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【完結御礼】異世界バイト 身代わり魔王のダミー生活 ―ラスボスの影武者したら、元カノが勇者になって攻めてきた。ちなみに魔軍宰相はツンな妹が務めます―  作者: 香坂くら
夏の章 勇者一行は結構つええぞ、総員挙国一致体制……にはならんよね

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17 魔王軍、勇者パーティに敗れる④


 現場は凄惨な状況だった。


 人間族が20人ほど、数に物を言わせて一人のゴブリンウォーリアを四方八方から袋叩きにしていた。最早彼に抵抗の様子はなく、片膝付きでぐったりしていた。


 そのすぐ近くで別の、2人のゴブリンウォーリアと5人のグリーンゴブリンが隊形を組んで暴れていた。対する人間側は30人以上いた。全員抜刀し立ち向かっている。


 両者間の往来は倒れ伏す人魔と、その者たちから溢れ出た褐色の汚損物でどす黒かった。


「……テメーら。このゴブヤロウども。調子に乗るなよ……」


 ジュドーチャラ男の、本来高い声が低く唸った。

 それだけで、ビリリ! ――と空気がブルついたように思えた。


 1秒も無かった。


 ゴブリンウォーリア2人の首が同時に斬り離され、宙に跳ね飛んだ。

 このままじゃグリーンゴブリンたちも後を追うことになる。


「やっ、ヤメローッ!」


 自分のものとは思えんほどの半狂乱な喚きが出た。とにかく必死だった。

 

 チャラ男とグリーンゴブリンの間に飛び込んで壁になった。

 いいや、言い直すぞ。そんな恰好の良いものではなかった。

 つい、壁になってしまっていた。


 チャラ男の剣先が僕の喉元、皮一枚のところでビタッ! と寸止まった。その代わりにグリーンゴブリンどもの追っつけダガーが僕の背中にヒットしやがった。両者の剣技量の差というヤツだ。

 ああ死んだと思った。


「兄ちゃん。……アンタ、魔王軍の仲間なんかい? 命まで張って」

「……仲間もへったくれもねーだろ……、コイツらはとっくに降参してんだ。赦してやってくれ」

「赦す? 戦いに負けたモンは、どんな運命にさらされようと、モンクは言えねーだろが」


 ……チャラ男さんよ。多分アンタの言い分は間違っちゃないさ。魔王側の僕だって立場が逆ならそんな感じに切って捨てるだろう。

 ま、どーでもいい。そんな話を今ここで議論したいわけじゃなし、勇者一味を論破して一矢報いる……なんてつもりもない。適当に言い訳を考えてお引き取りを願おう。


「違うんだ。理解しろよ! この商品は僕が買おうとしてたんだ! だから、殺されたら困る!」


 チャラ男は「そうなのか?」とキョトンとした。グリーンゴブリンどもを睨めつけてから、もう一度、「そうなのか?」と念押し確認した。


「そうさ。そうだよ! あーあ、ゴブリン戦士を殺りやがって。コイツらさぁガタイが良いし、良い働き手になると思ったんだよなぁ、あーあ」


 成り行き任せの理由付けをする。チャラ男、「それはスマン」と詫びた。

 チャラ男め、チョロイ。それにしてもグリーンゴブリンたちに言語能力が無くて良かった。

 空気の読まない発言をされたらややこしい事態になったかもしれんからな。


 まだ良く状況の呑み込めん様子の売主に、言い値の倍を提示。


 死んでしまったゴブリンウォーリアふたりの代金もそれに足し、供養するので遺骸は引き取ると告げた。処分の手間が省けるわいと売主は快諾。


 それと、暴走ゴブリンらが死傷させた売主の使用人や用心棒ら、彼の手下への弔慰金もしくは見舞金相当料も肩代わりで上乗せしてやった。

 そこまでしてやったら、ほんのさっきまで気が触れたように怒っていたヤツが、締まりのない、媚びへつらいの態度に変わっていた。


「兄ちゃん。アンタの太っ腹に感服したよ! こっちは大助かりだ」


 こっちこそな。アンタがが金で片付く守銭奴で、まったく助かったよ。


 ――こうして、元々魔王さまの部下だった者たちを穏便に取り返せた。


 僕は、グリーンゴブリン5人を連れ、奴隷オークション会場を後にした。

 言葉の通じないコイツらに僕は深く詫びた。

 情けない主でごめんな。


 コイツらに痛めつけられた背中が今ごろになってイターイ!

 痛み分けにもならんが、どうかそれで勘弁してくれな?


 別れ際、チャラ男がなけなしのヒーリングをかけてくれた。


「アンタ、大層なボンボンだな。びっくりしたぜ」

「いやぁ……」


 ボンボン。言葉の意味は知ってるが生まれてはじめて耳にしたな。

 とにかく僕が魔王だってバレる前に退散しよう。


「商売のジャマをしちまったようで済まなかったな」

「いやいや、いいさ。ゴブリンウォーリアの死体積みを手伝ってくれて有難う」

「しかし物好きだな。墓でも建ててやるんかい? 元々オレのせいだ、手伝うぜ?」

「ああ? いやぁ。大丈夫さ」


 言葉を濁す。

 何とも情けないような、有難いような、敵ながら憎めないような、しかしとてつもなく悔しい気分を抱きながら、ラットマン将軍の元に帰り着いた。


 将軍は「生きて戻って来たのか」とでも言いそうな複雑なヨロコビを見せ、深く首を垂れた。


 グリーンゴブリンらの報告を受け、命の恩人だと大げさに僕の手を握るので、(ゴブリン同士なら意思疎通できるらしい)僕も将軍に負けないくらい意気消沈した表情で深謝を受けた。

 僕が戻るまでの時間稼ぎのため、勇者パーティのもう片割れと交戦し、半数が路傍の躯になったと聞かされたためである。


 僕らは何のために、いったい何がしたかったんだろう?

 自責の念に苛まれた。


 結論的に、クレドブワ城砦とその城下の街は人間族の手に落ちた。

 魔王軍は、勇者パーティに為すすべなく敗れ去ったのだ。


 残存兵をまとめ、惨死した仲間たちを収容し終え、体を引きずるようにして魔王城への帰途についた。




 ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒  ⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒¨⌒


〇魔王城査定会議〇


パルマコシ改め魔炎王タルゲリアをどう思うか?


 春馬越ノノ(実妹・技術研究員)    何処で道草くってんのかな。

 リヴィ(ダークエルフ・内政担当)   パルマコシさま? そーいや居ませんね。

 バンク(老執事)           公務が滞っておりますぞーッ!

 サシャ(メイド執事)         忙しいんだ、後にしてくれ。

 アンナ(正妃)            無事のお帰りをお待ちしますわ。

 アリス(第2夫人)          あの者など信用しておりません。

 ローザ(第3夫人)          わたくしには関係ございません。

 カーラ(第4夫人)          おーい。敵が強すぎて勝てないぞー?

 セリア(第5夫人)          どうでもいいですわ。

 ルールー(第6夫人)         なかなか良いお方です。

 ツェツィーリア(魔王の長女)     いいなぁ、旅行なんて。

 シュテファーニャ(魔王の二女)    ――(コメント無し)

 リリティシュール(魔王の三女)    おにーちゃん、いないの?

 ラットマン(魔王軍第一将軍)     何でもお任せあれ!


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