風船
これは、休日の公園での話。
あるときブランコに乗っていたこととが、空を見上げて指さした。
何だろうかとよくよく見ると、小さな赤い風船が、ぽつりと空を漂っていた。
今日はどこかで、イベントでもあったのだろうか。
「風船って、一生懸命掴んでいても、ぱっと離しただけで行っちゃうんだよね。」
昔の記憶が蘇ったのか、ちょっと寂しげに体を揺らす。
「あんな高い所、青いだけで何にもないし、寂しいじゃんか。でも…」
「-?」
「あの場所からは、きっと眺めが良いんだろうなあ…。」
必死に繋ぎとめようと、どうしても離れていってしまうものがある。
もしかするとそれは、本人にもどうしようもない、生来の性質なのかもしれない。
いつかは独り 旅をする
それからぼくらは、風船が見えなくなるまで見送った。
終
ひとこと事項
・風船(季語:春)
風船を思い浮かべるとゴム風船が思い浮かぶ自分ですが、五色の紙風船もあるようで、そういえば小さい頃に遊んだな、と思い出すことがあります。時々空にぽつりとゴム風船が流れているのを見ると、また誰かが飛ばしてしまったんだな、と泣いている子供を想像して、少しセンチメンタルな気分になります。