オールド・オンライン・エントランス
これは、夢でみたできごとの話。
昔好きだったオンラインゲームの中に、いつのまにかいることに気が付いた。
チュートリアルのステージには誰一人プレイヤーの姿は見えず、手狭に感じていた空間が、実はこんなにも広々としたものだったのかと、寂しさを覚えた。
朽ちることのない、時の止まった遺跡には、最後にいつ話しかけてもらえたのかも分からない、NPC達が、遠い視線で佇んでいる。
と、チュートリアルに出てくる女神が、たった一人の迷い人に話しかけてくる。
ようこそお出でくださいました
本当に久しぶりに来訪者を迎え入れることのできた彼女の頬には、一筋の涙が伝っていて、それから彼女は、堰を切ったかのように話し始める。
中には知っている内容も多かったものの、顔に出さずに返事をすれば、彼女は使命を果たせたかのように、眩しい笑顔を見せてくれた。
目覚めてから。
あの賑やかだった世界を守るために、女神はプレイヤーをオンラインに閉じ込めたとしても、それこそ望みと、受け入れた者もいるのではないだろうか。
なんて、先日の定食屋の出来事を思い出しながら、異世界物へと思いを馳せた。
終
昔大好きだったオンラインゲームは、サービスが終了となり、もうあの世界に行くことはできません。そのような哀愁を取り上げた作品は、オンラインプレイヤーであればが誰しも共感してしまいますよね。
・お越しくださいと、お出で下さい
調べてみると、同じ意味で使われる言葉と書かれていました。オンラインでは“出でよ”と召喚されてやってくる勇者様が多いかと思い、お出で下さいの方を使ってみました。
・先日の定食屋の出来事
第16部「定食屋と山菜蕎麦」でのできごとです。