命溢れる
これは、初夏の道を歩いていたときの話。
「ふぎゃっ(৹˃ᗝ˂৹)」
無数に舞うモンシロチョウを観察していたこととが、急に変な声を上げた。
よくみると、どうやらそれらは蛾だったらしい。
二人でネットを調べに調べて、その種類を探ってみる。
白い蛾、大量、木にとまる…何とか手がかりを追っていくと、やっとそれらしい記事に当たる。
検索中、記事の方でも正確な種名は不明というものも多く、皆難儀する中で情報提供をしてくれていることに気が付き、感謝の念が湧いた。
「蛾って、月の女神様なんて呼ばれているのもいるんだね♪」
そして、ちょっとした周辺知識もついてきて、彼女の蛾に対する意識も少し変わったようだった。
周囲には、無数の白い羽が舞い、地面には、既に動けなくなりつつも、懸命に飛ぼうとする個体や、既に蜘蛛の巣にかかって、その生涯を終えている個体もあった。
命溢れる初夏の森
きっと、成虫になるまでにも、もっともっと仲間がいたことだろう。
溢れるとは、みなぎるだけでなく、こぼれ落ちるという意味でもある。
傷ついた羽を必死に動かす一匹を見ながら、自分は世界中の人々の中で、どんな境遇にあるのだろうか、とふと考えてしまった。
終
・ひとこと事項
木々に群がっていた蛾をやっと調べると、おそらくですが、キアシドクガという種類だと思いました。ドクガと言っても、毒はないそうで、少し安心…。電子辞書に対する紙の辞書論でも触れられることがありますが、調べていく途中に得られる周辺知識もまた、蛾に対する理解を深める良い機会になりました。