25 ツェツィーリア、円卓会議を開催する②
百華隊。
発起人のツェツィーリアが議長兼隊長を務める有志グループで。
メンバーは正妃アンナさん、第4夫人ゲーム好きカーラさん、第5夫人セリアさん、第6夫人ルールーさん、ファウツー介するシュテファーニャ。さらにリヴィ。ノノ、僕。
それから、まだ居るぞ。
魔王軍麾下、第一将軍から第四将軍まで。面倒なので名前を省くが降魔四将軍だ。
何を話し合ってどんな活動をするのかだが、まずは議場となった場所について述べたい。
場所はシュテファーニャの部屋だ。
彼女の眠るベットの横に円卓のテーブルをデンと据え置き、一同肩を並べている。
気心の知れた者たちばかりだから気遣いは無用……と言いたいんだが、そこはそれ。
ここって女の子の寝室だし、降魔四将にとっては仮にも主君の姫君のプライベート空間に立ち入っているわけだ。気を遣わないわけにもいかない。彼らは進んで目隠しをして場に臨んでいる。
「オニイは目隠ししないの?」
バカな。
僕あ、パパだもん。えへ。
「全員お揃いですね。では第555回、勇者たちをどう追っ払ったらいいかなー会議を始めまーす」
「え? いつの間に554回も行っていたんですかい?」
「ラットマン、そこはスルーしろ! ツェツィーリア姫が恥ずか死んでるじゃないか」
「す、すいやせん!」
「バカ兄こそ、わざわざフォローすんな。余計にツェツィーリアさまが困惑するでしょ!」
「あーもーッ! やめてやめて、言い直すから! ――第1回勇者対策会議をはじめます」
「あらあら。ちっとも面白くないわよ、ツェツィーリア?」
「もーお母さままで! いい加減進めます。この会議は忌憚ない意見を出し合う場にします。反対意見は許可しません。出た意見をまずは試してみる。これをモットーにします。――いいですね?」
全員、目前にある自分のティーカップをスプーンで「チン」と1回鳴らした。
エフェソス帝国の会議での習わしで「了承」を意味する。ちなみに「反対」なら2回鳴らす。
偉い人の鶴の一声に、反対しにくい雰囲気を作らないようにするためのささやかな工夫だ。
あと飲み物が出るのは、「それを飲み干すまでに会議を終えましょう」といった、これも業務効率化のための魔王城特有のビジネスマナーとされているが、由来までは知りません。僕に訊かんで欲しいです。
「対策を論じる前に。まずは報告をしてよろしいですかな?」
「はい。ラットマンさん」
「光の加護の者ら、いわゆる勇者一行はリオン王国手前の街、クレドブワ城市に突如到来し、城を攻めました。そこへ魔王陛下が救援に駆けつけ、交戦となった次第です」
「――で?」
腕組みし、続きをうながしたのは第三将軍、乱踊の赤炎、ヘリードル。
威厳のある声音で場が急速に締まった。
「少々兵の損耗が出たものの勇者一行を撃退。……ただ街の損害が著しく、急場の協議の結果、クレドブワ城市を一時的に放棄する決断をしました」
「……少々とは? 具体的には?」
「36名よ」
ノノが発言。
……それは収容し埋葬できた人数だ。多分もっといる。
捕虜になり奴隷に堕とされた者も加えると100名を超えるかも知れん。
「ご報告、痛み入る」
ゆっくりと頭を下げたヘリードル将軍は、質問を締めくくった。
後で彼には真実を伝えておこう。
おそらく彼は今の遣り取りで何もかも察し、その上でこの場での発言を差し控えたのだ。
そう見えた。
「議長。いいですか?」
「は、はいっ。パパ上」
うっひ、こそばゆい。
「僕に……朕に作戦があるのだが」
「……ごめんなさい。フツーにしゃべってください」
「あう。えーとねぇ、勇者はどうも武骨な戦士タイプだったんだよ。だから真っ向から挑み掛かるよりも平和的に、穏便に対抗するためにさ……」
「陛下の発言は無視してください」
「ちょっと待って、ノノ。意見の遮りはダメよ」
「ですが、陛下の提案は事前に訊いております。要するに、女の子たちを使ってみだらな劣情に訴えかけ、勇者を思いとどまらせるというものです」
「……へえ?」
ノノ、お前の言い方には語弊がある。ちーっとも真の想いが伝わらんぞ。
「つまり、ですね。『萌えキャラ色仕掛け特別攻撃隊』の編成です。エフェソス帝国選りすぐりの国民的美少女たちを集めて特戦隊を編成、勇者にぶつける。さしもの勇者も可憐な乙女たちには非道なマネはしないでしょう! むしろこれは平和特使。戦いを避け友好を築くのに、うってつけの方法だと僕は考えます! 場合によっては勇者は間違った自己認識を悔い、もしくは歪んだ欲望を浄化させ、メロメロの骨抜きになり、帝国のために尽くそうと心を入れ替えてくれるでしょう。そうなるとしめたもの、我々の思う壺でもあります!」
ハアハア。今日一番の声が出た。
キバりすぎて喉が痛い。
「――皆さん、どんどん妙案を出してください」
「……アレ? いま僕提案したよ、ツェツィーリア?」
「……却下です」
「へ?」
「そーゆーのはキャッカ、ですーッ!」
「えーーッッ?! け、けど、ダメ出しはしないって……」
皆に救いを求める。
「そうねー、それは却下ねぇ」
「女の敵、人間のクズ」
「きっぱりとアホね」
「そ、そんな……」
魔軍四将たちも助太刀無し。無言の中立がやっと。
目隠しの顔を伏せている。……ああ。
ルールーさんの挙手で、場がリセットされた。
「シュテファーニャの意見です。勇者一行の行く先に巨大な落とし穴を掘っておくのはどうでしょう?」
――んなアホな。
「いいわね!」
「それ、妙案かも」
うっそおーーー。
「はーい。じゃあ私も」
「カーラさん」
「魔王城を改築するとか。100階建てなんかにすれば、最上階までなかなか辿り着けないでしょうし。各階に中ボス待機させたりして」
はあ? ゲームか?
レッドリボン軍のマッスルタワーか、もしくは死亡遊戯のレッドペッパータワーかっての。
そもそもキミはゲームヲタすぎ。
「それいただき!」
メモるツェツィーリア。……マジか。
「それは思いつかなかったわ」
第5夫人のセリアさん。しきりに感心。
発言の無いリヴィたんも強く頷いている。
勢いを得たツェツィーリアが更なる意見を募る。
ビシッと手を挙げたのはノノ。
「はい、ノノ」
「村や街の人たちを買収しときます」
「買収?」
「勇者らに、魔王城までのウソの道を教えてもらうんです。ヤツら、混乱すること請け合いです」
一同シンとした。
アンナさんあたりが「ウソはダメだ」と反対するだろう。
「そうねぇ。嘘も方便よねぇ」
はあああぁ?
「今日は両案が3つも出たわ! 早速実行に移しましょう」
4つだよね。
パチパチパチ――と一同拍手。
揃いも揃ったアイディアだ。ホント性格出るよなぁ。
四将と僕は、誰がティカップを2回鳴らすか、肚の探り合いをした。
結局2回鳴ることは無かった。
日和見の臆病者たちは、しょんぼりと円卓の間を後にした。
――後日。
ノノに聞いたところによると、落とし穴作戦とウソの道案内作戦は実行されたという。
100階建て増築計画は予算の都合上、お蔵入りしたらしい。
「萌え萌え作戦は?」
「オニイが女装すれば?」
さいですか。
仕方ない。サシャとコンビ組むか。
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〇春馬越豪人に一言〇
春馬越ノノ(実妹・技術研究員) キモさを再認識したわ。
リヴィ(ダークエルフ・内政担当) ツェツィーリアさま、見事な進行ぶりでした。
バンク(老執事) ようやく仕事が進みますな。
サシャ(メイド執事) くっそう。くやしいっ。
アンナ(正妃) 豪人さん、お茶目ですわ。
アリス(第2夫人) ――(コメント無し)
ローザ(第3夫人) ――(コメント無し)
カーラ(第4夫人) ふふ。我ながら妙案だったでしょ?
セリア(第5夫人) 久々に楽しかったわ。
ルールー(第6夫人) 良い会議でした。
ツェツィーリャ(魔王の長女) ちょっとは帝国に貢献できたかなぁ。
シュテファーニャ(魔王の二女) お姉ちゃん、頑張った。
リリティシュール(魔王の三女) なーに?
ラットマン(魔王軍第一将軍) 姫殿下に栄光あれ。
コウゼン(魔王軍第二将軍) 儂がどうにかすべし。
ヘリードル(魔王軍第三将軍) ――(コメント無し)
ギース(魔王軍第四将軍) ――(コメント無し)




