横断歩道
これは、信号を待つ親子の話。
あるとき、横断歩道に差し掛かる小さな男の子と母親がいた。
歩く速さを考えて、慌てず次の青信号で渡るようだった。
ぴよぴよ、ぴよぴよ
信号から流れる音源を探す男の子。
すると母親は、四角い押しボタンの機械を指差して、
「あの巣の中にヒヨコさんがいてね、こっちだよ、ピヨピヨ、気を付けて渡ってね、ピヨピヨ、って教えてくれるんだよ。」
と言う。なるほど、押しボタン機を巣箱に喩えたのか。
信号が変わり、今度は反対側の歩道から、別の音が聞こえだす。
かっこう、かっこう
「あ!あっちにはカッコーがいる(*'▽')!」
「違う鳥さんが順番こに渡るところを教えてあげているんだね。優しいね。」
「うん!」
男の子は元気に笑う。
こととはそんな二人のやりとりに、
優しさや 電子巣箱の 鳥の声
と書き付けて、優しさを教える母の機転に感激していた。
終
ひとこと事項
・横断歩道の電子音(音響信号)
道の広さ(広い:カッコウ、狭い:ひよこ)や渡る方向(東西・南北)の違いによって、カッコウとピヨピヨとを使い分けていると知り、驚きました。可愛らしい音によって横断を助けてくれる、素敵な機械ですね。
・巣箱(季語:春)
鳥の生育を助けるために木々に取り付ける、箱状の人工の巣。電子とつくと違うかもしれませんが、巣箱自体は春の季語だそうです。