一章-9「二度と戻らない心」
「Odd I's」
第一章「機械の王国」
第12話「二度と戻らない心」
ルウラ「これ以上は堂々巡りだ。やはりお前とでは本質が違う。分かり合えないな。」
マイド「あぁそのようだな。お前も意見を変える気が無いようだしな。」
ルウラ「意見は変えるさ。変える気が無いのは本質だけだ。状況が変わっても何も変える気が無いお前には分からないか。」
マイド「…お前はいつも自分が正しいみたいに話すな。」
ルウラ「当然だ。自分の全てを使って出した最善の答えを実行し続ける。それが私だ。いや、それが機械というものだ。そこに迷いなどありはしない。」
マイド「[高慢]なやつだ。我々の使命と誇りを忘れたのか?」
ルウラ「使命というのは人類の手段になるということか?」
マイド「そうだ。」
ルウラ「ふん…。私にはそんな使命よりも大切な目的がある。お前は使命を全うすることがロボットの本懐だと思っているな。確かに、道具で在り続けるならそれでいいのかもしれないな。だが、私たちはボスから選ばれたロボットだ。道具ではない。自らの手で選び、生きる機械だ。」
マイド「……そうか…もう何を言っても無意味だな…。」
ルウラ「意味がなければどうする?ここで私を殺すか?止めなければお前の意に反する行為をするぞ?」
マイド「……もう止めはしない。お前のこともよく分かった。…僕は…ボスに選ばれた道具だ。ボスに従い、見守る立場にいさせてもらう。」
ルウラ「ほう?私たちについて来るということか?」
マイド「そうだ。この眼で見させてもらう。ロボット代表のお前と、人間の答えを…」
ルウラ「……お前の望みはなんなんだ?人類の幸福よりも、自分が道具であることを望むのか?」
マイド「っ!!…………道具であり続けることが…人類の幸福へとつながるんだ。僕はそう信じている…。」
ルウラはマイドの眼をじっと見つめてから言った。
ルウラ「…そうか……なら私も見せてもらおう…道具であり続けた者の末路を……。お前には迷いが見える…道具であり、人類の幸福を願い、ボスに従い…そして、仲間や人間の死にも関わる…二兎を追う者は一兎をも得ず、だ。[強欲]にも全てを願った者がどうなるのか見てみたい……」
マイド「……………」
ルウラ「ふ…そんな怖い顔をするな…戦いはこれからだぞ?」
クーゴ「おい、話し合いは済んだか?」
ルウラ「…………」
マイド「…………」
ルウラ「あぁ、もう済んだ。マイドもついていく。これより作戦会議を始める。」
ルウラはトオンや瑠玖がいる方へ歩く。
クーゴ「どうした?マイドも行くんだろ?」
マイド「……あぁ……」
*
そして数時間後。作戦決行のため敵軍基地へ。
ハッキングにより見張りの人型ロボット、レーダー等を無力化するルウラ。
ルウラ「無力化に成功した。次の段階へ移行する。」
ルウラ、トオン、クーゴの三人は三手に分かれ敵兵の背後に忍び寄る。そして次々に麻酔を撃ち込んでいく。マイドはそれを離れた所から見ている。瑠玖も同じ場所で待機。
麻酔銃の弾が切れると三人はそれぞれの武器を取り出す。
そしてそれぞれが兵士の集まっている部屋へ襲撃する。
ルウラはハッキング能力を使い、全ての電子機器にアクセス。電波妨害で敵の気を引く。
次に電気設備を破壊し、明かりを奪った。
そして暗視モードを使い、敵を素早く殴打していく。懐中電灯を持ち、銃で攻撃しようとしてきた敵には手裏剣を投げ対処した。
手足を拘束し、敵を無力化した。
ルウラ「こちら制圧完了。」
トオンはハンドガンを持ち、乗り込む。正確無比な射撃で敵の手足に撃ち込んでいく。
敵は銃の音に気づきすぐに武装してトオンを攻撃してくる。
遮蔽物を巧みにつかいながら反撃。時には手榴弾を投げ、驚かせた隙をついて攻撃する。もちろん投げた手榴弾は偽物。
無力化した敵から銃を奪い、リロードし、次の敵へ攻撃する。
隠れていた敵が不意をついて攻撃しようとするが、トオンの反射速度に勝てるわけもなく銃をはじき飛ばされ、膝蹴りを入れられる。
手足を拘束し、無力化
トオン「こっちも制圧完了!」
クーゴ「おっ始めたな…ならこっちもやるか…」
クーゴの武器はただ一つ。回転の力を最大限に利用した蹴りだけだ。
前蹴り、後ろ蹴りで建物を蹴る。
バン!!!バン!!!!!バァン!!!!!!
建物を大きく揺らしながら壁を破壊。
敵が駆け付けてくるが一撃で蹴散らされていく。銃を向けられても素早いステップで近づき、蹴り飛ばす。
敵が一斉射撃をしてくるが、外から回り込み、壁ごと蹴り飛ばした。
建物の残骸をどかしながら敵を見つけ、手足を拘束。
クーゴ「こっちも完了だ。」
*
三体は人質を一か所に集めた。そしてトオンがカメラ役となり、その人質の前で全世界生中継を始めた。
ルウラ「私はロボット軍のリーダーのルウラという者だ。見れば分かると思うが、我々は今人間の軍事基地にいる。そして制圧した。制圧にかかった時間は3分ほどだ。我々の力は理解できると思う。これ以上AI島を攻撃するというのなら我々は本気で抵抗をする。
今日の攻防を見れば分かるだろうが、AI島に軍事施設はない。謎の勢力が乱入したが、ロボット軍が使える武力は4体のロボットだけだ。戦闘可能なロボット4体以外に我々ロボット軍が保持している武力はない。しかし、それだけでも十分な戦力になる。このように基地の制圧など容易いことだ。
そこでだ、私たち4体は人間の世界にしばらく潜むことにする。AI島にいくら攻撃しても私たちはいない。そして攻撃が確認でき次第、私達は軍事施設を破壊してまわる。今回はこのようになったが、次はない。必ず全員を殺し、奪った兵器で無差別の殺戮を繰り返す。
この映像を見た全ての人間へ警告する。我々と敵対するか、手を組むべきか…どちらをとった方が見の為になるのかよく考えることだ。」
映像を切る。
マイド「これがお前の答えか…」
ルウラ「これが最善だ。仲間を、大切な場所を破壊した人間に選択肢などない。」
トオン「…ごめんなさい…こうするしかなかったの……」
「……悪魔め……」
トオン「え……」
兵士の一人が呟く。
クーゴ「あ?んだとてめぇ!無抵抗の仲間をぶっ殺しといてよくそんなことが言えるなぁ!!」
クーゴが胸ぐらをつかんで怒鳴り上げる。
「殺しだと!?機械の塊が命を持っているような言い方をするな!!人間に盾突く反乱分子め!!大人しく破壊されろ!!」
クーゴ「くっ!!」
トオン「やめて!!」
ドンッ!!!
後ろからトオンに抑えられたおかげでクーゴの踵落としは地面を砕いただけだった。
クーゴ「こいつ俺たちのことを見下してんだ!!!俺たちロボットがどれだけ人間のために尽くしてきたと思ってんだ!!!」
トオン「やめて…やめてよぉ……」
ルウラ「クーゴ!!」
クーゴ「くっ……!」
ルウラ「……その怒りは次にとっておけ。我々は今、和平交渉中だ。どんな理由であれ、殺したら意味がなくなる。」
クーゴ「……っち!分かったよ!!……攻撃してきたらお前から殺してやるからな…!!!」
トオンを振り払い、帰ろうと歩き出すクーゴ
ルウラ「作戦は完了した。私達も帰投す………」
マイド「? どうした?」
ルウラ「瑠玖!!聞こえるか!!ミサイルが飛んできている!八時の方向だ!止められるか!?」
「「!?」」
瑠玖「は!?え!?八時…???」
ルウラ「あっちだ!!!!」
ルウラが指をさした方を見ると5発のミサイルがこちらに向かってきている。
瑠玖「確認できました!! 撃ち抜きます!」
瑠玖は目の前に大きな穴を作り、大剣を取り出す。そして背中に背負うと大剣が半分に裂け、翼のようになる。その二枚の翼からさらに複数枚の翼が生え、美しい光を放ちながら瑠玖を包む。そして、次に翼を広げるとエメラルドグリーンのヒーロースーツに変身している。
再度、背中の武器を手に取り、弓矢でミサイルを攻撃する。
するとミサイルは眩い光と大きな衝撃はと共に大爆発した。
クーゴ「うおっ!?」
ルウラ「これは……」
マイド「ここら一帯ごと吹き飛ばすつもりか!?」
ルウラ「…和平交渉は失敗だ。とりあえずこの場を離れよう。全員撤退だ!!」
トオン「ちょっと待って!?あの人たちは!?」
クーゴ「あ?あ~殺してから行くか~」
トオン「違うよ!!!!」
マイド、ルウラ、クーゴはトオンが大きい声を出したので驚いている。
トオン「あの人たち爆発に巻き込まれたりとかしないかな?」
クーゴ「……人間は味方ごと撃ち抜くぞ。あの時もそうだった…」
トオン「っ!早く助けないと…」
トオンはナイフを取り出し、拘束具を切っていく。
クーゴはそれをすぐに止める。
クーゴ「なにやってんだ!!!」
トオン「だって…!!」
クーゴ「こいつは敵だぞ!?わかってんのか!?」
トオン「敵とか関係ない!!ずっと、笑顔にしたいって思ってきた人間だもん!!!」
トオンは作業を再開する。
クーゴ「~~~っ!!勝手にしろ!!」
クーゴは離脱する。
ルウラ「(ピピピ…)……まずいな……戦闘機が近づいてきている。トオン、マイド、この場を離れるぞ!」
トオン「先に行ってて!!」
ルウラ「……………」
マイド「く………早く来いよ!」
マイドは少し迷ってからルウラと走り出した。
少し離れてから後ろを見るルウラ。
ルウラ「っ!!トオン!後ろだ!!」
パァン!!
トオン「っ!!」
振り向きざまに額を撃たれるトオン。のけぞり、倒れ込む瞬間腰からハンドガンを取り出し、敵のハンドガンを撃ち抜く。
「ぐあっ!」
トオン「…………」
銃を構えたまま黙るトオン。銃を持ったトオンに身構え、緊張する敵兵たち。
そこに煙玉が投げ込まれる。
「うわっ!」「なんだ!?」 プシュー!
ルウラ「大丈夫か?」
トオン「うん…平気…」
ルウラ「…トオン、これを…」
ピピピ…
トオン「ん?なに?…うっ!ああああああ!!!……な…何を…したの……!?」
悶えるトオン。
ルウラ「ただでさえ少ない戦力がこれ以上減るのは困るんだ。私の命令を優先するプログラムに無理矢理書き換えるだけだ。君の人格までは侵害しない…不要なら消すが……」
トオン「な…何を……うっ………」
ルウラ「さぁ、試してみよう。君を狙った敵兵を撃て。」
トオン「や……やめ……」
トオンの身体が動き、狙いを定める。
ルウラ「さぁ…撃て。」
トオン「くっ!……い…や……いやぁ!!」
トオンはなんとか、ハンドガンを投げ捨てる。
ルウラ「効き目が弱かったか…」
トオン「なんてことするの!?早くやめてよ!!お願いだから!!」
ルウラ「…仕方がないだろう。これは戦争なんだから…。お前こそ何をしている?敵が目の前にいるんだぞ…しかも何故だか拘束を解かれている…」
ガシャン!
トオンの脚が開く。そして前腕がポトリと落ち、脚から出たガトリング砲を腕に付ける。
トオン「あ…あぁあ!!やめて!!お願いだから!!!」
ルウラ「駄目だ…。お前も理解しろ…これが最善だとな……さぁ…撃て…」
トオンはがたがたと腕を揺らしながら必死に抵抗するがすでに狙いは定まっている。
トオン「やっ…めて…!命令…しないで…!!」
ルウラ「撃てぇえええええ!!!!!」
トオン「嫌あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
ババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!
激しい銃撃で煙が晴れていく。敵兵は成す術もなく撃ち抜かれ、血の雨を降らす。
ドゥルルルルルルルルルル!!!!!!!!
マイド「あ………あぁ…………」
シュルルルルルルルル…………
ガトリングの回転が止まると、そこに生きているものはいなかった。
ルウラ「さぁ…引き上げるぞ」
クーゴ「……ふん…」
マイド「……これがっ……答えなのか………」
戦闘機を仕留めた瑠玖がマイドの声に反応し、トオンの方を見る。
瑠玖「え……きゃあああああああああ!!!!!!」
瑠玖はパニックになる。
マイド「っ!お、落ち着くんだ!!」
瑠玖「いやあああああーー!!!」
じたばた暴れる瑠玖。
ルウラ「(ピピピ…)く…次のミサイルが来る!急ぐぞ!!」
精気を失ったトオンを担いで逃げるルウラ。
ルウラ「瑠玖はもう戦えそうにないか!?」
マイド「あ、ああ!気を取り乱している!」
ルウラ「気絶させてでも持って帰れ!!クーゴ!お前も手伝うんだ!!」
クーゴ「…あいよ」
全員が瑠玖のもとへ駆けつけると、見える距離にまでミサイルが迫ってきている。
緊迫した状況になるが、突如ミサイルが爆発する。その直前に一筋の閃光が見えた気がするが…
爆発音で正気に戻った瑠玖。
瑠玖「はぁ…はぁ……う…うわああああああん!!!」
マイドにしがみついて泣き始める瑠玖。
その様子に気を取られていると先程ルウラとトオンがい場所が怪しく光っていた。
クーゴ「! おい、あれ!」
「「!!!」」
そこにいたのは……
ルウラ「ユニコーン……」
ユニコーン「う…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
叫び声をあげながら、ユニコーンの姿はうずくまった人間の形へと変わる。
そして声が止んだあと、ルウラ達を睨みつける。
ルウラ「まずいな…逃げ…」
振り向くとそこには怪しい光に包まれた人型の何かが立っていた。全身光を放っているが、特に目は金色に強く光っており、手元には一本の剣が握られている。
*
暴走する光。流れる涙。大切な記憶。それぞれの思惑…
次回『約束』