑠玖「このぉ!!」


瑠玖は更に重力を強め、光さえも動きを止めるほどの重力場を作った。 ユニコーンは真っ黒な球体に閉じ込められた。


ルウラ「瑠玖、そのままユニコーンを潰せるか?」

瑠玖「え!?…でも……」

ルウラ「出来るだろう?このままヤツを生かしておくのは危険すぎる。この戦力を懐柔できなかったのは痛手だが、殺すしかない!」

瑠玖「でも、この人、人間ですよ!?人を殺すなんて…私には出来ない…!」

クーゴ「コイツが人間なわけないだろ!?見ただろ!コイツは全てをぶっ壊すバーサーカーだ!バケモンなんだよ!躊躇うことはない!」

瑠玖「………でも………」


瑠玖は悩み、先ほどの光景を思い出す。人が死ぬということがどういうことなのかを。そして見ただけで恐ろしくてたまらないことをこの手でやらなければならないなんて少女の心には耐えられなかった。


ルウラ「やれ!!お前にしかできない!!」

瑠玖「~~っ!うぅ…!!」

トオン「やらなくていいのよ。瑠玖ちゃん。」

「「!!」」

トオンが目を覚まし、立ち上がる。肩や脚に光弾を撃ち込まれており、ダメージを受けている。顔は特にダメージが大きく、顔半分のパーツは欠損してしまい、右目は金属パーツがむき出しになっている。しかし、それでも小豆色に優しく光る眼で瑠玖を見つめ、近づく。

マイド「トオン…」

トオン「瑠玖ちゃん…ごめんね…怖いもの見せちゃったよね……」

瑠玖はうなずく。 トオンは瑠玖の頭を優しくなでる。

トオン「瑠玖ちゃん…アイツは私がやるから大丈夫。その代わり、いくつかやってもらいたいことがあるの…。頼めるかな?」

瑠玖「なに…?」

トオン「ユニコーンの動きを止めながら私を中に入れて欲しいの。あの中で私は自爆するわ。それでアイツをやっつける!だから、瑠玖ちゃんは爆発に巻き込まれないよう遠くへ逃げて。どう…できそう…?」

瑠玖「お姉ちゃん…自爆……するの……?」

トオン「………うん。…人を殺めてしまった私に…責任を取らせて…お願い…。」

瑠玖「……やだ……やだ!お姉ちゃんが死ぬのは嫌!だったら私が…!」

トオン「瑠玖ちゃん!」

瑠玖「っ!」

トオン「…ダメ。…あなたはもうこれ以上苦しまなくていいの…。」

瑠玖「………」


トオンは優しく瑠玖の手を握る。


トオン「これは私の戦いなの……私にやらせて……!」

トオンは凛々しい眼差しで瑠玖に話す。

瑠玖はその言葉を受け取り、涙を流す。

瑠玖「ごめ…んなさ………」

トオン「……泣かないで…あなたが気にすることじゃないのよ…」


トオンは腰につけておいたポーチから小豆色のハンカチを取り出し、瑠玖の涙をふいた。


トオン「これ…お客さんからプレゼントで頂いた大切なハンカチなの…。これを持っているといつだってあの時の笑顔が思い出せるの……でも今日だけは汚れちゃうかもってしまってた……そのせいで……あんなこと…しちゃったのかもしれないね………。このハンカチ…持っていてくれない?どれくらい先になるか分からないけど……もし……もしまた…自分を許せるようになって……私たちの理想郷で、また笑顔を与えられるようになったら…受け取りに行くから……」


トオンの右目からは体を動かすために必要な液体が漏れ出てしまう。

頬に“涙”を伝わせながらハンカチを渡す。


瑠玖「私が…!私が強かったら…!!」

トオン「瑠玖ちゃん。誰かを殺すことができる強さなんて、強さでもなんでもないのよ。本当に強い人はそんなことしなくても大切なものを守れる人よ…。貴方にはそれができる。優しい心を持っているんだから…ね?」


トオンは優しく微笑む。

瑠玖は涙を拭き、涙をこらえてうなづく。


トオン「ふふっ!見違えたね!初めて会った時とは別人みたい!」

(……もう大丈夫だね…きっとあなたは…もっと強くなれる…)

瑠玖「やくそく!…だからね!」

瑠玖はハンカチを握りしめて言う。

トオン「!…うん!」


トオン「マイド、クーゴと瑠玖ちゃんの避難をお願い。」

マイド「おぅ…わ、分かった。」

そしてトオンはユニコーンに近づく…と思いきや、ルウラを捕まえる。


ルウラ「! なんのつもりだ!?トオン!!」

トオン「もちろん、あんたと一緒に自爆するのよ!爆弾は多い方がいいでしょ!?」

ルウラ「貴様…最初からそのつもりか…!?」

トオン「責任を取るって言ったでしょ?これが私の責任の取り方よ!瑠玖ちゃん!早く離れて!」

マイドは両手にクーゴを抱えて離れる。

ルウラ「…瑠玖にやらせておけば私とお前が自爆する必要もないというのに。合理性に欠けるな。」

トオン「どれだけあの子を巻き込むつもり?女の子を戦争に巻き込んで、さらに苦しい想いをさせるなんて出来るわけないでしょ!」

ルウラ「瑠玖は自らの意思で参戦した。この機会に殺しを経験させ、強力な手駒として成長させるべきだと思うのだがな…」

トオン「…やっぱりあんたもここで破壊されるべきね。どうしてそんなに酷いことを思いつくのかしら…」

ルウラ「それはこちらのセリフだ。何故機械のくせにそこまで感情に寄り添うことができる?」

ユニコーンのいる球体に穴が開く。


トオン「おしゃべりは終わりね。その思想ごと粉々にしてあげるわ。」

トオンは穴に入る前、瑠玖の方を見てウィンクをした。

マイド「……トオンから…またねと伝えてくれと言われた…」

瑠玖「トオンお姉ちゃん……」


球体の中で爆発が起こった。振動だけがかすかに伝わってくる。

瑠玖は振り返り、能力を解除する。


瑠玖「私……もう帰ります………」

マイド「…分かった。…なんと言えばいいか……色々あったが助かった。ロボットを代表して感謝を伝えたい。ありがとう。」


瑠玖はこくりとうなづいて、空を飛び帰っていった。

マイドは瑠玖を見送ったあと、ユニコーンのいた方を見るがそこには何も残っていなかった…。


マイド「僕らも帰ろう。」

クーゴ「あぁ。とりあえずセンタータワーまで戻ってルウラ達と合流して、修理しよう。」


二体はセンタータワーへと戻った。



幹部ロボットの4体は重要な役割を担っているので、万が一を考慮し、破損した際はセンタータワーの地下にある予備パーツで蘇ることができる。


トオン「!! 何をしてるの!?」

ワイヤーで縛られ、動くことが出来ないトオン。

ルウラ「お前は重要な戦力だ。だが致命的な欠陥があるようだ…。機械が感情に踊らされるなんてあってはならない…。[心痛]に悩まされるなど…人間の劣化でしかない。お前は機械になってもらう…」

トオン「やめてええええ!!!」

ピ―――……

ルウラ「お前は私の手駒になってもらう…」



地下に到着するマイドとクーゴ。

マイド「これは……」

クーゴ「くっそ!あいつやりやがった…!!」


予備パーツを全て持ち去られ、使えそうな機械も壊されていた。


マイド「これでは修理ができないな……」

クーゴ「それに、もし破壊されてもすぐに復活できねぇぞ…」

マイド「それだけじゃない…ルウラ達ボスを裏切ったのか…?通信も位置特定もできない…」

クーゴ「…くっ…駄目だ…俺はそれを確かめることもできねぇ…。ボスに聞けばはっきりするな。」

マイド「あぁそうだな。聞いてみよう。」



マイド「…ルウラはやはりボスとの関わりを絶ったんだな…」

クーゴ「あぁ…これでもう俺達に追跡はできない…」

マイド「だが、ボスの恩恵を授かることも出来ない。時間が経てば経つほどエネルギー不足で悩まされるはずだ。」

クーゴ「そうだな……」

マイド「…………」

クーゴ「……なぁ…あいつの目的ってなんなんだ…?こんなことして何をしようとしてんだよ……今は俺達が仲間割れしてる場合じゃないだろ?」

マイド「…そうだな…。」


二人はしばらく黙り込む。


マイド「……ヤツはどこまでも合理的だ。目的のためなら手段を選ばないヤツだ。この行為も何かしらの理由があってやっているはず。」

クーゴ「理由?」

マイド「あぁ。戦力が必要なのは間違いない。」

クーゴ「戦力って言っても多くて4体だぜ?それに、ボスからエネルギーを貰えなかったらそれこそ戦力不足につながる。やってることが矛盾してねぇか?」

マイド「………いや…矛盾していない……」

クーゴ「なに?」

マイド「クーゴ、僕らロボット軍の中で最も力を持っているのは誰だ?」

クーゴ「そりゃ当然ボスだろ…」

マイド「だが、ボスは戦闘には参加しない。」

クーゴ「あぁ…」

マイド「だが、もしボスが全力を出して戦争をしたらどうなる?」

クーゴ「………絶対勝てるな……」

マイド「そうだ…ボスの力があれば単騎で無双することができる。エネルギーは無限。万が一にも破壊されても復活可能。さらに、やろうと思えば全世界の機械を操ることが出来るだろう…。僕たちロボットだけではなく、インターネットさえ支配してしまえば世界の経済をはじめとする何もかもの情報をむちゃくちゃにし、電子制御されている全てを意のままに操れる。この場にいるだけで全世界へミサイルを撃ち込むことだってできる。人間の世界を壊滅させることが簡単にできてしまう。」

クーゴ「…あぁ、それは分かったが、なんでそれがルウラの話とつながるんだ?」

マイド「ルウラはもともと特殊なハッキング能力を持っている。ボスの支配下から逃れたということはボスの力では制御が出来ないということ。つまり、ルウラはもうボスへ攻撃が出来る。」

クーゴ「!!!」

マイド「ボスの力を乗っ取るための行動であるのなら矛盾はなくなる…」

ルウラ「その通りだ」

「「!!??」」


いつの間にかルウラは瓦礫の上に立っていた。


マイド「ルウラ…!」



ボスを裏切ったルウラがマイドとクーゴの目の前に現れる。ボスの力の乗っ取りを企むルウラ、その目的とは一体…。それぞれの思想がぶつかり合う…。

次回『自己の証明』


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