8/62
川下り
これは、電気屋のTVコーナーでの話。
美麗な画面に囲まれて、映像と現実が繋がっているみたいだと、ことは驚く。
画面では一斉に、棹を持った船頭が春の川を行く光景を映し出している。
水がこちらに零れてこないか心配になる程の臨場感。
「川下り、いいなあ。」
菜の花の黄色や桜の桃色の鮮やかな風景に、目をキラキラさせている。
ちょっと立ち位置や視点をずらして画面を眺めてみる彼女。
分かってはいるものの、映像に映っていない場所も見えないかと思ったらしい。
「あっち側の風景とか、みえないかなって(。>v<。)」
今は360℃ビューやリアルタイムの現場も見られる時代になってきた。
きっとそのうち、画面の中で気になった家屋の中だって見られたり、映像を五感で楽しめる時代だって来るかもしれない。
ヴァーチャルが現実に追いつき追い越す頃には、観光はどうなっているんだろう。
彼女が船頭の行先を夢想する中で、ちょっと未来を考える。
さおさして ゆきつくはなの みやこかな
終
ひとこと事項
・はな(季語:春)
はなというと、平安時代以前は梅、平安時代以降は桜になったそうですね。