万里を行く者
これは、日の出を見に行ったときの話。
正月も少し明けたので、せっかくだからと小高い丘を目指して歩いた。
「ええっと…えっ;!?」
結構歩いたつもりだったこととが、万歩計を見て青ざめる。
どうも全然距離が稼げていないらしい。
見ていると、正月太りをなんとかしたいという強い意思があるようだった。
特に見た目が変わっていないよという感想は、今は逆効果なのでやめておこう…。
散歩の人々に混ざって、整備された道を行く。
正月の凛とした空気が、木々に宿って清々しかった。
時折計測しては顔の青さの引きやらぬうぐいすさんを連れて、ぐんぐん歩く。
そうしてついに、時間ぎりぎりで日の出の丘に到着した。
「わあ♪景色が良いね!
…あ!ちょうど朝日が登って来るよっ―!!」
大きなカメラで撮影をする人、常連風のジャージの人、僕らみたいな初心者たち。
皆一同に、半熟玉子の黄身みたいに美しい橙色の太陽を眺めている。
ちらりと隣をみれば、やっぱり何かかきつけていて、
万里を行くや初日の出
「百里を行く者はね、九十里を半ばとするんだよ。
多分九十里まで進んだら、最初に見えていた百里の先が見えるから。」
万歩計を見せてもらい、万里とは大きく出たねと笑えば、
千里の道も一歩からだから!と彼女も微笑んだ。
終
ひとこと事項
初日の出(季語:新年)
新しい年、新しい朝。初日の出は、まさに新年の到来を告げる象徴的なできごとです。凛とした空気の中を登る太陽を見ると、気も引き締まる思いがします。
百里、千里、万里。
百里は392.727㎞≒400㎞。およそ直線距離での東京~大阪間位だそうです。
千里を4000kmと考えると、三千里で日本一周(12000㎞)くらい。
万里は40000㎞。これは地球一周(40000㎞)くらいになるそうです。
地球は太陽の周りを回っていますが、地球からみれば太陽が回っているようにみえますので、太陽はいつも万里を巡っているように見えるなあと思いました。
百里と行くものは九十を半ばとす
古代中国、戦国策にみられる故事で、何事も後ほど大変であるから九十を半分とするようかの如く最後まで気を抜いてはいけないという意味で用いられる言葉です。
こととはちょっと使い方が違っているようで、最初に百をみていたのだから、実際に九十進んだところからは百九十まで先がみえるはず。だから結局気を抜かずに心して進もうと、進めばみえるさの精神で、千里の道への一歩を踏み出したようでした。「千里の道も一歩から」は老子「千里の行も足下かより始まる」が由来とのことです。
今回もありがとうございました!