猫のなく夜
これは、眠そうなこととの話。
朝の挨拶もそこそこに、彼女が手を当てあくびを一つ。
聞けば昨日の夜中じゅう、外で猫たちが鳴き合っていたのだという。
「本当にね、赤ちゃんが外で泣いているのかなって、気が気じゃなかったの;」
もし本当にそうだったなら、ぼくも確認しに外へ行ったかもしれない。
でも外にいたのは、春を迎えた猫達だけだった。
発情期に入って、真剣な繁殖モードになった猫達は、食事もままならない程に恋に身を焼かれ、やつれ果ててしまうのだとか。
眠れなくなった彼女は、そんなことを調べて目の下にクマを作ったようだった。
長靴履いた猫の恋
「人もさ、変に頭が良いだけで、恋をすると、心の奥ではああなのかもね。」
得るものは得たぞ、と眠たげに微笑むこととは、制服を思い切り張って、朝日に向かって精いっぱい伸びをする。
そんな背中が、ちょっと艶っぽく見えた。
終
・猫の恋(季語:春)
夜通し赤ちゃんのような泣き声が聞こえて、眠れない日がありました。春を迎えて日が長くなると、猫達は恋の季節を迎えるそうです。2~4、6~8月頃がピークと言われているようですが、5月が抜けているのは何故なのでしょうね。きっと飼い主さん達も気が気でない季節でしょう。本当にお疲れ様です。