夏に至る
これは、夏至の夜の話。
今日が最も昼の長い日だと聞いて、その日の夕焼けを見守っていた。
雨雲が薄く藍色に空に架かり、その切れ間から桃色の夕焼けが顔を出している。
よくみれば、小さな月と、一番星も見えている。
夏に至るや宵の星
そう書き付けると、こととが、ふぅっと息をつく。
「これから昼がどんどん短くなっていくのかあ…」
どうやらそれが、残念で、寂しい様子。
確かにもう明日からは、少しずつ、少しずつ日が短くなっていくのだ。
クライマックスを迎えれば、その後はエンディングに向かって一直線。
漫画でも、ゲームでも、映画でも、小説でも、序盤が楽しくて、終盤ともなると、まだ終わってほしくない、ストーリーが続いてほしいと悲しくなる。
こういった経験は、自分だけではなかったりするのだろうか。
次は秋に至り、冬に至り、そして春に至り、また夏に至る。
もう晩夏なのだな。これから暑い七月を前だというのに…。
なんて、少し寂しく思っていると、
「そういえば、こんな空の色のアイス、あったよね(*'▽')」
今度食べに行こうよ、なんて、隣でこととがふにゃりと笑った。
終
ひとこと事項
・夏至(季語:夏)
普段、梅雨曇りで日照時間が短くなるために体感はあまりないのが日本だそうですが、この日が最も日が長いそうです。どうも昔から自分は、冬至には、明日からまた日が長くなるんだ、と嬉しい反面、夏至には、これから日が短くなるんだ、と寂しい気分になりがちです。もし同じ思いの方がいらっしゃいましたら、お友達ですね!
小さい頃、ゲームをクリアしたくなくて、ボスの前で放置していた思い出。
どのように考えれば、物語の序盤はワクワクして楽しいものの、中盤以降、クライマックスを迎えるにつれて寂しく感じてしまうこの性分を楽しさに変えられるか。
自分なりの答えを見つけたいですね。
ちなみにこととが言っている、“こんな空の色のアイス”とは、サーティワンアイスクリームのコットンキャンディみたいな色です。