小春日和
これは、10月に散歩をしていたときの話。
立ち止まったこととを置いて歩いていると、背中で小さな悲鳴が聞こえた。
見れば、赤く腫れた足を掻きながら涙目の彼女。
どうやらあちらの方が美味しそうな血であったようだ。
蚊と言えば夏。
そんな気がしていたので、こんな秋頃にいるのだろうかと一緒に驚く。
と同時に、周囲がちょうど過ごしやすい程度に温かいことに気が付いた。
このような日は、小春日和というらしい。
「今日は暖かいねえ…。」
秋に蚊がいるものかと調べながら、ふと空を見上げる背中。
でもこの後は寒くなりそうだと、三点リーダの後に、次の季節への哀愁が漂う。
まだそこにいるアカイエカ
「私の血を吸ったからには、長生きしてね!」
そう書き付けると、こととは温かな日に手を振った。
終
ひとこと事項
小春は初冬の季語、蚊は夏の季語、夏と冬の間の秋は、季節が混ざったようなことが起こりますね。調べてみると、蚊は種類によっては一年中いるらしく、特に家の多い場所では、思わぬ時期に刺されるそうです。確かにそんな記憶があるような…。虫刺されの薬は冬でも薬箱に必要なようです。
今回もありがとうございました。