霜始降
これは、朝、目覚めたときの話。
寒い。昨晩から感じていた空気の冷たさが、部屋に凝って布団を囲んでいた。
ううむ…これでは外に出られない。
薄々感じていた秋の暮の気が、ついに冬側に傾いたのだ。
夜には毛布がまた欲しい。
内にはヒートテックがまた欲しい。
外には外套がまた欲しい。
明日からを過ごす手立てを練りつつ、意を決して離京する。
急いで体を温めて、支度の後に待ち合わせ場所へ。
暫くすると暖かそうなマフラーをもうぐるぐる巻いたこととがやってきた。
「あっ、見てっ(*'▽')!」
到着するなり指さしたのは、美しい菊に霜の降りた姿。
鮮やかな黄色い花の色が、霜の白さで淡いレモン色になっている。
菊白しらと街の朝
かじかむ手でそう書きつけていた。
終
ひとこと事項
菊【季語:秋】
四君子の一つにも数えられる菊。寒菊は冬の季語。秋から冬にかけて、昔から愛好家達に大事に育てられてきた菊の世界は、不案内な私では説明できませんが、鑑賞させて頂く分にはとても綺麗だなといつも思います。
同じ秋の季語である露は儚い印象ですが、菊はその花の滴った薬水を飲んで700年以上も生きた菊慈童の伝説にも肖って、長命なイメージがあります。薄命・長命な対照的な印象のある秋は、動から静へ、冬への転換期なのかな、なんて思います。
霜始降【季語:秋】
七十二候の五十二番目「霜始降」。この頃は霜の降り始める、そんな時期なのですね。元々は古代中国発祥だそうで、季節を表す二十四節気を、さらに3つ(5日ずつ)に分けたもの。七十二分ともなれば、より細かに季節感を捉えることができそうですね。
寒くなる時節、心身ともに皆様もお健やかにお過ごしくださいませ。
今回もお目通し下さりありがとうございました。