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カクシゴト

作者: 礼

母の持っている日記を見て、私は感動に包まれて、思わず涙した。


夕食後、母と兄と一緒に話をしている時に話題に出たそれは、私がまだ不登校だった時のこと。

今となっては笑い話。あの時の私は何に対しても無関心で、1人を好んでいた。

「私あの時のこと日記に書いてあるよ?」

と母が言ったから、私たちはそれに目を向けた。

『今日もあの子は一日中部屋でパソコンでアニメを見ている』とか『パソコンを取り上げたら、服を破いて、挙句充電器のコードをハサミで切り刻んだ』とか『もう私も疲れてきた。いっそ施設に預けようかとも思った』なんてことが書かれていた。

その時私は理解した。母はこんな気持ちでいたのだと。

「知らなかった。」

私は心の中で泣いた。誰にも気づかれずに、そっと。

「やべぇじゃん。え、服切ったの?」

兄の顔はあっけらかんとしている。そっか、お兄はその時高校生だから、学校行ってて知らないのか。

「そうだよ。この子、私の服ビリビリにしたから、さすがにやばいと思ったよもぉ。」

「あったあった、そんなこと。今思えば恐怖だよね〜。あ、この日から学校行き始めてるよ!ジャージだけどって書いてある。やば〜」


私は母からその日記を貸してもらい、ページをめくっていた。その時見つけた1日の日記。

『今日懇談会で、友達と家族に感謝を述べる文を書いて渡すというのがあった。この子はきちんと友達にありがとうを言っていた。えらい!私のこともありがとうって書いてあった。嬉しい。』

思いもよらない言葉で心を揺さぶられた。私にとっては辛くていらない記憶だったけど、母は大事そうにそれを守っていたのだ。一つ一つが大切なんだなって思う。やばい。涙でそう。母が私の知らないところでそんなことを思っていてくれていたなんて。普段そんなこと言わないからさ。なんか、すごく嬉しくなっちゃうじゃん。

『私の方が嬉しいよ。』

なんて、そんなこと恥ずかしくてママには言えないね。いつか面と向かって言えるまで、この気持ちはここに隠しておくね。


ありがとう。大好きです。

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