帰り道で
備考
夏菜 なな
灰色ミディアムボブ
おっとり
綾乃 あやの
黒髪 ロング
ツンデレ気質
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休み時間
自販機で飲み物を買った帰り、私は廊下を歩いていた綾乃ちゃんに後ろから飛びついた。
「ッ…ちょっと!学校でこういうことしないって約束したでしょ?」
「えへへ〜…ついそこに可愛くて抱き心地の良い体があったから〜」
「まったくもう…」
夏菜と綾乃は付き合って3ヶ月になるが、女同士ということで学校ではそのことを秘密にしている。夏菜としては人の目とか気にせず四六時中イチャイチャしていたいところだが、綾乃は見た目や言動に反して繊細なところがあり、あまり人の視線とかに晒されるのが得意ではない。
「あれ〜?綾乃ちゃん、少し太った?」
腰にまわした手を少しづつお腹の辺りに下げ、制服越しにほどよく柔らかい肉を摘んだ。
「なっ…!そんなことないわよ…!ニキロくらいしか…」
「あ、やっぱり太ったんだ〜でも安心して!私は綾乃ちゃんが、どれだけぶよぶよな体になろうと愛してみせるよ!」
「うっ…うるさい!」
ぐっ!と親指を立てた夏菜に綾乃は顔を赤くして声を荒らげた。
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「「ありがとうございました」」
授業が終わり生徒玄関の前で綾乃のクラスが終わるのを待っている間の暇つぶしにスマホを弄っていると、ふとこんなトピックが流れてきた。
「ふむふむ…「奥手なパートナーのスキンシップを増やす方法」かぁ…おっ!これだ!」
目をキラキラさせながらスマホを覗いていると、
「ごめん…お待たせ…」
見慣れたポニーテールを揺らしながら綾乃は
夏菜の隣に立った。
「よっす〜じゃあ帰ろっか〜」
家は同じ方向だし、二人とも部活に入っていないため下校はいつも一緒になる。この時間バスはここら辺の高校生がみんな乗り込んできて、満員で何本も通り過ぎていくので結果徒歩とあまり時間的に変わらなくなってしまう。バス停でずっと立っているくらいなら歩こう、ということで夏菜と綾乃はバス停を横目に歩いて帰っている。
「綾乃ちゃん〜コンビニ寄っていい?アイス食べたい〜」
「ん、私も食べようかしら」
通学路に畦道があるくらいなので都会とはけっして言えないがコンビニやスーパーは登下校の間に数件立ち並んでいるのでよくそこで買い食いをしている。
「いらっしゃいませ〜」
店内は冷房でガンガンに冷えており
歩き疲れた体にじわじわと染み渡っていく。
一瞬飲み物コーナーを見渡したあとアイス売り場へと足を進める。なにやらアイスが少ないことに気がついた。よく見てみるとアイスケースの側面に某無人島のゲームのキャラが描かれているクリアファイルが並べられておりキャンペーンでアイスを買うと貰えるようだ。
「これ夏菜が好きなやつじゃない?」
綾乃もクリアファイルに気づき手に取って見せた。
「おお〜よくわかったね。ゲームとか興味無いんじゃなかったっけ?」
「別に…夏菜が好きだって言うから…夏菜が好きなものは興味持ちたいし…」
と、少し頬を赤らめて綾乃はそっぽを向いた。
なんだこの可愛い生き物は…
冷房がきいているというのに嬉しさで胸の中心がぽかぽかしてきた。
「ありがと…」
「ふんっ…」
にへっと笑った夏菜に綾乃は鼻を鳴らした。
ふたつのアイスと二枚のクリアファイルが入った袋を片手に店を出た。梅雨が明けたというのに外はまだジメジメとして蒸し暑い。
「はい、綾乃ちゃんの分」
袋からアイスとクリアファイルを出して綾乃に渡す。
「ありがと、今度は私が奢るから」
「もういいのに〜」
「私の気が済まないもの」
夏菜はソーダ味の棒付きのアイス、綾乃はバニラにチョコがコーティングされているアイスを食べながら歩き始めた。
段々影も伸び始めて、電線にはカラスがとまっている。公園を見ると小学生らしき男の子が2,3人鬼ごっこをしているのが見える。
「懐かしいわね」
アイスを齧りながら綾乃が呟く。
「そうだね〜しみじみするよ〜」
「ふふっ…おばあちゃんみたい」
夏菜と綾乃は保育園、小学校は一緒だったが、夏菜の両親の都合で中学は離れ離れになってしまい高校で再会したのだ。だから中学でのお互いを知らない。
「綾乃ちゃんと同じ中学校に行ってたら毎日楽しかったのかな」
無意識に口から溢れてしまった…
正直に言って中学にはあまりいい思い出がなかった。だから中学を綾乃と過ごせていたら、そう思ってしまう。
「夏菜…」
「ごめん…!ただでさえジメジメしてるのに湿っぽい話しちゃって!」
折角の楽しい時間を壊してしまった申し訳なさと
自戒の意味を込めてにへっと笑った。
ーーーチュ
「……ッ!?」
突然ほろ苦い匂いと甘さが口に触れた。
思わず唇に手を当て、甘さのもと…綾乃の方を向くと、
「ばーか、これから先、もう無理って言うまで楽しませてあげるから覚悟しときない!」
そう言って綾乃は暮れ泥む空を背に、にへっと笑ってみせた。