ふきのとう
これは、春を初めて感じた日の話。
まだ弱い日差しの中に、ふきのとうが生えているのを見つけた。
「これがふきのとうなんだねえ。」
若草の正体を知るや、よく知っていたねと褒められる。
偶然メディアで得ていた知識に感謝である。
緑色の葉を花が咲くるように広げたその姿は、厚い外套を脱ぐようで。
また、両手をいっぱいに広げて喜んでいるようで。
次の季節への始まりを予感させるものだった。
名前が分かればこちらのものさと、揚々隣で情報を検索することと。
するとこの植物が山菜の一種であることが分かる。
「食べると苦いんだってね。
それが春らしい味だって言われているみたい。」
素揚げにしたり、味噌と和えたり。
端末の画面には、素材そのままの味を活かした調理方法が並ぶ。
苦いのかあ、と想像すると、途端に唾液が出てくる。
彼女と目が合えば、ごくりと小さく喉がストロークする。
「「買って帰ろうか!!」」
ふきのはなさく かえりみち
意見が一致した僕たちは、そのままスーパーに足を向けるのだった。
終
ひとこと事項
欵冬華
一年二十四節気を更に三等分した七十二候。大寒の初候に位置するのがこの「欵冬華」で、1月20日~24日頃をこう呼ぶそうです。雪を割り、美しい若葉色の顔を覗かせるふきのとうは、まさに春の到来を告げる伝令使ですね。
今年はふきみそがスーパーに並んでいるのを見て、思わず買ってしまいました。春の苦み、そんなことを言われたら食べて見たくなってしまいますよね。そんな春の風物詩の話でした。
今回もありがとうございました!